●リプレイ本文
●それでは〜はじまりますよっ〜
──シャルトル南方・ノルマン競馬村
ノルマン秋G1・桜花記念。
今回のレースは、プロスト領にあるノルマン競馬村特設コース。
楕円形の草原コースで、距離は1600m。
天候が良ければ、馬が走るのに最適なコースといえよう。
そしていつもの如く、選ばれし? 7名がこの競馬村を訪れ、それぞれの厩舎へと向かっていった模様。
●ディービー厩舎
「初めまして。この度こちらの厩舎で騎手を務める事になりましたヘルヴォール・ルディアと申します」
丁寧に厩舎の入り口で厩務員に挨拶をしているのはヘルヴォール・ルディア(ea0828)。
「これはこれはご丁寧に。私がこちらの責任者のディービーと申します。今回のレース、宜しく御願いします」
そうヘルヴォールに挨拶を返すと、ディービー卿はヘルヴォールを厩舎に案内した。
そしてひととおりの案内をしたヘルヴォールは、いよいよ『斬新・ユニバース』とご対面。
「‥‥いい馬ですね‥‥」
その精悍な体躯をゆっくりと撫でつつ、ヘルヴォールはそうディービー卿に告げた。
「ええ。去年よりも少し絞ってありますが、スタミナが落ちたということはありません。今年のこの秋の為の調整です」
そう告げると、ヘルヴォールに手綱を手渡す。
「ここからは貴方の仕事です。いい成績を残して下さいね」
そのディービー卿の言葉に報いる為、ヘルヴォールはとにかく『斬新・ユニバース』と走った。
そして走った結果、一つのことが判った。
「この『斬新・ユニバース』は、万能型なのね‥‥どう調整したほうがいいのかしら‥‥」
どんな条件下でも、そつなく走る『斬新・ユニバース』。
それだから、ヘルヴォールの調教もかなり難しいものになっていたようで。
●カイゼル厩舎
「待ってましたぁぁぁぁぁ」
厩舎を訪れたウリエル・セグンド(ea1662)は、いきなり大勢の厩務員やカイゼル卿に派手に出迎えられていた。
「こ、今年も‥‥宜しく‥‥」
「うんうん。解っている解っているとも!! それよりも、ウリエル殿!!」
そう叫びつつ、驚いているウルエルをカイゼル卿が奥へと連れていく。
そこには、見覚えのある馬がたたずんでいた。
「‥‥ジャスティス‥‥どうして‥‥ここに‥‥」
そう問い掛けたウリエルに、『絹のジャスティス』は優しそうな瞳を見せる。
「丁度昨日ですよ。早朝に厩務員が厩舎を訪れたとき、『絹のジャスティス』が厩舎の前で静かにたたずんでいたのですよ!! 私はもう嬉しくて、そして今回もウリエル殿が来てくれると判ってそれはもう‥‥と、『絹のジャスティス』は残念ですが今年は走れませんが、来季は‥‥ね」
そう告げて、カイゼル卿は其の場をあとにする。
「そうか‥‥僕のために‥‥」
そう告げたウリエルに、『絹のジャスティス』は静かに肯いたように見えた。
そしていよいよ『深きインパクト』との調教開始であったが‥‥。
「こ、この馬は‥‥本当に‥‥馬なのか‥‥」
その速力、コーナーを曲がる力、そして化け物のような『超末脚』。後方から一気に駆けあがってくるその力は、今までウリエルの知っている馬の比ではない。
『絹のジャスティス』のようなしなやかな走法と、マーベラスの大胆なコーナー取り。そして恐らくは『最強のキングズ』と同じかそれ以上の速力。
スタミナは『怒りのトップロード』クラスと、まさに化け物の何相応しい馬である。
「どこまで駆けあがれるか‥‥勝負だね」
●マイリー厩舎
「はっはっはっ。気にしなくて結構ですよ。クレアさん、貴方は貴方の楽しみ方をしてください」
それがマイリー卿の第一声であった。
クレア・エルスハイマー(ea2884)は、まずは今回の依頼でマイリー卿の担当になったので挨拶に向かったのである。
そして一言挨拶をして、それで終ろうと思っていたのであるが、マイリー卿はクレアを暖かく迎えてくれた。
「今回も、私が走ってよろしいのですか?」
そう問い掛けるクレアに、マイリー卿は静かに肯く。
「さ、急いで厩舎へ。皆が待っていますよ」
──ということで
「優しい仔‥‥」
トコトコとクレアは『天国のキッス』の背中でのんびりと空を見上げていた。
スクロールを使って『天国のキッス』とコミュニケーションを取り、そのあとはいつものように合図の確認を行なっていたらしい。
そしてその後は、兎に角慣れる為に走っていた。
緩急をつけた走法の練習など、様々な方法を厩務員から教わり、なんとかレースまでには万全の状態で間に合わせていた。
●オークサー厩舎
「オークサー卿、お久しぶりですわ。また、あの新馬戦での感動を味わえるよう、頑張りますわ」
にこやかに挨拶をしているのはカミーユ・ド・シェンバッハ(ea4238)である。
過去にも新馬戦でオークサー厩舎を訪れたこともあり、厩務員達もカミーユの事は判っていたらしい。
「ええ、それでは今回も宜しく御願いしますね。あと、一つ、決して無理はしないでくださいね。馬にも適正があります。長距離、短距離、天候など、その馬によって様々な条件での能力が試されます。不利な条件を克服するのも大事ですが、レースは全部で7戦、無理をしすぎないうように御願いしますね」
「ええ。私もそのつもりですので。それではこれから宜しく御願いします」
そう丁寧に告げて、カミーユはさっそく『太陽のカーニバル』の元へ。
『こんにちわ、カーニバル。わたくしはカミーユと申しますわ。走るのは好きですかしら?』
カミーユもまた、オーラテレパスで『太陽のカーニバル』とコミュニケーションを取っていた。
意外と勝ち気な正確の『太陽のカーニバル』だが、唯一、難点を抱えていた。
それは、『沈黙のサンデー』の血筋であること。
若き日の『太陽のカーニバル』は体躯も弱く、競走馬としては諦められていたらしい。
だが、昨年よりの調教で、ここまで体躯を取り戻し、そして走力も付けてきたのである。
その為か、実に粘り強い走りを見せるものの、スタミナが弱いのが難点であった。
それが判ったのか、カミーユは慎重な調教を務めていった。
●プロスト厩舎
「あっねそこのお兄さん、ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよっ!!」
若い厩務員は、中に入ってきたカタリナ・ブルームハルト(ea5817)を見て第一声。
──ヒクッ!!
「え、えーっと‥‥この度、ここの厩舎で調教を担当しましたカタリナです!! 宜しくっ!!」
顳かみに血管をヒクヒクさせつつ、カタリナ・ブルームハルト(ea5817)がそう告げる。
「ふぅーん。兄ちゃんが調教師ねぇ‥‥女みたいな顔して、そんなんで努まるの? 調教は体力がいるんだよっ!!」
「それはもう、大丈夫だよッ!!」
そう呟きつつ、カタリナは若手厩務員を素早く担ぎ上げて、干し草の把に叩き込む!!
「それと、僕は女だっ!! 今度男みたいな扱いしたら承知しないぞっ!!」
パンパンと手を叩きつつ、カタリナは遠くから駆け寄ってくる顔見知りの厩務員の元へと歩いていった。
「ああ、あいつは最近入った厩務員で。まあ、また失礼なことを 言ったのでしょう? こちらでもキツく言っておきますので」
「いえいえ大丈夫だよっ。それよりも『漆黒のシップ』は?」
そうにこやかに告げて、カタリナは『漆黒のシップ』の元へと移動。
前回よりも体躯がおおきくなり、その脚もがっしりとしてきた『漆黒のシップ』。
「シップ君、今回もよろしくね。足はもう大丈夫?」
そう問い掛けるカタリナに、『漆黒のシップ』は目で合図。
『ごちゃごちゃと言わないで乗れ、話はそれからた』
とでも言っているようである。
そしてカタリナの心配を払拭するかのような力強い走り、それでもう満足であった。
●オロッパス厩舎
「始めまして。自分はクレー・ブラトや。至らない点が多いと思うけど、これから宜しゅう頼みますわ」
それがクレー・ブラト(ea6282)の第一声。
「いえいえご丁寧に。こちらも宜しく御願います。さて、『風のグルーヴ』はこちらに‥‥」
そう告げて、オロッパス卿はクレーを厩舎へと案内。
そのまま中から『風のグルーヴ』をコース前に連れてくると、いよいよクレーとご対面。
「いい馬や。さて、自分は馬の調教いうても、どないしたらええんかさっぱりやで。申し訳ないが、色々と教えてや」
そうさっぱりとした言い方で厩務員に告げるクレー。
「では、一緒に色々と教えましょう。と、まずは走ってきて下さい。『風のグルーヴ』の走りを身体で感じて、それからです」
そう告げられて、クレーはまずは軽く、そして徐々に力強く走っていく。
その後、厩務員と一緒に様々な論議を行ないつつ、『風のグルーヴ』の調教を続けていった。
●アロマ厩舎
「‥‥凄いな」
それがアルバート・オズボーン(eb2284)の第一声であった。
まずアロマ厩舎を訪れて挨拶を行なった後、アルバートは『怒りのトップロード』にまたがって軽く走っていった。
その乗り心地は、今までアルバートが乗っていた馬のアガーテとは比較にならない。
その激しい気性と、力強い走りに、アルバートはもう惚れ込んでいく。
そしてその無限とも思われるスタミナに、アルバートは調教の方針を一つに絞りこんでいった。
「スタートダッシュ‥‥それでいくか」
とにもかくにも、激しい気性の二人である。
果たしてどんな結果を出す事やら。
●レース当日〜エモン・クジョーの『俺に乗れ!!』〜
──スタート地点
レース当日。
今回は1001年秋G1第一レースという事で、大盛況の模様。
スタート地点には大勢の人が集っていた。
「お待たせしました。今の所一番人気は前予想通りっ。まずは第一戦、この勝負が今後の馬達の運命を決めるのかっ。第一人気は予想通りのダブルワン『風のグルーヴ』っ。そして二番手はその力を俺達に示せ『怒りのトップロード』。賭けの受付はそちらの帽子の男性の所へ。オッズは右の掲示板をご覧くださいだっ!! それではっ」
気合の入ったエモン・クジョーの熱い語り。
そして大勢の観客が、一枚の木の札に祈りを込めて、秋G1第一戦の行方を見守っていた。
アルバートは出走前に係員に『オーラエリベイション』の使用が可能かどうか確認していたらしいが、今回もオーラエリベイションなどの魔法の使用は禁止されていた。
各馬一斉にスタートラインに到着。
そして今回のレースの主催者である7貴族から、まずは昨年度最優秀騎手を生み出したプロスト卿が代表として前に出て挨拶。
そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」
各馬一斉にスタートしました。
まずはトップ、その名の通り『怒りのトップロード』が前に出た。
その強引な出方に後に続く馬達は少し距離を離す形となりました。
続いて2番手は『風のグルーヴ』。以後『太陽のカーニバル』『漆黒のシップ』『天国のキッス』『斬新・ユニバース』『深きインパクト』と続きます。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。この調子で一気に行くぜっ!!」
スタートダッシュに成功したアルバートが、そのまま『怒りのトップロード』を加速させる。
「‥‥随分と急ぐんやなぁ‥‥まあ、こっちはこの調子や」
クレーはそのまま『怒りのトップロード』を見つめていた。
残り1400m
順位に変動なし
残り1200m
順位に変動なし
残り1000m
順位に変動あり
「もっと前に出ていないと‥‥『漆黒のシップ』、いくよっ!!」
カタリナが歯『漆黒のシップ』を走らせる。
そして素早く『風のグルーヴ』の横に並ぶと、そのまま『風のグルーヴ』を抜きにかかる。
「それはあかんっ!! 今のペースを維持せんと」
クレーは逆にペースが崩れないように必死にしている。
が、そのニ頭の真横を、華麗に駆けぬける二頭。
「このまま真っ直ぐに‥‥ですわ」
「‥‥いけるの? 大丈夫なの?」
綺麗な帽子で人気を得ているカミーユの『太陽のカーニバル』と、努力の騎手クレアの『天国のキッス』が軽く『漆黒のシップ』と『風のグルーヴ』を抜いていった。
残り800m
順位に変動なし
残り600m
順位に変動なし
残り400m
順位に変動あり
最終コーナーを曲がって、ここで全ての馬が勝負に出た!!
「『斬新・ユニバース』っ!!」
いきなり加速をしたヘルヴォールの『斬新・ユニバース』が大外から『怒りのトップロード』を捕まえに入る。
その横をクレアの『天国のキッス』、カミーユの『太陽のカーニバル』が追従する形となった。
内では『怒りのトップロード』と『風のグルーヴ』、『漆黒のシップ』の3つ巴の戦いがデットヒート。
どの馬も先を譲らない結果になっていたが‥‥
「『深きインパクト』行こう‥‥お前の脚を‥‥みせてくれ」
後ろから『深きインパクト』が超速で追い上げてくる。
ゴールは間もなくというのに、果たしてその追込みが間に合うのか‥‥
──そして
「ゴォォォォォォォォォォォォォルッ。今期のファーストウィナーは『漆黒のシップ』。まずは手堅く勝ちをとったぁぁぁ。続いて2着は『深きインパクト』。距離が短すぎたがそれでもトップとは鼻差だぁっ」
1着:『漆黒のシップ』
2着:『深きインパクト』
3着:『斬新・ユニバース』
4着:『太陽のカーニバル』
5着:『風のグルーヴ』
6着:『怒りのトップロード』
7着:『天国のキッス』
壮快なウィニングラン。
カタリナは高々と右手を上げる。
「最高。当たり前っていうかんじだねっ!!」
その後方からは、ウリエルが苦笑いをしつつ走っていた。
「距離が短かすぎる‥‥いや、勝負は勝負‥‥負けを認める」
そして、他の馬達はそれぞれの厩舎へと戻っていく。
次のレースの為、トップでゴールを駆け抜ける為に‥‥。
●神聖歴1001年秋G1・全成績(1着−2着−3着)
『漆黒のシップ』 1−0−0
『深きインパクト』 0−1−0
『斬新・ユニバース』 0−0−1
『太陽のカーニバル』 0−0−0
『風のグルーヴ』 』 0−0−0
『怒りのトップロード』 0−0−0
『天国のキッス』 0−0−0
そしてレースはまだこれから‥‥。