【ドラゴン襲来】天空への道

■ショートシナリオ


担当:呼夢

対応レベル:4〜8lv

難易度:やや難

成功報酬:3 G 74 C

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月06日〜09月14日

リプレイ公開日:2005年09月14日

●オープニング

 敵の襲撃によってその存在が明らかになった『契約の宝』の片割れだが、何者かからの急いで戻せと言うメッセージにもかかわらず情勢は混沌を極めていた。
 いずれにせよ実際に遺跡に赴くことになるのは冒険者達である。彼らの何人かを集めて善後策の検討を依頼した結果がエイリークの目の前にあった。 
「やっぱり遺跡にしろ周辺の状況にしろ情報が不足してるか。遺跡の方も地上だけじゃなく地下にもなにやらあるらしいし、『正しき位置に戻せ』と言われてもどこに持って行けばいいのか皆目見当がつかんからな」
 一通り報告に目を通すと傍に控えていたスィエルに顔を向ける。
「解った、とりあえず遺跡の方に船を出す。ユトレヒトの方にも追っかけ探りを入れる。それでいいか? 」
 頷いたスィエルが前回の探索時に冒険者達が懸念していた点を確認した。冒険者の中に上陸中に船が襲われることを心配する者がいたらしい。
「まあ今はおとなしくしてるが連中も海賊のはしくれだ。お前さん達を守りきれるかどうかは判らんが、相手が人間なら冒険者達が上陸してる間自分らの船ぐらい何とかするだろう。ドラゴンが団体で来たら冒険者が多少いたところで焼け石に水だろうしな」
 こうして再び遺跡への探索体が募られることとなった。

●今回の参加者

 ea3630 アーク・ランサーンス(24歳・♂・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea5640 リュリス・アルフェイン(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea6319 バーン・ヴィンシュト(59歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea7890 レオパルド・ブリツィ(26歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 eb1964 護堂 熊夫(50歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)
 eb2818 レア・ベルナール(25歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

 出航を控えた桟橋では、遺跡探索の間領主館に馬を預けていく冒険者達が積んでいた荷物を船に移し変えている。
 今しも護堂熊夫(eb1964)は友人であるレオパルド・ブリツィ(ea7890)の馬から4人用のテントを船に積み込もうとしていた。
 船の上では先に乗り込んでいた白銀麗(ea8147)やリュリス・アルフェイン(ea5640)が先日顔を合わせたばかりのスィエルと遺跡の島での話をしている。
「人間とは全く逢ってないのか‥‥書簡がこの島の話をしているなら、先住民がいてもおかしくないような気がするんだが‥‥まさか、全滅したのか? 」
 リュリスが発した問い掛けにここ長らく領主館の居候になっているシフールの青年が首を傾げた。
「その書簡関係の報告なら俺も見せてもらったが、蛮族ってのは壁画の村で話を聞いた爺さんのご先祖達じゃないかって話だったぜ。そのなんとか言う黒僧が布教に来るまでジーザス教徒じゃなかったみたいだしな。壁画や書簡が見つかった場所に印をつけてたが、確か結構でかい川の近くだったし」
「そいつは確かか? 」
 スィエルが肯定するとアテが外れたのか短く舌打ちしたがすぐに話題を傍らに腰掛けるシフールの少女に転じる。
「ところでミールの方は相変わらずなのか? 」
 再び頷くところに荷物を積み終えたレオパルドや熊夫達も近づいてきて容態を見舞った。

 やがて船が港を出るとそれぞれ探索先に別れて方針を確認しあう。
「『最後の時』までどれだけの時間が残されているか分かりません。限られた時間で多くの情報を集められるよう、調査は効率的に行う必要がありますね」
 銀麗がそう説明を締めくくると今回初めて遺跡を訪れるというレア・ベルナール(eb2818)がにこやかに応える。
「宝を戻せば、ドラゴンが町を襲うことも無いんだよね。うん、がんばろう‥‥」
 最後の一言は自らに言い聞かせるように力をこめる。彼女もまた平素から種族の特徴である耳を長い髪と頭に巻いた布でできる限り隠している。船員達との接触もできる限り控えているようであった。
「遺跡の島を探索するんじゃの? きっと古物もいろいろあるんじゃろうのう。せっかくじゃから調査ついでに眼福させてもらうかのぅ」
 やはり初めて遺跡の島に渡るバーン・ヴィンシュト(ea6319)は根っからの古物好きらしく期待感を隠しきれない様子である。
「わしはコネもツテもないので、交渉事は他の人にお任せするのじゃ。精霊碑文学や古代魔法語は使えるんで、文字なんかがあればちっと調べてみるかのう。覚えたてじゃが、世界樹にたどりついたらグリーンワードで質問でもしてみるかのう」
「それでしたら精霊力の異常が拡大するかどうかやドラゴンが居るかどうかも聞いてもらえるとありがたいですよ」
 常々精霊力の異常による周辺への悪影響を最も気にかけている銀麗がバーンに注文をつける。
 前回の遺跡探索にも同行しているアーク・ランサーンス(ea3630)が疑問を呈する。
「『契約の宝』を返さなければならないのは判るのですか、それを返す我々が『正しい位置』に戻さなければならない理由が見えてきませんね。守護者たちがそこに安置すればいいはず。
 もしかすると、彼等は安置できない? 例えば『契約の宝』に触れる事ができないとか、あまりに小さすぎて安全に取り扱えないとか‥‥謎は絶えませんね」
「やはり竜や月精霊と接触して直接確認できれば心強いのですが」
 銀麗も切実な想いを口にする。
「ミールがブリッグル説得できりゃ遺跡にも入れるんだが‥‥まあ、無理はさせられねえか‥‥」
 黙って話を聞いていたリュリスが口を開くと、先日問題の場所から帰ってきたばかりのレオパルドが危惧を現す。
「向うの入口を通るにはどうしても山賊達と戦うことになるので、この戦力ではさすがに難しいかもしれません」
「『橋』や地下遺跡を通らずに世界樹に行く事は可能かどうかもぜひ聞きたいですね。
 それでは、調査の前半は、前回到達した城砦までを調査し、遺跡の調査および月精霊などとの接触を図り、後半は、地上ルートで世界樹を目指し、世界樹の調査や世界樹に居ると思われる竜との接触を図る。と言うことでよろしいですか」
 特に異論もなくその方向で探索が進められることになる。

 遺跡の島に上陸後、地底に向かう部隊を見送った一行は、前回作成した地図を頼りに月精霊と遭遇した城砦の門を目指す。
 先頭をリュリス、レア、レオパルド等ファイターとナイトが進み後方を神聖騎士のアークと陰陽師の熊夫が固めた中にウィザードの銀麗やバーンが守られる隊形だ。二人のシフールも中央付近を共に進んでいく。
 殿を行く熊夫はレオパルドから預かったテントやリュリスから預かった縄梯子・たいまつなども担いでいる。
 特に妨害も受けず、程なく目的の場所に辿り着いた一行はその場で野営の準備を始める。船との往復の時間も惜しんで周辺の調査を行うためだ。
 古物に目のないバーンはフレイムエリベイションで士気を高め、思考力を上昇させながら古代魔法語の解読に当ったが、時代が古いらしくはかばかしい成果は上がらない。周囲の建物なども手分けして調べて回るが相変わらず生物に出会うことはなかった。
 一方熊夫は遠距離捜索を試みようとしたが、森の中といい町の中といい障害物が多く長い距離を見渡すことができない。専らエックスレイビジョンによる壁の中身の探索を行うことになる。
 日が落ちると野営地に戻り簡単な食事を取って交代で見張りを行いながら睡眠をとる。
 門を中心とした城砦外部の地図は日を追うごとに充実して行ったが、城砦内部に侵入する手段は杳として見つからなかった。
 
 遺跡の街の中に野営を始めて三日目の夜半に、レオパルドは友人の熊夫に揺り起こされた。目覚めたのを確認すると次々と全員を起こしていく。
 テントから出たレオパルドが目にしたのは徐々に満月へと向かう空を6枚の羽を動かしながらゆっくりと空中を漂う月精霊の姿であった。
 全員が出て来た後も暫くの間一行と向き合っていたが、レオパルドがオーラテレパスを発動しようとしたとき突然頭の中に声が響いた。驚いて仲間達を振り返るとどうやら全員が月精霊の声を聞いているらしい。
 前回の報告ではテレパシーを使用した一人だけが話を聞いている。が、考えてみれば月の精霊が月魔法であるテレパシーを操るのに何の不思議もない。
『‥‥再びこの地を訪れたのか‥‥宝を手にしていなければ先には進めないと言った』
 前回も月精霊と出会っているアークが進み出ると他の仲間にもわかるように声に出して質問する。
「私たちが手に入れたのは宝の片割れのみだ。その上でそれでも返却した方がよいのか? 」
『‥‥戻すのだ‥‥』
「『宝』を奪おうとしている者達がいます。現に『橋』に至る入口にも『宝』を狙う物達がいて持ってきてもどうなるか解らない事はご存知でしょう。僕達は宝を持って来たらどうするのか? あるいは宝を持って来なければどうなるのかが知りたいのです。教えて頂けますか? 」
 レオパルドも真摯な顔で訴えかける。
『道は‥‥一つではない‥‥宝がなければ道を開くことはできない』
「『橋』や地下遺跡を通らずに世界樹に行く事もできるのですね」
『世界樹‥‥か‥‥自分達の目で確かめるがいい』
 以前のムーンドラゴンと言い多少微妙な反応ながらも銀麗の問いが肯定されると、再びアークが口を開く。
「返却だけで事が収まるのか? ロキが再び襲ってきたときに守りきれるのか? 」
『‥‥力あるものが集うだろう‥‥』
「このまま宝を返却することよりも、ロキを倒す為の共闘こそが正しい道ではないのか? 」
『‥‥‥‥』
 これは答えないというより答える権限がないといったほうが正しいのだろう。
 再び銀麗が気になっていた点を問いただす。
「この精霊力の異常は、放置すると拡大していくのでしょうか? タイムリミットがあるのか、不完全な物でも遺跡に戻せば異常の進行を止められるのですか? 」
『‥‥それはわからない‥‥』
 そういえば『我ら』と名乗る存在も『最後の時は遠いはず』と語尾を濁していた。高位の存在にとってさえ予測のできない状態なのかもしれない。
「それでは『正しき位置』とは? 」
『宝を携えて正しき道を進むならば自ずと現れよう‥‥』
「やっぱり先へ進む為には多少の危険を犯してでも『契約の宝』をここに持ち込むしかないってことか? 」
『‥‥そうだ‥‥』
 じっと腕を組んだまま黙ってやり取りを聞いていたリュリスが念を押す。一同が押し黙ってしまうと月精霊は再びユラユラと漂い始め、やがて夜の中にその姿を消していった。
 その夜は見張りを続けながら一旦休息を取る。翌朝昨夜判った情報を確認しなおすと、日程の許す限り遺跡内の調査を進めた後帰途に着く為遺跡を後にした。