【物資補給阻止】民を愛する騎士

■ショートシナリオ&プロモート


担当:糀谷みそ

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 36 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:01月05日〜01月09日

リプレイ公開日:2007年01月13日

●オープニング

「ラーンス様!」
 深い森の中を捜索していた騎士は、見つけ出した円卓の騎士を呼んだ。ラーンス・ロットは振り向くと共に深い溜息を吐く。
「またか‥‥いくら私を連れ戻そうとしても無駄です」
「連れ戻す? 私どもはラーンス様と志を同じくする者です。探しておりました。同志はラーンス様の砦に集まっております」
「砦だと!? 志を同じく?」
 端整な風貌に驚愕の色を浮かべて青い瞳を見開いた。
 騎士の話に因ると、アーサー王の一方的なラーンスへの疑いに憤りを覚えた者達が、喜びの砦に集まっているという。
 喜びの砦とは、アーサー王がラーンスの功績に褒美として与えた小さな城である。この所在は王宮騎士でも限られた者しか知らないのだ。
 状況が分らぬままでは取り返しのつかない事になりかねない。ラーンスは喜びの砦へ向かった。
 ――これほどの騎士達が私の為に‥‥なんと軽率な事をしたのだ‥‥。
 自分の為に集まった騎士の想いは正直嬉しかった。しかし、それ以上にラーンスの心を痛めつける。
 もう彼らを引き戻す事は容易ではないだろう。
「ラーンス様、ご命令を! どんな過酷な戦となろうとも我々は立ち向かいましょう」
 ――戦だと? 王と戦うというのか?
 ラーンスは血気に逸る騎士達に瞳を流すと、背中を向けて窓から覗く冬の景色を見渡す。
「‥‥これから厳しい冬が訪れる。先ずは物資が必要でしょう。キャメロットで食料を補給して砦に蓄えるのです。いいですね、正統な物資補給を頼みます」
 篭城して機会を窺う。そう判断した騎士が殆どであろう事に、ラーンスは悟られぬように安堵の息を洩らした――――。


「アーサー王、最近エチゴヤの食料が大量に買い占められていると話を聞きました。何やら旅人らしいのですが、保存食の数が尋常ではないと」
 円卓の騎士の告げた報告に因ると、数日前から保存食や道具が大量に買われたらしい。勿論、商売として繁盛した訳であり、エチゴヤのスキンヘッドも艶やかに輝いていたとの事だ。
「‥‥王、もしやと思いますが、ラーンス卿の許に下った騎士達が物資を蓄えているのでは‥‥」
「あの男は篭城するつもりか‥‥」
 苦渋の思いに眉を戦慄かせるアーサー王。瞳はどこか哀しげな色を浮かべていた。そんな中、円卓の騎士が口を開く。
「冒険者の働きで大半は連れ戻しましたが、先に動いた騎士の数も少なくありません。篭城するからには戦の準備を進めていると考えるのは不自然ではないでしょう」
 ――戦か‥‥本気なのか。出来るなら戦いたくはないが‥‥。
「ならば物資補給を阻止するのだ! 大量に買い占めた者から物資を奪い、可能なら捕らえよ!」
 難しい命令だった。先ずはラーンスの許に下った騎士か確かめる必要があるだろう。全く無関係な村人や旅人が聖夜祭の準備で買う可能性も否定できない。保存食というのが微妙だが‥‥。
 それにこれは正しい行いなのか? 否、そもそも王を裏切ったのだから非はラーンス派にある。王国に戦を仕掛けるべく準備を整えるとするなら、未然に防ぐのは正当な行いと言えなくもない。
 ――なぜ戻って来ないラーンスよ。おまえの信念とは何だ? なぜ話せぬ‥‥。
 聖夜祭の中、王国の揺れは終わりを迎えていなかった――――。


 薄雲に覆われた空では、温かい日差しなど望むべくもなかった。
 だが、乾燥した空気は野菜や魚をよく乾かしてくれる。
「こんにちは、寒いのに精が出ますね」
 赤毛の騎士が笑顔で話しかけてきた。もう一人の金髪の騎士は、むっつりと辺りを見回している。
 彼らが連れる馬の背には、大量の保存食や衣料品が載せられていた。
「こうして村を回っては、保存食を買わせていただいているのですが‥‥」
 食料を余分に用意してあるとはいえ、万が一を考えるとおいそれと承諾するわけにもいかない。
 女性はしばらく考え、かなりの高額を提示する。
「分かりました。その値段でお願いします」
 驚いたことに、騎士は一切値切らずに保存食と衣料品を買っていった。その値段であれば、普通はキャメロットのエチゴヤまで出向く方を選ぶだろう。
 よほど金に余裕があるのか、時間がないのか。
 ――それとも、人目につきたくない理由でもあるのか――。
「近くに別の村はありませんか? もう少し食料を買い集めようと思うのですが」
 女性から別の村の情報を聞くと、二人の騎士は北に去っていった。
 そろそろ彼女の息子が帰ってくるだろうかと、女性が昼食の用意を始めた時。
「うわっ、ゴブリンだッ!」
 男の悲鳴に、女性は急いで外に出る。
 男が指し示す方向に、まだ遠くではあったがゴブリンの群れが見えた。しかも、どうやら一直線にこちらへ向かってくるようだった。
 とるものとりあえず乾物をひっつかみ、洞窟へ逃げようと大音声で叫ぶ。
 ‥‥女性は息子が帰ってきていないのが気がかりだったが、それはすぐに解消されることになる。
 彼女の息子こそが、ゴブリンの群れに追いかけられている張本人だったのだ。長い間走っているのだろう、少年は今にもゴブリンに捕らえられそうだった。
 女性が無駄を承知で息子のもとに駆け寄ろうとしたとき、あっという間に追いすがってきた騎馬が少年を拾い上げた。
 それは、先ほど食料を買っていった金髪の騎士だった。
「騎士様、早く洞窟へ!」
 叫ぶ女性を赤髪の騎士が掬い上げ、村人たちが集まる洞窟へ突入、入り口の岩戸を閉めた。


 暗い洞窟の中で少年の話を聞き、村人たちが低く唸る。
 友人に『度胸があるなら子ゴブリンを連れて来い』と挑発され、少年は沼に住むゴブリンたちからゴブリンの子供をさらったというのだ。
 少年たちにとってただの度胸試しだったのだろうが、それをゴブリンたちが許すはずもなかった。
 子ゴブリンを解放した後も、ゴブリンたちは少年をしつこく追い掛け回し、今に至る。


「残念ながら、私たち二人であの量を相手するのは無理です。申し訳ありません」 
 ゴブリンたちが岩戸を叩く音を聞きながら、金髪の騎士が苦しそうに言う。
 ゴブリンが十数匹、しかもボスとしてゴブリン戦士が君臨していた。普通の群れよりも統率がとれており、新米騎士では太刀打ちできないだろう。
 重苦しい沈黙が洞窟の中に下りる。
 このままゴブリンが岩戸の前に居座れば、いずれ持ってきた食料が尽き、ここで果てることになるだろう。
「‥‥僕が悪いんだ。だから、僕が行ってくる」
 震える声で言ったのは、ゴブリンに追いかけられていた少年だ。
「行くとは、どこへ?」
「‥‥この洞窟の奥に、子供しか通れない狭い穴があるんだ。そこからならキャメロットの近くに出られる。だから――」
 村人の刺々しい視線を振り払うように頭を振り、声を振り絞った。
「冒険者ギルドへ行って、助けを呼んでくる!」


 泥だらけの少年が冒険者ギルドに駆け込んできたとき、ちょうど王宮から派遣された騎士も居合わせていた。
「助けてください、僕のせいで皆が危険な目に――!」
 しゃくりあげる少年を落ち着かせ、事の次第を聞き出す受付。
 聞き終わると、受付はちらりと騎士を見上げた。
「ラーンス一派の者たちは可能なら捕縛、でしたっけ?」
「そうだ。それが我々に下された命令だ」
 感情のこもらない声で肯定する騎士。‥‥彼の思考はうかがい知ることができなかった。
 ――我々王国の騎士に私情は無用。
 騎士はそう呟くと、早速身支度を整え始めた。

●今回の参加者

 ea9934 風霧 芽衣武(47歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb5868 ヴェニー・ブリッド(33歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb7706 リア・エンデ(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8175 シュネー・エーデルハイト(26歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb8317 サクラ・フリューゲル(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 eb8543 セルゲイ・シュトロレイム(31歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 eb9943 ロッド・エルメロイ(23歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec0290 エルディン・アトワイト(34歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

風霧 健武(ea0403)/ シーナ・オレアリス(eb7143)/ レイ・マグナス(eb9571

●リプレイ本文

 道を行く冒険者一行の中に、ジャパン出身の親子が一組。風霧芽衣武(ea9934)と、その息子の風霧健武だ。
 健武は護衛としてついてきたのだが、彼が帰る間際、こんな一幕があったとかなかったとか。
「母上」
 神妙な面持ちの健武に、芽衣武が問い返す。
「何だい?」
「何時までも現役と云うわけにもいかないのですから、あまり無茶は――」
 言い終わる前にひっぱたかれたのは言うまでもないだろう。

 その他にも色々な事件があった。
 キャメロットを出てから始めての食事を迎えたとき、エルディン・アトワイト(ec0290)が笑顔のまま硬直していると思ったら保存食や防寒服をすっかり忘れていたとか(保存食については仲間に分けてもらい、村でひと段落着いたら買って返すことになった)、

 その話を聞いていた芽衣武が「冷えてきたねぇ」と言いつつ『まるごとクマさん』を取り出したとか(仲間たちは見て見ないフリをすることにした)、

 洞窟を目前にして野営した一行が翌朝目覚めると、寝袋の類を持っていなかったセルゲイ・シュトロレイム(eb8543)とエルディンが、子馬のカルロスに抱きついて震えていたとか(ロッド・エルメロイ(eb9943)が作った焚き火で温まるも、動き出すまでしばらくかかった)、

 ――エトセトラ、エトセトラ。
「すみません、初依頼でどうも緊張しているようです。でも、私にできることがあれば何なりとおっしゃってください」
「実は俺もです。先ほども緊張して、なかなか詠唱を唱えられず‥‥」
 エルディンの言葉にロッドが告白すると、シュネー・エーデルハイト(eb8175)が髪を梳きながら頷く。
「本当に驚いたわ。ファイヤーボムで焚き火をおこすなんて言うんだもの」
「しかし、拙者とエルディン殿は大助かりですぞ。‥‥折角だ、みなも保存食を温めては?」
 セルゲイの提案に、冒険者たちは喜んで保存食を火であぶり始めた。
 そんな調子のまま、依頼人の少年を伴ったリア・エンデ(eb7706)は穴から洞窟へ入り、残りの冒険者と王宮の騎士は岩戸側を目指して外を進んだ。


「‥‥あれは!」
 少年が持つランタンの光に気付いた村人たちが、嬉しそうにざわめく。リアの銀髪は、遠目でもランタンの光によく照り映えるようだ。
 村人たちが陣取る場所付近は天井が高く、かつひびが入っているので、互いの顔をランタンなしで確認できる程度には明るかった。
「えーと‥‥助けに来てくれたんだよね?」
 村人の言葉が疑問系なのは、小柄なリアを見て不安になったからか。それを察したリアは、笑顔で頷く。
「そうですよ〜。岩戸の外にも冒険者仲間がいますから、安心してくださいです〜」
 村人たちが安堵したのを確認すると、リアは二人の騎士に近付いた。
「ラーンス派の騎士様、ですね〜?」
「‥‥そうです」
「そんな身構えないでくださいです〜。王宮の騎士様も外に一人いるのですが、騎士様達が王宮とラーンス派の戦いを起こさないように努力してくれるなら、ゴブリンさん達を退治したあと、騎士様達が逃げるのに協力するのですよ〜」
 リアの申し出に、騎士たちは顔を見合わせる。困惑した様子が薄闇の中でも見て取れる。
「‥‥ラーンス様に進言はしてみますが、それではいけませんか」
 一介の騎士では、円卓の騎士に及ぼせる影響など微々たるものだろう。それでもいいのなら――ということか。
 リアはにっこりと笑い、深く頷いた。


 ヴェニー・ブリッド(eb5868)とロッドが、岩戸の前に陣取るゴブリンたちを見下ろす丘の上で、周辺に延焼するようなものはないかと確認している。
 二人の魔法は火と雷を操るものであり、一度燃え出したらなかなか消火できないだろう。村人を助けるつもりが村まで焼け野原にした、では洒落にならない。
「どうやら、魔法を使っても大丈夫そうね」
「はい。あとはリアさんの連絡を待つのみですが‥‥」
 ロッドがシュネーを見ると、シュネーは頭を振ろうとする。
 だが、すぐにぴんと背筋を伸ばすと、目を瞑って軽く俯く。‥‥どうやら、リアからテレパシーが届いたらしい。
「‥‥説得は成功したみたい。こちらがゴブリンを奇襲してから、挟撃するとのことよ」
「では、一番槍は任せてくだされ」
 シュネーの報告を聞き、ロングソードを手ににっと笑うセルゲイ。
 前衛は丘を少し下り、比較的ゴブリンに近い岩陰に身を潜める。後衛がそれぞれの配置についたのを確認すると、静かにゴブリン戦士の背後をとった。
「――はッ!」
 セルゲイのスマッシュ、そしてシュネーと王宮騎士の刃がゴブリン戦士を貫く。
 ゴブリン戦士は重いフレイルの一撃をセルゲイにくらわせるが、その次の瞬間には倒されていた。
「ゴブリンごときが! そんなものでは拙者は倒れぬぞ」
「‥‥大丈夫かぃ?」
 芽衣武が縄ひょうを巧みに引き寄せながら気遣う。
「心配御無用。ドワーフのファイターたる者、これしきのことで及び腰になったりはせん」
 腕から血が滲んでいるが、セルゲイは安心させるように再びにっと笑う。剣を両手持ちから右手持ちに変え、目前のゴブリンをスマッシュで沈める。
 負けていられぬと芽衣武もゴブリンに突っ込んでいくと、縄ひょうと竜巻の術を駆使してゴブリンたちを蹴散らしていく。
「新春凧揚げ大会ならぬ、鬼揚げ体壊♪ なんてねぇ〜」
「芽衣武殿、近くに私がいることを忘れないでくださいね?」
「ふふ、どうだろうねぇ」
 冗談とは分かっているものの、エルディンは思わず後ずさる。彼はコアギュレイトを連発しており、ゴブリンが動きを止める確率は五分五分、といったところだった。
 ヴェニーが唱えるヘブンリィライトニングが天を割り、ロッドのファイヤーボムが地を焦がし始めた頃。
 岩戸が細く開き、中から騎士が二人とリアが出てきて、戦闘が終幕を迎えるのにさして時間はかからなかった。
 先陣を切ったセルゲイとシュネー、そして騎士たちが軽傷を負っていたものの、他に大きな損害はなかった。


 ロッドと村人たちが早速後片付け――大量の死骸を放置しておくわけにはいかないので、埋葬することになった。
「体調が悪い方は、無理せずおっしゃってください。埋葬は俺と仲間でやりますから」
「こんなことまでさせて申し訳ないねぇ。それにしても、騎士様たちはどうなるのかしら」
「俺としては、村人を迅速に避難させた方々を捕えたくありませんが‥‥」
 言いつつ、村人たちから離れた場所にいる仲間たちとラーンス派の騎士たちを見る。
 エルディンは二人の騎士を前に、敵対心を煽らないように柔らかく言った。
「大量に物資を補給したら戦争の準備だと思われますよ? それはラーンス卿にも都合が悪いのでは?」
 物資を積んだ馬を横に、騎士たちは居心地が悪そうにしている。‥‥無理もないだろう。冒険者たちが王宮の騎士といるところを目撃したのだから。
 だが、肝心の王宮の騎士はこの場にいなかった。
「子供の遊びではないのですから、騎士ならば己の行いがどれだけラーンス卿の立場を悪くし、何を招くのかを知るべきと存じ上げますわ。心を鬼にせねばならぬときもあるのです」
 ヴェニーは厳しい表情だ。
 確かに子供が危険だったかもしれない。だが、子供を助けたためにラーンス派騎士たちが王宮騎士に捕まり、それが大乱の引き金になったら、誰がその責を負えるのか。
 ラーンス派とアーサー派の内乱が勃発すれば、ゴブリンどころの騒ぎではなくなってしまうのだから。
「でも、この騎士様たちが自分の危険を顧みず村人の方々を助けたのは、本当にすごいことだと思うのですよ〜」
 必死なリアの言葉に、ヴェニーは苦笑する。
「物資を置いていくのなら、考えるわ」
「騎士様、私を人質にして逃げて下さい〜、荷物を置いて逃げてもらえれば私達も面目が立つのですよ〜」
 ヴェニーの言葉がきいたのか、騎士たちは固い顔で頭を振る。
「いえ、人質などとんでもありません。これ以上ラーンス様にご迷惑をかけるわけにはいきません。‥‥王宮騎士も見当たりませんし、自力でなんとかします」
 言うが早いか、二人は物資を落として馬に跨り、走り去る。
「それにしても、王宮騎士はどこへ行ったのかしら?」
「怖くなって戦闘中に逃げ出した、ということはないと思うが‥‥」
 シュネーとセルゲイが首をひねっていると、噂をすれば影がさす、王宮騎士が村の方から歩いてきた。
 手には何本かの鋤を持っている。
「道具を拝借してきた。これで、さっさとゴブリンを埋めることが出来るだろう」
 王宮騎士は何気ない様子で地面に落ちている物資を眺め、呟く。
「ラーンス派騎士には逃げられたか」
 それきり逃げた騎士のことを忘れたように、穴を掘り始めるのだった。
 体力のない老人や子供の前には芽衣武の姿があった。ギルドに依頼を持ち込んできた少年の前に屈みこみ、何やら言い諭しているようだ。
「いいかぃ? ジャパンの諺に『藪を突いて蛇を出す』ってのがあってね。不必要な事をして危険を招くって意味なんだけどねぇ‥‥身をもって知っただろ?」
「‥‥ごめんなさい」
「まぁ、やっちまったモンはしょうがないさね。罰として10日間、村の奉仕活動をしなさい。大人の方々も、それで許してやってくれないかねぇ?」
 最後にヴェニーは物資を魔法で焼き払おうとしたが、今回の騒動で食料が減ってしまった村人たちは慌てて制止した。


 一行は後片付けを済ませ、キャメロットへの帰路についていた。
「後悔はない?」
 唐突なヴェニーの言葉に、一瞬きょとんとしたリアだった。だが。
「私を信じてくれた騎士様達を私も信じるのですよ〜」
 翳りのない笑顔で答える。
 その後、大きなバックパックを背負った少年が余ったという保存食を分けにきたのは、また別の話である。