●リプレイ本文
●はじまりますよっ〜ドレスタットオープン戦〜
──ドレスタット郊外・コース横特設会場
「ドレスタット競馬ファンの皆さんご無沙汰しています。『予想屋の郷原万太郎』こと『マンシュウ』の『ボクに聞けっ!!』です。今回は初めてのオープン戦。厩舎の意地ではなく馬の意地。注目は『深きインパクト』。訓練時点での6馬身差ぶっちぎりの仕上がり、今回のレースまで維持できているか見物です」
ビシッと掲示板に張付けられているデータを指差すマンシュウ。
「そして今回もっとも勝利に近いのがこの2頭。帰ってきた『最強のキングズ』と『帝王・トゥーカイ』。それでは賭札は隣の売店で販売していますので急いで購入してくださいっ!!」
──パーラパーパラパパーー
笛の音が響く。
各馬一斉にスタートラインに向かう。
「さて‥‥これを着ているとレースになりませんからねぇ‥‥」
そう告げて、カイ・ミスト(ea1911)は着込んでいた『まるごとレヲなるど』を脱ぐ。
──オオオオオオオオオオオオ
その瞬間、会場からは完成が沸き上がる。
前回G1最優秀騎手にして、今回パリ競馬でも猛威を振るっている騎手・カイ。
その彼が騎手を務めるとなると、賭けは成立しなくなってしまう。
既に勝馬投票札の販売は終了。
そのままカイも今回『最強のキングズ』に乗り、ゆっくりとスタートゲートに向かった。
やがて笛の音が最高に達したとき、スタータと呼ばれる人がスタートライン横に着き旗を掲げる。
そして音が静かになっていき、消えた瞬間に旗が一気に振り下ろされた。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」
各馬一斉にスタートしました。
まずは大内から『深きインパクト』が回ります。続いてざっと4馬身、『激情のトップガン』と『最強のキングズ』、『贖罪のタマモ』のグループが走ります。
そこからさらに2馬身で『漢・ツルマール』『伝説のマーベラス』『怒りのブライアン』『皇帝・ルドルフ』『漢・ジービー』『王者・アドマイアー』『最高のウィーク』が団子状態。
スローペースながらも、まさに激しいレースが期待できます。
「『春麗』っっっっ頼むから走ってよっ‥‥」
スタートゲート内。
『春麗』はじっと他の馬が走っているのを見送っていた。
その背中で、アルト・エスペランサ(ea3203)は涙を流しながら手綱をじっと握り締めている模様。
ああ、こうなるとは予想もしていないアルト。
とりあえず合掌。
残り2200m、順位変動なし
「こ、この走りは‥‥まさか?」
戦闘を走る『深きインパクト』の背中で、龍宮殿真那(ea8106)はゾクゾクッとする感覚に襲われていた。
それは、いまだ忘れていないなつかしい感覚。
『静かなるスズカ』と同じ走り、同じ加速。
まるで、『静かなるスズカ』が力を貸してくれているかのような。
「良い感じだ。このままを暫くキープさせてもらう!!」
湯田鎖雷(ea0109)は静かにそう告げると、体力を温存したまま今の場所をキープ。
その湯田の言葉に従うように、『漢・ツルマール』は静かに走っていた。
残り2000m、順位変動あり
「あんな大逃げの馬なんて、追いかけたらスタミナがきれちゃいますわ」
冷静な判断で『怒りのブライアン』の手綱をコントロールしているのはニューラ・ナハトファルター(ea0459)。
スローペースゆえ、今の位置をキープしつつ目的のコーナーまではじっくりとタイミングを計っている模様。
「‥‥加速では、こちらが上と思っていましたが‥‥」
そう呟いているのは『最強のキングズ』に騎乗しているカイ。
現在2番手をキープ、すぐ前を走っていた『激情のトップガン』を追い抜くが、それ以上の加速が伸びない。
「去年のあの走りが感じられませんか。この半年の間に、なにがあったのですか‥‥」
そう『最強のキングズ』に問い掛けるカイ。
そしてすぐ後を、『激情のトップガン』が疾走している。
「まだまだです。『激情のトップガン』、貴方の本当の力はこんなものでは無い筈です!!」
先行2番手につけたは良かったものの、すぐさま後方から走ってきた『最強のキングズ』にぬかれてしまったレジーナ・オーウェン(ea4665)。
ジッと正面を見据え、いつでもダッシュが仕掛けられる体勢をキープ。
残1800m、順位変動なし
今回のレース、最大の敵はライバルではない。
多頭レースは初めての馬達、この乱戦模様に本来の実力を引っ張りだすことが出来なくなっている模様。
それを見越しての調教であったが、先行しきれなかった馬達は中堅、そして後続の馬群に巻き込まれて思うような走りをできない。
「いまいち走りが見極められないわ‥‥」
『皇帝・ルドルフ』に騎乗している大曽根萌葱(ea5077)。
いいポジションを一応はキープしているものの、それ以上の加速とタイミングを掴めない。
「パワーバランス、ペース配分、今のままで申し分なし‥‥無茶はしないほうがいいわ」
『伝説のマーベラス』を駆る時奈瑠兎(eb1617)。
目標ラインまであと半分!!
残り1400m、順位変動あり
「そろそろ仕掛ける頃合ね‥‥生まれや育ちに脚が生えて走るわけじゃないんだし、最後は心で勝負じゃない」
そう告げつつ、ゆっくりと外側に回りこむのは『王者・アドマイアー』を駆るリユニティ・ブラッドプール(ea9925)。
『深きインパクト』との合わせ馬で得た成果を、何処まで発揮できるか見物である。
「落ち着いてくださいね‥‥今はまだ勝負所ではありませんから」
前に出たい『贖罪のタマモ』を必死に押さえつつ、セイロム・デイバック(ea5564)はじっと最後の直線を待った。
その後方一群、『漢・ジービー』がややスパート開始。
まもなくコーナーに突入する一群。
戦闘は既に最終コーナーに突入、いよいよスパートが開始される。
「もう少しだよ‥‥」
そのガレット・ヴィルルノワ(ea5804)の言葉に反応したのカ、敢えて内一杯を差すように攻めていく『漢・ジービー』。
そして最も後方から疾風のように掛けてくる一頭の馬。
「いけます。今度こそ、雪辱を晴らすんだよっっ」
ギュッと手綱を握り締め、『最高のウィーク』とシルフィーナ・ベルンシュタイン(ea8216)、ここでスパートスタンバイ!!
──その頃のゲート
「早く走ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
アルト、絶叫。
あ、ゲート近くではなく、まだゲートの中でしたか『春麗』。
もっとも、スタートラインが直線後方からなので、今のままなら邪魔にはならない。
残り1200m、順位変動なし
各馬、ラストスパート開始。
それぞれがコーナー突入、突破ラインでの加速を開始した模様。
残600m、順位変動あり
「行きますっ」
最後尾からの爆発加速。
『最高のウィーク』がいきなり大外から次々と馬群を突破、いきなり5番手まで盛り返す!!
「今回も、貴方は2番手ですよ‥‥」
セイロムもラストスパート、『贖罪のタマモ』が加速開始 、同じく『最高のウィーク』と並んだ!!
そしてさらに横、『最強のキングズ』と『漢・ツルマール』、『激情のトップガン』も一列に走る。
──そして
「ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉるっ」
トップは『贖罪のタマモ』。奇跡の走りを見せてくれました。そして二着は首一つで『最高のウィーク』が勝利をもぎ取った。
1着:『贖罪のタマモ』
2着:『最高のウィーク』
3着:『漢・ツルマール』
4着:『最強のキングズ』
5着:『激情のトップガン』
6着:『漢・ジービー』
7着:『深きインパクト』
8着:『伝説のマーベラス』
9着:『怒りのブライアン』
10着:『王者・アドマイアー』
11着:『皇帝・ルドルフ』
12着:『春麗(うららかなるはる)』
そしてレースの終幕、ウィニングラン。
「‥‥」
観客に手を振って走るセイロム。
その後方では、シルフィーナが悔し涙を流しつつ走っていた。
「また‥‥トップに慣れない‥‥眼の前に壁があるみたい‥‥」
そしてその後方、ウィニングランが始まった瞬間に、『春麗』はスタート!!
いきなり『贖罪のタマモ』と『最高のウィーク』を追い抜いてぶっちぎりで走り出す。
その姿に、観客からは一斉に笑いが起こった!!
「うう‥‥もう恥ずかしくて死にたい気分‥‥」
アルト‥‥合掌。
〜Fin