開拓村の事件〜襲撃〜
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■ショートシナリオ
担当:香月ショウコ
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月11日〜08月18日
リプレイ公開日:2006年08月20日
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●オープニング
ロシア王国国王、ウラジミール一世の命により、暗黒の中、深い森の開拓が行われていることは周知の事実。
キエフの冒険者ギルドに駆け込んできた中年の男が住む村も、森の開拓によってできた土地に開拓民が住み着いた、開拓村であった。
その男が話す依頼は、冒険者達が小耳を立てて聞く分には単純なモンスター退治のようだった。
「縄張りか何かに入っちまったのか分からねぇが、少し前から村にゴブリンが群れて襲って来るようになったんだ。今のところ村人に直接被害は出てねぇが、このままだと村の食料が無くなっちまう。だから、ゴブリンどもをとっちめてくれる冒険者を雇いてぇんだ」
後日、ギルドに張り出された依頼書。そこに書かれていた依頼の詳細は‥‥
退治する対象
ゴブリン
ゴブリンの数
とにかくたくさん(10以上100以下くらい)
その他・備考
一つの群れではないようで、小規模の群れが頻繁にやって来る。
ひとつの群れのゴブリンの数は5〜20程。
●リプレイ本文
●到着
村に到着した冒険者達は、思っていたより少ない数の村人達からの出迎えを受けた。村人の一人から聞いた話では、多くの村人が食料探しに村の外に出ているのだという。
「厳しい戦いになりそうだけど、何とかしなくちゃいけないわね。村の人も苦しいだろうし」
「だろうし〜」
村の閑散とした様子を眺めながら言うイェール・キャスター(eb0815)と、その言葉を真似るパルフェ。
崔璃花(eb5792)とローザ・ウラージェロ(eb5900)は、村人から襲撃がよくある方角や場所を聞いてまわった。見張りを行ったり罠を張ったりするにはそういったところを重点的に行えば大きな効果があがるし、迎撃する際の作戦も立てやすい。
・ ・ ・
心配されていた、到着直後、準備段階でのゴブリンの襲撃は無く、冒険者達は村で働ける人々にも協力を頼んで罠の設営を始めた。ゴブリンの数は不明、しかし間違いなく絶対的多数となると、冒険者達だけで戦うのは至難の業だ。力技で勝つのが難しいのなら、工夫で勝利する。
ローザは、一番頻繁にゴブリンがやって来る方角の開けたところに落とし穴の設置を始めた。村からスコップなどの道具を借りて、村の男衆を率いてひたすらに穴掘り。森に近いところには、襲撃を撃退し終えてから引っかかったゴブリンに止めをさせるよう深い穴を掘り、村の近く、最終防衛ラインとでも言えるところには村の子供達に浅い穴を幾つも掘ってもらう。こちらは迫ってきたゴブリンとの白兵戦時に、敵の姿勢を崩させるためのものだ。崔は襲撃が来るであろうポイントを重点的に数種の罠を仕掛けてまわる。定番で主戦力である落とし穴の他、襲撃時に素早く対応できるよう鳴子を仕掛ける。
一方、イェールは村人に対ゴブリンへの協力を依頼していた。小さいとはいえ村は村だ。少ない冒険者達だけではカバーし切れない。実際にゴブリンとの戦闘に加わらないまでも、昼夜において歩哨の仕事をしてもらうことによって素早い対応が可能になる。
村人達の協力を取り付け、イェールが歩哨に立つ村人達に呼子笛を渡したその時聞こえる声。
襲撃、第一波だ。
●襲撃
冒険者達が村に到着して一回目の襲撃は、崔が罠の設営を行っているところへ来た。その数7体。
「下がってください、ここは私が引き受けます!」
作業中の村人達を下がらせると、崔はひとりゴブリンたちの前に立ち塞がる。普段の戦闘ならこの後取り囲まれ、非常に苦しい戦いを強いられるのだが‥‥
ボスッ!
一体のゴブリンが先ほど完成したばかりの落とし穴のひとつに落ちる。その様子に驚いて一瞬歩を止めるゴブリンも数体。
ここが好機とばかり、最も手近なゴブリンに走り寄る崔。毒を仕込んだ腕での一撃を見舞い、行動不能に陥れる。
「大丈夫ですか!? 援護します!」
ローザとイェールも合流すると、二筋のウインドスラッシュでの攻撃が始まる。ここまで来れば完全に形勢逆転である。地の利、待ち伏せ、個々の戦闘力の差。崔の蛇毒手や落とし穴で動けないゴブリンを除き素早く片がつき、残ったゴブリンたちも情けをかける義理はないと止めがさされていく。
・ ・ ・
襲撃の後始末が終わると、冒険者達と村人達は落とし穴の追加の他に新たな障害物の作成を始めた。
柵を作ることが出来ればよかったが、それだけの時間は無いということで丸太を組んで作る簡易障害物をイェールが提案し、それを襲撃ポイントや夜間に女性や子供達に集まって寝泊りしてもらう建物の周囲に配置する。幸い、森を開拓して出来上がった村だから丸太には不便をしなかった。また、ただ丸太を置くだけでも障害物になり得る、と辺りが暗くなり作業に時間を割けなくなってからは落とし穴の手前に丸太を転がしておいた。丸太に躓く、或いは丸太を跨いで渡るとそのまま落とし穴へご案内といったところだ。
夜の帳が下りても、冒険者達にゆっくり休んでいる時間はない。襲撃はいつでも起こり得る。村人達の中で夜目が利く者たちにも加わってもらい、交替しつつ常時警戒態勢の中、夜は更けていく。
「ゴブリン、ゴブリン!」
パルフェが飛び回る中、イェールはトルネードのスクロールを取り出す。
落とし穴や障害物は夜の暗闇も手伝ってか大きな効果をあげているようだ。だが、それでも近づいてくるゴブリンの数は多い。それだけ襲撃してきた集団が大きいものだったのか。
「魔法の乱発はしたくないところだけど‥‥仕方ないわよね」
スクロールを広げ、トルネードの魔法を発動させるイェール。まとまって進撃してきたゴブリンたちが宙を舞う。
「村人達の怒りを味わいなさい!」
そう言って液体を撒き散らすローザ。それは村人が使ってくれと集めてくれた照明用の油。やって来たゴブリンたちがその油に足をとられたり、その上に空を飛んでいたゴブリンが戻ってきて大混乱。そしてさらに、松明から取った炎を放り込む。
・ ・ ・
「22、23、24っと」
まだ周囲は暗く、所々でまだ燃える炎の明かりで作業するローザと崔。一回目の襲撃と今回の襲撃で襲ってきたゴブリンの骸を一箇所に集めていたのだ。ローザは倒したゴブリンの数を把握するため、崔は骸を利用してゴブリンへ何らかの心理的ダメージを与えるため。ゴブリンの数は、二回の襲撃で合わせて24体だった。
「これを案山子のように立てておけば、効果があるかもしれません」
「心理的にっていうだけでなく、物理的に邪魔な障害物にもなりそうですね」
ということで、立てたり寝かしたままだったり、並べていく2人。あまり見ている方もやっている方も良い気分のすることではないが、今はどんな方法であっても効果がありそうなら実行する他ないのだ。
「さて、襲撃が来そうな気配も無いですし、見張りをお願いして私達は少し休みましょう。休める時に休みをとるのは重要です」
崔の言葉で2人は村の中へ戻っていく。もう少しすれば、空も白み始めるだろう。
●帰還
村での初日はその後朝が来るまで何事も無く過ぎ去った。二日目は昼前に一度大規模な襲撃が起こったが、冒険者達の活躍によって村の外の案山子が増えるだけの結果に終わった。
ローザは襲ってくるゴブリンを村人達が安心できる数まで減らそうと考えていたが、襲撃が何回も失敗に終わったり同属の成れの果てを見たりして戦意を失ったのか、見回りに出た際に時折遭遇する他はゴブリンの姿を見ることが無くなった。初日、二日目の襲撃の際に撃退した数と、見回りで出くわし退治した数を合わせて40体。危険が取り除かれたわけではないが、それでもこの村を襲っても良い事が無いと学習させたことで一定の成果はあがったと思われる。
開拓がひと段落ついたら、ぜひ招待してほしい。ローザの申入れを村人達は快諾した。村を救ってくれた冒険者達を、村人達は純粋にまた招待したいと思っていた。
(「どんな風に村が発展したか面しろ‥‥とても興味がある」)
招待される側の気持ちは純粋というにはやや疑わしいものだったが。