冒険者になるための最終試験?
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:糀谷みそ
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:3人
冒険期間:02月03日〜02月08日
リプレイ公開日:2007年02月11日
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●オープニング
レンジャーの父親と火のウィザードの母親を持つ少年、カミール。
彼の両親は子供が産まれるまで、腕利きの冒険者としてイギリス中を行脚したらしい。
ある時はモンスターの手から村を助け、またある時は盗賊の手から少女を救う。
そんな冒険譚の数々を幼少の頃から聞いて育ったカミールは、自然と冒険者稼業に憧れるようになる。
「俺も冒険者になって、いろんな人を助けるんだ!」
幼い瞳をきらきらと輝かせ、武器を振るうような仕草をしてみせる。
両親はそんな息子を微笑ましく見守っていた。‥‥カミールが冒険者になると誓うまでは。
「本当に、冒険者になりたいか?」
「本当に本当だよ!」
「じゃあ、お父さんとお母さんがカミールを鍛えてあげるわ。立派な冒険者になれるように」
「ありがとう、お父さん、お母さん!」
――その日から、カミール少年の地獄の特訓が始まった。
現在カミールは16歳になり、その兄ウルグンは20歳になっている。
冒険者を夢見てファイター修行に邁進するカミールに対し、ウルグンは冒険者の『ぼ』の字にも興味を示さず育ち、小さい宿屋を経営するようになった。
そんなウルグンの悩みは、教育熱心な両親だった。
「冒険者が危険な仕事で、生半可な能力では勤まらないというのは分かります。ですが、両親が『冒険者になるための最終試験』と称してカミールに突きつけたのは、罠や魔法をこれでもかというほど仕掛けた洞窟を最奥の地底湖まで進む、という課題なのです」
ウルグンが語りかける相手は、もちろんギルドの受付である。
受付は難しい顔をして低く唸る。冒険者と交流の深い彼は、未来の冒険者が危険な状態にあると知って心中穏やかではなかった。
「あなたのご両親は、あなたとカミールさんが産まれるまで冒険者稼業に身をやつしていた‥‥。となれば、それなりの工作技術や魔法能力があるはずですよね」
「はい、だから心配なんです。カミールが冒険者になる前に、酷い怪我を負うのではないかと‥‥うぅ、胃が痛い‥‥」
胃を押さえて前のめりになるウルグンを気遣いながら、受付は先ほど聞いた話を思い出していた。
カミールに課していた特訓の内容――凄まじい回数の筋トレからモンスターとの実践まで――から察するに、洞窟に仕掛けを施すに際して両親がさほど手加減するとも思えなかった。
厳しい特訓を受けて育ったカミールはなかなかの戦闘能力を有しているが、何しろ細々したことが嫌いな猪突猛進タイプなのである。延々と続くかと思われる罠の嵐を解除するのが面倒くさくなり、無謀な突進を始めないとも限らない。
「弟が酷い怪我を負わないよう、先輩冒険者さんたちにサポートをお願いしたいのです。両親や弟に見つからないよう、影からこっそりと」
全ての罠を解除するのも可能だろう。だがそうすればカミールは違和感を抱き、その報告を受けた両親は何度でも再試験を行うだろう。
手助けのしすぎも失敗に繋がるとは、何とも面倒なことだ。
胃痛を抱えた青年を見送ると、受付は若い芽を守るべく猛然と依頼書を書きあげた。
●リプレイ本文
冒険者一行は、一日目の夜には試験が行われる洞窟に到着していた。
徒歩以外の移動手段を持っていなかった者は、セブンリーグブーツの予備を持っている物から借り受けたのだ。
セブンリーグブーツや韋駄天の草履だけであれば昼に着けただろうが、そこはペットを連れていたので仕方がない。
洞窟に入る前に連れてきたペットを近くの森につなぎ、とりあえず腹ごしらえをすることになった。
「優しい人がいてよかったな」
シア・シーシア(eb7628)がそう言ったのは、食料を忘れたラーイ・カナン(eb7636)にジュエル・ハンター(ea3690)とシュネー・エーデルハイト(eb8175)が保存食を分けてくれたからだ。
普段であれば近くの村にでも行って食料を買うところだが、今回は時間がないということで仲間に分けてもらったのだ。
「本当に助かった。こんなことで日程が遅れたら洒落にならない」
「気にしないで。誰にでも物忘れはあるわ」
素直に謝るラーイに、シュネーが何気なく近付いて励ましの言葉をかける‥‥が、ラーイが身を引いたのを見てあることを思い出した。
ラーイは女性に触れられると狂化を起こすのだ。
そんなこんなで、セブンリーグブーツをセティア・ルナリード(eb7226)から借りようとしたものの安全性を重視してジュエルから借りることになり、シュネーから食料を分けてもらうときもジュエルを経由したのだ。
「難儀ですねぇ」
色っぽく首をかしげながら他人事のように言う雀春(eb9921)に、セティアは突っ込まずにいられなかった。
「お前もだろ。光がささない暗闇で狂化を起こすのに、よく洞窟が舞台の依頼なんか受けたって感心するぜ」
「うふ♪」
「‥‥大丈夫なのか‥‥?」
「大丈夫ですよ、同行するシアさんが明かりを持っていますから」
華月下(eb9760)がそう言うものの、どうも安心できないのであった。
シアはレイから受け取った罠に関する情報を、彼女の弟であるラーイに手渡した。
シアが連れてきたのはバックパックに入れて運べるペットだけだったので、レイの情報収集が終わるまでキャメロットにいても、先行した仲間にセブンリーグブーツで追いつくことが出来たのだ。
食事を終えて、罠解除班は洞窟に入ることになった。
洞窟内は暗闇に閉ざされていたが、ジュエルがランタンの火を灯すと濡れた壁がてらてらと輝いた。
そして、入ってすぐに怪しげな薪の束を発見した。
「これ、明らかに自然物じゃねぇよなぁ」
頭をかきながらクレス・ウィリアム(ec0763)が呟くと、他の3人も同意した。
ジュエルとクレスが注意深く薪の束を観察するが、どうやら物理的な罠を仕掛けてある様子はない。
「としたら、ファイヤートラップを仕掛けてある可能性があるぜ」
「そうだな、ファイヤートラップが発動したら可燃物に引火、被害拡大‥‥って感じかな?」
ジュエルが意味深長な視線でラーイを見つめている。
今の状態でファイヤートラップの有無を確認するには、魔法が仕掛けられているであろう空間に何かが侵入すればいい。
「‥‥いざという時のためにリカバーポーションを多めに持参したが、今がいざという時なのか?」
「ははは嫌だなぁ冗談だよ冗談! ‥‥こういうときは石の出番だ」
ジュエルは皆を下がらせ、ファイヤートラップが仕掛けられているかもしれない空間に向かってスリング用の石を投げる。
――途端、赤い炎が炸裂した。
「ファイヤーコントロール!」
セティアがすかさず火を消すと、あとにはわずかな熱気と墨だけが残った。
墨を片付けながらラーイが呟く。
「今から仕掛けておいても、カミールが到着する頃には魔法の効果が切れているだろうに‥‥姉の情報通り、『万が一』を想定して動いているようだな」
そのまましばらくは罠が仕掛けてある様子はなく、しかし油断は怠らずにのろのろと進む。
「クレスさん、腕の見せ所だよ」
先頭を歩いていたジュエルが後続を制止し、洞窟の奥を指差す。
「‥‥うわぁ」
ランタンの明かりに照らされたその空間は罠が張り巡らされ、うかつに立ち入れば蜂の巣になること必至だった。
罠解除に役立ちそうにないと自分で判断したラーイは周囲の警戒を、そしてクレスはせっせと罠を外し始める。
どこで手に入れたのか、極限までしならせた竹に括りつけてある縄をたるませ、縄が切れた際の反発力を弱めた。
「セティアさん、この上を見てきてもらえないか? ここからじゃ見えないんだ」
「分かった。少し待ってな」
セティアはリトルフライを唱えると、ジュエルから借りたランタンを手に高い天井をふわふわと上昇していく。
「下から続いてる縄は‥‥ここを通って‥‥そこの岩に通じてるぜ」
「なるほど、そこの縄が引っ張られると岩が‥‥。ラーイさん、クレスさん、この岩を動かすの手伝ってくれ」
「分かった」
「ちょっと待ってくれ、この小石をどかすから‥‥」
「クレス、あたしにはその小石ちゃんたちが罠のようには全然見えないぞ」
「急斜面に小石なんかあったら、ここを上るときに滑って落ちるかもしれない! ‥‥な、立派な罠だろ」
「‥‥あぁ、もう何でもいいや。お前らの仕事だし好きにしろよ」
これでもかというほど仕掛けられた罠を外していると、ランタンの油を1本使い切ってしまった。
つまり、3時間は洞窟の中にいるということだ。
だが、平時でも地底湖まで3時間かかる道のりである、罠が仕掛けられた状態ではその行程の半分ほどしか進むことはできなかった。
ランタンの都合であと半分の罠は諦め、カミールサポート班に賭けることにした。
「それにしても、罠満載の洞窟ってどう考えてもファイター向けの試練じゃないよなぁ。もうちょっと適正とか考えた方が良いんじゃないか?」
洞窟の入り口へ向かっているとき、セティアが思わずこぼすと、すかさずクレスが同意する。
「現役レンジャーの俺とジュエルでも面倒だってのに、無理がありすぎだ」
「あとは‥‥」
ラーイは胸もとの十字架を握っていた。
「後半になってカミールの両親が面倒くさくなったことを祈るべきだろう」
翌朝、カミールサポート班は暗いうちから起きだし、カミールの到着を待った。
果たして、カミールは夜明けと共に洞窟へやってきた。
ランタンに火を灯し気合の言葉を叫ぶと、さっさと洞窟へ入っていく。
「せっかくここまで頑張ったんですから、カミールくんには、是非、『冒険者になるための最終試験』に合格してもらいましょう」
そう言ったのは月下である。
月下、シュネー、シア、春の4人はカミールに続いて洞窟内に入る。
彼らは足元を照らすことが出来る照明を持っていなかったので、洞窟内でカミールを見失うようなことがあれば大変なことになるだろう。
シアは妙な輝きを連れていたものの、やはり明かり代わりになるほど明るくはなかった。
だが、足元は見えずとも春が狂化しないための支えにはなりそうなので、すぐに取り出せるよう懐に忍ばせている。
カミールが先刻罠解除班が発見したファイヤートラップの跡を通り過ぎ、いくつかの小さな罠を上手くかいくぐった頃。
早くもカミールは面倒くさくなってきたらしい。
「こんな罠ばっかなら、突っ込んでも最後までもつよな、きっと」
背後で先輩冒険者たちがため息をついているなど露知らず。
カミール少年は無謀にもその言葉を実行に移した。
――カミール少年は駆け出した! 直後降り注ぐ矢が皮鎧に突き立つものの、恐れる様子なく突進する!
――カミール少年は縄につまずいた! 竹の鞭がしなって少年を襲うが、勢いが弱まっていたので軽い打撲で済んだ!
――カミール少年は再び縄につまずいた! 天井から降ってきた石を盾により力ずくで弾き飛ばす! お陰で、後ろにいる冒険者たちが少々ダメージを受けた!
――カミール少年は上り坂で小石を踏み、派手にひっくり返った! 打ち所が悪かったのか伸びているようだ!
春はひたすら呆れた様子である。
「‥‥気合と馬鹿力だけはあるみたいですねぇ」
「全くとんでもない猪武者だ。スリープをかける暇なんてなかった」
暇がなかったというのも事実だが、静寂の中で詠唱をすればいくらなんでも自分たちの存在がばれる、という危惧もあった。
「今度カミールが無謀に突っ走ったら、私が罠と見せかけて音を立てるわ。根性はあるみたいだから手加減は無用よね?」
「あぁ、厳しい特訓をこなしているから、体は丈夫だろう」
シアの同意を受け、オーラショットで近くの岩を粉砕するシュネー。
その様子に、春は漠然とした不安を抱く。
つまり――。
「このままだとカミールさんは、罠だけのときよりも余計な傷を負うんじゃないでしょうか?」
「大丈夫ですよ、ある程度なら僕がリカバーで回復できますから」
伸びているカミールに月下がリカバーをかけ終わると、一行は小石を拾って闇の中に引き下がった。
そしてカミールを起こすべく、ぺちぺちと小石を投げつける。
「‥‥う゛〜‥‥」
カミールは頭を振りつつ上半身を起こし、落としてしまったランタンを拾う。
少しは学習したのか辺りの罠を解除し始めた。
それを見守るのは暇でもあったが、突っ込んで怪我するのを見てはらはらするより断然いいと月下は思う。
だが、そう思っていない者も何名かいるようで。
「‥‥お酒臭いのですが、シアさん」
「え? 何か言ったか?」
シュネーが無造作に放ったオーラショットが騒音を引き起こし、シアはシアで懐から発泡酒を出していた。
「とりあえず言えるのは‥‥」
頭痛がしているような表情で、春は月下に話しかける。
「ラーイさんやセティアさんのツッコミが恋しい、ということです」
「全く同感です」
そんなこんなで騒ぎがあったが、サポート班は無事カミールの試験突破を見届けた。
明かりがないのでカミールと両親が帰るのについて行かねばならなかったのは、また別の話である。