炎龍の咆哮〜灼熱の森〜
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■ショートシナリオ
担当:紅白達磨
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月31日〜02月05日
リプレイ公開日:2008年02月07日
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●オープニング
偵察部隊である一人の鎧騎士がグライダーに乗ってある森に向かっていた。
最近は、不審な事件が多発している。今まで見たこともない魔物が少数ではあるものの確認されており、実際の被害は少ないが地方では確実に混乱が広がっていた。
今この隊員が飛行している地域の住民からも、先日おかしな報告を受けていた。何でも人の姿をした化け物と森の中で出会い、連れていた仲間が一人食われたというものだ。ゴブリンやオークではないかと聞くと、明らかに違っていたと報告に来た住民は言っていたらしい。その話が本当かどうかはわからないが実際に住民が一人行方不明になっていることは事実であり、軍が一応捜索を行ったが結局見つからず仕舞いだった。やはり嘘をついているのではないかと後日報告に来た住民を訪れたところ、その住民の姿はなく、翌日森の中で変死体として発見された。下半身はなく、残されていた上半身の顔は何かに怯えるような目をしていたという。
「……なんだ?」
考えを巡らせていた内に鎧騎士は目的地に到着し、目を細めた。
山が燃えている、と先ほど住民から連絡があり、いつもならただの山火事として放っておくのだが先日の変死体の事件のこともあって住民は不安になっている。一応何が起こっているのか偵察するために来たのだが……。
なんだろう、ただの火事にしては違和感がある。
眼下には見渡す限りの広大な山々が広がり、人の気配はない。魔物すら住みつかないこんな山のど真ん中でなぜ火事が起こっているのだろうか。
上空から一帯の景色を見つめる鎧騎士。
その瞳が驚愕に揺れた。
「……サラマンダー!?」
燃え広がる炎の中心に見えるのは、炎々と揺れる炎を身にまとった八つの足の蜥蜴、『炎龍』の異名を持つ炎の精霊、サラマンダーだ。通常なら3メートルほどの大きさなのだが、周囲の火を吸収し膨れ上がった巨体は倍以上で、山の木から体の上部が飛び出ているほどの高さにまで達してる。もはや蜥蜴というより竜(ドラゴン)に近い。
炎の精霊の周囲にある可燃物が次々と発火している。サラマンダーは常に大量の熱と炎を周囲に放出しているおり、その熱量は人間でも火傷してしまうほどで木々や木の葉などあっという間に燃え上がってしまう。
『―――――――――――――!!』
人間の耳に届かない超音波の咆哮が周囲を覆う。
耳鳴りに襲われ、グライダーの制御を失いそうになり鎧騎士が慌ててバランスを取った。
改めて上空から眺めると、サラマンダーは北へと進んでいる。
地図が正しければ、この先には小さな村があったはずだ。
急いで村にこのことを知らせなければ、そう考えグライダーを走らせようとした時だ。突如、ぎろりと真っ赤な瞳がこちらを向いた。
再び唸りだされた激烈な咆哮と共に、直径15メートルの巨大な火球が生まれ、グライダー目掛けて撃ち出される。
鎧騎士はそれを見て、とっさに下へと回避した。頭上で火球が弾け、大爆発を起こす。
そのあまりの爆発の規模に強風が吹き荒れ、山々の木々が大きく仰け反った。
安堵の息を吐いたのも束の間、急いでこの場から脱出しようとして―――
グライダーは炎に包まれ、無残に砕け散った。
地面から噴き出したマグマの火がグライダーを下から飲み込こんだのだった。マグナブローと呼ばれる魔法である。
火だるまとなって落ちていくグライダー。それに乗っていた鎧騎士も炎に身を焼かれ、絶命している。一瞬のことに痛みすら感じなかったのはせめてもの救いだろう。
一方で、獲物を破壊しても尚収まらぬ怒りにサラマンダーは更に激しく咆えた。
グライダーの残骸を踏み潰して、サラマンダーは村のある北へ北へとゆっくりと、確実に進んでいった。
−参加者が砦到着時の概略地図−
△△◎△│△△ ↑北 △ 山
△△△┌┘△△ ─ 川
───┘▲▲△ ◎ 村
△△▲▲▲▲▲ ★ サラマンダー
△▲▲▲★▲▲ ▲ 火が及んでいる山
△△▲▲▲▲▲ ∴ 平地
△△△△▲△△ 凸 砦
△△∴∴∴∴∴
△∴∴∴∴凸∴
【目的】
≪サラマンダーの撃退、村に取り残された村人20名を無傷で保護、砦まで避難させること≫
【偵察隊による情報】
〈使用可能ゴーレム〉
バガン 2機
ゴーレムグライダー 10機
以上が砦に配備されているので自由に使用可能。
〈進行予定〉
12:00 参加者が砦に到着
19:00 サラマンダーが村の前にある川に接近
21:00 村に火が到達
24:00 サラマンダーが村に到着
〈グライダー搭乗者の注意事項〉
1、砦から村までは往復で1時間
2、グライダーは二人乗りのため、一度に避難させることが出来る人数は一人。
〈バガン搭乗者の注意事項〉
1、ゴーレムシップがないので砦を出撃後は徒歩でサラマンダーの元に向かうべし。
2、サラマンダー到着予定の川の地帯までは約2時間で移動可能
3、バガンの装甲なら火の中を歩いていくことは可能。しかし、サラマンダーの炎攻撃に何度も耐えられる強度はないので注意。またバガンは素材が石のため内部に大量の熱が溜まり、体力が消耗されると予想される。
〈補足〉
・サラマンダーは異常な興奮状態にあり、近づくものには容赦なく攻撃してくることから説得は難しいと思われる。
・川の両岸は木々がなく、開けている場所となっており、火の影響も少ない。また火の精霊であるサラマンダーの力を幾分か抑えることが可能なので直接戦闘するには絶好の場所である。しかし、時間が経ち、山の火が勢いを増すほどにサラマンダーの質量も増大するので注意。
・ゴーレム操縦者が不足している場合はNPC鎧騎士が5名、砦に待機しているので応援を頼むことが可能。鎧騎士の操縦スキルは専門1。
●リプレイ本文
●時刻【13:30】
濛々と立ち込める黒煙。燃え上がる炎。
それらに周囲を囲まれ、山の中に孤立してすでに数時間。突如発生した火の手に逃げる暇もなく、村人たちは完全に村に閉じ込められていた。
「‥‥ん?」
「どうした?」
悲痛な顔で広場に集まる村人たち。その中の一人が空に広がる黒煙の向こうで何か動くものを見つけた。
一人、また一人と顔を上げる村人たちの元に降りてきたのはグライダーに跨るリュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)と鳳レオン(eb4286)だった。
「皆様の救助に参りました! 落ちついて私たちの指示に従って下さい!」
「老人や女子供、怪我人が優先だ! すぐに移動するぞ!」
2人続き、4機のグライダーが広場に降りてくる。
村中に村人の歓喜の声が響き渡った。
到着した一行はすぐに行動を開始した。
リュドミラの後部座席に乗ってきたゾーラク・ピトゥーフ(eb6105)は医学のスキルを使い、怪我人の応急処置を行った。重症のものはいないようだが、軽度の火傷を負っているものには持参した薬草や包帯で手当てを行っていく。また彼女の判断で砦に運搬する村人の順番を決定した。老人や子供、怪我人を優先的とし、それに従ってリュドミラと鳳、その他砦の鎧騎士4名の操縦するグライダーによって砦へと村人たちを避難させていく。
一方、村人たちと入れ替わりでグライダーから降りたレオン・バーナード(ea8029)、グレイ・ドレイク(eb0884)の三人はすぐさま村の東にある川へと向かう。それとは別にアルファ・ベーテフィル(eb7851)と一人の鎧騎士が操縦するゴーレム、バガン2機は火の海の中を進軍、サラマンダーに気づかれないよう迂回しながら三人と同じポイントへと向かっていた。
●時刻【15:30】
「すまない‥‥遅れた」
「おい、大丈夫か?」
「‥‥ああ、なんとかな」
予定より三十分遅れてアルファの乗ったバガンが川に到着した。仲間たちの心配する声に返事を返すものの、その声にはあまり力が感じられない。それもそのはず、通常の鎧騎士がゴーレムをまともに操縦できる時間は1時間半。しかもこの一帯の山々は火の海と化している。石でできているバガンにはその熱が溜まっており、通常よりも相当の体力が削られているはずだ。
「急ごう、あまり時間がない」
アルファのその言葉に全員は作業を開始する。
彼らはある作戦を練っていた。サラマンダーが村に行くためには幅10メートルの川を通らなければならない。そこで一行は川を堰きとめ、サラマンダーが通る時に一気に堰を開放、川の水によってサラマンダーの勢いを削ごうと考えたのだ。怒り狂い、周囲の炎が相乗して巨大化しているサラマンダー。まともに戦っては被害は計り知れない。今の状況では近づくことする難しいだろう。しかし川の水をぶつければ、勝機は出るに違いない。
レオンとグレイが持ち前の武器で大木を伐採、それをバガンが運搬し急ごしらえの堰を作っていった。
●時刻【18:30】
昼は終わり、夜が訪れていた。
普通なら静寂と闇に包まれる時間なのだが、火の海と化したこの一帯ではそんなものは存在しない。夜の闇を引き裂くように燃える炎、その赤い手は空中を照らし、はるか向こうまで目にすることができる。
グリフォンに乗って、アシュレー・ウォルサム(ea0244)は堰を作っている仲間たちの元へと向かっていた。
村人の避難はほぼ終了している。プットアウトを使い、グライダーの避難経路上の火を消化したためグライダーたちは比較的低空を飛行することができた。老人や女性が多い今回の避難が滞りなく進んだのは彼の役割も大きい。またアシュレーは少しでもサラマンダーの勢いを弱めようとその進路上の火を消化した。どれほどの効果があったかはわからないが、ヤーヴェルの実を使用してMPを回復し、可能な限りの消火活動は行った。出来る限りの手を尽くした。後はサラマンダーが川を渡る時が勝負であった。
「‥‥あれは」
空中で止まり、アシュレーが視界の向こうに目を向けた。
紅に燃え上がる炎、その上でゆっくりと揺れる陽炎の向こう。
熱に歪む空間に映ったのは、他でもない炎の精霊、サラマンダーであった。
「‥‥そんな」
サラマンダーの川への到着予想時刻は19:00。予想より30分も早い。あの調子では5分もしない間に川に到達してしまう。堰が完成してまだ十分な時間が経っていない。今の水量ではサラマンダーの熱量に押され、効果があげられないだろう。また、堰の元に待機している仲間たちがここに到着するまで15分はかかる。
しばらくして、アシュレーはサラマンダー目掛けてグリフォンを走らせた。
作戦の失敗はすなわち自分たちの敗北を意味する。
「なんとしても時間を稼いでみせる!」
天鹿児弓を手にアシュレーは単身、巨大なサラマンダーと戦闘を開始したのだった。
●時刻【18:45】
無事避難できた村人は砦でゾーラクの治療を受けていた。
怪我が酷いものにはヒーリングポーションを使い、持ち前の医療スキルで治療していく。
「ゾーラクさん、様子はどうですか?」
「問題ないわ。喉をやられている人が多いけど、軽度のものよ。しばらくすれば直るはずよ」
「そうですか」
村人たち全員の無事を聞いてリュドミラがほっと胸を撫で下ろした。
「起きてもう大丈夫なの?」
「ええ、ご心配おかけしました。ゾーラクさんこそ顔色が優れませんよ。少し休んだほうが……」
「普段からこういう仕事ばかりしているから、もう慣れっこよ」
口ではそういうものの、ゾーラクの表情にも疲労が見て取れる。彼女はアシュレーから借りた空飛ぶ絨毯で、村に残った最後の村人たちをここまで運んできた。また四方を火の海に囲まれた村に留まり、最後まで村人たちの治療を行ってきたのだ。相当の疲労が溜まっているはずだ。
村人は全部で20人。それを6機のグライダーで運ぶのには3往復する必要があった。一往復するのにかかる時間は1時間でなかなか骨の折れる作業である。サラマンダーに会わないよう航路を大幅に迂回したため、時間も余計にかかってしまった。そのため、グライダーを操縦したリュドミラと鳳はつい先ほど仮眠を取っていたのだ。
鳳は特にグライダーに慣れていなかったため、「さ、さすがに疲れた。あとは任す……」という言葉を残した後、すぐに倒れてしまっていた。
「‥‥? なにやら騒がしいですね」
村人が何か騒いでいる。
異変に気づいた二人が村人たちの部屋へと向かうと、そこには鳳の姿があった。
「どうしたのです?」
「娘が、娘がいないんです!!」
腕や頭に包帯が巻かれている女性が悲鳴を上げる。
この女性はついさきほどまで気を失っていたのだが、今しがた意識を取り戻し、そして自分の娘がいないことに気づいたらしい。
「でも、徴税名簿ではあの村には20人の村人しかいないはず。私たちは確かに20人を避難させましたが」
そこまで言ってリュドミラはあることに気がついた。
「‥‥そういうことですか」
「ああ。税は名簿に登録されている人数に応じて徴収される。逆に言うなら名簿に登録されていない限り税は徴収されない。税を逃れるためにわざと登録の申請をしなかった、そうでしょう?」
鳳の言葉に女性はうな垂れたまま何も応えない。沈黙は肯定を表している。
「‥‥お願いです。娘を‥‥娘を助けてください‥‥」
泣き崩れる女性。
その女性で鳳はゆっくりと腰を下ろし、ハンカチを差し出した。
「あなたの娘さんは私が必ず助け出します。だから、安心してここでお待ちください」
数分後、一機のグライダーが砦から飛び出した。
操縦するのはリュドミラ、後部座席にいるのは鳳である。
空から降りる暗闇と下からの炎の紅い手がせめぎ合う狭間を二人は高速で進んでいく。休憩を取ったといえ、完全に体力が回復したわけではない。こうして操縦しているリュドミラもそう長くは操縦することはできない。
突如、視界の向こうのほうで大きな爆発音が鳴り響いた。すでにサラマンダーとの戦いは始まっているのだ。
「偵察隊の話ではサラマンダーとの戦いの場所となっている川の付近で人影らしきものを見たとのことです」
鳳がゆっくりと頷く。
この地域では徴税名簿への登録が義務付けられており、女性のした行為は法に反することだ。しかし、モンスターの跳梁と重税に苦み、日々の生活する満足に行えない人々にとっては仕方の無いことだったのかもしれない。それに法に反したからといって、ひとつの命を犠牲にするわけにはいかない。
「急ごう。か弱い女性を助けないのは俺の主義に反するからな」
「ふふっ、あなたらしいです」
●時刻【19:00】
一人戦闘を開始して30分。アシュレーは苦戦を強いられていた。
巨大化したサラマンダー。それに比例して周囲に発散される熱も増大している。20メートルは離れているアシュレーにもその熱は伝わってくるほどで、彼の放つ矢も体に到達する前に燃え尽きてしまう。
グリフォンに乗り、上空から地上のサラマンダーへと矢を放って足止めをしてきたが、自分とグリフォンの体力もそろそろ限界が近い。
『―――――――――――!!!』
サラマンダーが咆えた。
それと共にその眼前に生み出されるのは直径5メートルはあろうかという巨大な火の玉だ。
回避行動に移るアシュレー。しかし、サラマンダーとの距離が近すぎる。この距離では直撃はしなくとも被弾してしまう。
「くっ!」
完成した火の玉を放とうとサラマンダーが再び咆えた瞬間、大きな人影がその側面から飛び出した。それはアルファの操縦するバガンであった。
『バガンパ〜〜〜〜ンチ!!!』
疾走した勢いをつけたバガンの拳が炸裂。
続いて、よろめくサラマンダーへとアルファのバガンが地を蹴った。
『バガンキ〜〜〜〜〜ック!!』
その顔面へと叩き込まれた回し蹴りを受けて、サラマンダーの巨体が森の中へと倒れこんだ。
「無事ですか、アシュレーさん!?」
「もう一機のバガンがもうすぐ堰を開放する! それまでここで足止めするぞ!」
駆けつけてきたレオンとグレイも加わり、戦闘は再び開始された。
アシュレーが上空から注意を引き付けつつアルファのバガンが正面に、レオンとグレイが側面から隙を狙い攻撃しようとする。
だが―――
「‥‥ちっ!」
「ちくしょう、なんて熱量だ!」
レオンとグレイは近づけずにいた。もはや攻撃するしないの問題ではなく、この戦いの場にい続けられるかどうかであった。20メートル離れていても感じる炎、その巨体から発せられる怒りの業火は喉を、皮膚を、対峙するものの心を恐怖させた。
アシュレーのアイスコフィンで冷却した大木を左手に、砦から持ってきた斧を右手に持つバガン。それに搭乗するアルファもサラマンダーの一つ一つの動作に神経をすり減らされていく。
「来ました! 皆離れて!!」
上空からのアシュレーの声に地上にいる三人が一斉にその場から退避した。開放された堰からあふれ出た大量の水がこちらに近づいてきている。その場にいれば、サラマンダーもろとも鉄砲水に押し流されてしまうからだ。
三人は水を回避することに必死だった。だから仕方のないことであった。彼らの少し後方に一人の女の子がいたことに気づけなかったのは。
唯一それに気づいたアシュレーが慌てて向きを変えて駆け出そうとしたときだ。
その後方から高速で空を翔ける一つの物体が、女の子目指して一直線に向かっていった。
「くっ、間に合いません!!」
「構わない! このまま突っ込んでくれ!!」
リュドミラの言葉に鳳が大声で返す。
「でも‥‥!」
「後のことは俺がなんとかする! 急げ!!」
「‥‥わかりました!」
あふれ出た水がすぐそこにまで迫っていた。女の子がいる場所に到達するまでもう数秒もかからないだろう。
リュドミラは体中の力を振り絞り、グライダーを急降下させる。
「逃げろ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
地上からの声にリュドミラが後方へと目を向けた。その瞳に映ったのは自分に迫ってきている巨大な火の玉だった。
回避すべくリュドミラが上昇しようとした時、
「―――――!!」
声無き咆哮をあげて救命胴衣を手にした鳳がグライダーから飛び降り、鉄砲水が飲み込むよりも早く、女の子の体を抱え込み、
鳳たちの姿は巨大な炎に飲み込まれ、消えていった。
「てめぇ〜〜〜!!!」
激昂の声を上げながらレオン、グレイ、アルファ、アシュレーがサラマンダーへと迫った。
開放された水のおかげでサラマンダーの炎の勢いは弱まっていた。皮膚を焼く勢いは残されているが、接近できないほどのものではない。もう一機のバガンも駆けつけ、一行はサラマンダーへと着実にダメージを負わせていく。
「くたばれ、サラマンダー!!」
隙と見て、アルファの放った鉄の斧がサラマンダーの肩へと押し込まれる。斧にはグレイのオーラパワーが付与しており、その効果は絶大である。
『―――――――!!』
悲鳴を上げるサラマンダー。咆哮と共にその体からは再び大量の炎があふれ出した。
「うあああああっ!」
アルファの力が弱まった瞬間、その足元から噴出したマグマ、マグナブローがその体を飲み込み、アルファの乗るバガンを弾き飛ばす。
サラマンダーが追い討ちをかけようとすると、それよりも早くアシュレーのプットアウトが周囲の炎を打ち消した。リュドミラから受け取っていたソルフの実によってMPを回復したアシュレーの最後の魔法である。 それと同時にレオンとグレイがその足元に潜りこみ、渾身の力を込めた二人のスマッシュEXがサラマンダーの一本の足を切断した。
足を失い状態を崩したサラマンダーが起き上がろうと顔を上げる。
その首元へと瀕死のアルファが斧を振り上げ、
サラマンダーの頭は地面へと叩き落されたのだった。
なんとかサラマンダーを倒した四人の元に、しばらくしてリュドミラのグライダーがやってきた。後部座席には女の子と背中に酷い火傷を負った鳳が乗せられていた。サラマンダー対策として砲弾を砦から持ってきていたのだが、鳳たちを救助すべくあの後そちらに向かっていたのだ。鳳が庇ったおかげで女の子には軽傷はあるものの、大した外傷は見られなかった。
その後、砦に帰還した一行の前で女の子は無事母親と涙の再会を果たした。負傷したものたちはゾーラクの応急処置を受け、翌朝一行は砦を後にした。
その帰り道のこと、リュドミラの救助を持っている間、鳳が持っていたヒーリングポーションを重症の自分にではなく、女の子のために使ったということが明らかとなった。それを聞いて周りのものたちは笑い半分、感心半分で笑みを浮かべ、皆鳳に尊敬の念を送ったという。
かくして負傷者は出たものの、無事依頼は成功したのだった。