【ふらり冒険】楽しんでいこう

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:6人

冒険期間:09月14日〜09月29日

リプレイ公開日:2005年09月22日

●オープニング

──事件の冒頭
「あら蛮ちゃん、随分とご無沙汰していたねぇ‥‥里帰りかい?」
「久しぶりだワン!! 手合わせだワン!!」
 そう告げているのは、ノルマン江戸村のとあるおばちゃんと御存知マスコットのわんドシ君。
「ええ。まあ、色々とありまして‥‥」
 そう告げると、シスター・オニワバンこと大丹羽蛮ちゃんは、久しぶりの故郷を満喫する為に、実家に戻っていった。

──実家では
「そろそろあんたもいい年なんだから、結婚して子供を作らないと‥‥」
 夕食の席では、年老いた両親が久しぶりの娘の帰宅に、料理をふるまっている。
「確か、好きな人はいるんだろう? 今度連れてきなさい」
 そう告げる父親に、蛮ちゃんの箸は止まる。
「うーん。でも、あの人は私のことを‥‥だって‥‥いつも何処かに行っちゃうし‥‥冒険者だし‥‥それに‥‥あの人だって、きっと私を大勢いる女友達の一人としてしか見ていないだろうし‥‥」
 そう告げる蛮ちゃんの瞳からは、大粒の涙が溢れている。
「‥‥どうして、好きになっちゃったんだろう‥‥あんな浮気性で甲斐性無しで女好きで冒険者で浮気性で女好きで女好きで女好きで‥‥」
 其の日、久しぶりの娘との再会を喜んでいた両親は、彼女の胸の痛み、辛さを分かち合っていた。


 まあ、それとは別の話として。
 そろそろ依頼を受けるだけでなく、貴方の心の思うままに旅をしませんか?
 この果てしないノルマンの空の下、本当の冒険を始めませんか?

●今回の参加者

 ea0294 ヴィグ・カノス(30歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea3203 アルト・エスペランサ(24歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

アハメス・パミ(ea3641)/ 薊 鬼十郎(ea4004)/ リュリュ・アルビレオ(ea4167)/ アルビカンス・アーエール(ea5415)/ エグゼ・クエーサー(ea7191)/ ヴィゼル・カノス(eb1026

●リプレイ本文

●それではいってみようかぁ!!
──パリ・ニライカナイ宅
 木洩れ日の差す中庭でのどかなティータイムをしているのはニライ・カナイとチェルシー・カイウェル(ea3590)、ヴィグ・カノス(ea0294)の3名。
「生存者の報告では、死者の身体から白いもやが抜け出し、それがシュバルツ城方面に飛んで消えていったという話だ。もっとも、同じ様な報告は、他の方面に情報収集に出ている他の騎士団からも受けている」
 そう告げると、ニライはチェルシーから受け取った一通りの報告書をじっと眺める。
「あ‥‥」
 そして静かに空を見上げると、ニライはしまったという表情を見せる。
「何かありましたか?」
「まあ、ちょっとな。あの時は寝惚けていて‥‥まあ、ほーちゃんには後日にでも訂正させてもらうか‥‥」
 それが何のことであるか、チェルシーには判らない。
 事の真相は、後日ほーちゃんから聞く事になるだろうが今はおいといて。
「今お渡しした資料は、全て対シルバーホークを経験した人物からの感想や報告です。今後の対策にも使えると思いますが」
 そう告げてから、チェルシーは少し考え、慎重に言葉を選んで話を続けた。
「今後想定されるシルバーホークや魔獣兵団との戦いにおいて、騎士団をはじめとする国家戦力の力は極めて重要なファクターです。ですが現状、ブラックウィング騎士団は壊滅状態。このままでは他の騎士団との連携もままなりません。代替戦力の当てはあるのでしょうか?」
「代替えはない。ブラックウィング騎士団は事実上解散しざるをえない。新たなる騎士団編成、その為の人員育成、そして力のあるものを、身分に囚われずに広く募集したい」
 そう告げてから、ニライはハーブティーを飲み干す。
「ほら。カン伯爵領でも、広く人材を集めていただろう?」
 その言葉に、チェルシーは静かに肯く。
 そしてそののち、チェルシーとヴィグにのみ伝えられたある計画。

 冒険者のみによる、『対シルバーホーク遊撃部隊・ブラックソード』の設営計画。
 そして選ばれる条件は二つ。

 一つは仲間を思いやる魂の持主である事。
 一つは、何者にも囚われない真の勇気をもつ者。

「チェルシー、そしてヴィグ。貴方たちはこれから、冒険者達の動向を調べて欲しいのです。その上で、二つの条件が合致するものを12名、リストとして提出してください。私は常に酒場に出入りするようにしますので」
 それで楽しいお茶会は幕を閉じた。

──パリ・ロイ研究室
「悪魔について教えて欲しい。特に、奴らが使う力についてを。対抗出来る様になる為に‥‥な」
 ヴィグはニライ査察官の家を出てから、ロイ教授の元を訪れていた。
「わしも、悪魔についてはまだ全てを調べたわけではないのじゃが‥‥」
 そう告げつつ、写本を開くロイ・マスタング教授。
 そしてヴィグに対して、現在の教授の知りうる限りの情報を流してみた。
 通常の武器耐性、変幻自在の変身能力、契約による対象のデビノマニ化など。
 そこまでは基本。
 ただ、ヴィグはどうしても腑に落ちない。
「教授。神と敵対する悪魔が、何故神の奇蹟を行使できるんだ?」
「ふむ。それには深いわけがあるのじゃよ」
 そしてロイ教授は静かに答える。
「元々悪魔とは、神々の下僕。それがとある理由で堕天し、悪魔となった。可哀想なフォーリング・エンジェル。それが悪魔じゃよ。それゆえ、神々の力を行使できるのは当然なんじゃ。それに加えて、自分達の魔術を行使し、現世に姿を表わしては悪の限りをつくしている‥‥。下級と呼ばれる者たちはまだ対処方法があるが、それより上位の者となると、人間が相手出来る存在ではない‥‥」
 そう告げると、ロイ教授は傍らに納められている『紋章剣』を手に取る。
「それゆえ‥‥人は魔と戦う為に、このような魔法武具を生み出したのぢゃよ‥‥これを真面に使うには、強き魂とオーラ、そしてワルブルギス・アーツと呼ばれる戦闘体術を体得しなくてはならない‥‥と、ここまでじゃな」
 それでも十分。
 チェルシーは今までの言葉の総べてを脳裏に叩き込む。
 そしてヴィグも、それらを心に刻みこむと、そのまま二人は次の地へと向かっていった。

──酒場・マスカレード
「ふぅん。とりあえずは料金は構わないわよ。別のスポンサーが付いたから」
 ニコリと微笑むのは情報屋のミストルディン。
「頼みというのは、現在のシルバーホークの動向について。それを教えて欲しい」
 泣き脅しで行こうと思ったが、どうやら情報料が無料と判った為強気に出るヘタレンジャーのロックハート・トキワ(ea2389)。
「そうね。現在のシルバーホークはこのパリ近郊に潜伏しているわ。目的は各地の『破滅の魔法陣』の解析。一部彼の手下が『尤も深き迷宮・アビス』に突入したみたいね。ヘルメスとジェラール、悪鬼、そしてダース卿の代わりに入った新しい幹部は、郊外の建物に潜伏待機しているらしいわよ」
 そう告げると、ミストルディンはさらさらっと潜伏地の地図を書き上げ、ロックハートに手渡す。
 それ以上の情報は聞けなかった。
 とりあえずロックハートは、のどかなティータイムをしているノリア・カサンドラ(ea1558)に声を掛けると、そのままマスカレードを出て‥‥いけない。
「ありがとうございます。二人で1Gになりまーす」
 会計でそう告げられるロックハート。
「あ、ああ‥‥二人で1Gって‥‥ノリアぁぁ」
 ああ、ノリアさんの座っていたテーブルに、大量の皿が積み上げられている。
 そして遠くでノリアが叫んだ言葉。
「ロックハート、ゴチ!!」
 

●ラッシーいずこ〜表オークション〜
──とある貴族の舘
「これが‥‥ラッシィねぇ‥‥」
 展示されている剣をシミジミと眺めつつ、風烈(ea1587)は顎に手を当ててそう呟いている。
「ええ。名工ディンセルフの造りしウィッシュソード。その所持者の願いを聞き入れるという魔剣‥‥だそうですが、私の願いは何一つ聞き入れてはくれません‥‥トホホ」
 がっくりと肩を落としつつ、そう呟く貴族。
 すでにオークションは終了し、烈とアルト・エスペランサ(ea3203)の二人は主催者である貴族と話をしていた。
「これが幸運剣らっしぃですか?」
 キョトンとするアルトに、貴族がムカムカとした怒りを押さえつつ吐き捨てるように叫ぶ。
「何処が幸運剣だ。こんな剣処分してしまうわっ」
 そう叫ぶと、貴族はラッシィを手に取る。
「あ、捨てるのなら俺にくれ!!」
 きっぱりとそう告げる烈。
 そして貴族は剣を烈に手渡すと、静かにこう呟く。
「ふ、ふん‥‥まあいいだろうさ。但し、タダという訳にはいかないな」
 そうニヤニヤとする貴族。
(やれやれ。面白い冒険譚でも聞かせてくれ‥‥とかだったら楽なんだがなぁ)
 そう考えた烈。
「冒険者なら、今までに様々な体験をしてきただろう? どうだ? 面白い冒険譚でも聞かせてくれないか?」
 おおっとぉ。
「それでいいのでしたら、いくらでも」
 そう告げるアルト。
 そして二人は、貴族との交渉が成立し、ラッシィ片手にノルマン江戸村方面に移動した。


●オーガキャンプ
 江戸村経由で松五郎の動物王国を訪れた一行。
 アルトはそこで『春麗』との再会を果たし、『春麗』の調教という理由でアルトが『春麗』にまたがり、やってきましたオーガキャンプ。
「えーっと。君がギュンター君か?」
「うあ、おじさん誰?」
 うあ、ギュンター君のゲルマン語がさらに上達しているし。
「おじさん‥‥まあいいか。俺は烈。鬼十郎からメッセージを預かってきた」
 そう告げると、烈はギュンターの肩をポン、と叩く。
「『まっすぐなままでいてね』だとよ。それと」
 ゴソゴソと荷物を漁る烈。
 鬼十郎から預かってきた筈の荷物を探してみるが‥‥ない。
「あ‥‥ギルドのテーブルに置きっぱなしだったかな‥‥すまん、預かっていた荷物を忘れた」
 そう告げる烈。
「うあ。だいじょぶ。ぎゅんた、パリにとりにいく。あしたしゅっぱつする!!」
 そう告げると、ギ゚ュンターはトテトテテーーと自宅まで走っていった。
「ああ、ギュンター君、待ってよー」
 アルトがそう叫びつつギュンターを追いかける。
「うあ、戦ったひと」
「ハアハア‥‥この前はごめんね。怪我は無かった?」
 あるとは以前出会ったときのことを、ギュンター君に謝っている。
 だが、そのアルトの言葉に、ギュンター君は頭を捻っている。
「怪我?」
「そう。ほら‥‥この前、森の中で会ったよね?」
 そう告げたとき、近くの建物からゾロゾロとオーガがあらわれる。 
「ギュンタ、コイツテキカ?」
「テキノニンゲンカ?」
「アア!! コイツコノマエノヤツダ」
 そう告げるオーガ達。
 だが、戦うという雰囲気ではない。
 むしろギュンター君の言葉を待っている感じである。
「うあ!! たたかわない。このひといいひと、ともだちのともだち」
 そのギュンターへ君の言葉を聞いた途端、オーガ達の表情が軟らかくなる。
「ギュンターノトモダチ、オレタチノトモダチ」
 そしてしばし、あるとは和気あいあいモードに突入。
「無邪気でいいな‥‥さてと」
 そして烈は、もう一つの目的である墓参りを終え、アルトと共にノルマン江戸村に向かった。


●ノルマン江戸村冒険忌憚〜っていうか大宴会〜
──江戸村外れ、岩だらけの修行場
「まだまだだワン!!」
 全身がボロボロにナりつつも、静かに立上がるノリア。
 そのノリアを崖の上から見下ろしつつ、江戸村の守護坤であるわんドシ君が叫んでいた。
「もう1度‥‥もう一度お願いっ‥‥」
 口から血を吐き捨て、ノリアは叫ぶ。
 そしてわんドシ君は、崖の上に置かれている有象無象の巨大な岩に向かって、奥から飛び蹴りを一閃。
──ガラガラガラガラガラガラララララッ
 勢いよく落ちてくる岩。
 それに向かってノリアは拳を構えると、パン、と両手を叩いて大きく広げる。
「どんなものにも急所が存在するワン。それを見切り、針の先すら通すツボに強烈な一撃を叩き込む事で、対象は一撃で破壊できるワン!!」
 そのわんドシ君の言葉をしっかりと聞きつつ、ノリアは腰を低くして転がってくる岩を正面から受止める!!
──ガシッ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 だが、勢いの付いた岩はそのままノリアを潰す。
「ま、まだまだ‥‥もっと高みを‥‥もう少しで届くのよっ。見えてきたのよ‥‥私の中のボンバーマスターが‥‥」
 あ、危ない!!
 そして、次の岩が転がってきたとき。
──ガシッ
 ノリアは後に体重をずらしつつも岩を両腕で受止めた。
 そしてそれを一気に抱え上げると、後ろに向かう岩の反動を生かして後方に投げる。
 身体は右にそらせつつ、岩は両腕でしっかりとフック。
 そして岩を人間に見たてて、頭から大地に向かって叩き込んだ!!
──ドゴォォォォォッ
「こ‥‥これがノリアボンバー‥‥」
 強烈な一撃を目の当たりにしつつ、わんドシ君が呟く。
「僕の言葉を全て『無視』して身につけた大技‥‥凄いワン」
 おいおい。
 そのまま大地に転がって、ノリアはクスリと笑う。
「名前なんて必要ないね‥‥これがあたしの全て。そう‥‥あえてつけるとすれば『アルティメット・ノリアボンバー』だけで十分よ‥‥」
 もう起き上がれないノリアに、ゆっくりと近づいていくわんドシ君。
──ポーーン
 そのままノリアに薬の入ったツボを投げる。
「一気に飲み干すワン!!」
 そして戦いは終りを告げた。


●マイスターの道〜あっれー?〜
──鍛冶屋トールギス
「‥‥耐久性か‥‥」
「ああ。確かこの武器は華国のものだったな。その土地での作り方か材料に何か工夫がしてあるらしい。今のままだと、数回投げるだけで割れてしまう。幾つか実験はしてみたのだが。もう少し待ってくれ」 
 流石に頭を下げられると、ヴィグも待つことにするしかない。
 頼んでいた縄ひょうは、どうやらまだ先のようである。
 その側では、ノリアが置いてあった『ノリアアーム』をじっと眺めている。
「広げると爪。閉じると刃。でも、相手を掴むのには適していない‥‥」
 そう告げると、トールギスは皮のグローブをノリアにボーンと投げる。
 拳の部分に鉄のガードを合成した『殴り、掴み兼用ノリアアーム』。
 それを手にはめると、ノリアは早速わんドシ君の元へとダッシュ!!
「アルビカンスから『ライトニングバスター』を受け取って来て欲しいと頼まれたんだが‥‥」
 ロックハートがトールギスにそう告げる。
「ん? ライトニングバスターか。オリジナルはマシュウの元に送る手筈になっていてな。魔法武具として生まれ変わるんだ‥‥」
 ポン、と煙管を吹かしつつそう告げるトールギス。
「そうか‥‥とりあえずそう伝えておく‥‥あと、レンジャー用に丈夫で硬いナイフはあるか?」
「はっはっはっ。食い物屋に飯をくれといっているようだな、それは‥‥」
 そう呟くと、トールギスは木製の箱を取り出し、、鞘に収まっている様々なナイフを見せる。
「これは西の地で発見した鉱石で作った奴。こっちは海で見つけた鉱石を使用、こっちは‥‥」
 そう告げるトールギス。
 ロックハートはそれらを一つ一つ手に取ると、その感触をしっかりと確かめていた。

──その頃の烈
 手にしたラッシィをクリエムに手渡す烈。
「確かに兄の剣です‥‥」
 クリエムはそう告げると、烈に静かに頭を下げる。
「ありがとうございます‥‥」
「別に構わないさ、約束だからな‥‥それと1つ頼みがあるんだがいいかな。一人前になったら、俺のための武器を作って欲しいんだ」 
 そう告げると、烈はクリエムの側に置かれている数本の剣を手に取る。
 鞘から抜き、その出来をじっと観察する。
(シャープな、それでいて優雅さを感じさせる剣か‥‥。強度は強くなさそうだが、切れ味はかなりのものか‥‥やはりディンセルフの血は受け継がれているという事だな)
 その出来栄えに満足し、烈は剣を納める。
「どんな武器でしょうか?」
「俺は武道家だから‥‥あとは自分で勉強するんだな」
 ニコリと笑みを浮かべつつ、烈は静かにそう告げた。

──そして
 ヒュゥゥゥゥゥゥ
 静かに風が舞い上がる。
 ノリアとわんドシ君が相対峙。
 そして素早くおたがいの間合を詰めると、両者ほぼ同時に必殺の一撃を叩き込む!!
「ノリアボンバー2式、神々‥‥うあぁ」
「ワンパンチっ!!」
 おっと、わんドシ君の方がちょっと早い。
 そのまま一撃を受けて後方に崩れるノリア。
「どうして‥‥どうしても届かない。なぜっ!!」
 そう叫ぶノリアに、わんドシ君は静かに告げる。
「必殺技の名前が長いワン‥‥言い切る前にこっちの攻撃が当たるワン!!」
──ガクッ
 膝を着いて崩れるノリア。
 そんなこんなで修行は続いたらしい。
 はてさて‥‥。
 実に平和ですねぇ‥‥。

〜Fin