ぱーっと盛り上がろう♪
 |
■ショートシナリオ&プロモート
担当:言の羽
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 71 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月24日〜08月30日
リプレイ公開日:2005年08月31日
|
●オープニング
「こんにちはー」
挨拶が降ってきて、作業途中だった受付嬢は顔を上げた。そこに立っていたのはなんだか見覚えのある青年だった。
「あら、あなたは確か――」
「先日はどうも。おかげさまで泉に住み着いたゴブリンは退治されまして、村には平和が戻ってきましたよ」
「それはそれはよかったですね。‥‥ええ、本当に」
青年はあっけらかんと感謝を述べたが、受付嬢が低い声で囁くと、知らず一歩後退した。
くすくす笑う受付嬢。影をまとった双眸からは近寄りがたい雰囲気があふれ出し、隣に座っていたもうひとりの受付嬢に全力逃走までさせた。
「で? 本日のご用件は?」
小首をかしげて、唇を歪めて。おそらくそれは、営業スマイル。
だが青年は、許してもらえたのだと、盛大な勘違いをした。
◆
青年の村では、この時期になると儀式が行われる。
村はずれの泉は湧き水でできており、規模は小さいが、水の精霊が住んでいると言われている。儀式の場所はこの泉。腕に覚えのある村人が周囲で曲を奏で、選ばれた踊り手が中央で舞う。それは水に困ることのないように願う、大事な行事なのだ。
今年もいざ儀式の準備をしようとしたところ、なんと泉にゴブリンが住み着いており、困った村人たちは青年をギルドによこし、退治依頼を出した。
依頼を受けた冒険者達の活躍によってゴブリンは見事退治され、なんとか儀式を行えるようになったのである。
◆
では何のために青年がもう一度ギルドまでやってきたのかというと、ただ感謝の言を伝えにきたわけではなく、新たな依頼の申し込みのためだ。
儀式の後にはお祭りが待っている。
1日目の夜に儀式、2日目に村全体でお祭り、となっているのだが、青年曰くお祭りを盛り上げる人員がほしいとのこと。
「ゴブリンのせいでけちがついてしまったんで、今年のお祭りは派手にいこうという話になっているんです。冒険者って、面白い特技を持っている人が多いんでしょう?」
「‥‥まあ、否定はしませんが」
「なら、そういうことでよろしくお願いしますね」
内心はどうあれ、仕事は全うするのが受付嬢の主義。あっという間に依頼書を作成すると、壁に掲示するために席を立つ。
しかし補足事項の有無の確認を忘れていたことに気づき、青年に尋ねた。
「うーん‥‥あ、そうそう。躍り手の白い肌を鑑賞したい人には、僕が村長の孫という立場を使って特等席を用意しますので」
人差し指を立てて、堂々と青年は宣言する。
青年の悲鳴が響き渡ったのは説明するまでもない。
●リプレイ本文
●1日目昼〜不届き者は成敗される
「水の精霊についての伝承が聞きたいと?」
「ああ、精霊の研究をしてる身としては興味があってな」
ロット・グレナム(ea0923)は村長を捕まえて聞き込みをしていた。
「ずっと昔から、あの泉には水の精霊が住むと言われておるよ」
「実際に会った人はいないのか?」
「おらん。少なくとも今、この村で暮らしている者のなかには」
「そうか‥‥」
「ひとつだけ話が伝わっておらんでもないが」
「何!? 村長、もっと詳しく――」
だがそこへ、風に乗って落ち着いた雰囲気の曲が流れてきた。
「音合わせが始まったようじゃのう」
本来村人達のみで奏でられるその曲だが、今回は特別に、演奏の腕に自信のあるケンイチ・ヤマモト(ea0760)、ヴァージニア・レヴィン(ea2765)、ユーリユーラス・リグリット(ea3071)――以下ユーリ――がその輪の中に加わっている。三人共演奏を生業としている事もあり、確かに腕前は村人達のそれとは一線を画している。
曲を知らない三人の為に、最初は何度も途中で止まったが、じきに流れるような旋律が村を包み込む。
村長もすっかり聞き惚れてしまい、先程の話の続きを聞けるような雰囲気ではなくなってしまった。
「では仮称ソノマさん‥‥いや、ソノマ君。いざパラダイスへ!」
一方ヲーク・シン(ea5984)は、依頼人である青年を連れ、とある民家の裏手に来ていた。
何か通じ合うものがあったのだろう。ヲークと青年は一目会った時から、互いを魂の親友と認識した。この民家が踊り手エルフレアの控え室になっている事は確認済みである。壁に小さな穴を開け、着替えを覗こうというのだ。
青年の事を『村長の孫』からとって『仮称ソノマ』と呼んだヲークに、青年がなぜか目を丸くする。
「あれ、僕、あなたに名前を教えてありましたっけ」
「へ?」
仮称ソノマの青年は、正式名称もソノマだった。この抗いようもない事実にヲークは何者かの意思を感じずにはいられない。
が、次の瞬間そんな些細な事はどうでもよくなった。目当ての女性がすぐそこでヴァージニアと談笑していたからだ。
「エルフレア、いつの間に外へ!?」
早速突撃するソノマ。民家で準備をしているはずの彼女がなぜ外に出ているのか。これに気づいたヲークの制止も耳に届かぬまま、彼女に抱きつこうとして――顔面から地面に飛び込む羽目になった。
「あっちゃぁ‥‥」
「まったく、本当に覗こうとしているなんてね。練習を抜け出してまで様子を見に来てよかったわ」
そんなソノマに呆れ、ヴァージニアが大仰に肩をすくめる。ソノマが飛びついたのは、ヴァージニアが魔法で作り出した幻影だった。エルフレアとの挨拶を済ませていた彼女による幻影は本物そっくりだが、動きもしなければ触る事もできない。その為ソノマは哀れ、土まみれになってしまった。
だがそこは受付嬢の猛攻にも懲りない彼の事。ならばやはり本物は民家の中に、とヴァージニアの隙をついて回れ右。ヲークの開けた覗き穴に向かう。
もちろん当のヲーク本人も流れに便乗し、改めて男の浪漫を遂行しようと振り向くと。
「女の敵を発見だね」
「天誅を下すであります♪」
チェルシー・ファリュウ(eb1155)と凍瞳院けると(eb0838)が、武器を携えて待ち構えていた。さすがに木剣、及び鞘に収められたダガーではあるが。
男二人は危険を察知するも、ヴァージニアに退路を塞がれているので逃げ場はない。チェルシーの渾身の一撃で叩き伏せられたヲークの目には、けるとがダガーの柄でソノマの腹部を容赦なく突いている様子が映った。
●1日目夜〜幻想に浸る刻
星空の下。光を受けて煌めく泉に、エルフレアが細く白い足首を沈める。
ぽろん。泉を囲んで座る村人達、その一人がリュートの弦をはじく。
続けて一斉に奏でられる幾種類もの楽器。竪琴、横笛、太鼓、簡単な造りの名も無い物まで。
曲は口伝、この儀式の為にこの村で生み出され、そして精霊に捧げられる。村人にまざる三人の冒険者によって、今年はいつになく曲に厚みがある。魔物に泉を穢されて機嫌を損ねているだろう精霊を宥める為の、今回だけの特別措置だという。
体をひねり、指先まで研ぎ澄まして、エルフレアは繊細な動きをもって精霊に願う。どうか水に困る事がありませんように、私達に貴女のご加護を。
彼女の纏う薄布の衣は水を吸い、半透明の膜となる。最初は彼女の動きにそって風をはらんでいたが、今は重くなり、肌にぴたりと張り付いている。遠目から眺めればまるで何も着ていないかのように見えるに違いない。
近くからでもそれなりに味がある。特等席にてかぶりつきの者達の様子から、理解してもらえると思う。
「ソノマ君ソノマ君、これはすごいんじゃないですか」
「ふっ。ヲークさんなら僕と共感してくれると信じていましたよ」
大きな声を出すとつまみ出されるので、二人はこそこそ会話している。鼻の下が伸びきっているのはお約束という事で。
(「いい曲だな〜。歌いたいな〜。踊りたいな〜。でも我慢我慢‥‥」)
邪な気持ちを抱く二人の隣では、ボルジャー・タックワイズ(ea3970)が純粋な衝動を懸命に抑えているた。エルフレアの肌には欠片も興味がなく、ただただ歌いたくて踊りたくて仕方がないようだ。せめて体を左右に揺らし、膝を叩いて拍子をとっている。
そのまた隣にはロットがいて、普通に曲と踊りを楽しみながら、ちらりとでも精霊が姿を見せやしないかと願っていた。
要するに特等席には、演奏を希望したケンイチ以外、男性冒険者が全員腰を下ろしていたのだ。
「何なのよ、皆してでれでれして‥‥」
これだから男ってやつは。
一般席のチェルシーをむかむかさせつつ、儀式は滞りなく終了した。
●2日目〜もう止められない
「レッディースエーンドジェントルメェン! 今日は昨日の儀式と打って変わって無礼講だ! 盛大に騒ぐようにっ!」
ビシィッ! と上空から村人達に大音声で呼びかけるロット。リトルフライでふわふわ浮いている彼は、なぜかちょっぴりヤケになっているような。
「ただーし、羽目を外しすぎるとどうなるかは保障しない! その辺は自己責任で頼むぞ!」
沸きあがる大歓声。祭りと聞いて集まってきた隣村の住人も一緒になって、勢いよく拳を天に掲げる。
「オーケイ、次はイベントの紹介だ。この後名の通った冒険者が参加する、武闘大会が開催される。ついでに俺も参加するんで、勇姿を見たい女の子は見学にどうぞ! でも、主催者のナンパには注意するように!」
上空を吹く風に、髪とローブがはためく。ロットが微笑を浮かべると、眼下で若い女の子の黄色い声があがった。満足げにうなずく彼だったが、しかし、すぐさま別の場所でも負けず劣らず黄色い声があがる。
「あなたのように美しい方に会えた‥‥それだけでこの村を訪れたかいがあるというものです」
つい今しがたまで竪琴を奏でていたケンイチが、聴衆の女の子の手を取って囁いている。真剣な表情で歯の浮くようなセリフを並べられて、その女の子は耳まで赤く染まって返事もできず、かわりに他の女の子達が私も言われてみた〜い♪ と悶えているのだ。
別に争っているわけではないのだが、どことなく悔しさを感じて、ロットは奥歯を噛みしめる。と、ユーリが菓子を頬張りながら太鼓を踏み鳴らしているのが見えた。シフールならではの荒業と能天気さに、にやりとほくそ笑むロット。すかさず降りていきユーリをつまみ上げると、ぺいっと地面に放り投げ、気を晴らしたのだった。
その頃主催者ヲークは、駿馬の被り物を装着、ギルスタリオンと名乗り、子供達の攻撃を受けていた。
「うわ〜、やーらーれーた〜」
「やったぁ! オレが倒したんだぞー!」
勝ち名乗りを上げながら、少年は躊躇う事なくギルスタリオンを足蹴にする。げしげしげしげし。
「え、なんでそんな痛い痛い痛いっ」
「面白いのであります。自分もやるのであります!」
「何するんですか、けるとさんまで!? うわっ、そこは洒落にならない‥‥あ、でも気持ちいいかも」
新しい快感に目覚めかけるというハプニングもあったが、そんなこんなでお祭りは最高潮の盛り上がりを見せていく。
チェルシーは果敢にボルジャーへ挑むも、すいすいかわされた後にライトメイスの一発をくらい、勝負あり。
けるとも参戦を試みるが、石に躓き顔を打ち、泣き出しかけたところでユーリからお菓子をもらい、その美味しさで頭がいっぱいになってしまった。
そして注目の対戦。パラの戦士ボルジャー対ギルスタリオン‥‥いや、ヲークは被り物を脱いでいる。ボルジャーも得物を偃月刀に変更。双方、真剣勝負だ。
「どちらも頑張ってくださぁい」
観衆の間からエルフレアの応援が聞こえてくる。昨夜の流れるような動きとは対照的に、のんびりとした口調で手を振っている。
ヴァージニアのリュートが奏でる曲により、場は更に盛り上がる。
「パラの戦士としての戦いを見せてやるぞ!!」
振り回される偃月刀。ヲークはそれをクレイモアで受け止める。刃同士がぶつかる音に、観衆もおおっ、とどよめいた。エルフレアなど手を叩いて喜び、ソノマは彼女の声援を受けられるのなら自分も参加しようかと考え始めている。
「さすがはボルジャーさん、いい剣筋です! では俺からもっ」
ぎぃんっ!
火花が散り、互いに間合いをとる。相手の一挙一動を見逃すまいと目を光らせていると――
「ライトニングサンダーボルト!」
空から雷が降ってきて、二人の間の地面が焦げた。
「ここで真打ちの登場だーっ」
自分で実況しながら上空に登場したロットに、またもや黄色い声が飛ぶ。
「ずるい! 私もリベンジするんだから!」
「自分も乱入するでありますよ〜」
次々乗り込んでくるチェルシーとけると‥‥って、まずは口を拭きなさい、けると。
こうして始まった大乱闘は、祭の素晴らしい催し物として村の歴史に刻まれることになったのだった。