【ドレスタット開港祭】おつかれさま!

■ショートシナリオ


担当:呼夢

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月14日〜11月19日

リプレイ公開日:2004年11月20日

●オープニング

 ノルマン王国屈指の貿易港ドレスタットはここ10日以上に渡って祭りの熱狂に包まれていた。ノルマン各地で行われる秋の収穫祭に加えて、この港町ならではといえる貿易と海の恵みを感謝しての開港祭も同時に行われていたからである。
 そこここの広場や大通りには露店が立ち並び、辻々ではノルマン各地はおろか遠く月道を通じて交流のある異国からも集まってきた大道芸人達が、それぞれ自慢の芸を披露しては周囲を取り囲んだ見物人達からの熱烈な喝采を浴びていた。
 こうして盛大に盛り上がってきた祭りもそろそろ終わりに近付いてきたころには、祭りを成功させるために裏方として働いてきた面々にもさすがに疲れの色が見え始めてくる。
 祭りの成功のためにと言うことで、自分たちは祭りを十分楽しむことも出来ずに昼夜を分かたず立ち働く彼らをの姿を見て、とある酒場の主人がある日冒険者ギルドを訪れる。
 カウンターに近付くと受付にいた若い職員に声をかける。
「あぁ君、一つ頼みたいことがあるんだがね」
「どういったご依頼でしょうか?」
「うむ、ここ暫く続いた祭りもそろそろ終わるんだが、まぁ後片付けなんぞが一段落したところで祭りの間世話をしていた連中を慰労してやりたいと思ってな。
 でまぁ、お疲れさんの意味も込めてうちの食堂を開放して宴会を開こうと思うんだが、まぁできればうちのコックやウエイトレス共も一緒に休ませてやりたいんだよ。
 そんなわけで仕入れから料理一式、ついでに給仕やら余興やらを頼める人を探してくれんかね。無論経費は全部わしが持つし、それなりに謝礼もはずむつもりだよ」
 話を聞いて受付の職員はにっこり微笑む。
「ずいぶんお優しいんですのね」
「まぁ、祭りの間ずいぶん儲けさせてもらったからな。ささやかな礼ってとこさ」
 酒場の主人は少し照れたような笑いを浮かべながら必要な手続きを取るのだった。

●今回の参加者

 ea2052 アニス・リカール(27歳・♀・クレリック・シフール・ノルマン王国)
 ea3142 フェルトナ・リーン(17歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea5077 大曽根 萌葱(28歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea7643 ストルゲ・ヴィンドゥ(39歳・♀・クレリック・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

「いやあ御一同、よく来てくれたね。まぁよろしく頼むよ」
 準備の為に訪れた一行を酒場の主人は上機嫌で迎えた。
「わたくし、それ程色々出来る訳ではありませんけれども‥‥。せめてお疲れの皆様の心を休める事が出来たらと思いますわ」
 クレリックのストルゲ・ヴィンドゥ(ea7643)がにこやかに応える。
「とりあえず、開港祭が無事に終わってよかったね〜。ボクも、少ししか参加できなかったけど、多少は楽しめたし。宴会をやるって言うんだったら、ボクも協力するよ」
 ジャパンの出身で、開港祭を見物するためにイギリスから海を渡ってやって来たと言う浪人の大曽根萌葱(ea5077)も元気よく応じる。
「私の歌で皆さんの疲れが少しでも安らぐのでしたらいいのですが」
 開港祭のさなかにパリからやってきたバードのフェルトナ・リーン(ea3142)が言うと、一同の頭の辺りでパタパタと羽ばたいていたアニス・リカール(ea2052)も控えめに同意を表す。
「とにかく、皆さんを楽しませることができれば、あたしも神に対して奉仕ができたことになるでしょうし‥‥頑張ります。‥でも‥‥できたら、あたしも何か美味しそうな料理を少し食べたいな‥‥」
 最後のほうは他の一同には聞こえないくらいの小さな声でぼそっと付け加える。誰の耳にも届かなかったようだったが、初級とはいえ吟遊万能のスキルを持つフェルトナの耳には多少なりとも届いていたらしく、アニスの方を見ながらくすりと笑いを漏らした。
 さっそく一同は酒場の中へと案内される。中ではまだ祭りの後始末が完全には終っていないと見えて多少バタバタしているようだ。祭りが終ったということもあり、まだ昼前のこの時間帯ではさすがに酒場が営業している訳ではないようである。
 今日のところは店の中を片付けながら夕方から普通に営業するということで、雇い人達の慰労会は店を休みにして明日の夕方から行うつもりのようである。少し離れたところにある、主人と懇意にしている店の者も参加するので総勢で30人ほどの宴会を仕切って欲しいということだった。
 当日は朝から厨房の方も自由に使っていいし、料理の内容や必要な仕入れなども任せるので店の名前でつけておいてくれればいいと言う。
 比較的邪魔にならない店の一角に場所を占めると4人は当日の段取りなどを相談し始めた。
「わたくしは、料理を作って皆さんに食べていただくのが好きですので、完璧からは程遠いでしょうけれど、お料理など、させて頂きますわね?」
 穏やかな笑みを浮べながらストルゲが口火を切ると、アニスが苦笑交じりに溜息をつく。
「料理のお手伝いはしたいんだけど‥‥あたしは料理のスキル持ってないの。とりあえず、できてきた料理とかを運ぶ役とかをします‥‥シフールですので、あまり大きな物や重い物は運べませんけど‥‥」
「ボクは一応料理ができるからジャパン風の料理でも作ろうかな。と言っても妹ほどうまくできないけど‥‥でもまぁ、何とかするよ」
 萌葱は一度言葉を切って更に続ける。
「で、料理が出来上がったら、ボクは、給仕役をやるよ。こう見えても、普段は酒場の店員やってるから、こういうのは得意なんだ」
「私は主に余興の方を‥祭りで疲れた人達の心を癒してあげようと思います。リクエストに応じて、皆さんが聞きたいものを‥‥特にリクエストがないようでしたら町で流行っている恋歌などを中心に歌います。本当は楽器の演奏も得意なんですけど‥楽器の手持ちはないから、こっちで借りられるかどうか聞いてみようかな?」
 フェルトナはそう言って店の中を見回していたが。
「とは言ってもこの人数で30人分用意するんじゃ、料理のほうも全員でかからないと間に合わないよね?」
 と笑いながら仲間達の方を向き直る。
「あたしも出来る範囲でお手伝いさせていただきますわ‥‥力仕事は無理ですけど」
 アニスもそう言うと、ストルゲが料理の内容について説明を始める。
「ジャパン風の料理のほうは萌葱様にお任せするとして。暖かい物を最初に、冷えた物を最後に出せると宜しいかしら。後になりますと、冷たい物が欲しくなるのではないかと思いますの。
 先ずは野菜を使ったスープを。メインは魚の香草焼や貝、海老や蟹等にホワイトソースを添えた物等を。なるべく温かい内に食べて頂けるようにしたいですわね。
 後半に、牛の筋から取ったゼラチンで固めた、コンソメゼリーをお出ししましょう。」
「ジャパンの料理のほうは‥‥ん〜、何が出来るかな〜。食材が少ないから‥‥まぁ、海が近いから、その辺で新鮮な魚を調達して‥‥刺身って言うのもいいかもしれないね。
 まぁ、醤油がないから、ヴィネガーとオリーブオイルでこちらで言うところのマリネみたいな感覚で食べてもいいかも。あとは、小麦粉‥‥うどんが作れたらいいけど、難しいかな〜」
 萌葱も勝手の分からない異国のこととて頭をひねっている。
「後はよく冷やしたワインを。甘い物は如何したら宜しいかしら‥‥? クッキーやスポンジケーキ、パウンドケーキなどを焼いて用意してみましょうね。甘い物やゼリーは先に用意して置けますし、ソースもスープもそうですわね。その場で忙しいのは魚介類の事と温める物と云った所かしら。」
「まぁ、大体そんなところで、とりあえず細かいところは明日の朝、市場の品揃えを見てからだね」
 どうやら大方ののメニューが出揃ったところで萌葱がそう言って話を引取ると、一同は酒場の主人に暇を告げて今夜の宿へと向うことにした。

 翌日は朝早くから揃って市場へと買出しに出かける。必要な買物を終えて酒場についてみると、どうやら助っ人の人数が少ないことに酒場の主人が配慮したのか、テーブルなどの準備は夕べのうちにしておいてくれたらしい。
 フェルトナが頼んでおいた楽器も酒場で演奏している楽士から竪琴を借りておいてくれた。
 厨房に入った一行はストルゲと萌葱の指図に従ってパーティ開始の時間に向けて料理を開始した。ストルゲは自前の調理用具一式も持込んでいる
 やがて夕刻も近い頃になるとだんだんと雇い人達が集り始める。予定の時間になる前に全員が顔をそろえてしまったらしく、とりあえずは萌葱の作ったマリネのようなものからテーブルに出して宴会が始まった。
 店の主人から簡単な挨拶があると全員で杯を上げる。最初の皿を配り終えたフェルトナは借りておいた竪琴を取り上げるとリクエストがあればどうぞと促して、まずは流行の恋歌などを歌い始めた。
 朝から普段は下ろしている後ろ髪を料理中邪魔にならないように纏めているストルゲがメインディッシュの温かい料理に取掛ると、なにやら胸にきっちりとさらしを巻き、いかにも給仕らしく襷を掛けた萌葱がワインや料理などを運んで回った。
 アニスも忙しく飛び回っては小物などを運びながら、時折曲芸飛行などを織り交ぜて宴を盛り上げていた。
 手のかかる料理がひとしきり片付くとストルゲも給仕の中に加わる。宴が進むにつれて酔った勢いで萌葱の体に手を掛けては、「お・た・わ・む・れ・を!」などと笑いながら足を踏みつけられたり、思い切り手をつねられたりする者もちらほら。
 やがて料理も出尽くすと、給仕をしていた萌葱達や何人ものリクエストに応えて色々な曲を演奏し歌っていたフェルトナにも酒などを薦め始めた。
 アニスは期待通りもっぱら料理のお相伴に預かったが、ストルゲの方は遠慮して厨房に引込んでいる。
 多少酔ったとはいっても萌葱などは笑いながら大騒ぎする程度だが、フェルトナにいたっては薦められるままに断りもせずに飲み続けた挙句、綺麗な同年代のエルフを捕まえては男女を問わず色っぽく挑発し始めた。
「くすくす‥‥、ねぇ私と少し付き合ってくださらない?」
 などと誘いをかけては、相手がその気になるとからかう様に適当にあしらう。しまいには暑くなってきたと言って、ドレスの上に羽織った上着を脱いで少し翡翠色の色っぽいドレスを露にする。酔っ払った男達にとってはまたとない目の保養なのだが本人は一向に気に掛ける様子もない。
 一方萌葱はそろそろ危ないと感じたのか厨房の奥に引込んで酔いを醒ましにかかっていた。
 やがて夜もふけて、1人2人と酒場の主人に挨拶をしては家に帰っていく。客達がすっかり帰ってしまい、主人も奥に引込むと、どうにか酔いが醒めた萌葱やストルゲが後片付けを始める。アニスも会場と厨房の間を飛び回って細々としたものを片付ける中、フェルトナだけは完全に酔い潰れてしまっていた。
 やがて片付けが終ると萌葱とストルゲに抱えられるようにして宿へと戻る。
 次の朝、3人の前に姿を現したフェルトナは夕べのことを綺麗さっぱり覚えていないらしく。
「あれ? また私昨日事覚えてない‥‥‥、お酒を勧められて飲んでる内に‥‥‥?」
 などと頭を抱えて見せては仲間達を呆れさせた。
 ともあれそれはそれとして結構雇い人達の評判は上々だったらしく、一行は上機嫌で宿を訪れた酒場の主人から約束の報酬と手土産を受け取ったのであった。