アサシンガール〜お願いエムロード〜

ショートシナリオ&
コミックリプレイ プロモート


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 84 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:04月25日〜05月03日

リプレイ公開日:2005年04月30日

●オープニング

──事件の冒頭
 プロスト卿は困っていた。
 近々行われる彼の『結婚記念日を祝うパーティー』。
 その会場として、街道沿いにある彼の別荘を使おうと考えていたのであるが、どうも最近、そこに怪しげな少女が住み着いてしまったらしい。
 掃除に向かったメイド達も追い返されてしまい、途方に暮れてしまっていたのである。

──ということで冒険者ギルド
「つまり、家を占拠していると思われる少女を追い出して欲しいのですね? たかが立てこもり少女に、どうしてそんな手間を?」
 薄幸の受付嬢ニア・ウィンズがそう問い掛ける。
「メイドは全て一撃で気絶させられているのだよ。それで、ちょっとその鮮やか過ぎる手並みを調べてみたのだが‥‥」
 そのままニアの耳元に近付くと、プロスト卿はこう呟いた。
「件のアサシンガールっぽいのだよ。例の脱走した‥‥エムロードとかいう。報告書にあった外見とほぼ一致する。すまないが穏便に頼む」
 そして其の日の午後には、掲示板に新たなる依頼として張付けられた。

──同日、ギルドマスターの部屋
「‥‥つまり、この事件に関しては、冒険者ギルドは一切関与しないで欲しいということですか?」
 執務室のテーブルの奥で、ギルドマスターは正面に立っている一人の女性にそう告げている。
「ええ。秘密結社シルバーホークに関しては、貴方たち冒険者ギルドに手を引くように伝えても納得はしないでしょうから、その件については『今は』容認しておきます。ですが、今回の『エムロード』の一件は別です。サン・ドニ修道院に大切な子女を預けていた貴族達からも、厳正なる処罰をと伝えられています」
 テーブルの上に置かれているハーブティーを飲みつつ、ニライ・カナイ査察官はそう告げていた。
「エムロードの件については、私の元にも苦情の書簡は届けられています。冒険者の不手際により、二人のシスターが殺害されたと。今回の件について、全てを円滑に収めてほしいとね‥‥」
 ギルドマスターは、二通の依頼書をニライ査察官』に手渡す。
「これは、何方からの依頼書ですか‥‥」
「一通はサン・ドニ修道院のシスターたちから、エムロードの保護についての依頼です。そしてもう一通は、同じサン・ドニ修道院のシスター・アンジェラスから。内容は同じものです。但し、シスター・アンジェラスは、保護した少女をシャルトルの大聖堂にて預かって頂けるように確認も取ってあるそうです‥‥」
 そう告げるギルドマスター。
「ですが、まさかギルドはそんな『お金』にならない依頼を受けるつもりではありませんよね?」
 ニィッと口許に笑みを浮かべるニライ査察官。
「受ける‥‥とおっしゃったらどうしますか?」
「まさか?」
「そしてこれは本日、つい先程の依頼。バックには『プロスト卿』が保護の為の支援を約束してくれました。ニライ査察官も『シルバホーク関連調査』の任務を言いつけられて大変でしょうから、ここは協力してお互いの利を求めてはいかがでしょうか?」
 最後にはニコリと微笑って告げるギルドマスター。
「その地位にいるのは伊達ではないということですね。相変わらず喰えない性格ですこと。判りました。では、今回の一件も、ギルドの方でお願いします。但し、もし是が失敗した場合、騎士団が動くということも念頭にいれておいてください」
 そう告げると、ニライ査察官は静かに立上がる。
「それと、あくまでも保護、そのあとは教会と騎士団の元、正しき裁判を行なってその罪を償って戴くことになります。そのへんは冒険者の皆さんにも伝えておいてください」
──バタン
「それでも、おそらくは‥‥」

●今回の参加者

 ea0186 ヴァレス・デュノフガリオ(20歳・♂・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea2868 五所川原 雷光(37歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3727 セデュース・セディメント(47歳・♂・バード・人間・イギリス王国)
 ea8553 九紋竜 桃化(41歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb0933 スターリナ・ジューコフ(32歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

アッシュ・クライン(ea3102)/ レイ・コルレオーネ(ea4442)/ カルヴァン・マーベリック(ea8600

●リプレイ本文

●と言うことで〜少女の運命は〜
──街道
 目的地はプロスト卿のアジト‥‥いや別荘。
 今回の依頼はかなりハード。
 エムロードを保護し、シャルトル・ノートルダム大聖堂まで護衛することが今回の目的。
 だが、一行の心の中には『不安』が残っている。
 護衛した先に待っているのは、人を殺したエムロードの裁判であるから。
「はぁ‥‥」
 溜め息をつくのはスターリナ・ジューコフ(eb0933)。
 知人であり『法律学者』であるカルヴァンに助力を扇ぎ、色々と手を考えてみたのはよかったが。
 彼女の胸許には、エムロードに渡した筈の十字架が掛けられている。
 あの日、酒場でシスター殺害の話を聞いたとき、スターリナは修道院に走った。
 そして、殺害現場を見たとき、彼女は絶句してしまったのである。
 唯一残された彼女の手掛り。
 それは、血塗られた床の片隅に、綺麗な布で包まれていたこのロザリオのみ。
 その裏には、血でただ一言

『助けて‥‥』

 とだけ記されていた。
「すいません。わたし自身、色々と頑張ってみたのですが‥‥」
 そう頭を下げるのはセデュース・セディメント(ea3727)。
 移動前に一足先にサン・ドニ修道院を訪れたセデュースは、謁見室で修道院長や他のシスターと面会し、なんとか彼女を無実とするための証言を集めていた。
 だが、色々と話を聞いてみたところ、やはり彼女の罪は免れようもない。

・エムロードが犯人なのは確実である。
・なにかを殺されたシスターが呟いた直後、エムロードは素手でシスターを殺してしまったらしい。
・当日変わった事は特になく、あるとすれば冒険者達が帰っていっただけ。
・亡くなったシスター二人については、貴族の娘達であるということ以外は不明
 
 そして、聖なる母の名に誓い、嘘偽りの証言ではない事を、シスターたちは『聖書に手を置いて』宣誓したのである。
 署名よりも、シスター達にとってはこちらのほうが信頼を得ることができる。

「問題は、そのシスターの呟いた言葉なんだがなぁ‥‥」
 そう顎に手を当てて呟いているのは五所川原雷光(ea2868)。
「ええ。それが判れば、色々と対策を取ることができるのですが‥‥」
 セデュースも静かにそう呟く。
──パーーーン
 気合一閃拳を鳴らすのは、御存知ノリア・カサンドラ(ea1558)。
「説得、一番最初はあたしにやらせてくれないかな‥‥」
 そう皆に告げるノリア。
 この中では、もっともエムロードと付き合いの長い彼女。
 最初は拳で語り合い、次に会ったときにはうまく思いをつたえられなかった。
 そして今回、ノリアはその思いを全てぶつけるつもりでいる。
 その経緯を説明した時、誰も彼女の言葉には反対するものはいなかった。
「私自身も、最初はノリアさんにお任せして宜しいかと思いますわ。未来ある少女の命は貴い物、何としても守り抜きましょう」
 九紋竜桃化(ea8553)、誓いの一言。
「問題はアサシンガールか‥‥」
 そう呟くのはヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)。
 対策方法としてメロディーを考えてはいた。
 だが、それもどれだけ通用するかは判らない。
「問題か‥‥アサシンガールとやらの対処方法も難しいし‥‥」
 さらに腕を組んで考える五所川原。
 なにはともあれ、一行は静かに街道を突き進んでいった。


●アサシンガール〜接触偏〜
──プロスト邱・ちょっと手前
 この丘を登りきったら、そこにはプロスト卿の別荘がまっている。
 急ぐ気持ちをグッと押さえて静かに歩いていたとき。
 一行の視界、ちょうど街道の脇の草原でのどかに炊事をしている3名の少女の姿があった。
「‥‥ちょっと待って‥‥」
 ノリアの直感が反応。
「あれ、多分アサシンガールだよ‥‥」
「むう? どう見ても普通の少女だが‥‥」
 そう呟く五所川原。
 と、そのうちの一人が一行を確認すると、そのまま勢いよく走ってくる。
「知られた!!」
 素早く臨戦体勢を取る一行だが。
 駆けてきた少女は、冒険者一行の方を見ると、其の手に持っていたボロボロのぬいぐるみを差し出す。
「があがあ、こんにちは。がぁくん、直して!!」
 ニコッと笑う少女。
 もし、彼女の事を知るものがいたなら、其の子がアサシンガールの一人『アンリエット』であることに気が付いたかもしれない。
「アンリ!! その人たちはアンリのクリスおねーちゃんじゃないんだから。めーわく掛けちゃ駄目だよッ!!」
 奥のほうで火の番をしている少女が呟く。
 そして良く見ると、その向こうには全身に包帯を巻いて眠っている少女が二人。
「しょぼーーーーーん」
 そのまま振り向いて歩いていくアンリエット。
「この中で、あれを直せる人は誰かな?」
 そうヴァレスが呟く。
 と、男性は全員女性の方を見る。
「‥‥私は‥‥ごめんなさい。家事はちょっと‥‥」
 そう告げる桃化。
 そのやわらかな物腰は、できそうなんですけれどねぇ?
「‥‥ごめんなさい‥‥」
 同じく頭を下げるスターリナ。
 普通の繕いは兎も角、ぬいぐるみの補修なんて無理。
「ん? あたし直せるよ?」
「そうか、ノリアさんはってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 そう叫ぶヴァレス。
──Jet!!
 いや失礼。
 壊すの専門かと思っていたらしいので。
 素早くヴァレスに向かってアッパーカットを叩き込むと、ノリアはそのまま少女の元に向かって話し掛ける。
「おねーちゃんが直してあげようか?」
 ニコッと微笑むノリア。
──キュルルルル‥‥ドシャァッ。
 あー、後方で螺旋を描いてまっ逆さまに墜落したヴァレス。
 あ、これは目の錯覚でしょう、うんうん。
「おねーちゃんは、くりすおねーちゃん?」
 頭を捻りつつそう問い掛けるアンリエット。
「ううん。ノリアっていうの‥‥」
 そう返事をしたとき、いきなり後ろにいた1人のアサシンガールが走ってくる。
「ボンバーマスターのノリア? アンリさがって!! そいつは敵だっ!!」
 その瞬間、冒険者達も一斉に臨戦体勢に突入するが。
「ストップ!! 今回のミッションには『冒険者を抹殺する』は含まれていないわよっ」
 残った一人が冷静にそう告げる。
 と、突然走っていたアサシンガールは全身が硬直し、其の場で動かなくなる。
「‥‥どういうことかしら?」
 そう呟きつつも、戦闘態勢を維持する桃化。
「戦う意志がないのかっ」
 五所川原もそう叫ぶと、歩いてくる三つ編みの少女にむかって間合を詰める。
「初めまして。私はゼファー。エムロードの処分の為にここにやってきたものです‥‥」
 いきなり挑発的な言葉で挨拶をしてくるゼファー。
「処分ねぇ‥‥アサシンガールの回収は、ヘルメスなる者の仕事だと思っていましたのに、ガール直々とはたいそうな歓迎ですね‥‥」
 桃化は少しだけ隙を見せつつ、そうゼファーに告げた。
「ヘルメスさんは、別の仕事で動けませんから‥‥それよりも、何故貴方たちもエムロードを?」
 そう問い掛けてくるゼファーに、スターリナが口を開く。
「私達は彼女を助けに来たのです。邪魔をするのであれば、たとえ貴方たちがアサシンガールでも容赦しませんわ!!」
 そう叫ぶスターリナ。
 と、ゼファーは遠くから走ってくる馬車の音にきがつくと、そのまま踵を返して仲間たちの元にもどる。
「ふーん。お好きにどうぞ。私達の任務は終ったから‥‥」
 それ以上の話はない。
 ただ、そのゼファーの言葉が気になった為、一行は急いで別荘へと向かっていった。


●別荘にて〜全てを終らせて〜
 全てが終りました。
 あとはただ、エムロードを連れてノートルダム大聖堂へと向かうだけ。
 ですが、そこで待っているのは、裁判という名の辛い現実。
 私達は、私達ので切る限りのことをしなくてはなりませんから‥‥。


●辛い現実〜裁判は罪を許しはしない〜
──シャルトル・ノートルダム大聖堂
 無事に冒険者によって連れられてきたエムロード。
 だが、言葉を交わすことなく、ただじっとなにかを考えている。
 時折思い出すように、スターリナやノリア、そして他の仲間たちを見るが、直に言葉を詰まらせたのかなにも伝えられなくなってしまう。
 やがて裁判が行われる。
 神聖なる場所においての裁判。
 その慈悲深き大司教の裁きには、一行も静かに肯くしかない。
「では‥‥彼の者はセーラに慈悲を乞い、この地において神に全てを捧げるというのであれば、その罪は教会にての奉仕により償うことは出来るかもしれません‥‥」
 その大司教の言葉に、一行は表情を明るくする。
 だが、その後に出てきた大司教の言葉は、一行に対して絶望を突きつけるものとなった。
「しかし‥‥彼女は二つの禁忌を侵しているのも事実。神に仕えしものの殺害、そしてそれを聖なる場所において行なったこと。パリの騎士団からは、彼女の身柄を差し出すようにとの伝えも届いています‥‥」
「なら、どうにもならないのでしょうか?」
 そう慈悲を乞う一行に、大司教は静かに笑みを浮かべる。
「彼女の行った大罪。それに伴う処罰は死刑です‥‥が、罪を軽減するために、嘆願書を作ってはいかがでしょうか? 彼女の事を知るもの、もしくは彼女の行なったことを知り、それでも彼女の罪を軽くしてもらいたいという者がいるのでしたら‥‥」
 そう考えて、大司教は静かに手をさし出す。
「500名の連名嘆願書。それを私に届けてください。それを手に、私は遺族の元に使いを出します。あと、殺されてしまったシスターたちの遺族に支払わなくてはならない慰謝料も、同時に『寄付として』集める必要もあるでしょう‥‥」
 その言葉に、一行は静かに耳を傾ける。
「といっても、かなりの大金になりますので‥‥殺された一人の遺族に対し400G。二人分として800Gの金額は必要でしょう‥‥ですがそんな大金を直に支払うことは不可能ですよね?」
 その言葉に、一行は自分達の財布を見る。
「嘆願書とは別に、『寄付』を集めてみてください。例えば、貴方たちが冒険に出る際、『手伝いとして支援をなさる方』もいらっしゃいますよね? 嘆願書にサインして頂けるのでしたら、その方たちから預かってくることはできるでしょう‥‥」
 希望は見えた。
「只、彼女の事を思う人が行なわなくてはなりません。嘆願書に署名をしている方からのみ、それも一人5Gまで。多くの人の同意と、願いを込めて預かってきてください‥‥」
「時間はいつまでですか?」
 そうスターリナが問い掛けたとき、大聖堂の入り口から一人の騎士が入ってくる。
「大司教、話は伺いました‥‥。私は『レビン・スターリング』。騎士団に所属し、今回のシスター殺害の件で調査をしていたものです」
 そう挨拶をすると、レビンは冒険者達をキッと睨みつける。
「本来ならば、温情を掛ける必要はないのだが。大聖堂という場所にて、大司教からそのような提案があった以上、我々もその意志には従わざるを得ません‥‥ですが、期間は2ヶ月!! 5月1日より6月30日までを期限とします。それまでに500名分の署名と総額800Gの慰謝料を集めてくるのです‥‥」
 そう告げてから、レビンは二人の女性を示した。
「嘆願書は貴方が責任を持って!!」
 指名されたのはスターリナ。
「そして慰謝料の管理と寄付の受付は貴方がっ!!」
 指名されたのはノリア。
「よいですね。7月1日中に、この大聖堂まで届けてください。私は其の日、ここで待っています。もし届けられなかった場合は、即日エムロードは処刑場まで連行、その場ですぐに‥‥」
 レビンはそう告げると、そのまま大聖堂を後にした。
 さあ、走れ冒険者!!

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