【鎌倉藩】盗賊殲滅

■ショートシナリオ


担当:言の羽

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:7 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月20日〜02月27日

リプレイ公開日:2008年03月11日

●オープニング

 冒険者ギルドから、鎌倉藩藩主の嫡子である細谷一康の元に届いた、彼の出した依頼の報告書。
 そこに記されていたのは様々な情報であり、今すぐ有効そうなものとそうでないものとの見極めすら難しいものもあった。その中でもひときわ一康の眉間に皺を寄せさせたのは、江戸側にある関所「朝比奈」付近に出没するという盗賊に関する情報だった。
 商人が何度も襲われているという事から、報告書が届く前から彼の耳にもその存在は聞こえていた。しかし、少し前に隠れ家を潰されたというのにもう活動を再開している事、被害規模も拡大中である事などは、まだ把握していなかった情報だ。その後独自に改めて調べてみれば、以前、別口の依頼でとある冒険者達がその盗賊と一戦交えていたと判明した。ある程度の場数を踏んだ冒険者達だったようだが、女頭領のすばしこさ、土地勘をもとにした刀と弓の二段構えによる戦法の対処に苦労していたというから、やはり油断のならない相手のようだ。
「雉谷。朝比奈は何と?」
「目の上のこぶであるとはいえ、関所としての業務に追われており、盗賊対処にはなかなか人員をまわせないとの事です」
 もうそろそろでようやく十六になろうかという一康には、出生時からの教育係として、雉谷長重がついている。その長重によれば、関所の守りを厳重にしている為、どうしても他のところが疎かになってしまいがちであるという。
「今まで以上に荷をよく調べ、納得がいかないと騒ぎ立てる者には説明をせねばならず‥‥当初に比べればだいぶ改善しておりますが、やはり苦しいようですな」
「そうですか‥‥」
 人材は有限である。偏りを作ればどうしても不備が出る。
 不備を完全になくす事は至難のわざだろう。問題は、それをどうやって軽減させるか、だ。
「盗賊は新しい隠れ家を作っているはずです。場所の検討はつきますか」
「朝比奈が被害者から逃走の方角などを聞き込んだ結果、一応絞り込めたようです。ですがそれでも、小山ひとつの調査が必要だとか」
「‥‥朝比奈の人員のみではその調査すらままならないという事ですね」
 この短期間で何度繰り返して読んだかわからない報告書をくるくると丸めると、一康はすっくと立ち上がった。
「出ます」
 短い、そしてはっきりとした声音だった。
「ならば私も」
「いいえ。雉谷、あなたは父の傍にいてください」
 後に続こうとする教育係を、その声音のままで制止する。
「向野への疑いが晴れたわけではありません。報告書にも気になる部分が幾つかありました。私は朝比奈の責務を増やす命を下した張本人として向かわねばなりませんが、代わりに父を護っていてもらいたいのです」
 向野――鎌倉藩の筆頭家老、向野靖春。彼の家の財布の紐が不思議なほどに硬い事や、不審な人物が出入りしている事も、前述の報告書には記されていた。取り越し苦労だった、とはまだ判断できない。
「よろしくお願いします」
「‥‥御意」
 立派に育ちつつある一康の真っ直ぐな眼差しに、長重は深く頭を垂れた。

 人材が不足している。つまりは、別のところに在る人材に頼らざるをえない。彼らが頼ったのは冒険者ギルドだった。
 細谷一康、事実上の初陣である。

●今回の参加者

 ea0548 闇目 幻十郎(44歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea1747 荒巻 美影(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4026 白井 鈴(32歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea9885 レイナス・フォルスティン(34歳・♂・侍・人間・エジプト)
 eb3496 本庄 太助(24歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 eb3525 シルフィリア・ユピオーク(30歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)
 eb9508 小鳥遊 郭之丞(29歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb9659 伊勢 誠一(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●朝比奈
 ただの冒険者が頭を下げても役人達は渋い顔をするだけ。しかし次期藩主が口添えするとなれば話は別だ。馬や子犬を一時的に預かってもらうだけでなく、幾人かは寝泊りの為に部屋を借りる事になった。シルフィリア・ユピオーク(eb3525)は片隅でいいと言ったが、それこそ関所にとっては世間体が悪いので、あまり広くはないが部屋が用意された。
「この前の事は配慮が足りなくてさ、本当に申し訳なかったと思ってるよ」
「俺もだ。すまない‥‥今回はちゃんと家に置いてきた」
 そのシルフィリアに加えレイナス・フォルスティン(ea9885)も、深々と頭を下げる。関所の責任者はしばらく黙っていたが、頭を下げたままの二人に根負けし、肩をすくめた。
「たった一度の失敗であっても、ようやく築けた信頼を一瞬で壊しかねません。重々お気をつけなさいますよう」
 一康の手前、事を大きくしたくないという思いもあったのだろうが、二人の胸のつかえをとるには十分だった。詫びとして、シルフィリアから酒二本が納められた。

 闇目幻十郎(ea0548)と荒巻美影(ea1747)の夫妻は、別室にてとある記録に目を通していた。その記録とは、盗賊に襲われた後、宿場町に戻るのではなく関所まで逃げてきた商人達の言葉を書き記したものだ。奪われた荷が列挙されたそれを見て、二人は荷車ごと奪われている場合が多い事に驚きを隠せないでいた。
「どうだ?」
 愛馬の世話を終えた本庄太助(eb3496)が顔を出す。
「格別に高価な代物は奪われていないようですね。そういった物を運ぶ商人はそもそも、躊躇なく護衛をつけるからだと思いますが」
「農作物や海産物も時折、被害にあっています。恐らく自分達の食料としているのでしょう」
 幻十郎が、続けて美影が、判明した事柄とそれに関する考察を付け加えると、太助は成る程と頷いた。
「奪う荷物が大きさ関係なしなら、隠れ家があるのはそういうのを運び込みやすいところだろうな。金子と金目の物だけってなら、奥のほうとか険しいところなんだが‥‥定石通りなら、護り易いか見つかりにくい場所で、かつ逃げやすい場所だ」
 太助の意見には夫婦も同意する。次は、具体的にはどのような地形になるか、だ。
 あれこれと意見や条件を出し合っていると、一康が役人から地図を借りてやってきた。
「件の小山は普段あまり人が入らないそうで、何年も前に作られたというこの地図がどれだけ役に立つかはわかりませんが‥‥」
「いえ、とても参考になります」
 一康の護衛を務める事になっている美影がにこりと微笑む。和やかな雰囲気の中で、彼らは探索地点を絞っていく。

 夜間、関が閉ざされると、忙しなく動いていた役人達もいくらか落ち着くようだった。伊勢誠一(eb9659)は酒を片手に、責任者の部屋を尋ねた。
「これ差し入れです、皆さんでどうぞ」
「おやおや。朝比奈の役人は酒飲みだとでも思われているのですかな」
 責任者の物言いは咎めるようなものではなく、口角も上がっている。シルフィリアからの酒は既に台所へ運び込まれていたが、まさか追加が来るとは思いもよらなかったのだろう。
 だが盗賊の情報を求めると、その口角もすぐに下がった。全て渡しただろうという顔だ。
 実際、これまでに捕らえられた一味から聞き出された情報は、既に一康へと伝えられている。彼らはなかなか口が堅く、隠れ家の位置など肝心な部分についてはまだ吐いていないが、一康は判明している分だけでも昼間のうちに冒険者へ伝えている。
 何を尋ねるか、決めておくべきだったか――誠一はわずかに目を開き、奥歯を噛み締める。だがそれも一瞬の事。すぐさまいつもの糸目に戻ると、責任者の持つ杯に酒を注いだ。

●小山
「もう少ししたら竹の子だらけになりそうだね」
 主である白井鈴(ea4026)のそんな言葉に、忍犬の龍丸は鼻を鳴らす事で返事をした。小山は竹だらけだった。
「ある程度の足跡は残るようだな」
「人が入らないって言ってたし、土が踏み固められていないからだと思うよ」
 自分の後ろにできる足跡に渋い顔をするレイナス。だが鈴は、それは盗賊側にも言える事だからと前向きに考えた。彼らとて足跡を隠す知恵はあるだろうが、そういったものを見つけるすべに長けた鈴と鼻の効く龍丸にとっては、大きな障害ではない。レイナスが周囲の変化に気を配り、太助が鈴の補助をする。自分達の足跡を隠しながらの探索であり、骨の折れる作業ではあったが、隠れ家の位置特定の為には重要な作業だった。
 しかし山の奥に進むにつれて、その知恵は発揮されなくなっているようだった。自分達の領域ではやはり気が緩むのか。おかげで、あからさまに怪しい洞穴を発見する事となった。 

「しかし解せぬ」
「何がだい」
 小鳥遊郭之丞(eb9508)は渋い顔で呟いた。前にいたシルフィリアがその呟きに反応する。
「私は宿場町に行っただろう? 町人だけでなく、足止めをくらっている商人の憂いも聞く事ができたわけだが――」
 後方の一康も、何事かと小走りでやってきて郭之丞の横に並ぶ。
「奪われた品々が町で売られたという話は聞けなかったのだ」
 売らなければ金にならないだろうに、と郭之丞は付け足した。
「おおっぴらに盗品だって言って売るような人はいないだろう?」
「それはそうなんだが、馴染みの商人以外に、物を売りに来る者がいないらしい」
 ばれないように小出しにしているのではない。そもそも売りに来ないのだ。とすれば、物それ自体を欲していたか、でなければ別口へ売っているか。
「もしや、あの話‥‥」
 一康が何かを思い出した様子で考え始める。
 どうかされましたかと尋ねようとした郭之丞が唇を開いたが、仕掛けられていた罠がシルフィリアによって丁度発見された事で、話はそこで止まってしまった。

 日が暮れ、全員が一旦関所へと戻った。
「さすがに奥は覗けなかったよ。入口に二人いたから」
 まずは鈴達から、見つけた洞穴の話。二人だけなら三人と一匹で対処可能だったかもしれないが、外から見えない所にまだ潜んでいるかもしれない。そう考えて、彼らはしばらく様子をうかがった後、引き返してきたという。
 すると幻十郎が首を傾げた。自分達も隠れ家らしき掘っ立て小屋を発見したというのだ。
「弓を持った青年が入っていくのを見ました」
「随分と軽装でしたし、猟師とは思えませんでしたね」
 盗賊の一味と見て間違いないだろう、と誠一が幻十郎の言葉に付け加える。
「隠れ家が複数あるのか?」
「そういう事だろうな」
 郭之丞が首を傾げた横でレイナスが頷いた。
「洞穴の位置は小山の麓に近いあたり。一方、小屋の位置はどちらかといえば山頂近くです。急な坂の多い小山だと聞いていたので、荷車ごと奪われている事案が多い事に疑問を抱いていましたが‥‥洞穴を倉庫にして、寝泊まりは小屋でしていると考えれば、納得がいきます」
 皆は畳の上に広げらた地図を覗き込む。位置を指先で示しながらの説明に、ある者は頷き、ある者は次の段階へと思考を進めていく。
「先日の隠れ家発覚から素早い立て直しが可能だったのは、元から複数の隠れ家を所持していたからという事ですか」
 そう述べた誠一の口ぶりに一康は不思議そうにしたが、別口の依頼で盗賊と対峙した冒険者のうちの一人なのだと説明を受けて納得したようだ。
「けど、そんなにたくさん管理できるものか? 作るにも守るにも物入りになるだろうし」
「人手は結構なものですよ。あの矢の数から考えるに」
「お金は? 奪ったものを売って作ったのかな?」
「それでは本末転倒でしょう。どこからか資金援助を受けているのかもしれません」
 太助のもっともな質問には誠一が苦い実体験で答え、鈴の率直な疑問には美影が意見を出す。
「では、やはり頭領は捕まえないとな。後ろに誰かいるのか、いるとすればそれは誰なのか、聞かねばなるまい」
「明日の早い時間に小屋へ向かいましょう。逃走経路に利用できそうな植物のツルなどは斬り捨ててきましたので、対処の時間を与えないように」
 刀の柄を撫でるレイナスの言に賛同した幻十郎が、一同を見渡す。「あたいも幾つか処置しておいたよ」とはシルフィリア。
「一康殿。私は盗賊殲滅を、そして一康殿の無事をここに誓おう!」
 使命感に燃える郭之丞が高らかに宣言する。それに対し一康は地図を手早く丸め、微笑んで頭を下げた。

●対
 晴天なれど、よく育った竹の林の中はやや薄暗い。時折そよぐ風で竹が揺れると、できた隙間から陽光が差し込んでくるものの、それは新たな影を生む。
 冒険者は小屋へと急ぐ。足跡を消す配慮をしなくてよいぶん、昨日よりも速く進める。近づくにつれ、否が応でも空気が緊迫感を帯びていく。作戦に沿った陣形をとりながらも歩みは止めず。
 一際強い風が吹き、ざざっと唸りを上げて竹がしなる。視界が開けた向こうに、たった今吹いた風でも飛ばされそうなボロ屋があった。
「何奴!」
 外れかけた引き戸の脇に居た男が、躊躇なく刀を抜く。こちらとて躊躇する必要はない。各々の手に得物を構えて走り出した。
 だが、男はその場を動かない。屋内から仲間が顔を出すのを待っているのだろうか。
 あと一歩で男に剣の先が届くという頃。しゅっ、と空気を貫く音が皆の耳に届く。前衛を自負する冒険者達は身構えたものの、戸口の奥から現れた矢の目標は、彼らではなかった。すぐに、肉に刃の突き刺さる痛みに叫ぶ声が響いた。
「かりんっ!?」
 戦いに流用できる傘を開いた誠一の後方、シルフィリアの隣で、彼女の愛犬かりんが首に主の荷物の入った風呂敷包みを巻いたまま、転がった。人を守る態勢はとっていたが、犬まで守れるようなものではなかったのだ。
「‥‥あたしさぁ、犬って嫌いなんだよね。一度懐いたらどこまでも愚かについてくだろ? 主人がどんな奴でもさ」
 続々と現れる新手の中に一人だけ女がいる。誠一は彼女の声に覚えがあった。彼女が一味の頭領だ。
 犬が嫌いというのは本当なのだろう。別の弓手が美影に添っていたログナーの足を掠める。幻十郎の風牙と鈴の龍丸には矢を射ないのは、どれだけ訓練されているかを察し、無駄矢になる事を避けたからか。
「なのに、こんだけ犬を引き連れて、一体何の用?」
「身に覚えがあろう。神妙に縄につけ」
 頭領とは対照的に犬を好む郭之丞の堪忍袋の緒は、ぷつりと切れる寸前だった。
「脱出口も塞がせて貰いましたし、すぐに後詰が来ますから、諦めて投降して貰いましょうか」
 そんな彼女を抑える為でもあるのか、余裕綽々を演じながら宣言する誠一に、しかし頭領は腹を抱えて笑い出す。
「脅そうってのかい。でもね、捕まったところでなんて事はないのさ。すぐ牢屋から出してもらえる手はずになってるんだよ。まあ、また引っ越さなきゃならないのはちょいと骨が折れるかねぇ」
「何という事‥‥役人と繋がっているのですか!」
 けらけら笑い続ける頭領の言に、一康もまた、怒りを露にした。それでようやく一康の存在に気づいた頭領は、目を細めてから再び笑い出した。
「次期藩主様じゃないか! こんな所までご苦労な事で」
 頭領の意識が一康に向いた。これ幸いと誠一は後ろのシルフィリアに視線を送るが、左右に首を振るばかり。巻物に込められた魔法を発動できないでいる。今回の作戦の要とされる魔法だったが、愛犬が深手を追った事で衝撃を受け乱れた精神では、発動可能なほどには念じきれないのだ。
 そうこうするうちに、場は戦闘へと流れ込んでいた。誰と繋がっているのか聞き出そうと、気ばかり逸る一康が刀を振るったからだった。

 盗賊の数は、頭領、刀持ち四人、弓使い六人の、計十一人。冒険者側は九人と、忍犬が二匹。単純計算では一対一が成り立つ数ではあるが、一康の護衛に美影と誠一の二人がまわっている以上、その分盗賊側に手の空く者が出る。彼らは弓使いと弓使いを狙う冒険者との間に立ち、壁となっている。各人の力量は冒険者のほうが上回っていても、複数を相手取るとなればその差は埋まってしまう。
「小手先の技で俺が倒せるとでもっ」
 ともすれば転ばせようとしてくる男の刀を受け、斬り返すレイナス。横では幻十郎も回避と攻撃の繰り返しだ。後方から狙ってくる弓使いには風牙を向かわせる。
「そっちよろしく!」
「まかせろっ」
 龍丸と共に、弓使いに肉薄した鈴、だが刀持ちに阻まれて回避の体勢に入る。その隙に距離をとろうとする弓使いへは太助の放つ矢が刺さるが、もう一人の弓兵は鈴を狙う。
 盾を持たない者達は、しかし刀捌きによって矢に対処できる。やや時間はかかるものの打ち倒せる事だろう。
 問題は、頭領とその後ろに並ぶ三人の弓使いに対する者達だ。手数の多い頭領を気絶させようと郭之丞が峰打ちを繰り返すも、鮮やかな身のこなしでかわされてしまう。攻撃してくる気のなさそうなのが気にかかる。
「今日は所により矢の雨の様ですな」
「二人とも、私にかまわず――」
「ご心配無く。私の流派は守りに秀でておりますから」
 三人のうち一人が素早く矢を番える事のできる弓使いは、一康ばかりを狙う。おかげで誠一も美影も大忙しだ。一康本人は頭領に斬りつけているが、やはり避けられている。
 ようやく巻物の発動に成功したシルフィリアが火の鳥となって手傷を負わせるも、武器を破壊するには到底及ばず。郭之丞とで頭領を挟み撃ちにしてはいるが、彼女自身が頭領と弓使いに挟まれてもいる。迷った彼女は、防ぎきれない三本目の矢を自らの体で受ける美影を見て、弓使いを減らす事に決めた。
「あらら。潮時かね」
「逃げるのか!」
 身を翻す頭領に、郭之丞が奥の手の出番と刀を放るも、それでは間に合わない。
 だが郭之丞が腹から出した声は、鈴と幻十郎の耳に届いた。忍犬に前を任せて忍法の詠唱に入る。
「脱出口は塞いだって言ったろっ」
 シルフィリアが叫ぶ。頭領を追いたいのは山々だが、そうすると弓使いに背中を晒す事になってしまう。
 頼みの綱は忍者二人の微塵隠れだが、鈴は不運にも失敗。幻十郎は成功したものの、移動後即座に行動ができないのではそこまでだ。
「またね」
 頭領の向かった先は、急すぎてツタなどの頼りなくば上り下りできそうもない坂。ツタは前日のうちに切ってある。そこを彼女は、跳んだ。
 身投げか。誰もがそう思った。だがすぐにそうではないと知る。馬の嘶きと、走り去る音が聞こえてきた。

 ◆

 手下達はあくまでも抵抗した為、半数が死亡した。もう半数は、泣きながら自害しようとして止められた。よんどころない事情があるようだ。
 通じている役人に関しても調査しなければならない事を考えると、頭領を逃がしてしまったのは痛い。急坂の下、馬で待機していたのはその役人がよこした者だろう。関所内部にも息のかかった者が紛れているはず。
 頭領達の目的はまだ不明だ。