解放の話
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■ショートシナリオ
担当:香月ショウコ
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月16日〜04月23日
リプレイ公開日:2007年04月29日
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●オープニング
●蒸発の話
その日その時間の冒険者ギルドは、珍しく閑散としていた。依頼を見つけ準備に向かった冒険者、休憩をとりに奥へ引っ込んだギルド員、遠い外の喧騒。その日その時間の冒険者ギルドには、青いバンダナのギルド員と依頼人の女性、2人しかいなかった。
「ブラスという冒険者の男性を、探してほしいのです」
マーシャと名乗ったその女性は、そう依頼の内容を告げた。
「その冒険者とは、どんな関係なんだ?」
「恋人、です。‥‥少なくとも私は、そう思っています」
「思っている?」
「何をもって『恋人』とするのか、その一般的な定義は私には分かりません。私の思う『恋人』という言葉の定義には、彼は当てはまります。ですが彼にとっては‥‥世間一般にとっては、どうなのかは分かりません」
恋人の定義とは、また難しいものを持ってきたものだと。そうギルド員は心の中で苦笑して。
「探してほしいってことは、今は行方不明ってことなんだな?」
「はい。彼は、一月前にこのギルドで依頼を請けて、モンスター退治に向かいました。一週間ほどで帰って来る予定だと、彼は言っていました」
「だが、ブラスは帰ってこない」
「はい‥‥。ブラスと一緒に依頼を請けた人たちは戻って来ているのです。でもブラスだけは‥‥まさかと思って、その人たちに話を聞きに行きもしました。ですが、自分たちは全員揃って帰ってきたと。ブラスという冒険者は知らないと」
「‥‥‥‥」
考えられる可能性は幾つかある。ブラスはその依頼を請けず、ただ消えたという線。仲間に頼んで自分の存在をマーシャから隠した線、仲間たちは魔法で記憶を消されている、行方不明事件の犯人は仲間たちである。色々と推測は出来る。その依頼の報告書を見てみればある程度のことは分かるが、ギルドの報告書はおいそれと公開出来るものではない。
「分かった。こちらでも調べて依頼を出しておく。そのブラスという冒険者の詳細と、分かる範囲で彼が請けていたという依頼について教えてもらえるか」
「ブラスは、少しくすんだ金色の髪で、長さは肩にちょっと届かないくらいです。瞳は茶色。背は、私より頭一つ分ほど高いです。依頼は、キエフから2日ほど歩いた村で、大きな梟を退治する仕事だと聞いています。分かるのはそれくらいです」
●解放の話
冒険者、ブラス・シュヴァロフという人物は実在した。また、彼が請けたという依頼も存在し、彼が実際にその遂行に出発したことも判明した。
だが。
「報告書によれば、ブラスはジャイアントオウルとの戦闘中に首を飛ばされ死亡、か。とすると、一緒に行った冒険者に聞くしかないか」
ギルド員はブラスの仲間の冒険者を探そうと、やって来た冒険者たちに話を聞いていった。すると、偶然にも尋ねた8人目の人物が丁度ブラスと共に依頼を請けた冒険者だった。セリヴァンというウィザードの男。
「そうか‥‥マーシャさんが。やっぱり」
「やっぱり?」
「‥‥なあ。俺からギルドに一つ依頼を出してもいいだろうか?」
ギルド員の疑問に答えずに、セリヴァンは問いを返す。
「ん? ああ、構わないが、いったい」
「ブラスは行方不明。戻って来ることは無い。そのことをマーシャさんに伝え、納得させてほしい。二度とブラスのことを探さぬように」
「何?」
セリヴァンは周囲を見回すと、ギルド員を隅の方へと誘導した。そして、他に聞こえぬよう小さな声で。
「ブラスは生きている。依頼で向かった先の村で、今も生活している」
「だが、報告書では」
「死んだことにしておけと、そう提案したのは俺だ。虚偽の報告の罰は、俺が受ける」
セリヴァンは真剣な目で、ギルド員の目を見る。それは自らの信念を強く持ち、それの遂行のためには罪を犯すも厭わぬという強い意志を持った瞳だった。だが罪は罪。しかし、今は彼を咎めている場合ではない。まずはこの一連の出来事について、詳細を聞き出さなければならない。
「ブラスがマーシャさんのことを想っていたのは事実だ。だが、ブラスは時を重ねるに連れ疲れていった」
「マーシャと一緒にいることにか?」
「‥‥そうだな。結論としてはそうなる。マーシャさんに直接の原因があるわけではない。原因は彼女の周囲にある」
マーシャはキエフでもかなり上流の家庭に次女として生まれた。長女は早い時期に良家に嫁ぎ、彼女の両親は家を残すためマーシャに婿養子を迎えることを要望していた。マーシャも特段それに反発することもなく、将来の恋人にはそう頼もうと考えていた。
ブラスは、一般の家に生まれ普通に育ち、ある事件で親を亡くした。その後彼が師と仰ぐ冒険者に拾われ、今も冒険者としての道を歩んでいる。街でマーシャと出会い、恋に落ち、彼には婿養子になることへ別に抵抗は無く、そのまま結婚することになると本人達も含め誰もが思っていた。
「どう言えば、うまく伝わるだろうな‥‥マーシャさんの両親は、家を継ぐならそれなりの教養は欲しいと、ブラスに色々と注文をつけていた。ブラスは粗野な外見とは裏腹に意外と器用な男で、その注文を次から次にこなしていった。そんなブラスに気を良くしたマーシャさんの両親は、それならアレもコレもと、どんどん口を出すようになっていった。ブラスも文句一つ言わず従った。マーシャさんと結ばれる、そのことを目指して」
「その注文の嵐に、耐えられなくなった」
「‥‥例えとして正しいかは分からないが、ブラスは補給無しで敵と戦い続けたんだ。‥‥分かり辛いな。忘れてくれ。あいつは、報われない努力を続けていたんだ。これをすれば、結婚を認める。そう言われて始めた何かが、どんどん大きくなっていく。一つこなせば、そんなもの出来て当然だ、それが出来るならこれもやれ。それも終わったら、次。頑張れば頑張るほど、目の前の壁は高くなっていく。かと言って、止める選択は出来ない。マーシャさんが悲しむからと。マーシャさんには彼女のために努力するブラスの姿しか見えなかっただろう。ブラスは彼女に、彼女の親に起因する苦しみや不満など言えなかった。‥‥そんな状況で、この前の依頼が来た」
この前の依頼。ブラスが死んだとされた、ジャイアントオウル退治依頼。
「大怪我をしたブラスは、村で手当てを受けた。その手当てをした娘さんがブラスに惚れた。その娘さんの、気持ち以外を求めない想いが、ブラスには嬉しかったんだろう。想いのために報われない努力を続けるのと、求められずとも努力したくなるような想いを抱かれるのと。どちらが楽かって聞かれれば、楽なのは後者だろう」
つまり、ブラスはマーシャの前から逃げたということになる。それによる罪の意識や、妥協による今彼の傍にいる女性への申し訳なさ、そういったマイナス全てを背負って。
「キエフにいた頃のブラスは、もう壊れる直前だった。あの頃の様子をよく知ってる俺には、ここに戻らないという選択が、あいつのためには一番じゃないかと思った。マーシャさんに会わないのは、会えばきっとまた、あいつが無理を始めるだろうと思ったからだ」
「それは、お前の判断でか?」
「その時向こうに行った仲間たち全員での話の結果だ。もちろん、ブラスも含めて。‥‥そういった理由で、俺はギルドに依頼をする。マーシャさんに、ブラスを諦めさせてほしい」
●リプレイ本文
●キエフにて
まずマーシャに会いに行く。そして真相を話し、マーシャの考えを聞き、その上でブラスをどう思うか。それを知ろうと冒険者達は行動を開始した。
依頼を受ける旨を伝え、話を聞くためとキエフ市街にて待ち合わせを。その時間、その場所へ行くと、既にマーシャが待っているのをヴァイナ・レヴミール(eb0826)が見つけた。
「マーシャさん、ブラスさんを探したい、その真意は一体何なの? 家のため? それとも」
早速で悪いんだけど、と前置いてから、ビルワ(ec2074)が尋ねる。
「ブラスが、心配なんです。今あの人がどうしているのか、苦しい思いをしていないか‥‥家のことは、こう言うのも何ですがどうでもいい、関係無いんです。もしブラスが私の家に入ることで縛られるのを嫌だと言ったら、私が家を出ても良いと思っています。両親のことは心配ではありますから、あくまで最終手段ですけれど」
マーシャのその言葉に、アクエリア・ルティス(eb7789)は内心驚いた。貴族の家庭で子が親に意見するなど、そう出来ることではない。そのことはアクア自身も貴族の家の生まれだからよく分かる。にも拘らず、マーシャはブラスのために「家を出ても」と言う。それだけ愛しているのだろう、彼のことを。
だから。
「嬉しかったのね。ブラスが、婿養子として来てくれると言ってくれて。頑張ってくれて」
頷くマーシャ。
「でも、それがブラスを追い詰めてしまったのね‥‥」
「え?」
アクアの呟きに反応するマーシャ。アクアの中では、真相を話してしまって本当にいいものなのか迷いはある。だが、おそらくマーシャはブラスの負担について気付いていない部分が多い。
「ブラスさんは生きてい‥‥」
「生きているかもしれない。死んでいるかもしれない」
ケリー・レッドフォレスト(eb5286)が今回の事件の真相を話そうとしたところに、ヴァイナの言葉が割って入る。
「ブラスさんは今、ある村で生活しています。依頼で怪我を負ったけど、生きています」
突然のヴァイナの言葉に全体が困惑したのをマリエッタ・ミモザ(ec1110)が治め、話を戻す。そして、今回の事件の裏にある事の真相を話す。ブラスは依頼中に命を落としかけ、療養していた村である娘に想いを寄せられ、今はその娘と共にいること。
‥‥先のヴァイナの言葉は、ここに繋がる。ブラスが生きているのは事実だが、『マーシャを想うブラス』は死んでいるかもしれない。
「会いに行ったらどうかな? そして、自分の言葉で、思っていることを伝えたら」
「‥‥いえ。会いには行きません」
ケリーの言葉に目を伏せ、しばし考えてから。マーシャはそう言った。
「どうして? 彼が好きなんだろう? ブラスという男性が好きなんだろう? なら、自分の足で歩き自分の眼で見て、自分の意志でブラスを探し連れ戻せば良い」
ヴァイナはマーシャにそう語りかけ、シャリン・シャラン(eb3232)は一人思案する。真相を知ったマーシャが何を思い、どうするのかは彼女次第。ケリーやヴァイナが言うよう連れ戻しに行くのもアリだろうし、一緒にキエフを去るのもまあアリだろうし、彼を諦めるのもまたアリだろう。
「‥‥会いたくないとか、そういうわけではないのです。私がキエフを出るとなると、その事を両親にも言わなければなりません。そうすると、ブラスが今どういう状態なのかも、話さなければならなくなります。それを話さず、私が消えたら‥‥ブラスが行方不明になって一ヶ月、その空白の時間もありますから、両親は私が何も言わずに駆け落ちしたと思ってしまうと思います。ブラスのことが苦しいほど心配なのは本当です。でも同じように、両親が私のことを心配するのも苦しみだと思うのです。蔑ろには、出来ません。家を出るなら出るで、その時にはしっかり話をしてから、出るつもりですし」
そして、ブラスが戻って来た時、行方不明は依頼中の事故だったと、深く追求されないように両親に話す。それによってブラスが帰ってくる場所を守る。
「ただ‥‥代わりにメッセージを届けて頂けませんか? 『信じて待っている』と」
「それは、何としても伝えるけど‥‥」
「『待って』いて、いいの?」
マリエッタとビルワが、続けて問う。そこは、先の真相の説明の際、アクアの考えを交えてあえて触れなかった部分。ブラスが、マーシャの両親からの注文に苦しみ、耐えかねて消えたこと。
「今までと変わらず彼を待っているだけなら、いつかブラスさんはやつれて、それは冒険者として生きる者にとっては命に関わる問題になるわ。家を継ぐことになっても、また同じことが繰り返されるかもしれない」
「そんな‥‥ブラスが、そんなことを」
ビルワの言葉に驚くマーシャ。彼女の話を聞くと、彼女は何一つ、それら事実を知らなかったそうだ。両親が勉強を求めていたことは知っていたが。そして彼女は「無理しないでね」とブラスに。ブラスはそれに「大丈夫だ、心配ない」といつも応え。マーシャは、ブラスは本当に大丈夫だと信じていたのだ。
彼を信じすぎる女と、彼女に尽くしすぎる男。この事件の原因は、そこだろうか。
「今、あなたは選択の道を定める時なんだ。『このまま家に残りぬくぬくと幸せに育つか』。それとも『愛しい人を見つけ、一生を捧げ、一人の男性と幸せを共にするか』」
ヴァイナの問いかけにマーシャは口を開きかけ、しかし。
「答えは言わなくていい。俺には関係ないことだ」
そう撥ねられる。だが。
「いいえ。関係はあります。私は依頼人で、皆さんは依頼を受けた冒険者です。‥‥ブラスへ、メッセージを届けて頂けませんか」
まっすぐ見つめてくるマーシャに、ヴァイナはニヤリと笑みを浮かべ。マリエッタやシャリンも優しい瞳で小さく頷く。
「どんなメッセージを、届けようか?」
ケリーが尋ねる。
「『ありがとう。ずっと待っています。だから』‥‥だから、『どうか一緒に、同じ方向へ歩いて行きましょう。ゆっくり、一歩ずつ』」
●キエフより、ブラスのいる村へ
マーシャの言葉を聞く限り、姿を見る限り、彼女はもう大丈夫そうだ。もしブラスを無事に連れ帰ることが出来たら、その時には両親からの過度の教育には一緒に立ち向かうように、ケリーは話した。もしそれでも両親が変わらないなら、今回の事件について村の娘の件だけ隠して話し、やり過ぎを知らせればいいと。有望だとはいえ冒険者を婿にすることを考えられる親なのだから、きっと折れてくれるだろう。
「本当に潰れてしまう寸前まで、いえ、仲間が止めなかったら潰れてしまうまで努力を続ける‥‥辛くはなかったのかしら‥‥いえ、きっと辛くても頑張ったのかもしれないわね。あなたのために」
アクアの言葉に、マーシャは頬を涙で濡らして、深く頷いた。
次はブラスだ。マーシャの話から状況を推測すると、おそらくヴァイナが思っていたように弱かったからブラスは逃げたというよりは、下手に強かったがために潰されてしまったのだと考えられた。逆境や苦痛に耐えられなかったというより、生い立ちによる愛情の欠如に負けたのではないだろうか。セリヴァンが言っていた『補給無しに敵と戦い続けた』とは、マーシャや彼女の両親からの労い無く、ただ「頑張れ」だけだったからではないだろうか。
春の夜は更けていく。
冒険者たちのキャンプの周囲にはビルワに察知され返り討ちに遭った、彼らの保存食目当てに集まってきた野犬が数頭。
●ブラスのいる村で
探し人の名を告げると、村人はすぐに教えてくれた。小さな村ではとても目立つ、隻腕の男。ブラス・シュヴァロフ。失われた片腕は、退治されたジャイアントオウルが胃の中に収めていた。
ブラスの傍らには、おそらく件の村娘だろう女性が付き添っていた。ブラスに「ギルドからの依頼で、話を聞きたい」と話すと、ブラスは娘を家へと帰し、話の準備を整えた。
「依頼は‥‥マーシャから、か?」
「ええ。貴方を連れ戻すように言われたわ。でも私は貴方の味方よ。だから正直な気持ちを聞きたいの。貴方を連れ戻すっていう、依頼の結果は望まないわ。気持ちを聞ければそれでいいの」
アクアがそう尋ねると、ブラスは眼を閉じ、左腕を右の肋骨のあたりに当てて黙考する。‥‥まだ右腕があった頃の、腕を組む癖か何かの名残だろうか。
「マーシャさんは、あなたのことを信じてキエフで待っています」
「ブラスさんにとって、マーシャさんとさっきの彼女と、どちらと暮らすのが幸せなの? 幸せだったの?」
マリエッタが、ビルワが続けて問う。
「‥‥‥‥俺は、叶うものなら、キエフに戻れればいいと、そう思っている」
「叶うわよ。マーシャさんはあなたを責めてなんかいないわ」
シャリンがそう言うが、ブラスはゆっくり、小さく首を振る。
「マーシャさんのご両親のこと? それとも、あの娘さんのこと?」
「いや。マーシャの親のことは関係無い。あの子のことはしっかり考えなければならないことだが、それでもない」
「じゃあ、一体何がキミを悩ませているの?」
ケリーの問いに、ブラスは一呼吸置いて話す。
「一度彼女の前から逃げた俺に、彼女と共にいるだけの価値は無い。こんな腐れた男では、マーシャは」
「そんなことは関係無いだろう!」
怒鳴るヴァイナ。何事かと皆の視線が集まり。
「マーシャがどう思うか? そんなことは関係無い。今俺達がおまえに聞いているのは、『おまえが』マーシャを好きなのか嫌いなのか、愛しているのかそうでないのか。それだけだ」
「さっき、自分にマーシャさんと一緒にいる価値は無いって言いましたけど‥‥自分の価値は、自分ひとりで決められるものじゃないと思います。マーシャさんの前から逃げた過去が問題だというなら、その過去の過ちを払拭出来るこれからを送ればいいんじゃないですか?」
穏やかな微笑みのまま、マリエッタも続ける。
「マーシャは、一緒に歩いていこうって言ってたよ。ゆっくりでいいから、同じ方向に行こうって」
シャリンがマーシャからのメッセージを伝え。ブラスは、「ああ」と頷く。
「向こうに戻ってからは、求められたからといって何でも応じるのではなく、無理なことは無理と言わないと、マーシャさんと結婚するにしてもしないにしても、今後潰れることになるよ。気をつけて」
「おまえにはいつでもちゃんと帰る場所があるんだ。その時々に、しっかり自分の頭で考えて自分の足で行動しろ」
口々に、ブラスのこれからに助言と励ましの言葉を送る冒険者達。
そんな中で、一人。
マリエッタは、すぐそばの陰から何者かが走り去ったのに気付いて、その後を追いかけた。
見つけることは適わなかったが。
●キエフへの道のり
ブラスは、キエフへ戻ることを決めた。
冒険者達はキエフまで彼を送ろうかと提案したが、ブラスはそれを断った。曰く「まだやらなければならないことがある」。この村でブラスの命を救い、共に在り、彼を愛した女性への別れを告げること。このことについては全て自分の責任だから、何日かかっても自分の手で結論をつけてから帰る。ブラスははっきりとそう言った。迷いは無い。
キエフへの帰途につく冒険者達。ブラスは解放されたのか、解放されるのか。そもそも真の解放とは一体なんだったのか。それは誰にもわからない。