オークロードを撃破せよ
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■ショートシナリオ
担当:紅白達磨
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月13日〜12月18日
リプレイ公開日:2007年12月22日
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●オープニング
メイの国では現在、ゴーレム兵器の導入が急ピッチで進められている。数十年前のバの国の侵攻以来、メイはカオスの勢力とバの国という二つの巨大な勢力と敵対することになった。特にカオスニアンの率いる恐獣という大型のモンスターは強敵であり、よほどの者でない限り生身で立ち向かうことは不可能だ。だからこそ、ゴーレム兵器が必要不可欠なのである。
ゴーレムの製造に必要なもの、それはゴーレムの体となる素材だ。国の政策の下、鉱山でとれた石や鉄、銀、金などの鉱物は馬車などに積まれ、都市へと運び込まれている。国から派遣された騎士たちがその輸送を行うこともあれば、国が冒険ギルドに依頼し、冒険者たちが輸送することもあるし、その形態は様々だ。最近では、船を使い、海からの輸送も考えられているが、その目途はまだたっていない。現在は陸路による輸送が中心である。
だが、ここで問題が生じていた。海とは違い、陸での輸送の場合、その経路は限られており、馬車は必然的に街道の上を通ることになる。現在、メイの国のあちこちで小規模ではあるが、カオスの勢力が出没しており、それに誘発されるようにモンスターたちの活動も活発になっている。そのため、近頃は街道もけして安全ではなく、モンスターやカオスの勢力に備えなければならない状況になっており、街道が破損していた場合には、進路を変更して、険しい山道を抜けていかなければならないということも頻繁に起こっている。
このような状況に対して、メイの国では、街道の舗装と整備、そして街道上に住み着いたモンスターたちの掃討が行われており、冒険者ギルドにもその依頼がたびたび見られるようになった。今回、国から渡された依頼は以下の通りである。
『ゴーレムの素材である鉄を積んだ馬車が通る予定であった街道が、カオスの勢力の攻撃により破壊され、ある山岳地帯を通ることになった。しかし、その山岳地帯にはオークロード率いるオークやゴブリンたちが住み着いており、その数は100とも200とも言われている。モンスターたちの中心になっているのは上位種のオークロードであり、そいつを倒せば他のモンスターも逃げていくはずだ。オークロードのいる山は特定しており、ある山頂の廃村にいることがわかっている。なんとかオークロードを倒してくれ』
‖‖‖‖‖‖ 洞 ★ 廃村(オ−クロード)
‖‖‖‖■■■■‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖ ■ 山道
‖‖■■■■‖‖■■■■■■■■──▲‖‖ ▲ 岩壁に接した危険な細道
‖‖■■‖‖‖‖‖■■■■ ★ ‖‖▲▲‖ ‖ 岩壁
‖‖■■‖‖‖‖‖■■■■■■■‖‖‖▲‖ ○ 森
‖‖■‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖‖▲▲‖ 洞 洞窟
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‖‖■──■■■■■■■■■■■■○○○○‖▲‖
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■‖‖ 洞‖‖‖‖‖■■■■■■■■‖‖
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・目的はオークロードの撃破、もしくはモンスター全ての掃討
・討伐期間は3日、3日以内に撃破できない場合は依頼失敗となる
・冒険者で構成された10人1パーティーが参加PCたち以外に5チーム参加予定
・他のパーティーは森を抜け、そのまま左へ進み山道を登り、廃村を目指す予定
・地図上にある洞窟は互いにつながっており、山の向こうの洞窟から高さ20メートルの岩壁を登ることが出 来ればすぐに廃村に出られる。ただし、洞窟内がどうなっているかは不明
・森の中に半数以上のオークやゴブリンが潜伏している
・他のパーティーに協力を要請することも可能。ただし、成功報酬は減少。
・▲は細く、幅は5メートル程度。岩壁に接しているため落下に注意
●リプレイ本文
一行は自分たちとは別に参加している冒険者たちに協力を要請した。依頼の期限はわずか3日。数において圧倒的に劣っているこちらが勝つためには、奇襲によってモンスターたちの親玉であるオークロードを倒すしかない。作戦は一日目の夜中に一行が洞窟を通り、二日目の朝までに廃村の背後に回る。また、朝が来ると同時に待機してもらっていた冒険者が森へと突入、モンスターたちの注意を引き、その間に一行が岩壁を登り、手薄になった廃村へ進入、一気にオークロードを撃破するというものであった。簡単に調べてみたところ、洞窟内部はペガサスが通れる大きさだ。一行は夜を待ち、準備を終えると洞窟へと入っていった。
先頭はグレイ・ドレイク(eb0884)、その後ろをルーク・マクレイ(eb3527)、シュバルツ・バルト(eb4155)、殿をランディ・マクファーレン(ea1702)がつとめた。グレイがハンディLEDライトで周囲を照らし、シュバルツが手回し発電ライトで前方を照らし、一行は進んでいく。しかし、どんなに奥に進もうとモンスターと出会うことはなかった。それよりも気になったのは、洞窟は大した広さではないにも関わらず、いつまで経っても出口にたどり着かないことだった。洞窟の入り口から出口までの距離、この山の大きさから考えて、洞窟を抜けるのには6時間もあれば十分である。それを踏まえて、一行は二日目の朝、遅くても午前6時には出口に着くよう、一日目の夜中に出発したのだが、すでに相当の時間が経っていた。時計がないため正確な時間はわからない。また洞窟内部のため日の光がなく、暗闇ばかりでは時間感覚が鈍ってくる。洞窟の内部が複雑になっているわけでもない。ただ、行き止まりに突き当たり、戻って別の通路を探そうとする度に、道が変化しているように感じるのだ。先ほどまで道を塞いでいた壁が消え、通行できたはずの道が石壁によって塞がっている。それが何度も繰り返され、先に進めないのだ。
シュバルツの持つ手回し発電ライトの光が消えかかっている。それは洞窟に入って、もうすぐ8時間が経過することを指していた。ランディが予備として持ってきていたたいまつを取り出そうとして、シュバルツが制した。
「どうかしたか?」
「‥‥今、そこの壁が動かなかった?」
もしやと思い、シュバルツがスマッシュを用いて薙刀「牙狼」を前方の壁に撃ち出した。すると壁が生き物のように蠢めいた。石壁に見えたのはモンスターであった。残念ながら、彼らにはその正体は分からない。しかし姿が見えれば攻撃が出来る。それにとどめをさした一行が前を見ると今まで通ったことのない通路が続いていた。
シュバルツが苦々しく呟く。
「こんなのに引っかかっていたなんてね‥‥」
一行は急ぎ通路を走り、出口へと向かった。外へ出た一行が上を見れば、虹色に輝く空は終わり、青色が空全体を包み込んでいる。一行は休むことなく、岩壁を登り始めた。ランディがペットであるフェーデル(ペガサス)に乗って岩壁の上に到達し、各自が持ってきていた縄はしごを結んで、下に待つ3人へと下ろす。
それをつたい全員が岩壁の頂上に着いたころ、時刻は正午を指そうとしていた。予定よりも大幅に遅れている。正面の坂の下に見える廃村にはかなりの数のオークが確認できる。建物の中にいるものを含めれば、その数は50はくだらないだろう。この山岳地帯に生息いているオークの数はおおよそ200。それに比べればこの数は少ない方だ。森の方で戦っている者たちがうまく囮となってくれているおかげだろう。しかし、時間はない。森にいる冒険者の数が50なのに対して、オークの数は少なくとも150。また地形を考慮すれば、自分たちがオークロードを倒すのが遅くなればなるほど、犠牲者の数は増えるだろう。彼らもろくに休憩を取っていないため、万全の状態とはいえないが、ここで退くわけにはいかない。本来なら偵察を行い、オークロードの居場所だけでも把握したいが、あいにくそんな時間はない。
「準備はいいか?」
オーラエリベイションを唱え、左手にオーラシールド、右腕の忍者刀にオーラパワーと施術したランディが周りに呼びかける。
「ああ、囮のやつらが死んじまう前に、さっさと片付けないとな」
「行こうぜ。メイの国のため、協力してくれた人たちのためにも負けられない」
武器を手にグレイ、ルークが声を返す。
「敵はおよそ50。こちらは4人。失敗したら死にますね」
シュバルツの声に、本人も含め全員が口を閉じた。オークはいえ、その数はこちらの10倍以上。その中に突撃するなど、無謀もいいところだ。できるだけ早くオークロードを見つけ出し、周りのオークたちを相手にしつつ、オークロードを仕留めなければ、全滅はまぬがれない。だが、それでも4人の覚悟は揺らぐことはなかった。
「――行こう」
ランディの言葉を合図に、4人は一斉に、下り坂へと飛び出した。乾いた斜面の上を滑るように駆け下りていく。それに気づいたオークたちが1匹、また1匹と次々に集まってくる。
坂道が終わりに近づき、4人は固まり、隊列を整えるとその中へと突入した。
「突っ切るぞ!」
先頭のランディが叫んだ。集まったオークたちを簡単にいなしながら、廃村の中心へと向かい、残りのものもそれに続いていく。一行を追って、オークたちがうなり声をあげながら、後方から続き、さらに騒ぎを聞きつけたオークが側面から前方から襲ってくる。それらの攻撃を止まることなく最小限の動作でさばき、ひたすら奥を目指した。4人はやがて村の広場にたどり着き、立ち止まった。周囲を見渡せば、廃村にいるほとんどのオークたちが円を描くように包囲している。
誰ともなく、戦闘は始まった。あらゆる方向から押し寄せてくるオークたちに対し、4人は互いに背中を合わせるように陣形を作り、応戦する。
時間は過ぎていく。斬り、払い、叩きふせ、もうこれで仕留めたのは何匹目だろうか。
4人の息は荒く、流れる汗で髪は濡れ、額に張り付いている。
1匹のオークが正面からランディへと襲い掛かった。オーラシールドはとっくに消えている。それを迎え撃つべく、ランディは前に出ようとして―――後ろに退いた。飛び掛ってきたオークが背後からの巨大な戦槌によって地面に叩き潰された。先ほどランディがいたところに深々とめりこみ、オークの体はその原型をとどめていない。その大木をそのままもぎ取ったような戦槌が軽々と持ち上げられる。
「‥‥今度の戦いは、今までの中で一番厳しいぜ」
ランディの隣で、ルークがホーリーパニッシャーを手にそちらに向き直った。
現れたのは、4mはあろうかという巨大なオークロードだった。一般にオークロードの大きさは2mあまりと言われているが、この大きさは異常である。
「予定通り、親玉は任せたぞ」
「あんまり長くはもたないわよ。手早くお願いね」
これから本当の勝負という風に、グレイ、シュバルツが槍を手に、二人がオークロードに専念できるよう、周囲のオークたちに神経を向ける。
息をつく間もなく、オークロード先ほど同胞を叩き潰した巨大な戦槌を使い、襲い掛かる。
シュバルツとグレイは敵を一切寄せ付けなかった。二人の槍の間合いに入ったものは尽く急所を貫かれ、倒れていった。達人の領域から繰り出される一撃は次第にオークたちに恐怖感を与え、その行動を阻んでいる。
「二人の邪魔はさせない、怒涛の槍騎士の槍を受けろ」
グレイは二人の背後を守りながら、オークロードの取り巻きの行く手を塞いでいる。オーラエリベイションにより向上したその槍さばきは凄まじく、相手を惹き付けつつ回避で攻撃を避け、槍の間合いを生かして戦っていく。スマッシュによる鋭い突きと、盾受けからのカウンターアタックを取り込んだスマッシュEXは確実に敵の数を減らしていった。
一方、シュバルツは薙刀のリーチを活かして牽制して、隙を見せたオークには容赦なくスマッシュEXによって力任せに叩きつけ、敵を切り裂いていく。どんなオークが戦槌を振るおうとその体には掠ることはなく、逆にそれはシュバルツに攻撃する隙を与えるだけに過ぎなかった。
ランディとルークも果敢に攻撃を仕掛けていた。多少のダメージには構わず、手数で押し込んでいく戦法だ。幸いオークロードの攻撃に巻き込まれるのを恐れて、周りのオークたちは近づいては来ない。ルークが時間を稼いでいる内に、ランディはオーラシールドを再び生成すると、二人は左右から攻撃を重ねていった。怪力によって振り回される戦槌は強烈で速く、攻撃を受ける方は避けることができず、左のシールドでなんとか受け流す。その隙にもう片方が武器を振るい、スマッシュやスマッシュEXで着実に傷を与えていった。
オークロードが膝をついた。体のあちこちからは血が流れ出ている。
好機と見た二人が、同時に斬りかかる。それを見て、オークロードが群れの中から、一匹のオークを無造作に掴み取った。巨大な手の中に掴まれたオークの体が収まり、逃れようと暴れている。それに構うことなく、ルークの方へと顔を向けたオークロードは石ころを投げつけるように、手の中のオークを投げ飛ばした。突如迫ったオークに反応できず、それを体で受け止めたルークの体が地面を転がった。
衝撃をこらえ、ルークは起き上がろうとするがそれを上に乗っているオークの体が邪魔をする。そこへ勢いよくオークロードの戦槌による強打が横手から襲い掛かった。なぎ払われたルークの体が数メートル空中を飛んで、うち捨てられた廃屋の石壁に叩きつけられ、それでも止まらなかったその体は壁を砕き、建物の中に押し込まれた。思わずそれに目を向けたランディに隙が生じた。振り返ったオークロードが戦槌を横に振り回し、 その強打をうけたランディの体が同じく弾き飛ばされ、なんとか受身を取って起き上がる。
隊列が崩れた一行へと、それまで傍観していたオークたちが再び押し寄せた。
半壊した建物の瓦礫を押しのけて、ルークが立ち上がる。オークの体を盾にしていたため、重傷はまぬがれたが、右腕は震え、思うように動かない。瓦礫を越えて、オークたちが群がってくる。両者の間に、グレイが体を滑り込ませた。構え、一番近く迫るオークの懐に重さをのせた槍の一撃を撃ち出し、貫く。槍を引く間に間近まで迫ったオークが戦槌を振るってきたが、それを横に構えた槍の柄で受け止め、押し返した。腕を上げた状態で無防備になった一匹の胸を突き刺し、再び戦槌を振り下ろそうとする残りの一匹がそれをするよりも先に、その鳩尾へと矛先とは反対の柄で突き、押し飛ばす。そして、力の勢いが流れるまま風車のように槍を回転させ、穂先を向けるとその喉を貫いた。
オークたちが足を止めた。廃屋を背に、瞬く間に仲間が倒し、立ちはだかるグレイの姿はオークたちの間に動揺を走らせた。
「無事か?」
「ええ‥‥なんとか」
グレイからリカバーポーションを受け取り、それを飲み干したルークの傷が癒えていく。完全とまではいかないが、これで動けるはずだ。
「オークたちは俺が引き付ける。親玉は頼んだぞ」
ルークが頷いたのを認め、グレイを前に二人は突出した。
グレイがロングスピア「黒十字」の長身を活かして振り回し、オークたちを次々となぎ払っていく。群れの間にできたわずかな隙間をぬって、ルークは一直線に突き進んだ。
ランディとシュバルツを相手にしているオークロードの側面から迫りルークがホーリーパニッシャーを構える。その動きに気づいたオークロードが周りにいたオークを掴み、先ほどと同じように投げつけた。
「二度も同じ手をくうか!!」
オークの体の陰からオークロードが戦槌を振り払った。ルークは満足に見えない戦槌に向かってあえて足を踏み出した。地を這うように姿勢をかがめ、頭の拳一つ分だけ上を丸太のような巨大な戦槌が通り過ぎていく。その姿勢のまま、ルークは地を蹴った。
迫るルークを叩きつぶすべく、オークロードが右腕を振り上げる。しかし、その右肘をシュバルツが薙刀「牙狼」が切り裂いた。反応が遅れたオークロードの足元へ飛びこむと、ルークはその下半身へとホーリーパニッシャーを放った。
武器を正面に、跪いたオークロードの正面に向き直り、シュバルツが突出する。
「喰らえ、シュバルツハーケン!」
斬り放たれた薙刀の斬撃がオークロードの懐を切り裂き、鮮血があふれ出す。膝をついたまま、苦痛に雄叫びをあげるオークロードの体をランディが蹴り登った。その肩で踏み込み、空へとのぼり、剣を振り上げる。
振り下ろされた斬撃がオークロードの額を縦に切り裂いて、赤く滲んだ裂傷から飛び出した血によってその顔が赤く染まっていく。喉から上がった叫び声が山中に響き渡る。
それを断末魔として、オークロードの巨体は地面に崩れ落ちたのだった。
オークロードが倒れたことにより、オークたちは次々に山を離れ、あちこちへと散っていった。
囮となった冒険者たちも最小限の被害で済んだようだ。
三日目、一行はそれぞれの傷をポーションと休息によって回復し、山に残ったオークたちを討伐すると山を後にした。
かくして依頼は無事、成功したのだった。