●リプレイ本文
●限られた命〜交渉人・無天焔威〜
──パリ・ニライ宅
「では、現在も二人の遺体は行方不明なのですね?」
静かに目の前のシフール、ニライ・カナイにそう問い掛けているのは無天焔威(ea0073)。
自分の心の中に引っ掛かっていた、アルジャーン達の遺体の行方。
ニライ査察官の方でもそれを調査していたらしいが、いまだ手掛りはなし。
「何処か、冒険者が彼女らしい人物を見たという報告も上がってきています。ですが、それ以上の報告はいまだゼロ。引き続き調査はしていきますが、そちらでもお願いします‥‥」
ちなみにまだ寝起き間もないニライ。
なんとか話をしているものの、瞳がショボショボしている。
「あと、今後対シルバーホークとして、ヘルメス対策も考える必要があるんですよ。レジストデビルを高位であつかえるクレリックを協力者としてお願いしたいのですが‥‥」
そう告げると、ニライはしばし思考。
「では、その時にはブルーオイスター寺院から数名、クレリックを派遣して頂きましょう。あそこにいたファザー・アンダーソンはデビルに対して知識を持っていますし、寺院でも『エクソシスト(悪魔祓い)』としての称号を得ています。彼とその従者達でしたら、それなりの力を持っていると‥‥」
そう告げると、ニライ査察官は眠そうな目を擦りつつ、其の場を後にした。
●貴方はどこに〜尋ね人、いねぇ!!〜
──シャルトル・プロスト領中央・ノートルダム大聖堂
さて。
アンリエットの消息を求めて、クリス・ラインハルト(ea2004)とハルヒ・トコシエ(ea1803)の二人は酒場マスカレードを訪れた。
だが、そこではここ最近、アンリエットの姿を見ていないという事で、取り敢えずハルヒの提案でエムロードに会いに行くこととなった。
そして道中、ほーちゃんと三笠明信(ea1628)も合流し、全員でノートルダム大聖堂にやってきたのである。
「これはこれは。遠路はるばるようこそ‥‥」
司祭の一人が一行を迎え入れる。
「早速だけど、大司教と話がしたい‥‥」
そう告げると、ほーちゃんが3人の前に立ち、丁寧にそう告げる。
「それではこちらに‥‥」
そのまま教会の中を歩く一行。
木洩れ日が差す中庭。
そこでは、エムロードが静かに本を読んでいた。
「があがあ♪〜」
って、アンリエットもいるし。
「アンリエット!!」
「アンリ!! 探したのよっ!!」
慌ててアンリエットに駆け寄るクリスとハルヒ。
「があがあ‥‥クリスおねーちゃんとハルヒおねーちゃん!!」
楽しそうにそう呟くアンリエット。
「がおがお!! 元気だった?」
ハルヒはドラゴンのぬいぐるみを取り出して、アンリにそう話し掛ける。
「があ、元気♪〜」
にっこりと微笑みつつ、アンリエットはそう告げる。
(私のことも覚えていてくれている‥‥でも、昔のアンリじゃないのね‥‥)
以前のアンリと一緒にいた時間。
ハルヒはそれを思い出し、今のアンリが以前とは異なることを理解した。
その側では、三笠がエムロードに挨拶をし、そのままクリスとほーちゃんの話を聞いていた。
(まあ、とりあえずは顔を繋げただけでもよしというところでしょう‥‥それにしても‥‥素直な少女ですね‥‥)
それが三笠の素直な感想であった。
「エムロードちゃん。実は、アンリの事について聞きたい事があるの‥‥」
そう問い掛けるクリス。
「私に判る事であれば‥‥」
「辛い昔を思いださせてしまうかもしれないけれど‥‥アンリ、昔のように戻る事はできるの?」
そう告げるクリスに、エムロードは頭を左右に振った。
「シルバーホークを‥‥組織を抜け出す方法は二つに一つ。屍となるか、それとも‥‥アンリのように、心を破壊されるか。破壊したのはヘルメスだから、彼女しかアンリを元に戻す方法はしらないの‥‥それに」
そう告げてから、エムロードは静かにこう付ける。
「アンリ以外に、組織を生きて抜けた人もいないから‥‥ひょっとしたら、まだアンリエットに何かをさせようとしているのかも‥‥」
「‥‥そんな事はさせないわ‥‥」
そのエムロードの言葉に、ハルヒが反応。
ギュッとアンリエットを抱しめつつ、力を込めてそう叫んだ!!
「‥‥」
其の場の空気が凍り付く。
そしてその空気を切り裂いたのはほーちゃん。
「何故‥‥死体なんだ?」
「?」
頭を捻るエムロードに、ほーちゃんは再度告げる。
「アルジャーン達の死体を盗んだ奴‥‥もしシルバーホークなら、死体ではなく、エムロードを攫えば棲む筈。死体である必要がどこにあるんだ‥‥エムロード、心当りはないか?」
そう問い掛けるほーちゃんに、エムロードがしばし思考。
「‥‥ヘルメスさんでも、もし本当に必要なら『魂』であり『肉体』ではないから‥‥ごめんなさい‥‥」
そう告げると、エムロードはシュンとしてしまう。
「あ、いや、そうじゃなくて‥‥いいんだ。心当りが無いとすれば、シルバーホーク関係でないかも‥‥しれないから‥‥」
そう自分に言い聞かせようとするが、やはり腑に落ちない。
そんなこんなで、大司教との謁見の時間となり、ほーちゃんはそちらに移動。
クリスは待ち合わせていたリスターと合流し、プロスト城に移動開始となった。
●子供達の為に〜必要なものは全て〜
──古い寺院
「‥‥ゴホゴホ」
煤がつき、蜘蛛の巣がびっしりと張っている古い建物。
ノートルダム大聖堂が出来る前、今のプロスト卿の父親がこの地にやってきたときに見つけた古い建物。
「整備すれば使えるとは思います。ちょっと離れていますが、昔は農地として使っていた土地もありますから、まあ使い勝手という点では多少不便かとは思いますけれど‥‥」
そうリスター達に話し掛けているのはプロフェッサーことプロスト卿。
「ありがとうございます。これで子供達も助かります」
丁寧にそう頭を下げているのはリスター・ストーム(ea6536)。
アサシンガール達を助ける為、リスターは仲間たちと共に彼女達の受入口を捜していた。
だが、アサシンガール達の経緯を知るものは、そんな危険な子供達を受け入れることは出来ないと断わる始末。
幸いな事に、カタリナ・ブルームハルト(ea5817)が以前の依頼でプロスト卿に話を振ったところ、話がトントン拍子で進み、責任者と会いたいという事になったのである。
「それでは、お約束通りこの施設を子供達の為に使わせて頂けるのですねっ!!」
にこやかにそう告げるカタリナ。
「使う分には構いませんが、整備のしなおし、その他については全てそちらの自費でお願いしますね‥‥こちらとしては100Gの援助は約束しますが、それ以上のかなりの金額がかかるかと思います。それと、この建物を管理する責任者を決めなくてはなりませんし。まあ、色々とやらなくてはならないことはありますが、頑張って下さい」
そう告げてから、プロスト卿は其の場をあとにする。
そして残ったカタリナ、リスターの二人は、居間らしき空間に赴くと、これからのことについて色々と考える。
「建物の整備、農地の手入れ、管理人。参った‥‥」
クリアしなくてはいけない事が山のようにあった。
「建物の手入れとかは、プロスト卿に頼んで良い大工とかを紹介してもらえばOKと。農地もその方法で。問題は一つ、常にこの施設にずっとといて管理できる人。子供達の面倒を見て、食事やその他のコトが出来る人を探し出す‥‥うーーーーーーん」
腕を組んで考えるカタリナ。
「悩んでも仕方ないか。とりあえず動くとするか」
重い腰をあげつつ、リスターはカタリナと共にプロスト城へと移動開始。
──そしてプロスト城
「大工その他の手配ですか。まあ、専門家に見てもらうのが一番でしょうからねぇ‥‥それと農地についても‥‥幸いな事に、『ノルマン江戸村』には宮大工の源さんがいますから、紹介状を書いておきましょう。それに、あの地には農家が大勢いますし、色々とアドバイスを受けるのも良いかとは思いますけれど?」
こうして二人は、紹介状を書いてもらいノルマン江戸村に向かう事となった。
●江戸村騒動〜まあ、いつもの事ですから〜
──鍛冶屋トールギス
「銀の武器ねぇ‥‥」
巨大なハサミを構えつつ、鍛冶師トールギスがそう呟く。
ほーちゃんと三笠の二人は、対悪魔戦を想定して銀の武器の注文にやってきたのである。
だが、トールギスは渋い顔。
「ディンセルフの紋章剣を持った上位悪魔と戦うには、それしか方法がないんだけれど‥‥どう?」
そう問い掛けるほーちゃん。
「ああ、紋章剣が相手か‥‥なら」
そう告げると、トールギスは奥に入ると、一人の女性を連れてくる。
「紹介‥‥しておくか。ディンセルフの体得していた技術を全て受け継いだ一人娘、クリエムだ」
白装束を身に纏い、ペコリと頭を下げるクリエム。
「祖父達の造りし紋章剣。それが悪用され始めているのですね‥‥」
そう告げると、クリエムは奥から質素な鞘に納められている一振りの剣を持ってくる。
「ディンセルフさんの身内で、その技術を受け継いで‥‥で、紋章剣の話が‥‥ってことは、それはまさか『アイテムスレイヤー』?」
そう告げるほーちゃんに、クリエムは静かに肯く。
「そしてこれが、私の受け継いだ紋章剣ですわ‥‥」
アイテムスレイヤーの横にコトッと置かれた一振りの紋章剣。
すでに刃の部分は外され、柄だけの状態になっている。
そしてそれを手に取ると、クリエムはアイテムスレイヤーを柄から取り外し、その刃を紋章剣の柄に納めた。
「亡き兄の残した書簡に、これについての記述が記されていました‥‥ディンセルフ‥‥いえ、曾祖父の名を受け継いだ紋章剣『ダインスレフ』です‥‥もし必要なときが来ましたら、お貸ししますので‥‥」
そう告げると、クリエムは再び奥の部屋へと戻っていった。
「忙しそうですね‥‥」
そう告げる三笠に、トールギスが肯く。
「今度、北の名工の元に修行で行く事になったからな。この前一緒飲んだ時にそういう話になってな‥‥ワシの作った様々な物品も、あいつのもとで『魔法武具』としての実験をするらしいから‥‥」
そう告げつつ、幾つかの箱を取り出すトールギス。
「この籠手は‥‥ああ、噂の『ライトニングバスター』か。こっちは異国の武具、こっちも‥‥」
ほーちゃんがそう告げつつ、幾つかの武具を手にする。
「ライトニングバスターは、あいつの元で魔法武具に生まれ変わる。そうマシュウと話が付いたからな」
「マシュー?」
その名前には聞き覚えがない三笠だが、ほーちゃんはいきなりその名前を聞いて吹き出した!!
「マシュウって、まさかあの?」
「ああ、アレキサンドロ・マシュウ。ほら、ブレーメンシリーズの制作者。クリエムはあいつの元で修行する事が決まったからなぁ‥‥引越しの準備で忙しいんだろう。もっとも、マシュウの事情もあるから、引っ越すのは年が開けてからだな。明日にはライトニングバスターとかの図面とオリジナルを持ってお使いに行く手筈にはなっているが」
まあ、そんなこんなで銀の武器は手に入らなかったものの、それよりも強力な武具の貸与が約束されたからよし!!
──その頃のカタリナ
「『漆黒のシップ』‥‥元気だったかい?」
ノルマン江戸村からちょっとだけ離れたところ、松五郎と愉快な動物の村にカタリナはやってきていた。
そこで怪我により引退した『漆黒のシップ』と再開、元気そうなその姿を見てホッと一安心。
「松五郎さん、『漆黒のシップ』の容態はどうですか?」
心配そうにそう問い掛けるカタリナ。
「少しずつですが、脚の腫れが引いてきていますね〜。このまま療養していれば。来年にはまた走れるようになりますね〜」
その一言を聞いて、カタリナは一安心。
そのまま松五郎さんに『漆黒のシップ』の事を頼んで【江戸村】に戻っていった。
──そして江戸村では
「蛮っ。ここを開けるんだっ!!」
ドンドンと納屋の扉を叩いているのはリスター。
この江戸村にシスター・オニワバンこと大丹羽蛮ちゃんの実家があることをマスカレードから聞き出したリスター。
どうにか蛮ちゃんを連れてパリに戻りたいが、その蛮ちゃんはリスターの姿を見た瞬間に、納屋に引き篭ってしまった。
「マダムの事は謝るよ‥‥言い訳がましいが、銀鷹への命がけの潜入だったから‥‥俺って浮気症で駄目な奴だけど、一番愛しているのは蛮ちゃんだよ‥‥結婚したいとも思っている」
そう叫ぶリスター。
だが。
「駄目なの‥‥貴方が冒険者だから‥‥」
そう扉の向こうで呟く蛮。
「冒険者だから結婚できないのか?」
「貴方が冒険に行って‥‥私はずっと待っているだけ。不安なの‥‥怪我をしていないか? 危険な目に合っていないか‥‥前はそんなに気にならなかったけれど、最近はずっとそう‥‥心配なの‥‥それに、貴方が帰って来た時、必ず他の女性の匂いがするから‥‥」
そう呟く蛮。
その声はすでに涙声だった。
「約束して‥‥冒険者を『引退』するって。マスカレードなら、二人で生活していくだけの収入もあるし‥‥もう嫌なの、不安なのは‥‥嫌なの‥‥ね。お願い‥‥リスター‥‥」
そう告げる蛮。
リスターは言葉を失うが、一言、蛮ちゃんに告げると、其の場から立ち去った。
「すぐには‥‥約束できない‥‥時間が欲しい‥‥必ず迎えに来るから‥‥」
そしてリスターはパリに戻っていく。
大切な女性の悲しみを、その胸に刻みつつ。
●パリ〜やっちまったですかーーーーーー〜
──サン・ドニ修道院
静かに墓碑の前で黙祷を捧げているのはハルヒとクリスの二人。
亡くなったアサシンガール達の冥福を祈り、二人はここを訪れていたのである。
クリスはここに来る前に商人ギルドを訪れ、アサシンガール達の作った作物などの買い入れ口も確保した模様。
援助の件については、しばし様子見とのこと。
その後からは、ほーちゃんも姿を表わし、黙祷を捧げていた。
ブランシュの眠る墓碑。
そこで眠っているブランシュの石像を見せてもらうと、ほーちゃんはその墓の中にウエディングドレスやセブンリークブーツ、そのた幾つかの物品と金貨、手紙、そして特注で作ってもらったデフォルメほーちゃん人形『ちま1号』を納めてきたところである。
静かに小雨が降る。
生き残ったアサシンガール達の処遇は何とか目処が付いた。
リスターの交渉で、施設の修理などはプロスト卿から受け取った100Gでまかなえる。
農園についても、数名の農夫と話が付き、アサシンガール達が施設に引っ越してきてから通ってくれる事になった。
あとは管理人。
それが決まれば、いよいよアサシンガール達の引越しが始まる。
心の中の雨は、間もなく晴れる。
青空から希望の光がさしてくるのは、もう少し先‥‥。
〜Fin