めざせ! セクシー
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■ショートシナリオ
担当:言霊ワープロ
対応レベル:2〜6lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月03日〜05月08日
リプレイ公開日:2005年05月08日
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●オープニング
キャメロットの午後。
冒険者ギルドを訪れたのはお世辞にも器量がいいとは言い難い少女だった。
年の頃は16か7。しかしソバカスが目立つ顔にはゲジゲジっとした眉が居座り、くりっとした可愛い栗色の眼が醸し出す愛らしい雰囲気を台無しにしている。化粧はしていない。
縮れた黒髪はおさげを結われて肩まで伸びて、粗末なドレスは見てすぐ解る幼児体型を隠し切れていない。
「‥‥あの、私、ティファって言います」
勇気を振り絞って言ってみるといった風の、彼女の声が受付に名を告げる。
「‥‥あの、私を『セクシー』にしてください」
ティファは受付にそう依頼した。
訊けば、彼女は近くの村に住む娘だという。
彼女が自らに『セクシーさ』を求めるのは、村にいた初恋の人の好みがそういう女性だったから。更には引っ込み思案の彼女にとってはセクシーとは自分に自信を持っている女性という、今の自分とは対極という気がするというのである。彼女は自分を変革し、もっと前向きに生きたいのだ。
「私、セクシーになれば、もっと積極的にやっていけるような気がするんです」
「しかし、セクシーといっても色々あるでしょう」
思わず、受付の突っ込みが入るが、ティファの決意は折れない。
「どんなセクシーでもいいんです。プロポーションから心構えから服を選ぶセンス、化粧、誘惑の術まで‥‥冒険者って独特の色気を持ってる人が多いでしょ? 私にも教えて欲しいんです。私はこの身を投げだし、どんな指導にも従う覚悟です」
ティファは依頼受付の書面に必要事項を記入し、ギルドを去っていく。
はてさて、どこまで彼女をセクシーに改造出来るのか。
セクシーさについて一言あるという人はぜひとも彼女にご教授してほしいものだ。
●リプレイ本文
●1
午後の黄金の陽差し。
依頼人ティファの家に集まった冒険者達。
2人のシフールが飛んで近づいていき、彼女に挨拶する。
「私はフェザー・フォーリングといいます。こちらは『妹』のレイニーです」
「俺は男だ、弟だ! いい加減、その挨拶はヤメロ!」
一見、女と見紛うレイニー・フォーリング(ea6902)が、兄のフェザー・フォーリング(ea6900)の後頭部にツッコミの蹴りを入れる。
「俺はヴルー。吟遊詩人だ。『旋律のヴルー』と呼んでくれ」
全身を青色で決めたハーフエルフが自信たっぷりな態度で依頼人に自己紹介する。ヴルーロウ・ライヴェン(eb0117)はロシア出身のハーフエルフ。特徴的な耳を隠すこともしない。
「ど、どうも‥‥こんにちは」
気圧されたようにティファは冒険者達に挨拶を返す。
冒険者達は自分をセクシーにしてくれという依頼人に会い、彼女の冴えなさを直に確認した。
幼児体型。ゲジ眉。そばかす。縮れ髪。気弱そうな態度。どこか小動物っぽい。
さて、何処からいじくるべきか、と冒険者達は思案する。
「ふ、与えられた美で満足するか。さすが自分に自信なき者だな。美とは自らの自信からあふれ出るものだ!」
ヴルーロウは自信たっぷりにそう言うと、ティファの手を引っ張って家の外に連れ出した。
近くにある丘までやってくる。そこには他に誰もいない。
「俺が心構えを教えてやる。下賎な者がすぐに自信を持てるわけがないだろうから、誰もいない所で発声練習だ。さあ、俺の後について叫ぶのだ。『私は美しい!』」
「わ‥‥私は、美しい‥‥」
「声が小さい! 私は美しい!」
「‥‥私は美しい‥‥!」
「私は美しい!」
「私は美しい!」
冒険者達が見守る中、2人は大声で丘から叫び続けた。
それは陽が暮れるまで続けられた。
●2
冒険者は2日目は化粧を試してみることにした。
まずはモデルとしてフレア・カーマイン(eb1503)に施してみることにする。彼は男だが異性に間違えられることもある容貌。彼の出来映えを依頼人に見てもらうのだ。
フェザーがフレアの化粧の実演にあたる。
「ま〜あれだ。男の俺がこうなるんだから、兄貴を信用しても大丈夫だと思う。それ以外ではこれっぽっちも信用出来ない奴だがな!」
そう言って兄の腕を保証するレイニー。彼の女装めいた格好は全てフェザーの手によるものだ。
フェザーはフレアへの化粧を、清楚に見せながら近くで見ると端々に色気が匂ってくるようなものにしようとした。しかし、どうもいつもと勝手が違うのにとまどう。
それでも何とか弟に買ってもらった化粧品でフレアの顔を整え、一応、テーマ通りの完成としたが、不本意な出来だった。美容の技に長けているわけではない彼は、馴れないフレア相手では弟にやっているようにいかなかったのだ。
ティファもフレアの化粧を覗きこみ、やや不満ありといった顔をして入る。
次はエンジェル・ハート(ea8544)がティファを相手に化粧することにする。
「オンナはね、お化粧次第で心まで変わるのよ」
微笑するエンジェルは、顔には濃いめのグラディエーションを入れて小顔を演出しようとする。
眉は柳眉にしようとしたが、そこでショウゴ・クレナイ(ea8247)から意見が出る。
「特徴的な眉は剃らないで整えるぐらいがよいかと。太い眉は意思の強さを演出しますし」
成る程と彼の意見を取り入れ、眉は形を整えるくらいにする。
アイシャドウは明るいオレンジ系。唇には明るい赤を塗る。
完成した。が、やはりイマイチな出来である。エンジェルの技術では、自分自身に施すようにはいかなかったのだ。
一旦、化粧を落とし、ラミエル・バーンシュタイン(eb1960)のメイクを試すことにする。
「女の子は誰でも綺麗になれるし、なる権利がありますし、それを妨げるのは悪なのですよ!」
力説するラミエルは、薄めの化粧で濡れた唇とちょっとセクシーな眼元を演出する。
黒髪は軽くリボンカールに。巻いた髪に買ってきた奇麗なリボンと花を添える。
そして肌に簡単なマッサージを。
ラミエルは美容の心得があり、手馴れたものである。
「後でプロポーションをよくするマッサージや体操を教えますわ。身体によいハーブもね。毎日ハーブティーを飲めば、ソバカスとかも薄くなりますし。ハーブローションとかの作り方も教えますわね」
ティファも今度の化粧では満足そうな笑顔を見せた。
椅子から立ち上がると嬉しそうな笑顔で皆を見つめて回ってみせた。
●3
「セクシーって定義は難しいよね」
アリオク・バーンシュタイン(eb1961)は言った。ティファがショウゴからダンスを教わっている時である。
「僕的には大人の女性のセクシーさではなく、今のティファらしさを生かした方がいいと思う。ソバカスだって、可愛いと思うし、年齢相応の女性らしさがあるからね。体型だって、まだ成長期だから、今しっかり食べておかなきゃ出るところも出ないだろう。男と女で考えるセクシーさは差が出るけどね」
椅子に逆に腰掛けて背もたれを抱き、真面目な顔して語るアリオク。
「あ、それからウェストラインが気になるなら、腰を紐で縛るベストを勧めるよ。‥‥あれは、男として脱がせる時を想像すると楽しいから」
一転して軽くなった彼の口調に、姉のラミエルは軽く拳骨を見舞う。
頭を押さえながらアリオクは、ダンスパートナーをショウゴとチェンジした。
●4
セクシーの勉強は日数を重ね、依頼期間5日目の午後。
アリオクとのデートからティファは帰ってきた。
「昼飯ご馳走になっちゃった」
「男が奢らせちゃダメでしょう!」
軽い調子のアリオクを姉が叱る。
アリオクはデートしながら自分が得意なナンパ方面の色々なことを彼女にご教授してきたのだ。
「じゃあ、次は私の番ね。究極セクシーにしてあげる」
エンジェルはティファの手を引っ張り、彼女の私室へとつれていく。手には着替えを入れた大きなバッグ。
「『いいよ』って言うまで入っちゃダメよ」
●5
「入っていいわよ」
エンジェルの声がして、冒険者達は部屋に入った。
そして驚いた。
「女王様とお呼び!!」
部屋の中、エンジェルの横で妖しいマスカレードを装着したティファが、素肌に密着した半裸に近い軟革鎧姿で叫ぶ。未発達である肢体を包みこむ露出度満点の軟革鎧が倒錯したセクシーさを演出していた。
「どう?」
「どう? じゃな〜い!!」
得意満面のエンジェルに思わず言い返したのはショウゴだった。
「そっちの方面のセクシーはマニア向けだから禁止!」
「えー、でもティファさんは結構乗り気だったのにぃ。それにこの格好で思いきりよく羞恥心を振り切るというのがこの衣装のテーマだし」
「私もこの格好なら自分を解放的に出来そうな気がして‥‥いいと思うんですけど」
「初心者はこんな格好で解放しちゃダメ!」
自信を持たすためにずっとティファを誉め続けていたショウゴは、初めてティファを叱った。
「‥‥すみません。じゃあ着替えますので皆さん、部屋から出てって下さい」
「そうしなさい」
冒険者達はぞろぞろと部屋を出る。
実はティファのあの格好、意外と似合っていたというのが、口には出せない皆の一致した意見だった。
●6
「皆さん、ありがとうございました。この5日間、皆さんに色々なことを勉強させていただき、私いくらか成長出来た気がします。でも自分はセクシーになれたでしょうか? 自分では実感が湧かないのですけど」
軽くロールがかかった黒髪に美しい化粧をしたティファは、冒険者に頭を深く下げながら礼を言った。
「自分自身に自信を持っていただければ、それだけで立派な『セクシー』な女性ですよ」
ショウゴは微笑みながら、答を返す。
陽が暮れかけていた。
「素敵になったあなたにプレゼントですよ」
ラミエルは刺繍入りのハンカチーフをティファに渡した。
「好きな相手に合わせるのも大事ですけど、無理はいけませんわよ。大事なのは自然体ですよ」
ティファはラミエルのハンカチを大事そうに受け取った。
フレアはクールな表情を崩さずに言う。
「あんさんが人によく見てもらう努力は伝わるもんやから自信持ちや。うちがあんさんの想い人のことを知らんかったら声かけとるで」
「はい。ありがとうございます」
黄昏の中、ヴルーロウはリュートベイルを爪弾き、彼女のための勇気の曲を1曲贈った。
冒険者達はティファと別れた。
彼女が想い人に告白したかどうかは解らない。
しかし、心配する事はないだろう、と冒険者達の全員が思っていた。