キノコ退治
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■ショートシナリオ
担当:言霊ワープロ
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 80 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月08日〜02月13日
リプレイ公開日:2005年02月13日
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●オープニング
人の多い冒険者ギルドの中を、めぼしい依頼を探して歩く。
ふと立ち止まったのは『キノコ好きの冒険者、求む』という見出しの依頼だった。
奇妙な見出しである。
冒険者となって比較的、日の浅い、初心者向けの依頼らしい。
興味から詳細をギルドに聞けば、ここから1日も歩かない農家からの依頼だという。
その家にあったもう何年も使用していない腐りかけた古い納屋。そこに発生した沢山のキノコを駆除してほしいというのが、依頼の主旨だった。
そのキノコは毒々しい傘の直径が50cmほどもあり、そばに近づくと大きな叫び声をあげるのだという。
「『スクリーマー』というキノコだと思うわ」
依頼詳細を教えてくれているギルドの受付嬢は書類を読みながらそう言った。
「近所の迷惑にならないように、そのキノコを叫ばせないようにして静かに駆除してほしいというのが依頼ね。報酬は安めだけど、駆除したキノコはどう扱ってもいいって言ってるわ。‥‥スクリーマーって食べれるのよ」
それであの見出し、というわけである。
生でも食べられるらしい、というそのキノコ。
冒険者としての仕事と同時に、味覚人としてのスキルアップをするいいチャンスかもしれない。
●リプレイ本文
●1
破壊のための前準備として、まず補強。
お化けキノコ『スクリーマー』退治のために件の農家に集まった冒険者達は、まず腐りかけてボロボロの納屋の外側を木材で補強するところから作業を始めた。
エリス・エリノス(ea6031)は中で冒険者が暴れても簡単に納屋が壊れないように補強。外壁の内側に菌糸が伸びてないかにも注意し、慎重に補強場所を探していく。
おっとりとした彼女は寒風の中、寒がりながらもマイペースに作業を進めていった。
「寒い‥‥ですね‥‥」
防寒服を着こんだティファ・フィリス(eb0265)も補強を手伝っている。
「‥‥私‥‥役に立つかわからないけど‥‥がんばります‥‥」
ティファは納屋の中で『アイスブリザード』を使った場合、あらかじめ壁に威力を逃がすための穴を開けておけば、納屋全体が威力余波で壊れるのを防げるのではないかと思っていた。そのような穴を開ける工作をしようとしていたのだが、納屋の内側をスクリーマーの菌糸は縦横無尽に這い回り、そのような工作が至難であることが今は解っていた。
エリスを手伝って、木材を運ぶティファ。
そんな彼女達の横で、空中の見事な舞を披露しているのがシフールのハーリー・エンジュ(ea8117)。
「あたいの踊り、観てみない? ‥‥有料だ・け・ど☆」
そんなことを言いつつもロハで踊りを見せつけている赤髪のハーリーは、自分も補強を手伝いたかったもののシフールの非力さ故に力仕事が出来ず、仕方なく皆の周りで踊ったりしていた。
達人の域に達しているハーリーの舞は補強作業をしている者達の眼をつい奪ってしまい、応援しているのか邪魔をしているのかよく解らない状況だ。
「蝶のように舞う、華麗な舞ねえ」
男ながら女性さながらの物腰を持つ浪人、不破頼道(eb1021)は、補強をしながらもハーリーの踊りに眼を奪われ、思わず誉めている。
「ところで、依頼主は納屋を壊したくなくて、また使うつもりだからキノコを取り除きたいのよね?」
不破はエリスにそう訊いた。
「いいえ。この納屋はもう腐りかけてるから撤去しちゃうつもりのようですよ」
「まあ。じゃあ、小屋は補強なんかしなくても魔法でキノコごと吹き飛ばしちゃえばいいじゃない」
「そうするとスクリーマーが叫んで近所迷惑になるから、先にスクリーマーを除去する必要があるんですよ」
「あ、そうか‥‥」
補強作業は万が一にもスクリーマーを叫ばせないよう慎重に進み、満足のいく仕上がりになったのは日もやや暮れかけた頃だった。
●2
作戦決行は翌日の夜明け間際の、最も気温が低い時が選ばれた。
その方が『アイスブリザード』の魔法が最も機能しそうに思われたからだ。
冒険者達は開け放たれた納屋の戸口に立つ。
暗い納屋の中には毒々しい傘を持った巨大なキノコが群生している。
そして床や壁を這う菌糸。
「‥‥可哀相‥‥だけど‥‥痛く‥‥しないから‥‥大人しくしてて‥‥ね‥‥」
心のある動物に語りかけるようにティファはそう言うと『アイスブリザード』で納屋の中のスクリーマーに極低温の冷気を見舞った。
一瞬の吹雪が暗い納屋の中に吹き荒れる。
しかし多少のダメージを与えたのはともかく、スクリーマーは彼女の思惑通りには凍結しなかった。
続いて不破の振り切った日本刀が真空刃を飛ばし、スクリーマーの1本の柄に大きな裂け目をつける。
シフールの燕桂花(ea3501)は納屋の中で菌糸の上を飛び、宙空で桃色の光の中に包まれる。『オーラショット』だ。毒々しい傘の肉が1つ弾ける。
「しー、お静かに」
今にも泣き出しそうな子供をあやすようにエリスは言い、『ウインドスラッシュ』で本体を攻撃。柄を切り裂いて傘の1つをうなだれさせる。
「えい!」
シフールのアム・ネリア(ea7401)は空中から『コアギュレイト』。アムの神聖魔法によって凝固した1本を『オーラボディ』と『オーラシールド』を発動させているマミ・キスリング(ea7468)の刀が刈り取った。彼女は返す勢いでもう1本の柄を切断する。
「ゆっくりゆっくり‥‥と」
レリア・クローシス(eb1019)は『サイコキネシス』で火のついた松明を宙に浮かせ、それを動かして、スクリーマー本体に押しつける。レリア本人が火は苦手なのでおっかなびっくりな調子である。
納屋の中にキノコがじっくり焼ける匂いが漂い始めた。
「こんのぉー!! お化けキノコめぇー!!」
地味めに焼き攻めるレリアに対称的なのがハーリーの魔法の使い方だ。
彼女は『ファイヤーバード』を発動させると、シフールサイズの炎の怪鳥と化し、空中飛行の突撃を集中させてスクリーマー1本の柄をもぎ取った。食らったスクリーマーがバラバラの破片になる。
志士、宮崎桜花(eb1052)はある程度、スクリーマーの数が減ったところで、依頼人の家から預かった古い毛布を集めて重ねた物を菌糸の範囲外ぎりぎりまで近づいて、まとめてスクリーマーにかぶせた。
「やっぱ冒険者って、知恵と工夫よねっ」
語尾にハートマークがついたような口調で言うと、彼女はそうして叫ぶのを防いだスクリーマーの柄にナイフで切りつけた。彼女が菌糸の範囲内に踏みこむとそのスクリーマーは叫び始めたが、毛布のせいで音は小さく、せいぜい子供が叫ぶほどである。それでもうるさいのは確かだが、宮崎が現場に立ち会っている依頼人を見ると、彼は『セーフ』という顔をした。その程度なら近所迷惑とまではならないという判断だ。
キノコの焼ける匂いが納屋の中を漂い、柄を切断された毒々しい傘が次々に床に落ちていく。
冒険者達はそれぞれの技で、キノコを刈り取っていく。
しばらくするとスクリーマーは焼かれるか、柄を切られるかであえなく全滅していた。
もう踏んでも大丈夫な菌糸を踏んで、冒険者達は大キノコの残骸を拾い集める。
退治の後は、いよいよお楽しみのお料理タイムだ。
●3
依頼人の家の調理場を借りての料理。
「できたよ〜☆」
達人級の調理の腕を振るったシフールの燕がキノコスープを完成させた。
アムとレリアが運んできた鍋には、小さな破片が浮かぶ熱いスープが琥珀色に澄んでいている。
傘を小さく切って焼いた物も同時に披露され、庭に作られた簡易テーブルで待つ仲間達や依頼人の家族達の
所に運ばれてくる。
調理の手伝いをしていたアムはテーブルに人数分の食器を並べる。
「これは美味しいです!!」
一番最初に口をつけたマミは思わず叫んでしまう。
スープを飲み、料理を食べた者達は例外なく、次々に口内の幸福を申し出た。
「喉越しのまろやかさと言ったら、もう‥‥!!」
「このまったりとしたこくが‥‥」
「幸せだー! 幸せの繰り返しだよー!」
「うぅーまぁーいぃーぞぉー!!」
口から光線を吐きそうな勢いで美味を訴える冒険者や依頼人家族達。
宮崎と不破は母国ジャパンから持ちこんだ醤油を使って、生のキノコ片をそのまま、刺身食いと洒落こんだ。
生でそのまま食うことにちょっと躊躇があった仲間達も、勧められて食べ、その味がなかなかおつであることを認めざるをえなかった。キノコ刺身もあっという間に盛り皿から消えていく。
労働の後の食事会は、好評の内に過ぎていく。
エリスは余りのキノコを干して、冬の蓄え用の保存食にもしたいと考えたが、どうやらそれには多大な手間と時間がかかりそうだと燕に教えられ、残念だが断念することにした。
余ったキノコを売ってお金に出来ないかと言い出したのは、ハーリーだ。
「えへ、いろいろと物入りなんだよねー」
彼女はそう言って料理会で余った食材を店に売りこもうと提案したが、果たして化け物キノコを食材として買い取ってくれるか料理屋があるかどうかは疑問だった。
「私が引き取りましょう」
そう言ったのは依頼人だ。
彼はすっかり、このスクリーマーの味が気に入ったらしい。
依頼人は余った食材を引き取り、代金として冒険者達の報酬に50Cずつ上乗せしてくれた。
晴天の冬の空の下。
冒険者達は腹を一杯にして、充実感と共に農家を後にした。