女の敵を懲らしめろ

■ショートシナリオ


担当:言霊ワープロ

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月27日〜10月02日

リプレイ公開日:2004年10月02日

●オープニング

 多い時には、日に5度は起きる。
 今日も白昼、街中の十字路で若い女性の悲鳴が響き渡る。
 通りすがりが思わず眼をやれば、1人の女性のスカートがつつぅっと大きくまくれあがろうとする様子。白い生足が衆目の元にさらされている光景、さらにその上(中世ノルマンの一般女性は下着を着けていない)が‥‥という段になって危うく女性の手はスカートを押さえつける。悲鳴を挙げた女性にはしばし立ちすくむ者もいれば、そのまま路上に座りこむ者もいる。何にせよ、ハレンチな行為の犠牲者が日に何人も出るわけである。
 特に風が強いというわけではない。
 それにまくれあがる様は、風というよりは手でつまんで持ち上げているに近い。
 そのスカートめくりの事件の折には、傍にいた者が何やらいやらしげな笑い声がどこからか漏れるのを聞いている。助平親父ともイタズラ好きな少年ともどちらともつかぬような。
 そして羽ばたきにも似たような音。
 犯人らしき者の姿を見たことがないというのも、一連の事件に共通した事象だ。
 この不埒な見えざるもの退治が冒険者ギルドへと依頼された。依頼主はノルマンの女性有志一同だ。
 依頼を受けた者は、一部男性の反対意見を押しのけて、女性達の平穏を取り戻すべく努力しなければならない。
 健闘を祈る。

●今回の参加者

 ea3075 クリムゾン・コスタクルス(27歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea4284 フェリシア・ティール(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea4310 エルザ・ヴァレンシア(28歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea5488 シアルフィ・クレス(29歳・♀・神聖騎士・人間・イスパニア王国)
 ea6561 リョウ・アスカ(32歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea6687 羽生 天音(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea7106 サー・ブルクエルツ(37歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)

●リプレイ本文

●1
「姿を消してのスカートめくり‥‥。卑劣な行為は許せないわね。とりあえず‥‥不埒者は乙女裁判にかけて容赦なく鉄槌を下すわ‥‥」
 この『乙女裁判』とは『不埒な男性に鉄槌を』をモットーにした、乙女による乙女のための女性なら誰でも参加可能の裁判であるとフェリシア・ティール(ea4284)は、金髪をかきあげながら語る。
「姿もなくスカートめくりなんて最低ね‥‥あっ、でもリュオンだったら見せてもいいかなぁ〜♪」
 情報収集の傍らの呟きに恋人の名を出し、妄想中めいてにやけるエルザ・ヴァレンシア(ea4310)。
「姿を消し、気づかれぬようレディのスカートをめくる? 全く、許せん奴だ‥‥!
 皆の情報収集につきあっているナイトのサー・ブルクエルツ(ea7106)は、真剣な顔で憤る。
(女風呂、覗いた方がいいのに‥‥)
 と、心の中で思っていることは彼はおくびにも出さない。
 ノルマンの女性を脅かす、姿なき痴漢による連続スカートめくり事件。
 痴漢退治の依頼を受けた冒険者達は、まず情報収集を行い、街を走っていた。
 過去の事件現場への調査を行うことで犯人を特定しようとするクリムゾン・コスタクルス(ea3075)は、羽ばたきの音がシフールのそれより大きかったことから、犯人は『グレムリン』という悪魔ではないかと見当をつけた。彼女の知識からするとこれは透明にもなれるようだ。
 フェリシアは犠牲者が出た時間などを調査。すると割合、黄昏時に近い時間に多いことが解った。
 調査の途中でフェリシアは酒場に寄り、古ワインと古い小麦粉を1袋ずつもらってきている。
「それは何に使うのかね?」
「作戦準備よ。あなたこそ何で釣り竿なんか持っているのかしら?」
 サーの質問に答えたフェリシアは、彼に効き返す。
「私も作戦準備だよ。作戦で確実に仲間を襲ってもらうために、十字路にて釣針引っかけてスカートめくり。‥‥囮以外の女性のスカートをめくることで、敵の闘争心を燃やし、おびきだしやすくするナイスな作戦だ。これもノルマン女性が安心して暮らせる未来のためなのだよ。ハッハッハッ」
 白い歯をキラリ☆と輝かせてすがすがしく笑うサーの頬に、クリムゾンの拳骨が1発入った。
「痴漢退治の冒険者が同じハレンチなことしてどうする!!」
 さわやかに白い歯を見せた笑顔のまま、仲間の女性達に罵られ、足蹴にされるサー。
 綿密な調査は依頼日数のぎりぎりまで行われ、囮作戦の実行は依頼最終日となる。

●2
 依頼最終日。そろそろ秋の黄昏も迫る時間帯である。
 にぎやかな雑踏。人通りの多い十字路。
 十字路の中央に立って、クリムゾンはシアルフィ・クレス(ea5488)ととりとめて何のことはない雑談を交わしていた。
 貴族めいた仕立てのいい衣装。幅の広い、裾を引きずるような長いスカート。シアルフィは特別な日にしか化粧をしないが、今日は特にフェリシアやエルザに手伝ってもらった、高貴な印象がする素敵な化粧だ。
 シアルフィにとってはこの囮役は晴れの舞台といってもよく、彼女の胸はときめきに似た、ドキドキという音がやむことがない。街角に似合わない、身動きのしにくい衣装だがシアルフィ達は気にしない。
 通りすがりを装ったサーが雑談に加わる。スペイン語しか喋れないシアルフィの言葉をクリムゾンが通訳し、サーに伝えるという状況。時折、微笑を交えて会話の時間はすぎていく。
 気がつけば、長い時間がすぎていた。
 もしかしたら今日は痴漢は現れないのかという思いが、ふと皆の脳裡をよぎる。
 その時である。
 シアルフィの長いスカートの裾がツツゥ、と大胆にまくれあがった。強い風もまくる者の姿がないのに一気に膝の高さまでまくれあがる。
 次の瞬間、スカートの中から液体と白い粉が『透明のもの』に対して浴びせかけられた。
「相手は悪魔だろうが、この小悪魔のジプシー、アフィマ様にたてつこうなんて100年と1日、早いわっ」
 スカートの中で待ち伏せていた少女、アフィマ・クレス(ea5242)は叫んだ。
 古ワインと小麦粉をかけられた怪物は、その翼の生えた毛むくじゃらの小柄な輪郭を明らかにした。『グレムリン』だ。
 雑踏に隠れていたフェリシアの鞭が、居場所を明らかにしたグレムリンの胴に巻きついた。彼女はそのまま『オーラパワー』の詠唱に入る。絞りあげてのダメージを与えようというのだ。
 エルザと羽生天音(ea6687)も紛れていた雑踏から登場する。。
「炎翼華撃団、炎組! 白き幻惑の姫将軍エルザ参上!! 乙女の貞操を汚す悪党!! 神妙にお縄につけえぃ!!」
 名乗りをあげるエルザの前で、羽生は持っていた毛布を広げた。
「‥‥たかがスカートめくり‥‥でも、見られル方は‥‥嫌なんだヨ‥‥? ‥‥度ガ過ぎたネ‥‥」
 それをグレムリンに覆い被せながら、羽生は金属拳による『牛角拳(ニュウ・ジャオ・クァン)』の一撃を入れた。
「その攻撃は効かないわ!」
 武器に魔力か闘気を帯びさせないとダメージは与えられない、とクリムゾンは羽生に言う。
 もっとも羽生もエルザもそんな言葉を耳に入れず、ただひたすらに毛布の上から連続スカートめくりの犯人を連打するのに忙しい。
「私だって最近ご無沙‥‥ゴホンゴホン‥‥だというのにたいした根性ねぇ♪ たっぷり可愛がってあげるわよん♪」
 エルザに至っては捕まえたグレムリンを何者かに見たて、別件のフラストレーションをここで晴らす如く、気合を入れて殴りまくっている。殴打の様が最大級の笑顔だというのが何か恐ろしい。
「この変態! 悪趣味! 痴漢! ハレンチ者!」
 罵倒語で精神的になぶる役に専念しているのはクリムゾン。
 毛布の上から殴りつける者に笑顔のサーも加わった。
「このような小者、私の剣を使うまでもない」
 自分の『オーラパワー』を拳に発動し、身動きがとれないグレムリンを殴りまくるサー。
 立ち止まって騒動を見守る観衆の中、戦闘というより袋叩きといった方が似つかわしい時間が幾分かすぎる。
 羽生が再度の牛角拳を思いきりよく決めたところで、一息入れる冒険者達。
 眼の前にある毛布は、すでにボロ布である。
「二度としないと誓いなさい。もし再びこんな事を起こしたら‥‥次は容赦しないわ」
 動かない毛布の塊に向かって冷ややかな笑顔を見せるフェリシア。
 クリムゾンは毛布をめくりあげて中味の様子を確認。
 その途端、乾いた音を立てて広がった翼が羽ばたき、中のグレムリンが空中へ飛んだ。ダメージは結構受けているようだが、ふらつきながらも街の空高く舞いあがる。
「やっぱりボコりだけではダメージが足りなかったかんだわ!」
 空中のグレムリンを見上げながらエルザが言う。グレムリンを倒せなかった原因は彼女の言葉通りだろう。しかも攻め手の幾人かはデビルに傷を負わせられない魔力無しの攻撃だったのだ。
 空から雨の滴のように古ワインと小麦粉の練り物が落ちてくる。空高くまで上がって十字路を見下ろすグレムリンはフラフラになりながらも憎たらしく舌を出し、何処かへと飛んでいってしまった。
 こんなことならもっと殴っておくべきだった、と冒険者達は歯噛みする。
 だが、そんな悔しそうな冒険者達に周りの観衆から拍手が送られた。口笛も鳴る。
 犯人は逃したが痴漢退治の今の戦闘は、市民に評価されたのだ。
 あのグレムリンも痛い目にあったことで、しばらくは街中でハレンチな行為を行ったりはしなくなるだろう。希望的観測だが、皆にはそう思える。
 痴漢の正体を暴き、半殺しにしたことで、依頼は『やや成功』といったところか。

●3
「スカートめくりはスピーディーに、かつ威風堂々とするものだ! 私が真髄を見せてくれるッ!!」
 そう言ってサーは、隣に立つエルザのスカートをまくろうとし、思いきり頭をはたかれる。
「なんで男はそうやって女性のスカートをまくろうとするのかな、も〜‥‥私のスカートの中を見てもいいのはリュオンだけなの♪ ‥‥きゃ、言っちゃった♪」
 黄昏時の十字路で、エルザはかわいこぶりっ子でしなを作る。
 今だ周囲を取り囲む観衆に見守られながら、路上の冒険者達は帰り支度を始めていた。
 羽生は自分の毛布を見る。もはや使えないほどにズタボロだ。
 サーは、さわやかな笑顔をふりまきながら『自分ならどうスカートをめくるか』を熱く語っていた。野放しにしておくと危険なのはグレムリンよりもむしろこやつかもしれない。
 そんなサーの主張を1人だけ真剣な顔で聞く者がいた。アフィマである。
 アフィマもグレムリンがやっていたようなスカートのめくり方には納得が出来ていない風だ。
「透明になってスカートめくりなんて卑怯なことを! ‥‥解ってない! 本当のスカートめくりは、こうよっ!」
 言った瞬間、シアルフィのスカートが膝上までめくれあがった。黄昏に縁取られた白く肌色な世界が広がる。
 トリッキーにもアフィマは自分の人形使い用の懸糸に釣り針をつけて、シアルフィのスカートに引っかけ、引いただけでめくれるように仕掛けておいたのだ。
 街角の男衆がどよめく。
 肉づきのいい足の大部分を露わにしたシアルフィは、ノルマンの一般女性の例に漏れず、下着を着用していなかった。慌ててスカートを手で戻したが間に合ったかどうか、叫ぶことも忘れ、その場に呆然と立ち尽くす。胸はドキドキ、顔は紅潮。黄昏時のほのかな薄暗さがせめてもの救いか。
 小悪魔のジプシー、アフィマ恐るべし。
 クリムゾンはアフィマの頭に拳骨を投下。ついで観衆の男達を睨みつける。
 慌てて眼をそらす男衆を後にし、冒険者達はその場を急いで退散したのだった。

●ピンナップ

シアルフィ・クレス(ea5488


PCシングルピンナップ
Illusted by 大宇 宙