【黄泉人決戦】合戦というもの
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■ショートシナリオ
担当:恋思川幹
対応レベル:3〜7lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:06月24日〜06月29日
リプレイ公開日:2005年07月04日
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●オープニング
●決戦の時
武具や甲冑の擦れあう音、馬の嘶き、蹄の音‥‥そういった諸々の音が絶え間なく聞こえている。
軍勢の発する音、である。
音の主は、大和一国を覆わんとする亡者の群れに決戦を挑まんとする、源徳、平織を主力とし、神皇の名を冠した連合軍である。
これだけの規模の軍勢を見るのは、若い武士達の多くには初めての経験であろう。
まして、これから始まる大規模な一大決戦は、まったく未知の分野であった‥‥。
それは一対一の戦いや、少人数での戦いとは別種のものなのであるから‥‥。
●少年武者より、合戦への誘い
「我は源徳家臣にして、正八位左衛門大志・比企透宗が孫、弥四郎時和、生年十二歳なり! 冒険者の衆に申しあげぇる!」
紅顔の少年武者が馬上から、まだ声変わりもしていない、可愛らしい声を張り上げた。
冒険者ギルド軍の陣地にやってきたのは、少年武者と家臣らしき二騎の騎馬武者である。
「我が比企勢はこれより亡者軍の別働隊を迎撃に向かう! 敵はおよそ六十から八十! ついては冒険者に陣を貸す用意がある! 我と思わん者あらば、名乗りをあげよ!」
少年が必死に大きな声を張り上げている様子は微笑ましくもあり、冒険者達の間に和やかな空気が流れる。
そんな空気を感じ取ったのか、弥四郎は憮然とする。子ども扱いされるのが嫌いな、まだ子どもなのである。
さておき、弥四郎の語る内容は冒険者達にとって興味深いものであった。
弥四郎の申し出は形式上は「陣借り」ということになる。比企氏はあくまでも冒険者に陣を貸しているだけであって、冒険者に援軍を依頼したわけではない。よって報酬は勲功に応じたものであり、ただ参陣するだけでは報酬は望めない。
だが、比企勢の向かう戦場は、小規模ながらも合戦と言える規模である。六十を超える敵がいるのであれば、一般の冒険者が務める戦闘よりも一回り規模が大きい。
勲功によらず報酬があるとすれば、合戦に参加するという貴重な経験であろう。
冒険者ギルド軍と言っても寄せ集めの集団であり、ギルドマスターの弓削是雄によれば冒険者ギルドは神皇軍内部の立場は中立、遊撃を保っての支援体制をとることを明言している。とすれば、全体としてはともかく、個々の体験する戦闘は普段の冒険の規模を大きく上回るとは限らない。
「ここで合戦というものを経験するのも悪くない」
そう判断したのであろうか。少なくはない数の冒険者が名乗りをあげて、弥四郎のもとへ馳せ参じた。
●比企氏の軍勢
此度の決戦の為に、新月道を使って源徳家の兵も多く送り込まれている。
武蔵北部の中小の領主達もまた、源徳臣下として参陣しており、畠山氏、熊谷氏、河越氏などの名前が挙がっている。むろん、その他にも多くの武蔵武士達が自分達の領地の規模に見合った戦力を召集して参陣している。
比企氏もそんな領主の一つである。
が、決戦を前にして兵の逃亡が相次ぐと言う憂き目にあっていた。
領内にたてられた不吉な噂が原因である。曰く「比企左衛門は混血種を養い、神と敬っている」と。
その噂ゆえに残った足軽達の士気も低い。
それでも、冒険者に陣を貸すことで何とか数を確保することができた。
即席の比企氏の軍勢は、左衛門以下騎馬武者十騎、足軽二十名、駆け出し冒険者十名、それに冒険者何名かが加わる。
およそ四十から五十の軍勢である。
「策ありし者は献策せよ! 冒険者であっても構わぬ!」
左衛門が馬上より声をかけた。
向かう先には亡者軍六十から八十。神皇軍の本隊と微妙な距離をとって陣取っている。
神皇軍としては、わざわざ攻撃に向かうほどものことなく、さりとて放置できるというものでもない。それゆえに比企勢が抑え役に選ばれたのである。
この合戦を制するものは比企勢か、亡者軍か?
●リプレイ本文
●誘導
亡者軍の先頭が浅瀬を渡り始めると、そのうちの数体の死人憑きが突如として炎に包まれた。猛烈な勢いで吹きあがった炎は屍を焼き、その一部をボロボロと崩れさせる。
それでも躊躇う事無く前進する亡者の群れ。二重三重に張り巡らされた三月天音(ea2144)の炎の罠が何度となく炸裂し、そのたびに亡者を炎に包む。
同時に紅闇幻朧(ea6415)の張った罠が亡者の足元をすくう。元々動きが鈍いのに加え、浅瀬とはいえ川の流れもあって、容易く転倒を繰り返す死人憑き達。
「す〜〜‥‥ふっ!」
その様子を茂みから隠れて見ていたリュミエール・ヴィラ(ea3115)が天音から借りた呼子笛を吹き鳴らした。甲高い音が辺りに響き渡る。
「敵の待ち伏せていたか!? 引き返せ! 引き返せ!」
死人憑きに紛れて姿は見えないが、知性ある何者かが声を張り上げている。その声に応じるように死人憑きの群れは進行方向を変えた。
「どうやら、ここは警戒して避ける判断を下したようだ」
「うむ、わらわ達の作戦通りじゃな」
同じく茂みに隠れていた幻朧と天音がそう声を掛け合う。
「じゃあ、私は亡者軍を追いかけるね。もし、予定と違う方角に向かう気配があったら、急いで報せに戻るから」
リュミエールはゆっくりと慎重に亡者軍の尾行を開始する為、茂みが出て行った。
「我々も行こう。敵の遅さなら、先に味方に合流できるはずだ」
「うむ、そうじゃな!」
幻朧は韋駄天の草履を履き、天音は後方に繋いでおいた馬のもとへ戻る。
●先陣
死人憑きが一体だけ、橋を渡ってくる。
罠が存在しないか確かめる為の人身御供も、黄泉人の命令であれば、厭うことのない死人憑き。もとより、恐怖も理不尽も感じる知性は残ってはいないのである。
先ほどの浅瀬より、しばらく下流へ移動した場所である。軍隊規模で渡河可能な貴重なポイントである。浅瀬とここを外せば、さらに大きく迂回をせざるをえない。
「‥‥すすめっ!」
罠はないと判断した黄泉人の号令により、死人憑きの群れが動きだした。だが、その半ばが渡河を終えたという時である。
ビイイィィィィッ!!
合戦の開始を告げる鏑矢の音が響き渡った。
渡河中の敵の半数が渡ったところでの攻撃は、ありふれた戦術である。
「旗掲げいっ!」
左衛門の号令で伏せられていた軍旗が高々と掲げられる。
「前進っ!」
続く号令で、やや起伏のある地形の影に隠れていた比企軍が、亡者軍の前に姿を現す。
「正八位左衛門大志、比企透宗がそこな亡者の群れを討ち取ってみせん! 覚悟せよ!」
「官位を持っただけで偉そうに! 神皇の犬めが! 貴様を食らって我らが祟りの先鋒にしてくれよう!」
両軍の大将が互いに『挨拶』を交し合う直後である。
「はぁっ! 比企弥四郎時和、参るっ!!」
と、先に射撃攻撃を仕掛けるという取り決めを無視して、比企軍の中から一騎が駆け出した。若さ、いや幼さゆえの先走りである。
「弥四郎殿、抜け駆け!」
「勇敢な若者を打たせてはなりません!」
「敵の両翼に射掛けて下さい! 先鋒が取り囲まれます!」
家臣の一人が声をあげ、斉藤志津香(ea4758)と紀勢鳳(ea9848)が弓隊への指示を出す。
「弥四郎殿! 三月殿の仕掛けた魔法の罠があるぞ! 止まられよっ!」
鏑矢を放った弓を放り出し、物部義護(ea1966)が弥四郎を騎馬で追う。そして警告を発する。その声に気をとられて弥四郎が走るスピードを緩めた。
その一瞬のうちに義護の馬が弥四郎の横を猛然と駆け抜けていく。
「謀りましたね? 靖七郎殿!」
弥四郎が義護の後に続く。
「初陣で気負いすぎるのは危険だ。俺が道を開く、その後にゆるりと参られよ!」
短槍を片手に義護は亡者の群れの中に飛び込んだ。
「我は物部・靖七郎・義護なり! 先陣仕る! 死人とは言え我こそはと思う者あらば掛かってまいれい!」
勢いにのった軍馬の体当たりが敵を跳ね飛ばし、馬蹄が敵を踏みにじり、振り回す短槍が敵を斬り、また叩きつける。
●先鋒
「矢はなてぇっ!」
弓弦の音が響いて、矢が飛んでいく。真っ先に突入した二騎を取り囲む動きを見せている亡者軍の両翼に対する牽制である。だが、既に死んでいる死人憑きに対して「刺」の攻撃が今ひとつ効果が薄いことは否めない。
「私達で攻めて攻めて攻めたてるぞ! 足軽といえども腰に刀差す身なれば、それで滾る血も持ち合わせているだろう!」
大神総一郎(ea1636)が冒険者仲間に言うと、刀に闘気を付与してもらうやいなや、敵陣にむけて駆け出す。
亡者軍の左翼で爆発が起こる。天音の炎の魔法が炸裂したのである。爆風で隊列が乱れる。
「御影一族は大神総一郎、討ち取ったり!」
乱れた亡者の隊列に駆け込むと手近な死人憑きを斬り捨てる。亡者に対して高い効果を発揮する闘気の力が、骸を抉り取る。
「ちぇえいっ!」
刀を縦横に振るい、当たるを幸いに斬り立てていく。数体の死人憑きが地に伏す。鬼神の如き戦いぶりに見えるであろうが、その分だけ突出してしまう。死人憑きが側面から総一郎に襲い掛かり、その爪をつきたてる。
「えいやぁっ!」
鳳の裂帛の気合とともに放たれた真空の刃が、総一郎に纏わりつく死人憑きの一体を吹き飛ばした。
「まだ、僕らの兵力のほうが少ないんだ! 突出すると死人憑き相手でも痛い目を見るよ!」
自身の前にいる敵を切り倒しながら、時羅亮(ea4870)が警告を発する。
「今は遮二無二攻めたてて士気高めねばならん!」
総一郎は多少の傷はものともせずに突き進む。
渡河途中で敵戦力の半分を分断し、弓兵の援護を受けて尚、戦闘に参加している兵力は亡者軍のほうが上である。士気が低めの足軽達を奮い立たせて戦列を組ませなければならない。
「アビュダ使いの真骨頂を見せるよ!」
レベッカ・オルガノン(eb0451)の流れる水のように変化に富んだ剣先は、しかし攻撃の一瞬だけ光のように鋭く輝く斬撃を煌めかせる。その度に骸がざっくりと大きく斬りひらかれる。
「前に出すぎだ! 簡単に倒せる相手だからって調子に乗って死にたいか!」
乱暴な物言いはしているが、ミハイル・ベルベイン(ea6216)はしっかりとレベッカを援護するように縄ひょうを投げつけては、巻き取っている。
「ありがとね!」
レベッカはその援護に安心して攻撃を仕掛けられることを感じ取る。互いを援護しあいながら攻撃を仕掛けていく。
「たあぁぁっ! ‥‥死人憑き程度恐るるに足りません、信憑性の無い噂に踊らされて貴方達は何をしているのですか? 今は京の都を守る為の瀬戸際なのですよっ!」
数体を斬り倒したところで、志津香は後方の兵達を激励する。
「京都を死人の好きにはさせないよ!」
レベッカも応じて声を出す。
初手の攻撃は闘気の力も借りて、冒険者達が圧倒しているように見える。
「お、おおーっ!」
その様子に足軽と後詰めの冒険者達も応じるように声をあげ、前進を始めた。
両軍が入り乱れる様相を見せつつあった。
●乱戦
先陣を切った二騎のうち、先に音をあげたのは意外にも義護のほうであった。
「一度、退いて態勢の立て直しを!」
全身に小さな、しかし無数の傷を受けている義護は槍を振るう勢いにも衰えが見えた。
「靖七郎殿、大丈夫ですか?」
義護が弥四郎に劣るということでない。軽装の義護に対して、弥四郎は武将の子らしく重厚な大鎧に身を固めている。弥四郎のほうが動きは鈍くなるが、四方八方からの攻撃があり、すべてを把握できない戦闘状況では「受ける」「避ける」を考えるよりも、攻撃に「耐える」ほうが効率的である。
加えて、義護がそれとなく弥四郎を庇っていたこともある。
二騎は軍馬の体当たりで道を開くと本陣まで撤退した。
先鋒の冒険者達による攻撃が優勢であったことは事実である。
だが、死人憑きの軍勢の恐ろしさはそこから先にあった。
幻朧が忍者刀で袈裟斬りにする。十分な手応えを感じて、次の敵に刃を向ける。
直後。倒した、と思った死人憑きからの攻撃が分身をすり抜けていく。
「くっ! 完全に破壊し尽さないと駄目か?」
幻朧は死人憑きの恐ろしさを感じる。生きている人間ならば、とうに戦闘不能となっているダメージでも死人憑きは攻撃をやめようとはしない。
手足が切り落とされようとも、上半身と下半身が泣き別れようとも、文字通り這い蹲ってでも攻撃をやめようとしない。
ボロボロになった骸の攻撃は緩慢であり、その攻撃を避けるのは容易い。ただし、少数同士の戦いであればの話だ。乱戦の中にあっては、どんなに拙い攻撃であっても、何の拍子に命中しないとも限らない。
「襲い掛かれ! 敵は我等よりも少数ぞ! 例え首だけになろうとも、敵に食らいつけ!」
黄泉人が死人憑きの群れに命令を下す声が聞こえる。そして、愚直なる亡者の兵はその言葉どおりに完全に破壊されるまで戦闘をやめようとしない。
「う、うわあぁぁっ!!」
足軽の一人が下肢を失った死人憑きに足を掴まれて引き倒される。
「でやあぁぁっ!」
それに気づいた亮が左腕の刀を一閃し、足軽から死人憑きを引き剥がす。
「大丈夫か? えいっ! えいやっ!」
足軽に声をかけつつ、さらに刀を死人憑きに打ち込み、完全破壊する。
「あ、ありがとうごぜえます」
「後ろに下がって手当てをうけてね。大丈夫、浅くもないけど、深い傷でもないよ」
足軽を後方へと送り返す。冒険者の僧侶が一名参陣しており、彼の魔法で治せる怪我のうちに後退できるのが望ましかったが、間にあわないことがあるのも事実であった。
「うらぁっ!」
総一郎が刀を振るい、既にボロボロの死人憑きを地に伏せさせる。
「おおおっ!」
だが、攻撃の手を最後まで緩めず、動く部分が無くなるまで打ち込まなければならない。それが考える以上に手間であり、刀身に大きな負担をかけている。
総一郎自身も全身傷だらけではあったが、剣先はまだまだ鋭い。
手傷を負って尚、戦える。元々の優れた実力、怪我をしても混乱に陥らない落ち着き、そういったものがなければ出来ない芸当である。
その恐ろしいまでの奮戦ぶりは鬼神の如くであり、その勇姿が味方の士気を保つのに多きく貢献している。
「‥‥くっ! 形ある物はいつかはいつかは滅する‥‥か!」
連続使用に悲鳴をあげた総一郎の愛刀が、死人憑きの体に突き刺さって、抜き差しできない状態となる。既に刃はこぼれ落ち、鋼の刀身が歪んでいる。総一郎の奮戦を物語っていた。
「何か武器を‥‥!」
死人憑きの一体が兵士の姿であることに気づいた。どこかの戦場で戦死した兵なのであろう。腰には刀を差したままである。
総一郎は銀の短剣を繰り出して、その死人憑きを突き倒し、腰の刀を奪う。
「お前の仇は私が取ろう!」
刀の主であった骸にそう語りかけると、総一郎は再び先頭を開始した。
「黄泉人はどこじゃ?」
天音と志津香は敵の大将である黄泉人を探しているが、中々見つけることができずにいた。
「何度か声も聞き、姿は見かけましたが‥‥こう、死人憑きの紛れ込まれては追い続けられません」
天音が鞭で敵を絡めとり、志津香が闘気を施した刀で敵を破壊していくという連携をとり、自分達の身を守っている。
黄泉人の捜索だけに意識を集中している暇はなく、目まぐるしく目の前の敵と戦わざるをえない。姿を巧みに隠す黄泉人の狡猾さというものもあるだろう。
「うまく行かないものですね」
志津香は這い蹲っている死人憑きに一撃を繰り出して言った。
●総力戦
「しっかりしろ、これ以上敵の数を増やされちゃ堪ったもんじゃない!」
ミハイルは重傷を負った冒険者の口にポーションを流し込む。荒っぽい物言いではあるが、つまりは「死ぬな」と励ましているのである。
「せいやっ!」
ミハイル達を守るようにレベッカが借りた短刀を振るっている。霞小太刀は酷使していた為、折れる前に後方の人間に預けている。
「よし、傷が幾分浅くなった。あとは後ろまで戻れるな? 怪我を治したら戻ってこいよ!」
ミハイルは僅かに傷を癒した冒険者を後方へ送り出す。
「後ろの大将達は前に出てこないの?」
よろよろと撤退していく冒険者の後ろ姿を見送りながら、その後方にいる騎馬集団を見て、レベッカが言う。
「戦力投入の機会を見計らってるんだろうが‥‥」
と、その時であった。
「敵の残りがこっちに渡り始めたよ〜!」
偵察を重視していたリュミエールは敵の動きを見張り続けていた。
亡者軍が総力戦に出たのを見て、左衛門に報せる。
「見張りご苦労! よぉし、敵の予備兵力の出鼻を挫くぞ!」
「生き残ったらお酒たくさん飲も〜ね〜♪」
リュミエールが明るい調子で言ったのに見送られ、騎馬集団が動き出す。冒険者や足軽達が戦っている場所を迂回し、まだ無傷の亡者軍の予備兵力の中へと突撃、これを蹂躙したのである。
総力戦の出鼻でペースを掴んだ比企軍は、戦闘のバランスを大きく自軍側へと傾けることに成功した。
●決着
「生きてますか? 今、薬を」
傷を負って臥せっている冒険者を見つけた鳳は、そばに駆け寄り、懐から薬を取り出そうとする。
「すでに死んでいる‥‥が、腹はへっているな」
「黄泉人!?」
掴まれた腕から生気が抜けていくのを感じる。鬼神の小柄を持つが故の不運であろうか。
「く‥‥けどっ!」
不運を呼び寄せたのが鬼神の小柄であれば、鳳を救ったのも鬼神の小柄である。さっと小柄を抜くと黄泉人にねじりこんだ。
「皆さん! 黄泉人はここにいますっ!」
小柄をねじ込んだまま、黄泉人を押さえ込む。
手近な冒険者達が黄泉人をぐるりと取り囲み‥‥。
●褒賞
「私は平気だ。それよりも他の者を‥‥」
最後のヒーリングポーションを他人に譲り、総一郎は重傷を負った体を休めていた。
「ご苦労だった。おぬしの活躍、見ておったぞ」
左衛門が労いの声をかけて回っている。
「刀を使えなくするまで戦ったようだの。これは褒賞の一部だ、受け取れい」
左衛門が一振りの刀を総一郎に渡す。
「わしからの拝領などと言わんでくれな。大した品ではない故、恥になる」