【開拓村の大事件】巣穴をぶっ壊せ！
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■ショートシナリオ担当：香月ショウコ 対応レベル：1〜5ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：1 G 69 C 参加人数：10人 サポート参加人数：2人 冒険期間：01月29日〜02月03日 リプレイ公開日：2007年02月07日 |
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●オープニング
キエフの冒険者ギルドに駆け込んできた中年の男。その対応に出たギルド員は、とても懐かしい気分になった。「５回目だな」
男は、とある開拓村の住民だ。以前ギルドに持ち込まれた『大量の小規模なゴブリンの群れに村が襲われて困っているから退治してくれ』『ヒットアンドアウェイ（？）のゴブリンを排除してくれ』という依頼の依頼人でもある。その後にも幾つか依頼はあったが、ここのところまったく姿を見かけなくなっていた。その男が、またギルドにやって来たということは‥‥
「もう５回目とかそれどころの話じゃないんだ！ 村が、俺たちの村が！」
今までに無く必死な男の姿に、まず彼を一度落ち着かせてから、ギルド員は何があったのか尋ねた。
男の話によれば、ゴブリン退治の依頼を冒険者達が遂行した後や、以前そのゴブリン達が生活の本拠としているらしい洞窟を発見した前後は、ゴブリン達は目立った動きをしなかったのだという。このまま何事も起こらない平和な日々が続いていけば良いと村の皆が思っていた。
だが、ある日。
「とんでもない数のゴブリンが、村に押し寄せてきたんだ」
その数、目につく分だけ数えてみても３０以上。村人達が着の身着のまま何とか逃げ出した後、ゴブリン達は村を占拠した。その後幾らかのゴブリンはやって来た方へと帰っていったが、それでも村には何十とゴブリンが闊歩している。
・ ・ ・
ゴブリン達がこれほどの集団を組んだのは、おそらく奴らの巣穴と目される洞窟を放っておいたからだろう。昨年１１月に村の猟師が発見し、武装したゴブリン戦士を含んだそれらの退治をギルドに依頼したが、人数が集まらず放置されていた。結局暫らくは何も起こらなかったため、村人もまあいいかと思っていたのだったが。
ゴブリンの数は不明。とにかく多数。退治されず、必要なだけの食料を奪い去って村から逃げていたゴブリン達は洞窟内で悠々自適の生活をし、そして食料が無くなったから村へ総攻撃をかけた。それが事件の原因だと推測される。
「洞窟の広さは、奥まで入った者がいないから奥は分からんが、入り口はジャイアントがジャンプしてもギリギリ頭をぶつけない程度、幅は９人１０脚で入れるくらいだ」
その洞窟は明かりが無いため、奥まで進むのなら明かりは必要だろう。また、もし洞窟内にゴブリン達が貯め込んだ冒険者達に何か有益な物があれば、持ち帰っても構わない。
敵のホームグラウンドにて、村の命運のかかった殲滅戦。ゴブリンどもの巣穴をぶっ壊せ！
●今回の参加者
ea9563 チルレル・セゼル（29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国）eb7876 マクシーム・ボスホロフ（39歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国）
eb9405 クロエ・アズナヴール（33歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国）
eb9793 トーニャ・ロゾトワ（23歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国）
ec0019 イリーナ・ユマチェワ（22歳・♀・ナイト・エルフ・ロシア王国）
ec0764 ルナ・ルフェ（40歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国）
ec0854 ルイーザ・ベルディーニ（32歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国）
ec0860 ユーリィ・マーガッヅ（32歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国）
ec0865 クレア・サーディル（28歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国）
ec0886 クルト・ベッケンバウアー（29歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・フランク王国）
●サポート参加者
ルル・ルフェ（eb6842）／ ガラハド・ルフェ（eb6954）●リプレイ本文
「それにしても、すごい雪ですね」クロエ・アズナヴール（eb9405）の見上げる空からは降り止む様子のない雪。
「この分だと、足止めの罠も要らなかったかもな。まあ、念には念を入れて損は無いだろうが」
ズボズボと、深い雪の中を歩いてくるマクシーム・ボスホロフ（eb7876）が言う。彼はさっきまで、道に幾つかの罠を仕掛けていた。その後から、ルナ・ルフェ（ec0764）もやって来る。罠はルナがバーニングマップで調べた、ゴブリンの巣穴と村の間の道の最も効果的な場所を選んで配置した。
「村の奪回組の方は、少し到着が遅れてるらしい。急いで到着したところを挟み撃ちにあわせないように、さっさと片付けてしまおう。‥‥カルネア、もし取り逃がしたら頼むぞ」
主の呼ぶ声に、近くの木の上にいるホワイトイーグルは細く高く鳴いた。
「他には入り口らしきところは見当たりませんでした。しかし、かなり大きな洞窟ですね」
ゴブリンの出入り可能な別の出入り口が無いか調べに行っていたクレア・サーディル（ec0865）とクルト・ベッケンバウアー（ec0886）が戻ってくる。
「まあ、雪で埋まってなんかいたら見つけられないが、そうだったらゴブリンも出られないから問題無いな」
クレアとクルトをはじめ、今回のこの依頼に参加しているメンバーには依頼初参加の者が多い。彼ら彼女らは各々に、気持ちを奮い立たせたり、ひとつひとつの準備をしっかりと確認したり。
初めて依頼を請ける、というのは、多くの冒険者が通ってきた道だ。どれだけ鍛錬を積んでも、どれだけの年月を生きていても、初めて体験する出来事は不安なものだ。だからこそ彼らは武具を確認し、作戦を頭に叩き込み、必要な物資をバックパックに詰め込む。徹底的に。
だが人は慣れるものだ。高揚する気持ちと大きな不安に緊張しながら向かった冒険も、次第にいつもやっているからと準備を怠るようになってしまう。そして不本意な結果に行き着いてしまったり、最悪命を落としてしまったりする。
世界は生きている。世界は常に動いている。経験を積むことで得られる感覚は重要だ。だが、初心忘れるべからず。いつも全く新しいことに臨んでいるという気持ち・覚悟を無くしてはならない。
●突入開始
「間違いなく、とは言えないが、洞窟の強度は充分そうなのである」
ユーリィ・マーガッヅ（ec0860）がそんなことを調べていたのは、突入前にチルレル・セゼル（ea9563）が魔法を叩き込むにあたって天井が崩落する可能性があるかどうかを確かめるためだ。中のゴブリンを封じ込めるだけならひたすらドカドカ撃ち込んで入り口を崩してしまえばいいのだが、中から出てくる可能性もあるため完璧な解決とはならない。
「なら、大丈夫だね。皆準備はいいかい？ 鶏の目覚めの声にしちゃちょっとデカいけど、奴らを叩き起こすよ」
印を結び、詠唱を始めるチルレル。魔法の光に包まれた彼女の手から、大きな火球が放たれる。その火球は洞窟の中へと吸い込まれていって、直後、爆裂。
「あっづい！」
身を切る寒さのロシアにおいて贅沢な主張。
洞窟の頑丈さを調べた理由とは別の理由で失敗した。ファイヤーボムの魔法は、丈夫な狭い場所に撃ち込むとその爆発力が空いている空間へと溢れ出して来る。ファイヤーボムは洞窟内の壁に当たって爆発し本来の効果範囲を熱で覆った後、さらに奥へ。そして手前側、洞窟の外へも効果を及ぼす。その噴出してきた爆風が発動者のチルレルを襲ったのだった。
「大丈夫ですか！？ 急いでこれを‥‥」
ルナがリカバーポーションを渡そうと駆け寄った時、洞窟の中から騒がしい声が。突然塒にワケの分からない暖房を入れられたゴブリン達が、一体、また一体と現れたのだった。
「はっ！ 村人の生活を脅かすゴブリンども、この私の剣の錆となりなさい！」
トーニャ・ロゾトワ（eb9793）がクルスソードを振るってゴブリンの一体を切り裂く。村人の生活のため、と言いつつも生活費が稼ぎたい彼女、ゴブリンの血で剣が錆びてダメになったらかなりの痛手だ。だが、そうも言っていられない。わらわらと次のゴブリンが出てくる。
出てきたゴブリン達を、前衛達が片端から切り捨てていく。素手で襲い掛かってきたゴブリンの腕に一撃を放って怯ませた後、喉元に一撃を喰らわせるルイーザ・ベルディーニ（ec0854）。クロエは武装し明らかに他と様子の違うゴブリンの攻撃を盾で受け止め、魔力を帯びた名剣で反撃する。敵の纏っている鎧の効果もあってか一撃で葬ることは出来なかったが、体勢を崩したところにマクシームの放った矢が突き刺さり、ゴブリン戦士は戦意を無くし洞窟の中へ逃げていく。それと入れ違うように出てきたゴブリンは、クルトの投げたダーツが右目に突き刺さって痛みに倒れ悶える。
「この分だと、もう一発叩き込めるかね？」
味方が洞窟から充分に離れているのを確認してから、チルレルは再び詠唱を始める。彼女はまだ受け取ったポーションを使っていない。自分の受けるダメージはひとまず置いてもう一発撃ち込み、それから薬を飲むことにする。
放った魔法が途中でゴブリンに当たって味方が爆風に巻き込まれたりすることのないように、やや上方、洞窟の奥の天井を狙って放つ火球。それは狙い通りに着弾し、出てくるゴブリン、逃げていくゴブリンに真上から熱と衝撃を浴びせかける。
そして、自分にも。
「‥‥薬があるからまだいいけど、好んで取りたい戦術じゃないねぇ‥‥」
表に出てきた最後のゴブリンにイリーナ・ユマチェワ（ec0019）がナイフを突き立てて息の根を止めると、何とか大騒ぎは収まった。
「あとは、洞窟の中にいるゴブリン達であるな。まだ相当数いるようなのである」
ブレスセンサーの魔法で洞窟内の呼吸の数を数えたユーリィが、一同を促す。
●撃滅、ゴブリン洞窟
洞窟は外から見て思ったとおり、かなり広かった。通路自体の広さは奥に行くに連れほんの少しずつ狭まるが、天井の高さは変わらず。
「こりゃ、ゴブリンどもを追い出したら秘密基地に出来そうだね」
チルレルが言う。確かにそのとおりだ。ただし、使う前に少し掃除しなければならないが。ゴブリン達が溜めこんでいた物の多くが、火球の連発をくらって焼けたり砕けたりしている。
ルナやユーリィ、クルトが持つ明かりに照らされて、奥からゴブリン達が現れる。傷を負ったものもいれば無傷なものもいる。
マクシームが矢を放って開戦前に敵の力を削ぎ、半端な勢いで突っ込んできたゴブリンをクレアが斬り飛ばす。クロエとトーニャは厚い防御を担保に一歩も引かず、敵を間合いに引き込んでから一体一体確実に仕留めていく。対してルイーザは身の軽さを武器にゴブリンが手を出す前にその手を落とす。
「この短剣、持ってる者に不幸を呼ぶらしいけど‥‥今回不幸を呼び込まれたのはあんたたちだったねー♪」
負の魔力を帯びたダガー『クドラク』を示しながら言うルイーザ。しかし。
ゴーン、と一箇所横から突き出た岩壁に額を打つ。
「‥‥‥‥前言、撤回‥‥ん？」
気を取り直すルイーザの目に見えたのは、どこか横道へ逃げていくゴブリン達の姿。クレア達の報告では、外へ出る別の道は無かったはずだが。
ユーリィを連れ立って、その後を追うルイーザ。彼女が抜けた分前衛はやや右にシフトし、中盤を守るイリーナとクルトがサイドを抜けて後衛を襲おうとする、或いは逃げようとするゴブリンをシャットアウトする。
進行方向右側にあった細い道は、その後すぐに右に向きを変えた。そこを奇襲に気をつけながらルイーザとユーリィが進む。通路は数メートルまっすぐ伸びたあと、また右に曲がり、そして。
マクシームの後ろに出た。
「‥‥さっきの奴ら逃げた！？」
走って入り口へ向かうルイーザと、それに気づいたマクシーム。二人は逃げたゴブリンを追う。
外には２体のゴブリンが出ていた。手負いの１体はすぐ目の前だが、もう１体は随分遠くに逃げている。まず目の前のゴブリンにはルイーザが宝剣を投げつけて仕留める。
そしてもう１体には。
響く指笛、真っ白な雪原に浮かぶ黒い影。
「逃がすかよ。カルネア、ハント開始だ」
カルネアは時折急降下してゴブリンを焦らせながら、ある場所へと誘導していく。その場所とは、マクシームが仕掛けていた罠の場所。
作戦通りに罠に足をとられ、すっ転んだゴブリンをカルネアが大きな爪で掴む。そして上体を起こしたところをマクシームが放った矢が貫く。
ゴブリンの断末魔の叫びと共に、投げた宝剣を回収に走っていたルイーザが足を滑らせて転倒した。
その頃、ユーリィの探知によって最後のゴブリンと判明した手負いのゴブリン戦士にクロエが止めを刺し、巣穴の処理は完了した。
「これにてカーテンコール。運がなかったですね、ゴブリン君たち」
あと、ルイーザも。
●焼け落ちればよかったのに
ゴブリンの掃討終了後、冒険者達は手分けして洞窟内を探索した。ゴブリン達が溜め込んでいたものの中に、村の物が無いかどうか。あればそれは村に返すし、また村の物ではない何か目ぼしい物があればそれを貰って帰る。
「しかし、見事にガラクタばっかりであるな」
「もしくは、さっきの戦闘中にガラクタにしてしまったか、ですね」
焼いたり踏んだり蹴り飛ばしたり。
「‥‥これはまだ使えるか？」
クルトが見つけたのは、ゴブリンが使っていたであろうハンドアックス。大して価値のあるものではないが、要らなくなったらモンスターにぶん投げてしまうなど最後まで一応の使い道のある武器である。
そしてもう一つ。
「エチゴヤ印の販促エプロン‥‥」
何故こんなものがゴブリンの巣穴にあるのかは定かではないが、まあ、一応。これをつけてキエフを歩けば、きっと君も人気者。
とにかく、巣穴撃滅作戦は大成功で終了した。あとは村が無事に解放されたか、それだけが気がかりである。まあ、帰りの道すがら状況を見ることが出来る。その時、この依頼が全体で成功したのかどうか、分かるだろう。
