【ノルマン江戸村発】はむはむ☆ぱにっく

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 18 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月20日〜06月26日

リプレイ公開日:2005年06月28日

●オープニング

──事件の冒頭
 記憶に新しいはずのパリ近郊シュヴァルツ城での激しい攻防戦、禍々しいそれを忘れようとするかのように、パリの住民は記憶に塵を積み始めていた。
 首謀者であるはずのカルロス伯爵は逃亡中、彼の窮状を救った上位デビル・アンドラスもその姿を闇に沈めている──故に、パリの冒険者ギルドも月道や王城他の重要な施設と同様に警備を厚くしていた。ギルドを束ね指揮を執るという重責を担うギルドマスターの執務室も当然厳重な警備が敷かれている。
 しかし、世に『完璧』というものは殆ど無く──今日もまた、厳重なはずの警備を物ともせず、ギルドマスターの執務室へ侵入を果たした者がいた。
 怪盗ファンタスティック・マスカレード、その人である。
「また何か、人手の必要な事態でも起きたのかしら?」
「麗しき御仁へ愛を囁きに‥‥と言って欲しかったかね?」
「前回のような厄介事よりは断るという選択肢がある分だけ、まだ嬉しいわね」
 招かれざる客ですまんね、と肩を竦める仮面の怪盗。招かざる客であり決して認めることはないが、ギルドの一歩、二歩、いや三歩は先を行くその的確な情報はフロランスにとって貴重な判断材料であることは否めなかった。
「伯爵が取り寄せた婚約指輪に興味があるようだね」
「──まさか」
 ギルドでも上層部しか知らないが、一連の騒ぎに関連し、伯爵から出された依頼郡の調査を行っている。護衛までつけて取り寄せた『婚約指輪』は今回の騒動に措いて重要な存在である可能性が指摘されているところだ。報告書では湖に沈んだと記載があり、先達て回収を指示したところである。
 怪盗と仲間たちの実力は報告書の僅かな記述でも充分に示されているが、人数にすれば僅か4名。相手が何者だろうとも、集団ならば殲滅には時間がかかる。
「群れはあらかた退治し追い詰めたのだがね、残念ながら数匹のインプが擬態して逃げたのだよ。白い動物に、ね」
 デビルが擬態でき得るのは生物のみであり、インプは姿を隠すことができない。そしてデビルの姿で行動し冒険者に発見されるリスク──全てを鑑みた時、少しでも無事に伯爵の下へ辿り着こうとしたならば動物に擬態するしかない。
 普段黒に近い鉛色の皮膚をしているため、インプはその単純な思考で白い動物に化ければ発見されないと思ったのだろう。白いカラスなどは目立って仕方ないはずだが、そこまで考えていないに違いない。
「動物に関係する依頼は注視しましょう。指輪は発見次第回収させます。詳細はその後に」
 重要なアイテムを有益に使いたいのは怪盗一味もギルドも同じ。諍いの種には覆いを被せ、再び懐疑と打算を孕んだ一時協定が秘密裏に締結された。

──一方、そんな事とはつゆしらず
「はぁ‥‥逃げた動物ですか」
 薄倖の受付嬢ニア・ウィンズが、目の前の老人にそう問い掛けていてた。

 我々はこの老人を知ってい‥‥るかな?
 今回の依頼人は『松五郎老人』。
 パリ南西シャルトル地方を治めるプロスト伯の領内で働いている動物のエキスパートである。

「そうなんですねー。とある『やんごとなき方』の元に、友達の『ハムスター君』たちをお披露目に向かう途中でゴブリンが襲ってきてしまいまして。まあ、護衛の方たちがなんとか蹴散らしてくれたのですが、その襲撃のときに馬車が1台暴走しまして、街道から外れて転倒していたのですよ。その中に積んであったケージが壊れて、6匹の『はむはむ』達がにげてしまったてんですよ。お願いですから探してください」
 なんとも間抜けな依頼である。
 こういう依頼を受けているからこそ、『冒険者=何でも屋』というレッテルが張られてしまうのに‥‥。
 と、そんな事を気にしつつも、受付嬢は依頼を纏めると、掲示板に張付けた。

●今回の参加者

 ea9543 箕加部 麻奈瑠(28歳・♀・僧侶・パラ・ジャパン)
 ea9655 レオニス・ティール(33歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb0597 雪 月華(23歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb2321 ジェラルディン・ブラウン(27歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb2476 ジュリアン・パレ(32歳・♂・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 eb2805 アリシア・キルケー(29歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●さて〜買い物、その後で〜
──パリ・商業区
 ガヤガヤ‥‥
 人通りの多い市場付近。
 今回の依頼をより円滑にクリアする為に、冒険者一行はハムスターの餌を買いつけにやってきていた。
 もっとも、そんなものが売っている筈も無い為、新鮮な果物や木ノ実、干した果物などを買い込んでいる。
「とりあえず、これだけあれば宜しいでしょうかねぇ‥‥」
 両手に干した果物が一杯入った籠を持った、箕加部麻奈瑠(ea9543)がそう告げる。
「そうだね。こっちは少しだけと果物と、木ノ実も売っていたから買い付けておいたけど‥‥」
 レオニス・ティール(ea9655)が同じ様に籠一杯の果物と木ノ実を麻奈瑠に見せた。
 そして皆が待っている馬車に戻ると、いざ松五郎と共にハムスター達の逃げた森へ!!


●迷いの森〜隅っこが好き〜
──森の中
 とにかく、一行は馬車で移動中に松五郎老人よりハムスターについてのレクチャーを受けた。
 どんな生態か。
 何が好物か。
 どういう所が好きか。
 等など。
 そして現地に着いたら、それらの情報と森の地形から、雪月華(eb0597)とジュリアン・パレ(eb2476)の二人がおおよその隠れ場所をマーク。
 一行は餌を分けあい、早速行動開始とあいなった!!

──麻奈瑠&月華の場合
『ヂーーーーーーッ』
 むき出しの岩場に追込まれたハムスター。
 麻奈瑠と月華の二人はハムスターを捉える為の罠を仕掛け、運良くそこに2匹のハムスターが引っ掛かった。
 それを捕まえようとして、ゆっくりと手を延ばし、麻奈瑠が一匹をキープ。
「ふ、ふかふかです♪〜」
 ギュッとハムスターを抱しめる麻奈瑠。
 それを横目に、月華も手を差し出したとき、ハムスターがジャンプ、そのまま逃げ出した模様。
「まてぇ〜私のふわふわ〜っ」
 一気にダッシュし、追い詰めた月華だが。
 ハムスターは追い詰められると、全身を震わせて毛を逆立てる。
 そして両手両脚をふんばって思いっきり威嚇。
「ふふん。その程度の脅しで、怯む私だと?」
 そう告げつつ、懐から餌を取りだすと、それをハムスターの眼の前に放り投げる。
『ヂーーッヂッッッッヂッヂッヂッ‥‥パクッ』
 最初は威嚇していたものの、ついにはそれを口に咥え、ほお袋にしまい込む。
「よしよし‥‥ほれ」
──ヒョイ
 次々と餌を放り投げる月華。
 やがて一通りの餌を投げると、月華はゆっくりとハムスターに近づき、後からヒョイと抱き上げる。
「所詮は動物。ちょろいものね」
 そのままギュッと抱きしめつつ、麻奈瑠の元にもどって行く。
 そして二人でハムスターを抱きしめながら、一路馬車へと戻っていった。
 ああ、二人とも『幸せオーラ』に包まれているような。


──レオニスの場合
「さて、あとは‥‥」
 ゆっくりと森の中を回っているレオニス。
 どの様な場所に隠れているのか、おおよそのレクチャーは受けている。
 あとは、それらしい地形を重点的に回りこみ、いるかどうか確認するだけであった。
 レオニスの担当した地域では、そのような地形が全部で5ヶ所。
 今のところ、4ヶ所回って収穫は0。
 最後の一角に向かっていた。
 そして最後の一ヶ所、茂みの影で、ハムスターは丸くなって眠っていた。
「眠っているところを起こしたら、ハムスターは臨戦体勢を取る‥‥だったね‥‥」
 そのまま静かにしゃがみこむと、レオニスはハムスターが起きるまでじっと観察していた。
 そして夕方、ハムスターが目覚めたとき、餌で引き付けてなんとかハムスターをキープ。
 そのまま松五郎老人の元に戻っていった。


──ジェラルディンの場合
「おいでおいで‥‥」
『ヂーーーーーッヂッヂッ』
 茂みで威嚇行動をしているハムスターに、餌を手のひらいっぱいに乗せたジェラルディン・ブラウン(eb2321)がそう話し掛けている。
 あちこちを探しまわり、迷子にならないように印しを付けての探索。
 どうにか発見したものの、既にハムスターは脅えた様子。
 親身になって近づいたジェラルディンに向かって全身を震わせて威嚇行動をしている。
「チッチッチッチッ‥‥大丈夫よ。恐くないから‥‥」
 泣き真似を真似つつ穏やかな口調で話し掛けるジェラルディン。

──そして1時間後
『チッチッ‥‥』
 ようやく興奮が解けたのか、はたまたお腹が減ったのか、ハムスターは静かにジェラルディンに近付く。
 そして手のひらの餌をモグモグと食べ始めた。
(撫でたい‥‥)
 もごもごと餌を食べている姿に心が揺らぐ。 だが、松五郎老人曰、『餌を食べているあいだに手を出すと、噛みつかれるのでしないことです』と言われている為、満足が行くまでそのまま食べている姿を見守ることにした。
 そしてようやく食べおえた時、ジェラルディンはハムスターをだっこして、一路馬車へと帰還。


──ジュリアンの場合
「ほれ‥‥そっちそっち‥‥ほれほれ‥‥」
 デーンとうごかないハムスターを後から追っ付けているのはジュリアン・パレ(eb2476)。
 他のメンバーとは、ちょっと様子が違う。
 ジュリアンの発見したハムスターは、発見当時から一歩も動いていない。
 時折欠伸(あくび)をしたりするが、すぐまた丸くなって眠ってしまう。
「またこれを使いますか‥‥」
 そう呟きつつ、人差し指と親指で餌をつまみ出し、それをハムスターの鼻先で振る。
『ヒクヒクッ』
 鼻をヒクヒクとさせるハムスター。
 そしてゆっくりと頭を持ち上げると、口を大きく開けてアーーーン。
──カプッ
 と食べる直前、指を少しだけ下げて餌を食べさせないジュリアン。
 その動きに合わせて、ハムスターは一歩だけ前に出ると、それを素早く食べてしまった。
 ちなみに、ここまで実に4時間。
 動いた歩数、実に8歩。
 抱しめようとすると、口を大きく開いて威嚇する為、ジュリアンもどうしていいか判らない。
「困りましたねぇ‥‥力ずくというのは好きではありませんし、何より主の教えに反します‥‥ここは、皆さんが迎えに来るまで、貴方と行動を共にしましょう‥‥」
 そう告げると、ジュリアンはそのままハムスターと暫く付き合うことにした。

 なお、夕方、他のメンバーがジュリアンを探しにやってきたとき、ジュリアンはハムスターの身体に頭を埋めて昼寝をしていた模様。
 とても心地よさそうな、安らかな寝顔であったとさ。


──アリシアの場合
『ヂーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ』
 叫びつつ走るハムスターがニ匹。
『ヴォゥヴォウヴォウッ!!』
 それを追いかけている狼が一匹。
「ちょっと待ちなさい──────って、待てやゴルゥァ!!」
 上品という名のヴェールが剥がれ、たくましい口調で叫ぶアリシア・キルケー(eb2805)がその後から追いかけている。
 ようやく発見したハムスター。
 だが、それは既に『おおかみさん』の晩ご飯というレッテルが張付けられていた。

 逃げる晩ご飯
 追いかける狼
 さらに追いかけるアリシアと、実に忙しい。

「ハァハァハァハァ‥‥無理だぜ。こんなの追い付く筈ねーじゃ‥‥ん・ と、ああ、すいません、そのハムスター達を止めて頂けませんか!!」
 前方に人の気配を感知。
 素早く自前の『猫をかぶる』と、アリシアは再び上品という名のヴェールで真実を覆い隠す。
 あんた、いい味出しているよ。
「ハムスター‥‥ですか?」
 そう告げると、通りすがりの吟遊詩人は、素早くハムスターにスタンアタックを叩き込み、瞬時にニ匹を気絶させた。
 さらに追いかけていた狼に武器を向けると、じっと睨みつけるだけで相手を追い返した。
「ふう。これで良かったですか、お嬢さん」
 そう告げると、吟遊詩人は転がっているハムスターを抱きかかえると、もう一匹を駆けてきたアリシアに手渡した。
(くぅぅぅぅっ。なんちゅういいタイミング、絶妙な美形。そして吟遊詩人で戦闘のプロ。これほどいい話はないぜっ)
 心の中のアリシアがそう呟く。
「あ、ありがとうございます‥‥」
 もじもじとしつつも、そっとハムスターを受け取ると、そのままギュッとハムスターを抱しめる。
「無事で良かった。気絶しているだけだから、すぐに気が付きますね?」
 そう問い掛けるアリシアに、吟遊詩人はニコリと微笑みつつ。『ええ』とだけ返す。
(よっしゃあ!! いい男ゲットぉ。ろくすっぽな男がいなくて面白くねぇ依頼と思っていたけれど、これでロマンスの花でも咲いたら文句なしじゃねーかよ)
 えーっと。
 いいかげんどっちが本当の自分かよくわからないのですが。
 という突っ込みはおいといて。
「私一人では仲間の元に連れていけないので、一緒に来てもらえませんか?」
「ええ。構いませんよ‥‥」
 そうこうしているうちに、アリシアは一行の元に帰還となったのですが‥‥。


●そしてデビル発見〜しかも二人ですか〜
──ベースキャンプ
「まいりましたねぇ‥‥」
 困った表情の松五郎老人。
 一行が捕まえてきたハムスターの数は、全部で7匹。
 元々逃げていた6匹+正体不明のハムスターが一匹。
 もっとも、白いハムスターは元々一匹しかいなかった為、それがニ匹いる時点で、どちらかがデビル確定。
「どちらかがインプの変身ということになりますか」
 レオニスがそう呟く。
「ええ。もしそうであるなら、それ相応の対処をする必要がありますわ」
「ということで、早速お願いしますね」
 ジュリアン、そして月華がそう告げる。
 そして麻奈瑠が静かに印を組み韻を紡ぐ。

──ディテクトアンデット!!

 ブゥゥゥンと麻奈瑠の感覚に『2体の不死者』が反応した。
 一体はゲージの中で脅えている白いハムスター。
 そしてもう一体は、アリシアと共に来た吟遊詩人。
「あ、貴方は一体‥‥」
 そう告げて、吟遊詩人に対して戦闘態勢を取るアリシア。
「ああ、私ですか? ちょっと昔の知人の残した仕事に興味がありましてネェ‥‥」
 ブゥゥゥンとその姿が男性から女性へと変貌する。
「初めまして。ヘルメスと申します。さぁて、私はこのまま退散しましょう。この地は目的の場所では無かったようですから‥‥」
 そう告げると、ヘルメスと名乗った女吟遊詩人はスーーッと姿を消していった。

──そして
 残ったインプをレオニスのオーラパワー&月華のシルバーダガーで袋叩きにしたのち、一行は無事に依頼を終了、松五郎老人と共にパリへと帰還していった。

 なお、この帰りの道中、アリシアはずっと落ち込んでいた事はいうまでもない。
「女で‥‥しかも悪魔だったなんて‥‥ひどすぎるぅぅぅぅぅぅぅぅ」
 いや、ごもっとも。

〜Fin