【街角冒険者】しばわんことの密かな戦い

■ショートシナリオ


担当:言の羽

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:5人

サポート参加人数:5人

冒険期間:12月05日〜12月10日

リプレイ公開日:2006年12月13日

●オープニング

 江戸の街の一角に、老舗の呉服屋さんがあります。

 その呉服屋さんはなかなかに繁盛していて、お店の人は勿論、若旦那やその奥さんも大忙しです。若旦那と奥さんはお店が忙しい為に、目に入れても痛くないくらいに可愛がっている幼い一人娘をかまってあげる事がなかなかできずにいますが、少なくとも寂しくはありません。なぜならお店の入口に、一人娘にそっくりの、小さな愛らしいお人形が飾られているからです。
 そして、一人娘のほうも寂しくはありません。なぜなら、若旦那と奥さん――お父さんとお母さん、ついでに一緒に暮らしているお姉さんにそっくりの、これまた小さく愛らしいお人形を持っているからです。

 お互いにそっくりのお人形が、家族を繋いでいるのです。

 ◆

 事件は、木枯らしの吹くとある日に起きました。

 一人娘は庭に出て、地面に木の枝で絵を描いていました。縁側に並んで座っているお人形さん達に見せる為です。
「これが‥‥父様‥‥こっちが‥‥母様‥‥」
 どうやら皆のお顔を描いているようです。お人形さん達がすごいすごいと手を叩いて喜んでくれる絵を描けば、きっと本物のお父さんとお母さんも、お仕事が終わった後で同じように喜んでくれるはず――そう信じて、涼しいと言うには冷たすぎる風に身を震わせながら、一人娘はせっせと絵を描き続けました。
 しかしある時、かさりと落ち葉を踏む音がやけに大きく響いてきました。
 一人娘が曲げていた膝を伸ばして振り向くと、3軒向こうのおうちで飼われている犬のシロが、鍵をかけ忘れていた裏口から庭に入ってきたところでした。シロは一人娘の2倍くらいの大きさで、がっしりしていて力持ちで、大人しいようでいて悪戯好きのしばわんこで、このあたりではちょっと名の通った犬です。
 くるんと丸まった尻尾のシロはご近所の皆さんの人気者なのですが、笑いかけてくれる人に対してさえ極度の人見知りを発動させてしまう一人娘にしてみれば、シロも恐怖の対象以外の何ものでもありません。悲鳴をあげる事もできずに、ただ木の枝を握り締めたまま、ずりずりと後ずさりしていました。部屋に上がって奥に行けば誰かしらがいるはずと、硬くなった体に喝を入れて動こうとしたその瞬間。シロが凄い速さで一人娘めがけて駆け寄ってきたのです。思わず、一人娘はきつく目を閉じて両腕を頭に乗せてしゃがみこみました。
 ‥‥けれど、シロは彼女の所には来ませんでした。
 不思議に思った一人娘がそっと様子をうかがうと、シロは、一人娘の大切なお人形を3体ともくわえて、庭を出ていくところでした。

 種明かしをしましょう。お人形の中には乾燥させた木片や花弁が入っていて、いい香りがするようになっていたのです。
 わんこであるシロの鼻はとても優秀で、いい香りの出所がお人形であると突き止めました。そしてシロはお人形が気に入ったので、自分のおうちにお持ち帰りしたのです。

 なかなか一緒にいる事のできない家族の代わりに、いつも一緒にいてくれたお人形さん達。大事な大事なお人形さん達を連れて行かれてしまった一人娘は、お店のほうからお父さんとお母さんが慌てて飛んでくるほどに大きな声で、泣きはじめてしまったのでした。

●今回の参加者

 eb4721 セシリア・ティレット(26歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb7840 葛木 五十六(31歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb8219 瀞 蓮(38歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb9403 フワル・アールマティ(31歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb9597 神羅 十三郎(29歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

龍星 美星(ea0604)/ アル・アジット(ea8750)/ シルフィリア・ユピオーク(eb3525)/ ネム・シルファ(eb4902)/ 柚衛 秋人(eb5106

●リプレイ本文

●一人娘
「ほら小鈴。皆さんが人形を取り返してくれるんですって。よくお願いしなさい」
 お母さんに頭を下げさせられた一人娘は、名前を小鈴といいました。小鈴は知らない人が何人もいるので、お母さんの手が離れるやいなや、そのお母さんの背中に隠れ、とてもびくびくしていました。
「娘さんはおいくつですか?」
「あと少しで6歳になります。なのにこんな感じで‥‥ちゃんと店を継げるのかと、主人と一緒にやきもきしているんです」
 お母さんは小鈴の態度に皆が気を悪くしたのではと心配しましたが、葛木五十六(eb7840)お姉さんが笑顔で問いかけてくれば、そんな心配もすんなりと晴れてしまいました。何せ老舗の一人娘、お母さんが小鈴の妹か弟を生めば話は変わってくるのですが、そうでない限りは、小鈴がお婿さんをとって呉服屋の跡継ぎとなるのです。大勢のお客さんを相手にしてお店を切り盛りできるだけの度胸を持ってほしいというのが、お父さんとお母さんの願いでした。
「以前にも冒険者の方がいらしてくださったんですけどね。その時連れてこられた子犬は大丈夫だったんですよ。成犬は大きいから、食べられてしまうような気がして、怖く感じるのかしらねえ‥‥」
 そうなのです。小鈴は、子供のわんこになら、近付かれても平気なのです。シロが大人のわんこで自分よりも大きかったから怖がったのです。
 やがてお店の従業員さんが呼びに来て、お母さんはお店に戻らなくてはならなくなってしまいました。小鈴はいやいやをして離れようとしませんでしたが、1日だけお手伝いに来たシルフィリアお姉さんに抱かれて、何とかおさまりました。
 シルフィリアお姉さんだけではありません。美星お姉さんとネムお姉さんも、鼻をすする小鈴の頭を撫でてくれました。
(「やれやれ、思うたよりも賑やかな所帯になったようじゃな」)
 ――その様子に、瀞蓮(eb8219)お姉さんは少しだけ、呆れているようでしたが。でもお人形奪還の為になるというのなら、お手伝いに来てくれた人達の考えもあるだろうから、と、胸のうちにおさめるだけにとどめておいて、お茶をすすりました。
「でも犬さんにまで気に入られるなんて、すごく可愛くて良い香りのするお人形なんだろうなぁ‥‥」
 蓮の隣でお茶菓子をつついていたフワル・アールマティ(eb9403)お姉さんが夢見がちな表情で言いました。フワルお姉さんは可愛い物が大好きなので、まだ見ぬお人形さんに想いを馳せているのです。
「なんてったってアタシが作った香りアル。いい香りは犬にもわかるアルね♪」
 美星お姉さんがお胸を張って主張します。するとセシリア・ティレット(eb4721)お姉さんが、自分の道具袋から更に小さな袋を取り出して、机に乗せました。
「では、この香木を使って、また調香していただけるかしら」
 小さな袋からは小さな木の欠片が転がり出てきました。燃やせばいい香りが漂う、ちょっと高価な品物です。その質のよさを見抜いた美星お姉さんが、削ったり砕いたりする事になるかもしれないけれどそれでもいいのかと、セシリアお姉さんについ確認をとってしまうくらいには。
 セシリアお姉さんは、香木をそっと撫でながら答えました。
「ギルドの依頼を受けていて、お金以外に初めて頂いた品物なんです。確かに大切ではありますが‥‥皆さんの思いが詰まった人形も、それ以上に大事なんですよね」
 微笑む彼女は、彼女の信じる聖母様のように、体全体から慈しみの心が溢れていました。小鈴はシルフィリアお姉さんの膝から降りると、セシリアお姉さんの前で正座をし、ぺちょんとお辞儀をしました。ありがとうと思った時は、その気持ちをきちんと相手の人に伝えましょう――お母さんの教えを、小鈴は守ったのです。
「拙者もこの香り袋を提供するつもりです」
 五十六お姉さんも道具袋から小さな袋を取り出しました。いい香りのする、干した花が入った袋です。小鈴は五十六お姉さんのほうに向きを変え、またぺちょんとお辞儀をしました。
「小鈴殿、この香り袋はそこにいるシルフィリア殿から頂いたものなんですよ」
 素直にお辞儀をしてきた小鈴に、五十六お姉さんはそう教えてくれました。小鈴はまたまた向きを変えて、今度はシルフィリアお姉さんにぺちょんと頭を下げたのでした。

●新しいお人形
「では、新しい人形を作りましょうか」
「呉服屋さんから端ぎれをいただいてまいりましたわ」
 一応とはいえお裁縫の心得のある五十六お姉さんとセシリアお姉さんが、シロに連れて行かれたお人形さん達と同じタイプのお人形さんを作り始めたのを見て、小鈴はびくびくしながらも近寄っていきました。
「小鈴殿の人形を作っているんですよ」
「‥‥小鈴の‥‥」
「そう――痛っ!」
 ですが小鈴に気をとられた五十六お姉さんは、針を自分の指に刺してしまいました。すぐにじんわりと赤い血が染み出してきて、丸い玉を作りました。このままでは血だらけのお人形ができてしまうと、とりあえず五十六お姉さんは自分でその指をくわえました。
「ひょなひゃかひゅのひょ‥‥」
「え、何? 何て言ってるの?」
 シロの散歩コースを調べてきてくれた秋人お兄さんとお話をしていたフワルお姉さんが、五十六お姉さんの言葉になっていない言葉に、疑問符を撒き散らします。五十六お姉さんの怪我はたいした事はありませんでしたが、ネムお姉さんがくるくると器用に包帯を巻いてくれました。これでお人形が赤く染まる心配はなくなりました。
 セシリアお姉さんはというと、シルフィリアお姉さんからアドバイスを受けながら、ひと針ひと針丁寧に、しばわんこの人形を作っていました。
「わんわん‥‥」
「これはシロさんですよ。シロさんのお人形」
 興味を惹かれて近寄っていった小鈴でしたが、シロの名前を聞いた途端、暗い顔をして俯いてしまいました。
「大事なものをとられたのじゃ、無理もなかろう。じゃが‥‥」
 困ってしまったセシリアお姉さんに代わり、蓮お姉さんが小鈴の隣に座りました。蓮お姉さんは他の皆のように小鈴を撫でたり、笑いかけたりしようとはしませんでした。
「人形を取り返したいのじゃろう?」
 かわりに、お年寄りのようなその口調で、静かに問いかけてきました。俯いた小鈴が答えなくても、じっと待ちました。待っている間にも、小鈴のほうをじぃっと見てきました。俯いたままでも見られているとわかるほど、蓮お姉さんの視線は小鈴にびしばし突き刺さりました。
 やがて、観念した小鈴は小さく頷きました。すると蓮お姉さんも「うむ」と頷きました。
「ならば手伝うといい。そのほうが気も晴れよう」
「‥‥うん」
 小鈴は立ち上がると、そのまま部屋を出てどこかへ行ってしまいました。厠へ行ったにしては長過ぎないかと、探しに行こうとしたフワルお姉さんが立ち上がった時でした。先ほど切れたお茶菓子を乗せたお盆を、小鈴がどうにかこうにか運んできたのです。しかもお盆を置いたかと思うと、また出て行きました。今度はお茶のお代わり用のお湯を取りに行ったのです。
 針は使えなくても、自分なりのお手伝いを始めたのです。
「さて、こちらは任せておいてもよさそうじゃな‥‥。さて、シロは夕刻にもまた散歩に出かけるじゃろう。道筋と時間帯の確認に、飼い主殿の動きをうかがっていよう。秋人殿、ついてきてくれ」
 皆が考えた作戦の為に新しいお人形さんを作っているわけですが、短い依頼期間ではそう何体も作る事はできません。失敗はしないに限ります。そして失敗をしないためには入念な調査が必要なのです。
「あ、あたしもついてくねっ。シロちゃんのおうちを覗いて、お人形があるかどうか確認させてもらわないと」
 蓮お姉さんは立ち上がり、呼ばれた秋人お兄さんも立ち上がりました。廊下をすたすた進んでいく二人の後を、フワルお姉さんも急いで立ち上がり、追いかけていきました。
 お庭では調香のために美星お姉さんが作った焚き火から、白く細い煙が冬の高いお空に伸びていました。

 結局のところ、お人形さんは3体とも、シロのおうちの中に隠されている事がわかりました。ただし奥のほうも奥のほう、おまけに隅っこに大事に隠されている為、その気になって覗かなければ見付からないでしょう。

●シロ
 実を言うとシロの飼い主さん、小鈴とお母さんの言い分をはねのけたものの、気にはなっていたのです。悪戯好きなシロの事、もしかしたら‥‥?
 でも、一度あんな態度をとってしまった以上、もう後には引けません。「うちのシロが盗みなんてするはずがない」という自分が発した言葉を強く自分に言い聞かせて、シロのおうちの中にもお人形なんてあるはずがないと思い込む事にしていました。言い聞かせて思い込んで、それでどうしてもじっとしていられなくなった飼い主さんは、シロを連れて日課のお散歩へと出発したのでした。

 そんなわけで、作戦は開始されるのです。

 基本的には大人しく飼い主さんの左側を、飼い主さんの歩調に合わせててくてく歩くシロ。飼い主さんはそんなシロをちらちらと見下ろしています。内心どきどきばくばくなのが見てとれる為、すれ違う人達がちょっと怪訝な表情で飼い主さんを窺っていきます。飼い主さんにとっては、そういうすれ違う人達の様子でさえも、まるで全員が全員、シロを疑ってかかっているように思えて仕方ありません。
 一方シロは、飼い主さんの気持ちが理解できていません。見られている事はわかりますが、理由がわかりません。なんでだろう? ――わふ、とシロは飼い主さんの指先に自分の濡れた鼻先を押し付けました。
「シロ‥‥」
 飼い主さんは胸に温かいものが広がっていくのを感じました。
「そうだね、私がお前を信じなくてどうするんだって話だよね。私はお前がやってないって信じるよ、シロ」
 感動した飼い主さんの目尻に涙が溜まっていきます。飼い主さんはシロの首を抱きしめて、頭や背中を思い切り撫でてあげました。
 その時でした。シロのくりくりおめめがきらりーんと輝いたのは。
 脱兎の如く突撃していった‥‥というのも妙な表現ですが、まさしくそんな感じでした。シロは飼い主さんの優しい腕を振り払い、人の足と足の間をすり抜け、一目散に曲がり角を曲がりました。
 いいにおい、いいにおい。シロは鼻をわふわふさせました。かわいくて素敵な香りの漂うお人形が2体、甘味処のお外に置いてある長椅子の上に、並んで座っていたのです。
 またいいものみっけー。シロは嬉しくて、あぉんと鳴きました。
「あら、かわいいお人形」
 追いついた飼い主さんもつい顔をほころばせました。女の子のお人形と、わんこのお人形でした。
「それね、手作りなんだよ♪ ‥‥作ったのはあたしじゃないんだけどっ」
 人形と同じく長椅子に座っていたフワルお姉さんが言いました。太陽のように眩しい笑顔を向けられて、飼い主さんもつい笑顔を返してしまうのでした。
「このお人形、いい香りがするんですよ」
「‥‥まあ、ほんと」
「可愛いわんちゃん。わんちゃんもいい香りが好きですよねー?」
 会話の不自然さに飼い主さんが気づかないうちにと、セシリアお姉さんと五十六お姉さんが畳み掛けていきます。鼻先にお人形を寄せられたシロの尻尾は、ぴょこぴょこどころか、もうぶんぶんぶんぶんと左右に振れています。
「これも何かの縁じゃろう。一本どうじゃ?」
 あともう一押しとみた蓮お姉さんが、お持っていた団子の串を飼い主さんに差し出しました。いいんですかと言いつつ、しっかりと受け取る飼い主さん。一口食べて、あまりの美味しさにほっぺたが落ちそうになって、シロの事もお人形の事も、すべてを一瞬だけ、忘れてしまいました。
 そして‥‥シロはその瞬間を逃しませんでした。
 かぷっ!
 シロは鼻先に会った女の子のお人形をくわえると、今度は文字通りに脱兎の如く、お散歩してきた道を戻っていきました。

●お友達
 お団子の美味しさに感じた幸せがどこかへ吹き飛んでしまう程、飼い主さんは呆然として、その場に膝をついてしまいました。飼い主さんの目の前には、新しく手に入れたものと合わせて4体のお人形をおうちの前に並べて、わふわふと鼻を擦り付けては悦に浸るシロがいました。
「お、お前って子は‥‥なんて事を」
 小鈴とお母さんの言っていた事はまぎれもない事実だったのだと、飼い主さんはようやく思い知ったのです。あんなにきっぱりと否定してしまったのに――あまりにも申し訳なさすぎてどうしようもなくなった飼い主さんは、ぴんと伸ばした掌を振り上げました。
「それはいかんじゃろう」
 振り下ろされる前に止めたのは、蓮お姉さんでした。
「怒らないであげてください。シロちゃんはお人形を気に入っただけで‥‥お友達がほしかっただけなんだと思います。それにこちらとしましては、最初の3体が戻ってくるのであれば、それでいいんです」
 五十六お姉さんの言葉を聞いて、飼い主さんは複雑な気持ちになりました。何よりも、セシリアお姉さんとフワルお姉さんに連れられて、小鈴がそこに立っていたのですから。
 小鈴はシロの大きさに、まだびくびくしていました。でも大好きな人達の姿をかたどったお人形の為です。ぐっと堪えて、一歩を踏み出しました。
「‥‥返して、くれる‥‥?」
 シロの手が乗ったお人形に伸びていく、小さな手。くぅーんと鳴くシロの手を、飼い主さんがどけてくれました。
「お帰りなさい‥‥♪」
 3体のお人形は小鈴の腕の中に戻りました。シロの手の中には1体の人形が残りました。これは返さなくていいのかと尋ねてくる飼い主さんに、セシリアお姉さんはこう言いました。
「その女の子のお人形は、こちらの小鈴さんの姿を模したものです。シロさんのお友達にしてあげてください」
 それからフワルお姉さんもこう言いました。
「小鈴ちゃんにはこっち。シロちゃん人形だよ」
 お互いの姿をしたお人形をお互いが持つ事で、人形とだけでなく、本人達ともお友達になれる‥‥お姉さん達はそう考えたのです。怖々とシロちゃん人形を受け取る小鈴の様子からして、すぐにというのは恐らく無理でしょう。でもきっと、遠くない未来には。

「うわっ、これヨダレ!? 小鈴ちゃん、そんなにぎゅってしたらヨダレがついちゃうよ!?」
「‥‥もう遅いようじゃの」
「ちょっとお洗濯しないといけないですね」
「水は冷たいでしょうね‥‥いえ、人形をきれいにする為なら!」
 3軒分の帰り道。お姉さん達は色々気にしてくれましたが、小鈴はただただ、帰ってきたお人形さんと新しいお人形を抱きしめるのでした。