秋の味覚でピクニック!
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:言の羽
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 71 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月18日〜09月24日
リプレイ公開日:2005年09月28日
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●オープニング
突然ですが、質問です。
あなたにとって、秋といえば‥‥?
「もっちろん、食欲の秋!!」
と言い切っちゃう女の子がここに一人。
おいしいご飯が何より大好きという彼女には、季節の旬を見逃すというもったいない事はできません。むしろ、見逃したら自分のお腹がかわいそうで仕方がありません。
「果物が熟して、茸が生えて、魚も肥えて。ああ‥‥いい、いいわっ! あたしのお腹が燃えているっ!!」
黙って立っていれば美人の枠に入るのに。
始終こんな調子なので、彼女に恋人はいません。彼女はめくるめくラヴよりも、素敵な食事を求めているのです。まあ、その素敵な食事を提供してくれるという殿方が現れれば、彼女は即行で唾をつけようとするでしょう。
そんなに食べてばかりいると太るのでは? ――と考える人もいるかもしれません。
しかし彼女は簡単には太りません。食べる前に動くからです。自分で食材を採りに行くのです。食材が料理となって自分の前に出されるまでじっと座って待っているなんて、彼女にはできないのです。
毒茸を見分ける事や、あっという間に魚を捕まえる事ばかり上手になって、肝心の料理はなぜか上達しないのですが。
――なぜでしょうねぇ?
◆
というわけで、所変わって冒険者ギルド。
「あたしのために、一緒に食材を探してくれて、料理も作ってくれる人を募集しまーすっ♪」
うふっ♪ と笑顔を振りまく彼女に、年上趣味の受付嬢ははばかることなく片眉を吊り上げました。
「‥‥私、二日酔いなんですよね。頭に響くから、あんまり大きな声を出さないでもらえます?」
「酒は飲んでも飲まれるなー!」
「‥‥‥‥くっ」
仕事に支障が出るほどお酒を飲んだ受付嬢。自業自得だとわかっているのか、歯を食いしばるだけで、以降は反論しようとはしませんでした。のろのろと羊皮紙と羽ペンを取り出し、依頼内容を書き付けていきます。
「えっとぉ、好き嫌いはないっていうか、むしろおいしければ何でもあり! ジャパンの料理も食べてみたいかなー」
さりげなく注文が付けられたその時でした。
ベキッ。
嫌な音がして、受付嬢の持つ羽ペンがありえない方向に曲がりました。
その日、何本もの羽ペンがお星様になりました。
●リプレイ本文
●まずは野営の準備、なんだけど
「‥‥なんで僕達のテントだけ、離して設置されるんです?」
リカルド・シャーウッド(ea2198)は婚約者アリア・バーンスレイ(ea0445)と並んで、二つのテントを見ていた。それらは他の人のテントとはかなり離れ、話し声も聞こえなさそうな所に追いやられている。
「だってリカルドさん、燻製作るって言ってたよね。どうせアリアさんと一緒に寝るんでしょ? 夜中に妙な声とか聞きたくないし!」
犯人はレイジュ・カザミ(ea0448)、カップル撲滅委員会イギリス支部長。これでも僕はかなり譲歩しているのだよ、と邪笑を浮かべる彼に、アリアは少々恐怖を覚えてリカルドの手をぎゅっと握る。それがまたレイジュの神経を逆撫でするわけだが。
「レイジュ殿、何もこんな所に来てまで撲滅せずともいいだろう」
尾花満(ea5322)が落ち着き払った態度で嗜める。レイジュも大人しくなるかと思いきや、満の横にフレイア・ヴォルフ(ea6557)が寄り添っている事に気づき、泣きながら走り出した。
「うわーん、満さんの馬鹿ー!」
「レイジュさん待ってくださいよ、俺も一緒に行きますから!」
罠を仕掛ける道具を引っさげ、ヲーク・シン(ea5984)がレイジュを追いかける。
その様子にライカ・カザミ(ea1168)は、弟の姿が消えた方向から目を離せずにいた。
●食材と料理1
肉班。
レイジュとヲークの保存食を餌に、フレイアが中心となって罠を設置、茂みに隠れていた。
「目指すは熊なんですけどね」
「ヲーク‥‥流石に熊は居ないと思うぞ」
そのうち兎が罠にかかった。思わず飛び出そうとするレイジュを、フレイアが止める。‥‥続いて二匹目がかかった。驚いたレイジュが目を丸くする。
「すごいね、フレイアさん。なんでわかったの?」
「勘だな。猟師としての勘さ」
兎数匹が手に入ったところで、食べる人数を考えれば足りるわけがない。小さな森にどこまで大型の動物がいるかはわからないが、依頼人と自分達のおなかのため、兎を手に森を練り歩く三人だった。
植物系及び魚班。
依頼人ティア・カーウェンは川の中を見据え、嬉しそうに釣り針を水中に沈めた。
「今の時期、ここの魚は子持ちなのよねぇ♪」
「ティアちゃん、見て見てー♪ こぉんなに採れたの〜☆」
もう一人嬉しそうなのはパラーリア・ゲラー(eb2257)。彼女が連れているドンキーの籠には、季節の果物や茸がどっさり詰め込まれている。ティアが確認したが、毒茸は混じっていないようだ。
「あらあら、こんなに食べきれるかしら」
食事時の演奏に備え竪琴の調子をみながらライカが首を傾げた。
料理番班。
満が石を集めてかまどを作り、リカルドが鍋を持って川へ水を汲みに行く。アリアは保存食をその辺にばら撒き、何か獲物が来ればいいなぁと思いながら、目的地に到着するまでに見つけた、食べられそうな草の選定を開始する。
本日のメニュー
アリア作成、木の実のスープ
レイジュ作成、魚肉入りサラダ
リカルド作成、兎肉の香草蒸し
同じく、魚の煮付け香草添え
ライカの奏でる静かな曲で、野外の食事は更に雰囲気あるものに仕上がった。料理を口へ運ぶ度、ティアは顔をくしゃくしゃにして幸せに浸る。
よし、明日も頑張ろう。
発泡酒入りのカップを傾けつつ、全員が更なる努力を心に決めた。
●それぞれの夜
食べた人の心に残る料理を作るには、愛情という名の隠し味が不可欠。だがそういった愛情とは別の、特別な愛情を注ぐ相手は唯一人。
自分のテントで作成中の燻製など忘れて、リカルドは婚約者のテントで彼女とふたりきりになっていた。最初は今日の料理の出来について談話するのみだったが、不意に、沈黙がその場を支配する。
互いに視線から逃れられない。
やがて意を決したように、リカルドがずいっと身を乗り出した。
「アリアさん」
「えっ、あ‥‥」
「そのまま、目を閉じてくださいね‥‥」
重なる二つの影。
その後の事はテントの中で行われ、月と星でさえも知らない。
焚き火の側で寝袋を広げてる満の所へ、フレイアが現れた。彼女も寝袋を持っている。
「隣、いいか?」
「ああ」
火に薪を放り込みながら満は答える。フレイアはふっと笑みをこぼすと、腰を下ろした。
そして、失敗したと思った。――近すぎる。
彼女の計画ではもう少し離れて座るはずだったのだ。こんなに密着して座るなど、そういうコトを要求しているようなものではないか。触れるか触れないかの微妙な距離。相手の気配を非常に強く感じざるをえない。というか恥ずかしい。
一方、満もどぎまぎしていた。愛しい女性が横にいるのに平静を保つなど至難の業。かといって距離をあければ、彼女への拒絶と受け取られかねない。それは絶対に避けたい。心は葛藤し、体は硬直したまま。気の利いた一言すら発することができない。ごくりと唾を飲み下す。
ぽすん。
「‥‥っ!?」
満の肩にかかる重み。そして温もり。
「‥‥ダ、ダメだろうか」
「‥‥い、いやそんなことは」
言葉なんて要らなかった。行動が全てを示していた。
「ティアさーん。俺じゃダメですかー?」
「そうねー。ヲークさん、確かに材料はいっぱい採ってきてくれたけど、ご飯は作ってくれなかったからぁ」
「そこをなんとか!」
「んー、でもやっぱり無理かもー」
フレイア提供のテント内では、ヲークが口説きモードに入っている。
最初の相手はティアだったが、残念なことに夕食の残りを夜食代わりにぱくつく彼女には、食事を作ってくれない男性に興味をもつ事などできない。やんわりと拒否されて終わりである。
ほんのわずかな時間うなだれたヲークだったが、すぐにきらりと目を光らせ、次のターゲットへ。
「パラーリアさん!」
「なぁにー?」
ほんのり酔って上機嫌のパラーリアは、ヲークに笑いかけてくれた。ところが彼女の膝に前足を乗せる彼女のペット、ボーダーコリーが彼を見据えている。唸りこそしないものの、口の周りの皮膚を器用に動かし、鋭い犬歯を彼に見せつけた。
川のほとりにはカザミ姉弟が立っていた。
――重々しい空気。昼間は常に笑っていたレイジュが、無表情で揺れる水面を瞳に映している。
「‥‥一言もおめでとうを言わなかった僕を、お姉ちゃんはどう思っているんだろうね」
呟く彼は、ライカに背を向けていた。姉の左手薬指に輝く指輪を見たくなかった。
ずっと一緒にいられるような気がしていたのだ。いつかお嫁に行くとしてもきっとそうだと、勝手に信じていた。だが現実は違う。この依頼が終われば結婚する為パリへ行くと、姉は言った。
「あなたが無理に笑っているのが気がかりよ」
「お姉ちゃんを悲しませる人は許せないから‥‥」
「この結婚はあたしが自分で決めた事だもの、後悔はしていないわ。あなたの気持ちを無理に曲げようとも思わない。あたしはもう悲しんではいないから大丈夫よ」
「‥‥ねえお姉ちゃん。離れていても家族の絆は切れないよね?」
「家族の絆なんて遠くにいても簡単には切れやしないわ」
ライカは柔らかく微笑み、レイジュの髪を撫でた。何度も、何度も。
そのうちレイジュの両目から、とめどなく熱い涙が溢れてきた。
「さよなら、僕のお姉ちゃん。新しい国で、今よりもずっと幸せになって‥‥」
叫ぶような嗚咽。
子供のように涙を流す弟を、姉は子供の頃のように強く抱きしめた。
●食材と料理2
肉班。
レイジュ、ヲーク、フレイアは、昨日捕まえた鹿の解体作業を開始する。あまり詳しく描写すると食欲がなくなるので、割愛。
そのかわりパラーリアが弓を持ち、ボーダーコリーと共同戦線を張る。
「兎はあっちに向かったみたいね。今すぐ行けば間に合いそうよ、音が教えてくれたわ」
ライカも今日は肉班である。サウンドワードで狩りを補助しているのだ。
「ありがとー♪ ほら、行くよ!」
「わんっ」
先回りして兎を迎え撃つべく、足音を忍ばせるもまだ未熟。なかなか捕まらないかもしれない。
魚班。
今日はティアと並んで満も糸を垂れている。昨夜はイギリス料理の技を盗んでいたらしいが、今夜はジャパンの味を披露してくれるだろう。
「ミソ?」
「ジャパンの調味料のひとつだ。この国に来る時、持参した」
「うわー、それは楽しみー♪」
「これで持参した分は最後だが、皆にジャパンの料理を味わってもらえれば本望だ」
未知の調味料は未知の味をもたらしてくれるはず。どんな料理が自分の前に運ばれてくるのか想像しつつ、これはたくさん釣らねばと奮起するティア。そしてそんなに楽しみにしてくれると作りがいがあると、顔をほころばせる満だった。
かまど前ではリカルドが生地を練っていた。袖をまくり、力を込める。時折生地を伸ばして、練り具合を確認している。
「こんなものかな? アリア、そっちはどうですか」
「‥‥うん、いい感じだよ」
果汁を煮詰めてソースを作る。解体作業が終了した肉を炙り焼きにして、このソースを絡めて食べるようだ。味見しただけでもこんなに美味しいのだ、焼きたての肉と一緒に食べたらどんなに舌を喜ばせてくれるだろう。
本日のメニュー
アリアとリカルド共同作成、鹿肉の炙り焼き果汁ソース
リカルド作成、魚の燻製
レイジュ作成、肉と野菜の煮込み
満作成、ジャパン風田舎鍋
リカルド作成、簡易フルーツパイ
昨夜と違い、ティアの食はなかなか進まなかった。
一口食べて考え込み、次の料理に手を出したかと思えばまた一口だけで、考え込む。
料理作成者は皆、困惑した。自分の料理は彼女の口に合わなかったのか。だが昨夜は喜んでもらえたのに、今夜はなぜ?
「素晴らしいっ♪」
全ての料理をつつき終わると、ようやく彼女は感想を述べた。
「一晩でこんなに深みが出るなんて、昨夜は何があったのかなー?」
にゅふふ、と小悪魔チックに一同の表情をチェックする。顔を赤らめうつむく者もいた。
「特にレイジュさん。何か吹っ切れた?」
「えっ‥‥」
「ん〜、さすがジャパンの料理はしみじみと味わい深いわぁ」
レイジュが顔を上げた時には、ティアはもう鍋料理を小脇に抱え、そ知らぬ顔をしていた。