吊り橋の怪物

■ショートシナリオ


担当:言霊ワープロ

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月13日〜07月18日

リプレイ公開日:2004年07月19日

●オープニング

 めぼしい依頼を探して、冒険者ギルドの掲示板に眼を走らせる。
 すると、貼りだされたばかりらしいこんな依頼が見つかった。
『吊り橋をふさいでいる怪物の退治を求む!』
 興味を覚え、受付の女性にこの依頼の詳細を訊いてみる。
「ああ、この依頼はね、ここから少し離れたところにある村からの依頼で‥‥」
 彼女の語るところによると、依頼のあらましはこんなところだ。
 その村に普通に行くには、途中にある谷にかかった吊り橋を通ることになる。
 村には偏屈なウィザードが1人、住んでいた。彼は最近つまらないことで他の村人達といさかいを起こしてしまい、置き土産をして行方をくらませたのだが、その置き土産が問題だった。
 置いていったのは、1体のウッドゴーレム。
 魔力が付与されたその人間大の木像は吊り橋の真ん中に置かれ、渡る者全てに襲いかかった。おかげで誰も吊り橋を渡ることができない。
 村人達はそのゴーレムをどかそうと挑んだが、適わなかった。
 吊り橋を通らないで村を出入りすることは一応できるのだが、谷を迂回するために非常な遠回りになり、とても不便である。村人達はほとほと困ってしまった。
「‥‥で、ウッドゴーレムを除去して、橋を渡れるようにしてほしいということね」
 受け付けの彼女はそこまで喋ると手元にあるカップに口をつけた。
「難しい仕事になると思うわ。パーティを組んでも吊り橋は狭いから先頭の1人しか直接攻撃できないし、足場も不安定だから落ちないように気をつけて闘わないと。橋が燃えやすいことを考えると火を使うのも考えものね」
 ハーブ茶を飲み干して彼女は言った。
「この依頼は力だけではなく作戦も必要ね」

●今回の参加者

 ea1545 アンジェリーヌ・ピアーズ(21歳・♀・クレリック・エルフ・ノルマン王国)
 ea1594 アズエル・フォルド(24歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1747 荒巻 美影(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1987 ベイン・ヴァル(38歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea3738 円 巴(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4516 ファリス・ウォーレンサー(31歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea4791 ダージ・フレール(29歳・♂・ウィザード・シフール・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●1
 7月の暑い日。
 長い道のりを歩いてきた平原は岩が多くなってきたかと思うや、突然に地面が裂けて、長く深く切れた谷へと変わる。道はその谷を渡る1本の吊り橋になり、橋はその先にある村へと続くはずである。
 吊り橋の中央に愚直に立っている人影が、件の『ウッドゴーレム』。
「木で出来たゴーレムと格闘戦‥‥。なんだか故郷の木人を思い出します」
 岸から吊り橋中央を眺め、今は遠い華仙教大国を思いつつ、荒巻美影(ea1747)は呟く。
 置き去られたウッドゴーレム退治にやってきた冒険者達の5人が直射日光を避け、日陰で待っていた。
 吊り橋という限定された足場で戦うために二手に分かれた冒険者達は、一方がこの『正面班』となり、騎馬で谷を迂回して橋の村側からゴーレムを挟撃する者達が『後方班』となった。
「村人に迷惑をかける、そもそも設置した意図からしても美しくないウッドゴーレムは排除〜!」
 日陰で涼みながら小声で叫ぶのは、醜いものが嫌いなシフール、ダージ・フレール(ea4791)。
「ゴーレムは命令された事以外には臨機応変に対応出来ないはずだから、そこら辺に突破口があると思うのだがな」
 ベイン・ヴァル(ea1987)は赤毛を風に触らせながら、何処からか得た知識を言う。
「ねえ、向こう、着いたんじゃないでしょうか?」
「そろそろ、あちらも到着したようだ、やるか」
 向こう岸を見ていたアンジェリーヌ・ピアーズ(ea1545)が声をあげるのを聞き、橋のウッドゴーレムまで射線を通す為の高い足場を探していたアズエル・フォルド(ea1594)も大岩の上に乗りながら言う。
 向こう岸には、到着したばかりの2頭の馬から2人が下りているところが見える。
「では、私はこちらの準備が整っている旨、向こうに連絡してきますから」
 ダージはそう言い、羽をはばたかせると谷を渡る風に乗った。
 騎馬で迂回して半日はかかる谷も、飛んでショートカットしてしまえば時間はかからない。
 つまり、この吊り橋をふさいでいるウッドゴーレムに村人が被っている迷惑は相当なものなのだ。
 ベインは谷を飛んでいくダージの姿を眺めた。

●2
 ダージが村側の岸に着いた時、『後方班』の2人は早速の戦闘準備を始めていた。
「木偶人形が立ち往生か‥‥厄介な置き土産を残してくれたものだ‥‥」
 ピンク色の光に包まれたランディ・マクファーレン(ea1702)はまず自分のノーマルソードに、次いでダガーに『オーラパワー』を添加する。
「まあ、一種のめぐり合わせだな。今回の依頼に向いたメンバーが集まったことも」
 円巴(ea3738)はランディの手によって、自分の日本刀に同じ『オーラパワー』を付与してもらった。
 武器の強化は、ウッドゴーレムが魔法しか効かなかった場合の対策でもある。
「『正面班』も準備出来てますから、いつでもどうぞって」
「では行くぞ。こちらが先行だったな」
「ええ」
 ダージが告げると、ランディが言い、円がうなずいた。
 ランディを先頭にし、『後方班』3人は揺れる吊り橋へと進入する。

●3
 ウッドゴーレム。まるで荒削りの人間の彫像のようなその怪物は、ランディが橋に侵入した時にはまるで無視を決めこんでいる風に見えたが、中央まで近づいていくと怒りの感情を露わにするごとく突進してきた。
 ランディは重い棍のような腕の一撃をかろうじてダガーでそらし、その返し手でノーマルソードの刃を叩きこむ。橋の揺れを防ぐため、体さばきを最小限にしようとするのは彼本来の戦い方ではない。正直なところ、苦しい戦いになるように思えた。
 だが、やがて橋の反対側から荒巻達『正面班』が駆けつけてきた。
 『正面班』先頭である荒巻は十二形意拳の一、『羊守防』で身をかばいつつ、金属拳の一撃を打ちこむ。
 前後挟撃を受けたウッドゴーレムはどちらを正面にするべきかで戸惑ったようで、大振りな攻撃は更に大振りになる。
 その大振りの一撃をかろうじてかわしえなかったランディは肩口に一撃を受け、後方へ跳ね飛ばされた。
 それと入れ替わるように前に出た円の腰から居合の刃が鞘走る。銀閃に触れたゴーレムの右手が落ちた。
 前衛を円と交替した隙に、ランディは『オーラリカバー』で傷を治す。
 挟撃の目論みは当たったようだった。今のウッドゴーレムの戦う様はまるで1人で暴れているかのよう。防御もおろそかになり、いい的となっている。岸にある岩の上からアズエルが射ちこむ矢もまた1本と命中し、木材質を突き抜いている。
 荒巻が打ちこむ拳はウッドゴーレムの表面を少しずつ削り取る。だが振りまわされた敵の腕の直撃を受け、彼女は勢いのまま後方へと退がる。『羊守防』の効果はあるが痛いダメージだ。その荒巻と交替して前に出たベインは盾を前面に出した専守防衛の構えで、ウッドゴーレムと直接相対した。
 次々と重い一撃をライトシールドで受けとめるベイン。
 荒巻は『オーラリカバー』で自分の傷を治そうとしたが、それより早くアンジェリーヌが『リカバー』を詠唱し始めたので彼女に任せることにする。
 またアズエルが放った1本の矢がウッドゴーレムの頭部に突き刺さり、木材を裂く。
 と、ここまでなかなかの好調で来た冒険者達だが、事前に打ち合わせていたはずのことと現状が食い違っているのに気がついた。
 戦いながらウッドゴーレムを橋のたもとまで誘導し、そこでフィニッシュに移る、そういう作戦だったのだが、『正面班』も『後方班』もそれぞれが自分の方へ敵を誘導しようと後退しているのだ。
「両方が退いてどうする!」
「こっちへ誘導するんじゃないのか!?」
 『後方班』の円が戦いながら言うと『正面班』のベインが言い返した。
「とにかく双方が退いていては埒があかない! こちらの方が岸に近い! こちらに誘導するぞ!」
 円の言葉は有無を言わさず、村側へとウッドゴーレムを誘導することに決定する。
 『正面班』が戦いながら前進し、『後方班』がじりじりと後退する構図。
 戦いの中で時間が過ぎる。冒険者達はそれぞれの前衛と後衛を幾度も入れ替えた。
 腕を振りまわし孤軍奮闘するウッドゴーレムの方は疲れを知らない。しかし戦闘によるダメージの蓄積は傷の多さで一目瞭然だった。傷を直す仲間も手段もなく、人型のシルエットは崩れ始めている。
 傷ついたウッドゴーレムの身体はようやく村側の橋のたもとまで誘導されてきた。
 今こそがチャンスとアンジェリーヌが敵まで3mまで近づき『コアギュレイト』の詠唱に入る。攻撃を受け続けるベインを文字通り盾にして詠唱するアンジェリーヌの身体が白い光に包まれる。
 彼女の詠唱の完成と共にウッドゴーレムの動きが呪縛され、揺れる橋の上で人型はぎこちなく静止した。
「これでフィニッシュです」
 橋の上を飛んでいたダージは『アイスコフィン』の呪文を詠唱する。青い光に包まれた彼が唱えた呪文によって、凝固したウッドゴーレムの表面で白い凍結氷片が成長し、やがて身体全体を覆うほどの氷塊に育つ。
 村側の岸に近い吊り橋のたもと。1体のウッドゴーレムが氷棺の中に凍結封印されたことは、戦闘が終了したことを告げていた。
 冒険者達はそれぞれの武器を下ろして大きく息をつきながら、暑い太陽の下で汗をぬぐう。
 谷を渡る風が氷棺の表面を撫で、冷気として肌に届くのが心地よかった。

●4
 凍りついたウッドゴーレムは2頭の馬にロープで引かれ、岸まで運ばれた。
 冒険者達は夏の暑さに任せて氷が溶けていくのを眺めるが、完全に溶かしてはまた暴れだしてしまう。1時間近く経ち、全て溶けきらずに木の肌をかろうじて外気にさらし始めたところで、ランディがそこに油をまいた。
「‥‥燃えろ、木偶。薪の代わりにはしてやる」
 言って、火を放つ茶髪の騎士。
 火をあげるウッドゴーレム。加速する氷解よりも早く、炎は木材を炭化させていく。
「無垢なるかの者へ‥‥安らかな眠りを与えたまえ‥‥」
 それが生きていたかのように、炎に包まれるものに祈りを送るアンジェリーヌ。
 炎天下で棺に納まった人型を燃やすのは、火葬を連想させる光景だった。

●5
「いやぁ〜、あの怪物にはほとほと困っておったんじゃ。いやぁ〜、ありがとう」
 ウッドゴーレム退治の報告をしに村へ行った冒険者達は、ささやかながらも村人の歓待を受けた。
 そんな中でウッドゴーレムの仕組みに興味を持っていたアズエルは、その主人であったウィザードが住んでいた家に案内してくれと頼んだのだが、
「え、残ってないの!? なんにも!?」
 村人の言うことには、そのウィザードは持てるだけの家財道具は一切合切持ち出し、仕事の資料のような物も残していかなかったらしい。
「あちゃー、そうなるとあのゴーレムがなくなっちゃったのは惜しいなー。原型を留めたまま回収出来なかったのは痛いなー」
 こぼしたミルクは戻らない。悔しがるアズエルの背に7月の夕陽が落ちてきた。