【ブラックソード】ヴォルフ領解放

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:10〜16lv

難易度:難しい

成功報酬:8 G 73 C

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:12月12日〜12月22日

リプレイ公開日:2005年12月20日

●オープニング

──事件の冒頭
「ふむ・・・・これが全てですか」
 目の前に置かれた大量の報告書全てに目を通し、ノルマン王国査察官ニライ・カナイが静かにそう呟く。
「はい。件のヴォルフ領、旧ヴォルフ邱地下の祭壇での破滅の魔法陣の断続的な起動も確認。あの魔法陣はもう最終段階に入っているという事です・・・・」
 その言葉を聞きつつ、ニライはさらに一言。
「アビス地下のは既に発動、その影響で魔獣兵団もかなりの数の力が削がれたと聞く」
「はい。二人の剣士がさらに追撃を行って、前線はヴォルフ領北方まで移動しました・・・・ですが、それ以上は・・・・」
「避難民は?」
「殆どがプロスト領に」
「成る程」
 顎に手を当てて、しばし考えるニライ。
「起動させるか・・・・」
 その言葉に、目の前の副官はぎょっとした。
「い、今なんと?」
「ヴォルフ領地下の破滅の魔法陣、起動させてみるのも一興。但し、ほんの僅かだがな・・・・いままでの報告書、及び情報屋などの情報、そして研究員達からの魔法陣の報告を見、そして推測した結果だ・・・・まあ、あれが起動する時間はほんの僅か『1分』で結構。それであの地の生物は殆ど死滅する・・・・魔獣兵団もな・・・・」
「ですが‥‥」
「贄の存在だろう? 心配するな‥‥墓は作ってやる。ノルマンを救った英雄としてな‥‥と、まあ、冗談はおいといてと。それは最後の手段、街道を封鎖していたシルバーメタル騎士団からの報告は?」
「いつも通りです。プロスト領最南端での小競合いは今でも続いている状況、増援を乞うとの事です」
「ブラックソードに増援手配を‥‥」
 そう告げられて、副官は冒険者ギルドに向かう。
 依頼書には小さく
『黒い剣を必ず用意して下さい』
 と書き記されていた。


・依頼内容
 プロスト領南方からヴォルフ領中央に至る全域に展開していると思われる『魔獣兵団』の殲滅任務。
──捕捉
 依頼場所:ノルマン南方、片道3日のヴォルフ領北方〜中央
 調査期間:全日程10日
 必要経費:自分持ち、宿泊施設なし
 移動手段:騎士団の馬車にて
 食糧  :全日程支給
 その他 :解説を参照

●今回の参加者

 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea4919 アリアン・アセト(64歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

カルナック・イクス(ea0144)/ 夜 黒妖(ea0351)/ 三笠 明信(ea1628)/ ミィナ・コヅツミ(ea9128)/ クィディ・リトル(eb1159

●リプレイ本文

●解放に至る道
──ヴォルフ領
 ザッザッザッザッ
 騎士団が隊列を組んで進む。
 騎兵、歩兵、そしてウォーホースに乗った正騎士。
 冒険者を筆頭に、彼等は一路、魔獣兵団によって制圧された土地の開放の為に。
 街道を越えた先、広大な田園風景が広がる。
 そこにはかつて、多くの人々の生活があった。
 だが、今は騎士団を待ち受けている魔獣達がいただけである。
 オーガ、オーグラを始めとした陸戦部隊。
 さらにはフィールドドラゴンに跨ったオーガや、ローブを羽織ったオーガなど。
 その先頭には、パイクを手にしたゴブリン、オークの集団がいた。
 
「重装騎士を前に。ファランクス体形を維持しつ進軍っ!!」
 前衛で指揮を取っているのはチェルシー・カイウェル(ea3590)。
 彼女の号令で、重装騎士が盾を正面に構え、突撃を開始した。
──ガギィィィィィン
 並み居る雑魚のパイクを薙ぎ払い、重装騎士はゴブリン、オークを一気に蹴散らす。
「弓兵、構えっ!!」
 素早くチェルシーが叫ぶと、後方で待機していたレンジャー部隊が素早く弓を番える。
 それを合図に、重装騎士は身を低く構えた!!
──シュンシュンシュンシュンッ
 大量の矢が敵部隊に向かって降り注がれる。
 それにより、敵オーガ達はかなりの打撃を受ける。
 そこに再び重装騎士の進軍。
 戦場は泥沼となった‥‥。

「ターゲットロック‥‥」
──シュンッ
 風を切る一撃が、敵オーグラの頭部を破壊する。
 その弾道は、マナウス・ドラッケン(ea0021)が構えた弓『ケンプファー』から放たれた。
「相変わらず、いい弓です‥‥と」
 素早く弓を番えると、マナウスは敵の攻撃に晒されている部隊の方に向かって後方支援。
 乱戦での弓は非常に扱いが難しい筈。
 にもかかわらず、マナウスはピンポイントでターゲットをロックすると、寸分たがわずに敵を射貫く。

──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
 二人の剣士が戦場を駆抜ける。
 その後からは、シルバーホークメタル騎士団の兵士半分とワイルドボア騎士団の半分が追従していた。
 目的は一つ、敵橋頭堡の破壊。
「よいかシン。その紋章剣『蛇』は扱いが難しい。特に『旋風』との相性は最悪ぢゃ。だが、お主なら出来る筈!!」
 そう告げるのはマスター・オズ。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
 絶叫をあげつつ、シン・ウィンドフェザー(ea1819)はふた振りの紋章剣を同時発動。
──ヴゥゥゥゥン
 共鳴しあう紋章剣。
 やがて二つの波長が一つとなったとき、紋章剣の刀身が細く激しく振動を開始した。
「こ‥‥こ‥‥これが‥‥」
 そう叫びつつ、シンは二つの剣を前方の敵に目掛けて振りおろす!!
──ドゴォォォォォォォォォォォォォォォッ
 その衝撃波は大地を吹き飛ばし、目前の敵を一撃で肉塊へと変化させた。
「これが共鳴っ!!」
 そしてガクッと膝を突く。
 全身から力が抜けおち、シンはそのまま大地に崩れる。
 生命力が限界まで突き始めていたのである。
「ふぅ‥‥どれ」
──ヴゥゥゥン
 シンに触れつつ、オーラリカバーを唱えるオズ。
 紋章剣の力による増幅がなければできない技なのであろう。
「はあはあ‥‥マスター。助かりました‥‥」
「制御は難しいが、お主なら出来るであろう。グランの『竜と業火』の共鳴も然り。将来が愉しみじゃわい‥‥と、止まっている暇はないようぢゃぞ」
 シンの一撃により発生した爆音に引かれて、再び敵が姿を表わすと、シンはそのなかでも特に指揮官らしきものにむかって走り出した!!。

──一方、別エリア
「生き残りです!!」
 そこは最前線より少し離れた場所。
 アハメス・パミ(ea3641)はレンジャー部隊数名を引き連れて斥候を行なっていた。
 近くの街道から脇に逸れて、その先の村を一つ一つ調べていく。
 生き残りがいないかどうか。
 だが、どの村も襲われた跡。
 奪われ、
 殺され、
 侵され、
 嬲られ、
 生きているものは誰も存在していなかった。
 そんな中、一つの村にたどり着く。
 すでに人の気配は無い。
 死臭も流れていない事から、どうやら村人は避難したようであると、アハメスは思っていた。
 そしてレンジャーからの報告。
 古い納屋の奥で、少女が一人震えていたのである。
「この子です。けれど我々れを恐がって‥‥」
 そう告げるレンジャーを後に下げると、アハメスは静かに少女に近付く。
「もう大丈夫。こわいものはいないからね‥‥」
 そう話し掛けるアハメスに、少女は少しだけ笑顔を取り戻した。
「‥‥へへ‥‥えへへ‥‥」
──ドゴォッ
 その刹那、アハメスの身体に衝撃波が叩き込まれる。
 そのまま扉の外に弾き飛ばされるが、すぐさま体勢をととのえる。
「やっぱり‥‥か」
 スチャッと武器を引き抜くと、アハメスは静かに構える。
 紋章剣ではない、巨大な曲刀。
 クリエムから借り受けたのは、トールギスの5振りの聖劍の一つ『パワーショーティル』である。
「アハメスさんっ!!」
「下がったほうがいいわ。アサシンガール‥‥いや、それよりも凄い子だから‥‥」
 そう告げつつ、納屋の中でヘラヘラと笑う少女に、アハメスは素早く走り出す。
──ヒュンッ
 瞬時に少女は印を組み韻を紡ぐ。
 が、その腕に向かってアハメスは手にしていたダガーを投げ飛ばすと、そのままいっきに間合を詰める。
──シュパーーーーーーーーーッ
 そしてバワーショーティルを横一閃。
 一撃で少女の首が胴から弾き飛ばされた。
 鮮血を吹き出し其の場に崩れる胴体。
「ハァハァハァハァ‥‥」
 衣服がぼろぼろになり、全身から血が吹き出しているアハメス。
 それでも少女は撃破した‥‥。
「大丈夫ですか?」
「ライトニングトラップの高速詠唱とはね。印は囮で、それを止めに走ってきたところにトラップとは‥‥」
 マントを羽織りつつ、アハメスはそう告げる。
「本隊と一度合流。周辺の村には生存者は0‥‥か‥‥」
 さみしそうにそう告げると、アハメス達は本部隊へと帰還。

──本部隊・後方
「ふう‥‥もう大丈夫ですわ‥‥」
 額から流れる汗を拭いつつ、アリアン・アセト(ea4919)はそう告げる。
 後方に作られた治療用テント。
 そこには、ほんの数分ごとに怪我人が送られてくる。
 それだけ前線が激しい戦いを繰り広げられているという事であろう。
「急患です!! 敵オーガに腕を切断されて意識がありません!!」
 そう叫ぶ衛生兵に、アリアンは近づいていく。
「もう大丈夫ですから‥‥どなたかクローニング担当の方を、私は負傷を癒しますので‥‥」
 そう告げると、アリアンは静かに瞳を閉じ、天を仰ぐ。
「セーラよ、この者に癒しの加護を‥‥」
──パァァァァァァァァァァァッ
 たちまちのうちに怪我が癒えていく。
 そこにクローニング担当のクレリックが到着すると、そのまま傷の接合を開始。
 暫くは動けないものの、腕はなんとか接合されていた。
「みなさん大丈夫でしょうか‥‥」
 そう心配そうにしているアリアンの元に、前線より吉報が届いた。
「最前線より伝達です。敵本拠地である領主の館に突入、チェルシー以下数名の冒険者が、騎士団を連れて突入したもようです!!」


●最終拠点攻防
──ヴォルフ領中央、領主の舘
 どんがらがっしゃーーーーーーーーーーん
 派手に壁に向かって叩きつけられているのはノリア・カサンドラ(ea1558)。
 その前方には、一人のジャイアントが拳をバキバキと鳴らして笑っている。
「思ったとおりだ。ここにいれば、強い奴等と戦える‥‥」
 ニィッと笑うジャイアント・悪鬼。
「ぐっ‥‥こんな‥‥ノリアボンバーが全て破られるなんて‥‥」
 拳を握り締めつつ、ノリアはそう叫ぶ。
 既に壱式から外式、そして外典と呼ばれる禁断のボンバー技に至るまで、全てが躱わされてしまっているのである。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 さらにカタリナ・ブルームハルト(ea5817)が悪鬼に向かって殴りかかる。
 持っていた武器はすでに弾かれ、天井に突き刺さったままである。
──ドゴォッ
 だが、カタリナの拳は届かない。
 そのままカウンター気味に蹴りを叩き込まれて、カタリナもまた後に吹き飛ぶ。
「なんで‥‥なんで‥‥」
 腹を押さえてそう呟くカタリナ。
 ちなみに切り札であるカタリナボンバーすら無効化されてしまう。
「簡単な事だ‥‥お前たちが弱いからだ‥‥」
 そう告げる悪鬼に、ルミリア・ザナックス(ea5298)がさらに走りこむ。
──ズザサーーッ
 そのままスライディングで悪鬼の足元を救うと、カタリナが立上がって走りこむ。
「カ・タ・リ・ナ・爆裂ぼんばーーーーーーっ」
──ドゴォッ
 その瞬間、カタリナは全身の関節を全て固定する。
 衝撃波はそのまま拳から悪鬼に向かって叩き込まれる!!
 そしてノリアは立上がると、懐から『エナッツの書』を取り出す。
 そこの最後に記されている技を、実践する為に。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 気を体内に循環させるノリア。
 もっとも気ではなく魔力らしいが。
 それが体内に循環すると、ノリアは静かに拳に意識を集中する。
「ボンバーマスター、エナッツの技。それは即ち己の肉体。この一撃で全てを終わらせるっ!!」
 そう叫ぶと、ノリアは悪鬼の左胸、心臓の上に向かって正拳を放つ。
 エナッツの教え。
 殴るのではない。
 腕と拳を通じて、己の体重、己の力の全てを相手に叩き込む技。
 このとき、ノリアの腕から発せられた力は『体重×魔力×握力×色気』によって計られ、その力はなんと100万以上に達していたとも伝えられるが定かではない。
─ドゴォォォォッ
 その直撃を受けて、悪鬼は後にわずかに下がる。
「カタリナ&ルミリア、ダブルボンバーッ」
 そしてノリアの背後から、力一杯二人がかりのドロップキックが炸裂。
 そこにノリアがさらに追い撃ち!!
 一見したらスローモーなパンチ。
 だが、それはインパクトの瞬間、さらに加速した!!
──ドゴォッ
「これが師エナッツの禁断の技『タロン神拳』。これを受けて無事でいられ‥‥たのね‥‥」
 そのまま目の前に断つ悪鬼に向かって構えを取り直すノリア。
「ふう‥‥今の連携はきいたな‥‥」
 パンパンと服の汚れを払う悪鬼。
「さて、それじゃあこっちも本気でいかせて貰うか‥‥」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 三人の女性の絶叫が響き渡ったが、敢えて放置。
 合掌。

──その頃のご一行
 厄介な悪鬼はボンバーシスターズ(ボンバーガールではない)に任せて、チェルシー達は一気に謁見の間へと突入。
 そこには、ものの見事にブクブクと太ったオーガが座っていた。
「キ、キサマタチナニモノグヲ!! ダレガ、コノモノガァヲヤッッケルゥオ」
 そう叫ぶが、誰も出てこない。
 護衛だったのであろうオーガ達は、既に扉の外で屍となっていた。
「‥‥こんなぶくぶく太った豚野郎に‥‥」
──ドシュッ
 その肩口にナイフを突きたてるチェルシー。
「痛いでしょう? この豚野郎‥‥でもね、私の、私達の受けた心の痛みは、こんな程度じゃないのよ‥‥」
──グリッ
 そのまま傷口を抉るチェルシー。
「フグゥォォォッ!!」
 何かを叫びつつ、後に飛び逃げて助けを乞うオーガ。
「さて、あんた、替え玉でしょう? 本当の敵はどこにいったのよっ!!」
──ダン
 素早くオーガを蹴りとばすチェルシーに、オーガは後のタペストリーを指差す。
「ふん‥‥たいしたものだな」
──ブゥゥゥン
 シンが紋章剣でタペストリーを切断する。
 と、そこには地下に続く階段が有った。
「こんなものなのでしょうね‥‥さて、追いかけますか?」
 アハメスがそう告げると、マナウスも弓を背中に背負いなおす。
「いくしかないだろう‥‥」
 そう告げてね一行は抜け道を駆抜けた。


●そして顛末
 抜け道の先は外に繋がっていた。
 どうやらそこから、敵の本当の司令官は逃げたのらしい。
 言葉の判るオーガから聞いた証言によると、この魔獣兵団を指揮していたのは一体のオーグラ。
 名前は『デグゥイン・ツァビィ』。
 護衛のオーガ達とともに、もう一つの砦のある『旧ヴォルフ自治区』へと逃れたらしい。
 残った兵力は1000と僅か。
 それを連れて、最後の戦いの為の準備を始めるらしいという。
「ふぅん‥‥それで、そこには何があるのかしら?」
 そう問い掛けたチェルシーに、オーガはただ一言。
「悪魔を呼び出す魔法陣」
 とだけ告げて突然絶命した‥‥。
 身体が真っ二つに裂けて。

──そして翌日
 ヴォルフ領中央は開放された。
 だが、まだ旧自治区に逃げた司令官が残っている。
 今は騎士団によりこの地を取り戻し、人の住まう土地へと直さなくてはならない。
 そして今一度冒険者達は、パリへと帰還した。
 なお、悪鬼と戦っていた一行は、ちなみに引分けで終ったらしい。
 たいしたもんだよ、ボンバーシスターズ。

〜Fin