●リプレイ本文
●まず初めに〜下準備はしっかりと〜
──パリ
依頼を受けた一行は、とりあえず簡単な作戦を考えた後にロイ教授の待つ遺跡へと向かうこととなった。
「まず、大切なことは装備を整えること、自分に何ができるかを知ることです。決して自分の力を過信せずに‥‥」
そう言いつつ、食糧を補充しているのはアハメス・パミ(ea3641)。
「私達がバックアップしますので、貴方はリラックスしてくださいね‥‥」
アハメスの言葉にフォローを入れつつ、やはり足りない食糧を買い込んで居るのはアリアン・アセト(ea4919)。
おーい、君達、ベテランなんだろう!!
その二人の言葉をしっかりと聞いているのは、今回が初冒険というチャー・ビラサイ(eb2261)。
お髯がちょっとラブリーなドワーフ娘である。
「判りました。先輩達の行動をお手本として、がんばります!!」
うんうん。気合十分だねぇ。
「こまったことがあったら、いつでもそうだんするの〜。レンたちは、いつでもたすけてあげるの〜」
初めての後輩? に、心ウキウキしているレン・ウィンドフェザー(ea4509)。
「それじゃあ、俺は一足先にロイ教授の元に行ってくるからな‥‥」
そう告げると、ロックハート・トキワ(ea2389)は『韋駄天の草履』を装備して、一気に走り出した!!
でたなハシルンジャー。
そして残った一行は、のんびりと現地まで向かう。
道中、チャーに色々な事を説明し、これから始まる冒険者としての生活、新しい土地での対応の仕方などを一つ一つ丁寧に説明していった。
うんうん。
これが普通の冒険なのだよねぇ‥‥。
●アンデットの住まう墓〜捻りが無いのもご愛敬〜
──地下遺跡入り口
そして2日後。
一行は無事に地下遺跡の外に建てられているベースキャンプに到着。
一足先に到着したロックハートは、新しい相棒である鷹の『疾風丸』の訓練を行なっていた。
まあ、訓練については、そのうち『松五郎老人』の元で正式に受ける機会があるでしょうから、その時にでも。
とにかく、急ぎ簡単に作った布製の腕に付ける『皮袖』に疾風丸を止めると、静かに遠くを見つめている。
「おお、到着したか。それでは早速打ち合わせを始めるとしよう‥‥」
そう告げると、ロイ教授は一行をベースキャンプに招きいれる。
「これが現在までの地図じゃ。この先のエリアからはまだ向かっておらぬ。石造りの扉でしっかりと閉じられておるからのう‥‥」
「教授は『悪魔関係の遺跡』の専門家との噂を聞いています。この遺跡もそうなのでしょうか?
」
そう問い掛けるアリアン。
「ふぉふぉふぉ。懐かしい呼び名じゃのう。この遺跡がそうであるかどうか。それは、眠っているものの存在を確認するまでは判らぬのう」
そう告げると、早速一行は地下遺跡へと向かっていった。
●地下第二階層入り口〜おちゃのこさいさい?〜
──地下墳墓入り口
何事もなく第二階層へと続く扉の前迄到着した一行。
「さて‥‥ここからが正念場だな‥‥ほれ」
そう告げつつ、チャーにシーフズツールを手渡すロックハート。
「もう使うのですか?」
そう問い掛けるチャーに、ロックハートは静かに一言。
「いつでも使う。そう身体が覚えるようになることだな。熟練してくると、身体が勝手に『怪しい所』を判断するから‥‥」
「判りました!!」
早速扉を調べるチャー。
「ねーねー、チャーにまかせてだいじようぶなのー?」
後ろからレンがロックハートに問い掛ける。
と、ロックハートはレンの耳元に近付くと、静かにこう告げた。
「トラップはなし、鍵がかかっているだけの簡単な奴だ‥‥これでトラップが発動しようものなら、依頼が終った後で一杯‥‥」
──シュッ
と、ロックハートの頬を何かが掠めた。
「‥‥チャー、無事か?」
「‥‥ううう‥‥何か刺さりましたぁ‥‥」
恐る恐る問い掛けるロックハート。
と、案の定、鍵穴の辺りから張りが飛び出し、それが一つ肩口に突き刺さった模様。
「ふん‥‥致死毒ではないか‥‥」
そう呟きつつ、チャーの傷を見るロックハート。
「アリアンさん、リカバーいいですか?」
「ええ。構いませんわ‥‥慈愛の母、セーラよ‥‥彼の者の傷を癒したまえ‥‥」
魔法を詠唱したのち、そっとチャーの傷口に手を当てるアリアン。
──ボゥゥゥゥッ
温かい光がチャーの傷口を照らし、見る見るうちに傷が癒えていく。
「すいません。助かりました‥‥」
そう告げつつ頭を下げるチャー。
「まあ、気にすることはないさ。初めての時は誰だってそんなものだ‥‥それより鍵は開いたか?」
「まだです。でも、もう少しで‥‥」
──ガチャッガチャッ
必死にツールを使って鍵を合わせるチャー。
「さっきのはなし、つづきはなんなのー?」
レンはそうロックハートに問いかけているが。ロックハートはじっとチャーを見守っている。
「ふっふっ。うまくごまかしてもだめなの。しゃんぜりぜでおごらせるのー」
こわ。
──ガチャッ
やがて扉が静かに開くと、そのまま一行は隊列を整えて内部へと突入していった。
それでは、一部で恒例の隊列ターイム。
〜〜図解〜〜〜
・上が先頭になります
・遺跡内部での灯はアリアンが担当
・マッパーはロイ教授が担当
トラップ関係はチャーが、そのサポートにロックハートが付く
・戦闘時はロイ教授が荷物の護衛
・また、必要に応じて各員が松明の準備
・戦闘時はアハメスは前衛へ、ロックハートは後方にまわり教授のサポート
ロックハート チャー
アハメス
アリアン レン
ロイ教授
〜〜〜ここまで〜〜〜
暫くは真っ直ぐに進んでいく一行。
「ロイ教授、あの石碑に記されていた文字ですが、この回廊の先が墳墓になっているのですよね?」
そう問い掛けるアハメス。
事前の打ち合わせで石碑の場所は通過しない為、ロイ教授にそう問い掛けてみる。
「うむ。第一階層と第二階層との接点はここだけ。石碑には、この先にある墳墓と、それを護る守護者達‥‥つまりガーディアンの存在が記されていた。石碑には‥‥『我等が王の眠りを妨げるもの、死の翼に触れて‥‥云々』だったような‥‥違ったかな?」
「ブッ‥‥ゴホゴホ」
その説明を聞いていきなり吹き出すアハメス。
(そ、それって私の祖国の王の墓の記述‥‥って‥‥ええ?)
アハメスさん、出身はエジプトでしたか。
まあ、そんな話は置いといて。
──ピタッ
前衛のレンジャーズが脚を止める。
「ここ、トラップありますよね?」
「ほぅ‥‥いい勘をしているな‥‥」
チャーがそう告げつつ、足元に広がる石畳を静かに調べる。
──カチャッ
と、そのうちの一つが何かのスイッチの役割をしている模様。
「トラップですか‥‥それとも、何かのスイッチ‥‥一体‥‥」
頭を捻るチャーに、ロックハートはポケットからチョークを取り出してそのスイッチの回りを丸く囲む。
「よし、先に進むぞ‥‥」
「え? 調べなくていいのですか?」
「足元で、人の通る場所にあるスイッチがトラップで無い可能性は皆無だ!!」
「ふむふむ。なるほど‥‥」
あ、レクチャーしていましたか。
そのまま暫くは、足元のスイッチを見付けては印を付けていくという動きが続いていた。
やがて一行は、行き止まりの壁にぶつかる。
壁には、何やら奇妙な絵と文字の組み合わせ‥‥古代魔法語らしきものが大量に記されている。
「ロイ教授。ここは貴方の出番ですわね‥‥」
そう告げるアリアン。
だが、教授はやれやれという顔をすると、一言こう告げた。
「古代魔法語以外は専門外じゃて‥‥これは異国の文字じゃよ‥‥」
そう告げつつ前に出るロイ教授。
「まあ、考古学者たるもの‥‥ふむふむ。ふーむ」
そうロイ教授が解析を始めると同時に、一行は周辺調査を開始した。
「スイッチが二つ‥‥ありますよ」
横の壁を調べていたチャーが隠されているスイッチを発見。
「ああ。こっちにも二つ‥‥」
反対側ではロックハートもスイッチを発見。
それぞれが犬、鷹、尾の長いカモ、そして太陽を示す絵文字に添えられている。
──カタッ
と、アハメスは一歩下がる。
何故かは判らないが、身体が自然とそう動いた。
「うーむ。面白い。南西の古き王国、そこから渡ってきたものの墓のように『作られている』のぅ‥‥正しき道を示すには、『王の名を示せ‥‥』か」
そのままロイ教授は、横にあるスイッチを一つ一つ読み上げる。
「ふむふむ。王たるものの名‥‥それは‥‥」
静かに鷹を示す絵のスイッチに指を示すロイ。
だが。
「ホルスではないです‥‥王たる者ではないですよ。正面の文字の配列は横ではなく縦で示します‥‥つまり、神々の息子‥‥」
アハメスはそう告げると、ロックハートとチャーに静かに告げる。
「右の太陽と左のカモ、その二つを同時に押してください」
そのアハメスの言葉で、二人は同時にスイッチを押す。
──カチッ‥‥ゴゴゴゴゴゴコ‥‥
静かに正面の壁がスライドし、さらにそこには墓が現われた。
「太陽神ラーの息子、サァ・ラー‥‥もしここがその名の示す墓ならば、ここから先、私は入れない‥‥」
アハメスは静かにそう告げる。
「どうしてですか?」
そう問い掛けるチャーに、アハメスは静かに笑みを浮かべて、こう答えた。
「ここは普通の墓ではないのです。王たる名を示して入ることの許される場所‥‥ペル・アアの墓なのですから‥‥」
きょとんとした表情で頭を傾けるチャー。
「おお、ペル・アア‥‥ファラオのことじゃな?」
そのロイ教授の言葉に、静かにうなずくアハメス。
──ゴトッ
だが、墓の奥に置かれている棺からは、朽ちた死体がゆっくりと立上がってくる。
「墓を荒したことで‥‥偉大なる王が怒ってい‥‥い?」
そう告げてアハメスは瞳を丸くした。
西洋風のローブに身を包んだ朽ちた死体、錆びたロングソードを手にした骸骨戦士‥‥。
そんなのエジプトの偉大な王の墓じゃ、絶対ありえなーーい。
──ブチッ
あ、アハメス切れそう。
「それじゃあ、そろそろたたかうのー」
そう告げつつレンは詠唱開始。
そしてロックハートとチャーは後方に下がってロイ教授のガード。
敵が敵なだけに、アリアンはまずチャーにレジストデビルを付与。
そしてアハメスは。
──ブッチィィィィン
「偉大なるネスウ(王)を汚したなぁぁぁぁぁぁ」
あ、切れた。
「敵はズゥンビが2体とスカルウォリアー一体のみですわ‥‥」
アハメスのその言葉に、ロックハートは腰からナイフを引き抜くと、ズゥンビに向かってそのまま突撃した。
「チャー、レンジャーの戦いを見せてやる‥‥」
パン、とシルバーナイフを逆手に持つと、そのまま敵ズゥンビを襲撃。
華麗なるナイフさばきで一気に一体撃破。
その横では、アハメスがザックザックとスカルウォリアーを切り刻み、ものの見事に撃破。
残った一体はすっかりレンの玩具となっている。
ローリンググラビティで巻き上げて叩き落とす。立ち上がりざまに再びローリング。
最悪のコンボでズゥンビ一体を手玉に取るレン。
「つぶれちゃえーーなのー」
やがて敵ガーディアン達は沈黙する。
「こ‥‥これが冒険者の実力なのか‥‥なんという事じゃ‥‥」
こらロイ教授。
わけの判らないナレーションだすのやめい。
そんなこんなでベテラン冒険者たちによってアンデット達は撃破。
教授はというと、さっそく墳墓の調査を開始したわけですが。
「さてと、そろそろかな‥‥」
ロックハートは静かに外に抜ける場所を確認、それがないのを判ったら、今来た通路をしっかりと見据える。
チャーは、ロイ教授の横で調査のサポート。
「ふむむ。ここがギミックになっているのう‥‥ちょっと調べてくれるか?」
奥の壁を調べているロイ教授が、静かにそう告げる。
「ここですか?」
──カチッ‥‥ゴゴゴゴゴコゴ
突然響く地鳴り。
「さて‥‥これもご愛敬だな‥‥」
そう余裕かましているロックハート。
「とっとと逃げましょう!!」
「ええ。ロックハートさん、殿をお願いしますわ」
アハメスとアリアンは急いで外に向かう。
「ふむ。外れたか‥‥まあ、情報は手に入ったしのう‥‥」
「どどどどどどどどうしよう‥‥」
そしてロイ教授と、どうしていいか判らず硬直しているチャーの二人の後ろに回ると、そのまま背中を押して前に向かって走らせるロックハート。
「あのじじいと付き合って長いから、この程度は慣れっこだよっ‥‥とっとと逃げると!!」
天井が落ち、あちこちの壁が崩れてくる。
そのまま一行は、一気に回廊を抜け出すと、外に脱出した。
●そして〜呑め、喰え、教授の奢りだ〜
──酒場『シャンゼリゼ』
無事に依頼を果たした一行は、パリの冒険者酒場『シャンゼリゼ』で祝杯を揚げていた。
「そういえば教授、一つ聞いていいですか?」
「うむ。なんじゃ?」
そうアリアンに返事を返すロイ教授。
「『ヘルメス・トリス・メギストス』という名前に聞き覚えは?」
「錬金術の祖にして偉大なる存在。としかわかっていないが‥‥。詳しい話しは、そこらへんの錬金術師にでも聞いてくれんか?」
その横では、チャーが少し落ち込み気味。
「最後の所で失敗して‥‥」
「ああ、あのレベルなら良く見ているから気にするな。レンジャーは経験してなんぼの商売だ。この冒険でも、色々と勉強になっただろう?」
そうフォローするロックハートに、チャーは静かに肯いた。
まだまだ。
自分は冒険者としてのスタートに立ったばかり。
これからが、始まりなんだから、無理をしないで、自分のペースで頑張ってくださいね。
〜Fin