【シチュエーション】良い弓の条件
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:6人
サポート参加人数:3人
冒険期間:08月10日〜08月17日
リプレイ公開日:2005年08月18日
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●オープニング
──事件の冒頭
それはとある日の朝。
ある村の小屋では、では、一人の弓師がグレイス商会のマダム・グレイスと話をしていた。
「俺はいつも弓をつくっては商人ギルドに卸している。結構な数の弓を作っていたけれど、ここ最近になってどうも張り合いがなくっちまったんだ‥‥」
そう話を切り出したのは、弓師のアクセル氏。
ノルマン江戸村よりちっょと離れた場所にある小さな村で弓をコツコツと作っている『準名匠』らしい。
「なにが原因なのかねぇ‥‥」
「理由は判っているんだ。例えば剣士とか格闘を生業とする輩は、武闘大会や冒険でも前衛として華やかな活躍が出来る。魔法使いはその超常的な魔法で、クレリックとかは仲間を癒す為には確実に必要だろう?」
「でも、レンジャーだって、立派に頑張っているんじゃないか」
そうマダムが告げたとき、アクセルははぁ‥‥と溜め息を付いた。
「最近レンジャーは、冒険ではトラップ解除とか、そういった小手先の技術の方がもてはやされている風潮があってねぇ‥‥この事態をどうにかしてほしいと‥‥いや、それが悪いんじゃなくて、俺は、俺の作った弓が埃を被ってたたずんでいるのが嫌なんだよ‥‥」
そう告げると、アクセルはマダムに挨拶をして、そのまま部屋に籠ってしまった。
──ということで冒険者ギルド
「はぁ、つまり、アクセルさんの杞憂をはらしてあげて欲しいのですか?」
「ああ。あいつは良い腕をしているんだ。でも、その腕も曇ってしまうかも知れない。このままじゃああいつにとっても良くないしねぇ‥‥まあ、小額で済まないけれど、頼むよ」
そう告げると、マダムは依頼金をカウンターに置くと、そのまま立ちさって行った。
「えーっと‥‥今回の依頼って‥‥簡単そうで難しそうですねぇ」
●リプレイ本文
●ということで〜話をしましょうお茶のみましょう〜
──アクセル宅
ギルドからの依頼をうけた冒険者一行。
「それでは、確かにお預りします!!」
「お兄ちゃん、早くいこうよぉ!!」
二人の兄妹が、アクセルの小屋から出てくる。
「気を付けてくださいね。それと、お嬢さん、早くお兄さん離れしたほうがいいですよ。最近、あまり貴方のことではいい噂を聞いていませんから‥‥」
そう告げるアクセルに、その妹はベーーーッと舌を出してそのまま走り出した。
「やれやれ、こまったお嬢さんですねぇ‥‥と、皆さんも冒険者ですか?」
そういっこうに話し掛けたアクセル。
まずは全員が軽く自己紹介。
「‥‥とまあ、現在でも弓使いの方はいらっしゃいます。先程名前をあげた方たちを始めとして、数多くの弓使いが、今でも貴方の作る弓を心待ちに待っているのですよ‥‥」
そう話し始めたのはセデュース・セディメント(ea3727)。
ここに来る前に吟遊詩人ギルドに出向き、そこでの情報収集を行なった後、冒険者酒場シャンゼリゼで数名の冒険者から弓に付いての話を聞いてきたらしい。
「そうですか。今でも‥‥はぁ‥‥」
だが、アクセルはそう告げるが、溜め息をつくばかりである。
「弓矢が魔法に対して劣る、と、そうお考えか」
そう話を切り出したのはアルクトゥルス・ハルベルト(ea7579)。
近接武器マニアであるアルクトゥルスには、今ひとつピンと来ない依頼ではあるが、受けた以上は全力で当たるのがアルクトゥルス。
「魔法には、様々な使い方が存在しますから‥‥」
「確かに精霊魔法を始め、各種の魔法は見た目派手だし、成就した時の効果は抜群だ。しかしながら、魔法にも弱点はある。射程距離と効果持続時間と詠唱時間、そして魔力の消費量だな。射程と時間関係は修行を積んだり高速詠唱を習得したりすればそれなりに補える様になるが、魔力の消費だけは如何ともし難い」
実戦による経験からか、アルクトゥルスは魔法に着いてのレクチャーを開始した。
「より高位の奇跡を成就させようとすればする程、魔力の消耗は激しくなるからな。成功率も落ちるしな、高速詠唱したら特に。射程も、下手な魔法よりも弓矢の方が断然長い。要は使い所なんだ‥‥」
そう告げると、アルクトゥルスはアクセルの方をじっと見る。
先程よりは元気を取り戻したらしいその横顔に、少しずつではあるが確信を得ていた。
(よし、もう少し‥‥)
「之は私見だがね、魔法対弓矢で夜戦をやったら弓矢が勝つと思う。地形とかも絡んでは来るだろうけれど、取り敢えず其処は無視して。何せ、魔法を行使しようとすれば光ってしまうのだからな。我ら『父』に仕える者であれば、行使する際『淡い黒い光』に包まれる。実演して御覧に入れたい所だが、生憎と敵でない相手に使える魔法を習得していないのでね、ご勘弁願いたい」
アクセルの表情が明るくなりつつある。
「兎も角、射手はその光った所目掛けて矢を放てばいいのだからな。逆に弓矢は余程の事をしない限りは光るなんて事はないし、音もそんなにしないだろう? 姿の見ない所、攻撃の届かない所に居る射手ほど恐ろしいものはないよ‥‥」
その言葉が終ると、アクセルは近くに置かれている弓を手に取る。
「このボクの作った弓でも‥‥魔法に勝つことはできるのか‥‥」
「その通りです!! アクセルさん、貴方の作った弓を見せて頂けますか!!」
そう告げたのはアリエラ・ブライト(eb2581)。
パラレンジャーでも数少ない弓使いの彼女は、弓の実用性を良く理解している。
そのままアクセルの作った弓を手にして、そのまま弦を引く。
──ギリリリリリリッ
弓束の造り、アッパーリブとローリブのバランス、サイトの調整、どれを取っても問題なし。
むしろ、ある意味芸術とも言える精密な造りをしているのに、アリエラ自身が驚いていた。
「ちょっと失礼します!!」
ノッキングポイントに指を添えて、ギリリッとボウ・ストリングスを力一杯引く。
サイトと視線を合わせ、普段使っている弓との違いをよく見る。
(よく馴染みます‥‥)
そう考えると、アリエラは弓を戻して話を続けた。
「私にとって弓は武器であり生活必需品、ですよ〜。故郷がイギリスの片田舎の草原だったので、物心付いたときには弓を持っていたですよ。狩りには必須の物ですし〜生活密着型の武器だと思うですよ。体力無いからスリングの方が良いんじゃないかと言われた事もあるけど、私は絶対に弓を使いたいんですよ〜。弦を引き絞った時の音と緊張感が大好きなのですよ」
そう告げると、自分の弓を手に取るアリエラ。
「私の習った流派『アルスター』は騎乗からの攻撃をメインにするですよ。馬を走らせながら矢を射るのは気持ちいいのですよ〜。体の小さな私でも戦力になりますし‥‥。それにイギリスでは優秀な弓使いが多いのですよ〜。先日の戦争でも弓使いが大活躍して戦局を有利にしていたと傭兵の友人から聞きましたですよ。残念ながら私は駆けつけることが出来なかったですが」
その話を聞くと、アクセルの機嫌もかなりよくなってきたようである。
「そんな訳だから弓は必要とされているですよ。私は生涯弓使いを宣言しますですよ〜♪ 」
その言葉で絞めたアリエラ。
ウンウンと肯くアクセルの自信は、回復しつつあった。
「射手のクロードだ。よろしく頼む」
そう告げたのはクロード・レイ(eb2762)。
話は苦手らしく、そのまま少しの間沈黙が走ったが、クロードはすぐに自分の弓をアクセルに見せる。
「‥‥そうだ、こいつを見て貰えないか」
「ええ、それは構いませんよ」
そう告げると、アクセルはクロードの弓を受け取ると、じっくりと時間を掛けて一つ一つの部品を見つめる。
「弓は生まれといいまして‥‥制作者の腕が良ければ、それは大変良い弓に育つのですよ。但し‥‥」
そう告げると、アクセルは弦を外してサイトと弓束の調整を始める。
「きちんと手入れをしていればの話です」
歪みを整え、全体のバランスを直すアクセル。
その真剣な眼差しは、其の場にいた一同から言葉を奪いさっていた。
矯正器とよばれる道具で歪みを直すと、それをクロードに戻すアクセル。
──ギリリリリッ
手応えがいままでとは違う。
感触が、いままで使っていたものと寸分たがわないのに、今まで以上の力を感じるクロード。
「試してみたい。あんたのつかっている弓もな」
「構いませんよ」
そう告げると、全員が外に出る。
試し討ちをする為の的を用意すると、クロードはまず、自分の弓を使って矢を射る。
──ヒュンッ‥‥スコォォォン
綺麗な音。
確かなな感触がクロードの腕に残る。
そして今度はアクセルの弓を構える。
(軽い‥‥な‥‥)
──シュンッ‥‥スカァァァァァァァァァァァァン
的を貫き貫通する矢。
その手応えで、クロードは十分満足だった。
「ん‥‥いい音だな‥‥」
そう告げると、クロードはアクセルに弓を戻した。
「俺は一生涯、弓一筋で渡っていく心構えだ。今はまだ駆け出しに過ぎないが‥‥そのうち、凄腕の射手が背後に控えている戦いの有り難さを、分からせる射手になる。射手と弓の未来を案じるなら、良い弓を作ってくれ。軽くて、丈夫で、力強く、より遠くまで俺達の技を届けてくれる‥‥信頼できる弓を」
「より精進ですか‥‥判りました、約束しましょう」
アクセルの瞳に、輝きが戻ってきた。
「確かに近接戦闘では剣や槍が、遠距離での攻撃では魔法に分があるかも知れない。だが、万人がそれを習得出来る訳じゃない」
そう話を切り出したのは、レオン・ウォレス(eb3305)。
「普通の人間なら膂力に勝る熊などと正面切って戦うことなど考えもしないだろう。鹿などの俊敏な、そして逃げ足の早い獣を剣一本で対処できるなどとはとうてい無理だろう。そこにこそ我々弓使いの存在が重みを増すのではないのか?」
弓使いとして生きるレオンは、自身の体験などから基づく話をアクセルに始めていた。
「膂力の勝る熊にさえ遠距離からの攻撃で致命傷を与えることが出来、鹿などの俊敏な獣の動きにも速やかに対処でき、追撃の攻撃すら簡単に掛けることが出来る。魔法がいかに強力とはいえ詠唱の時間のロスを考えれば、自ずと弓使いに分があるのではないのか? それに俺のように我流でも弓を自由に操ることが出来る。 才能無き者を門前払いする魔法使いの世界より広く門戸を開けているのだから、けして弓使いの未来は暗いものじゃないと思うのだが」
これから先、無限に広がっていく可能性を語るレオン。
そしていよいよ、殿の登場である。
「張り合いがないのなら、目標を作ればいい。僕はそう思うけど?」
そう話を切り出したのはクィディ・リトル(eb1159)。
いきなり話の確信を突いてみたらしい。
「まあその目標すらも決めかねてる状態なんだろうね。目立ちたいから今まで弓を作っていたわけじゃないんじゃないの? なのに弓がもてはやされないから作る気が失せたわけ? かわいそうだなとは思うけど、甘えだよね、それ」
そうサラリと告げるクィディ。
「自分の作った弓が埃を被っているのを見たくないなら、あなたの弓を真に必要としている人だけに作ってあげればいい。それこそあなたの人生に輝きを残すような立派なものを。数を減らして質を上げればいいんだ。‥‥まあそのかわり、あなたの収入は落ちるだろうけどね」
それもまた、頑固職人のような生き方であり、一つのスタイルであることは事実。
「たとえば僕に、弓を作ってくれない? 体力のない僕でも持てるような軽い弓を。威力は従来のものより低くなっても、需要はあると思うよ。これはあなたの腕を見込んで言ってるんだ。『準名匠』じゃなくて、『名匠』になってよ」
そう告げたとき、アクセルは数本の弓を手に取る。
そして其の場にいる全員の腕の採寸を取ると、一人一人のサイズに見合った、それでいて手に馴染む弓を作り始めた。
それが完成したのは翌日。
「これが、俺なりの答えです‥‥」
そう告げて、全員にお礼としてアクセル作の弓を手渡す。
完全なるオートクチュール。
受注清算でしか作られない、自分のみにしか使えない弓。
それを手にした一行は、アクセルに丁寧にお礼を告げると、パリへと戻っていった。