【シチュエーション】お別れの条件

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:06月08日〜06月16日

リプレイ公開日:2005年06月14日

●オープニング

──事件の冒頭
「‥‥」
 いきなり冒険者ギルドの受付カウンターで硬直しているのは、御存知新人受付嬢のエムイ・ウィンズ。
 その目の前では、瞳をウルウルとさせている『アイちゃん』が、エムイの方をじつと睨んでいた。
「申し訳ございません。お子様からの依頼を受ける訳にはいきませんので‥‥」
「ちゃんとおかねもあるもん。まいにちまいにちおつかいにいってきて、おだちんをためたんだもん!! だから、アイちゃんがいらいにんでおしごとをたのみにきたんだもん!!」
 そう力説しているのは、御存知『サン・ドニ修道院のちびっこアイちゃん』。
 其の日も、冒険者ギルドに仕事依頼にやってきたのであるが、惜しい、相手がエムイ嬢なら無理っ!!
「もっと大人の人‥‥そうね、シスター達と一緒にきてね。そうしたら考えてあげるね」
 そう言われたものの、アイちゃんはプーーッと膨れてギルドを後にした。

──そして
 あちこちと歩き回っていたアイちゃん、とある冒険者酒場の前を通りかかったとき、ピンときた。
 入り口から出てくる貴方の前でアイちゃんはテヘヘッと笑いながら、こう告げた。
「あのね。おとうさんのところにつれていってほしいの‥‥」
 其の手には、一通の手紙が握られていた。

●今回の参加者

 ea1596 フィーラ・ベネディクティン(27歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 eb0597 雪 月華(23歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0937 黒畑 五郎(53歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb1158 ルディ・リトル(15歳・♂・バード・シフール・イギリス王国)
 eb2321 ジェラルディン・ブラウン(27歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb2648 ニャム・ハーム(19歳・♀・ウィザード・シフール・ノルマン王国)

●サポート参加者

アハメス・パミ(ea3641)/ フェリーナ・フェタ(ea5066

●リプレイ本文

●という事で〜まずは許可を取ってからね〜
──サン・ドニ修道院
 さて。
 今回の依頼‥‥というか、頼まれ事はかなり変則的であった。
 どれぐらい変則かというと、まず、保護者であるシスターの許可を必要とするところから‥‥なんだかなぁ。
「ご無沙汰していますわ、シスター・アンジェラス。今日は御願いがありまして‥‥」
 修道院の院長室にて、そう話を切り出しているのはフェリーナ・フェタ。
 その側には、ジェラルディン・ブラウン(eb2321)も立っている。
「お願いですか? 私の出来ることでよければお力になりますが」
 そうにっこりと微笑みつつ告げるシスター。
「実は、ここのアイちゃんから頼まれたのですが‥‥」
 そう話を切り出すと、事の真相を一通り説明するジェラルディン。
「成る程。判りました。それでは、シスター・アイの外出を許可しましょう。あの子にとっても、いい経験になるでしょうから‥‥宜しくお願いしますね」
 にっこりと笑みを浮かべてそう告げるシスター・アンジェラス。
 まずはこれで、一歩前進。

──そのころの商人ギルド
「暫く見ないうちに、随分とさまになっているんじゃないか?」
 トン、とアハメスの肩をたたきつつ、豪快に告げているのはお久しぶりのマダム・グレイス。
「マダムもお変わりなく。最近は忙しいのですか?」
「ああ。ドレスタットとパリを行ったり来たりさ。たまーにイギリスにも行くけれどね‥‥」
 そう告げつつ、マダムは箱の中に納められている奇妙な金具をアハメスに見せる。
「これを取り扱い始めてね‥‥まあ、それはおいといてと。今回の冒険はどこに向かうんだい?」
「いえ、私はお願いに来ただけでして。実は‥‥」
 そう話を切り出すと、アハメスはマダム・グレイスに今回の事件について説明。
「ああ、あの海域だね。次の荷物の入荷まではあたしも暇だから、出してあげるよ、船。格安でね」
 タダでとは言わないところが商人。
「じゃあ、荷物を纏めておいで。場所は昔の航海日誌を見れば判るからね‥‥」
 頼もしい味方を付けて、いざ冒険者一行は出発!!

──そのころの船着き場
「ああ、あの船か。あの辺りの航路は今は閉鎖されているからなぁ‥‥」
「御願いです。大体の位置だけでも‥‥」
 そう頼み込んでいるのはフィーラ・ベネディクティン(ea1596)。
 沈没線の座標をより絞りこむ為に、フィーラは船着き場で色々と聞き込みを行なっていた。
「そうさなぁ‥‥」
 さすがに、船着き場の人たちでは、やはり詳しい場所までは判らなかった模様。
 それでも、あちこちで聞き込みをして、後にマダム・グレイスと詳細を打ち合わせる。
 どうにか航路の決定をおこなうと、いよいよ川を下って交易船『グレイス・ガリィ号』に乗り込んでいざ出発!!


●海の上〜なつかしい光景ですねぇ〜
──甲板にて
 トンカントカンカ
 慣れない手付きで空気樽を作成しているのは黒畑五郎(eb0937)と雪月華(eb0597)。
 あちこちの店からいらなくなった樽を譲り受けると、中に皮を張付けて加工。
 それを五郎がロープで一定間隔に結び付けているところであった。
「こっちはあと20で終了。そっちはどうだ?」
 そう問い掛ける月華。
「拙者のほうはまだなんとも‥‥ニャム殿、ロープの続きを頼むでござる!!」 
 その五郎の叫びに、後方でロープと格闘しているニャム・ハーム(eb2648)が慌てて繋げたロープを抱えて飛んでくる。
 6mのロープを次々と繋げ、二本のロープを作っていたニャム・ハーム(eb2648)。
「はいはい、ただ今〜。先に樽に繋げる奴を持っていくねー」
 なにかと甲板上は忙しいようで。
 その側では、大きめの空気樽の中にすっぽりと入っているアイちゃんの姿があった。
「えへへへーーー。このなかにはいってもぐるのですか?」
 初めての船旅ではないらしく、アイちゃんはかって知ったる船の中と、ルディ・リトル(eb1158)と一緒に探検ごっこ。
 そして一通り見た後、甲板に上がると自分が入る樽の確認をしていた。
「そうそう。おいらも一緒に入るから、安心してねー」
 そのまま樽の中に入ると、楽しそうに話をはじめていた。
「そういえばさー。アイちゃんはー、おとーさんとおかーさんに会えなくて寂しいんだよねー? おいらもおとーさんとおかーさんにはしばらく会ってないんだー。だからアイちゃんとおんなじー」
「んー、アイちゃんはさみしくないですよー。今日もおとうさんにおてがみをもってきたんですよー」
 ニコニコと告げるアイちゃん。
「そうかー。おいらも寂しくはないのー。前におかーさんが言ってくれたんだー。『心細くなったら、お父さんが奏で、お母さんが唄っていた歌を、おまえが大空に向けて奏でなさい』って‥‥そうすれば、おとーさんとおかーさんのもとにもきっと届くから、届いたら、同じ歌を返してくれるから、って‥‥」
 そう告げて、ルディは鼻歌を歌う。
 そしてアイちゃんも、ニコニコとしながらルディと共に鼻歌を歌っていた。


●到着〜流石は百戦錬磨の冒険者〜
──座標地点
「アンカーを降ろせ────っ。マストを絞って、ここで待機」
 船長の言葉が甲板に響く。
 一行はアイちゃんを交えて、早速最終打ち合わせを開始。
 五郎はアハメスから聞いた算段を説明すると、各員が自分達の持ち場に着いての役割を確認。
 そののち、一行はいよいよ行動開始。
「全部で5匹か‥‥」
 甲板上からも確認できる鮫の群れ。
 早速、囮となる魚の臓腑を海に撒くと、見る見るうちに鮫が集ってくる。
 それを甲板上から銛で突き刺す五郎。
──ドシュッ
「手応えあり。このままっ!!」
 次々と銛を構えると、傷を追っていない鮫にも攻撃を開始。
「水の精霊よ‥‥彼の者に冷たき息吹を‥‥」
 フィーラも魔法詠唱開始。
 銛が突き刺さり、海上付近で暴れている鮫に向かってアイスブリザードを発動。
 さらにルディがムーンアローを発動。
 なんとか鮫たちに止めを刺していく。

 そんなこんなで2時間

「全部で8匹。まあ、こんなものか‥‥」
 そう告げる月華。
 返り血を拭い、借りていた銛を戻すと、いよいよ作戦開始。
「それじゃあいってくるねー」
 ニャムが魔法詠唱開始、ウォーターダイブを発動させると、そのままガイドロープの端を持って海に飛込む。
(あったあった‥‥入り口は‥‥)
 そのままゆっくりと潜っていくと、ニャムはガイドロープをマストに固定してから船内に侵入。
 ゆっくりと周囲の安全を確認すると、ニャムはいよいよ船長室にたどり着く。
(もう死体も残っていないかぁ‥‥)
 開け放たれた扉、朽ちた窓。
 そこを魚達が優雅に泳ぐ。
 遺品は去年回収された為、そこにはなにも残っていない。
(よいしょっと‥‥)
 そのまま安全確認を終えると、ニャムはロープに戻って合図を送る。

「合図です!!」
 フィーラの叫びと同時に、水夫達が樽を次々と送り込む。
 五郎も樽を抱えて着いていき、いよいよアイちゃんとルディの入った樽が降ろされていった。
 下では、空気樽を確保したニャムが次々と準備。
 降りてきた五郎とアイちゃん達の入った樽を船長室に案内。
「それじゃあいくよ!!」
「うん」
 胸いっぱいに息を吸って、アイちゃんとルディはそのまま水の中にザブン!!
 静かに船長室をぐるりと見渡すと、アイちゃんは奥にあったテーブルの引出に、手紙をソッと忍ばせてきた。
 そして樽の中に戻ると、息を整え、もういちどザブン。
 暫くはそれを繰り返していたアイちゃんだが、まもなく一行と一緒に船へと戻っていく。


●帰路〜そしてさようなら〜
──港にて
 無事に任務を終えた一行。
 港でグレイス商会の船と別を告げると、あとは川をさかのぼってパリへと戻る。
 旅の帰路も、アイちゃんはいつものように元気だった。
 そして無事に教会に到着すると、一行に頭を下げてこう告げた。
「アイちゃん‥‥おとうさんと、お別れしてきたんですよー。これから、お母さんの所に‥‥」
 ボロボロと涙が溢れるアイちゃん。
 ジェラルディンはそっとアイちゃんを抱しめる。
「お父さんとお母さん。二人分、アイちゃんが幸せにならないと駄目なんだよ?」
 その言葉と同時に、アイちゃんは、大きな声をあげて泣いた。
 
 これから、幸せになる為に‥‥。

──Fin