●リプレイ本文
●なんかご無沙汰のような気が〜ええ、まったくです〜
──冒険者酒場『マスカレード』
ジャーーーーー
厨房から揚げ物が揚がる音が聞こえてくる。
久しぶりのマスカレードは超満員モード。
その為、久しぶりに集った冒険者一行は、とりあえずカウンターに座る事になったのだ。
そして一通りの挨拶をマスカレードや臨時ウェイトレスのミストルディンと交わした後、ウィル・ウィム(ea1924)は静かに口を開いた。
「ミストルディンさん。破滅の魔法陣の状況はどうなっていますか?」
その問い掛けに、ミストルディンはカウンター越しに静かに返事をかえす。
「シャルトル南方のドーム状に展開している破滅の魔法陣は、大きさもまったく変わらないままね。あとの魔法陣は起動しないように騎士団から派遣された護衛でがっちりと護られているから大丈夫みたいね」
その言葉に、渋い顔をするウィル。
──ギィッ
「うあ、鬼十郎、ただ今戻った!!」
ちょっと背が伸びたギュンター君が、元気よくぼろぼろの姿で入ってくる。
「ぎ、ギュンター君、どうしたのその姿は‥‥」
ちなみにギュンター君と薊鬼十郎(ea4004)の二人、ちょくちょくパリから郊外に二人で冒険に行っていたらしい。
今日はまず、鬼十郎が先に買い物の為にパリに帰還、ギュンター君はディヴ達のお墓参りの後にパリにて合流ということだったらしいが‥‥。
「うー、ちょっと喧嘩。流れのオーガ達と‥‥」
そう告げつつ、ちょこんと椅子に腰掛けるギュンター君。
「流れのオーガですって? 私のギュンター君を傷つけるなんて‥‥」
──フラリ
ああっ、鬼十郎、いきなり目が座っていますっ!! 危険ですっ!! まさにバーサーク大和撫子ですっ!!
──キィィィィィィィン
その横では、ウィルがギュンター君の傷に手をかざす。
「慈愛神セーラよ。彼の者の傷を癒し賜え‥‥」
ウィルのリカバーで怪我がみるみるうちに癒えていく。
「ほう、ギュンター、とりあえずこれでも喰って休んでいろ」
厨房から、そう告げつつ大量の料理を手に姿を表わしたのはエグゼ・クエーサー(ea7191)。
一番にここに到着したのはいいが、そのままマスカレードに頼まれて厨房で臨時シェフだった模様。
ちなみに今日のお料理は?
「ノルマン風海の幸のフライ・季節の野菜を添えて‥‥といった所かな?」
ゴクッ‥‥
「それにしても、ギュンター、随分と大きくなったなぁ‥‥」
しみじみとそう告げるエグゼに、ギュンターは頭を捻る。
「うあ? ギュンタ、大きくなった?」
半年すれば、成長期の子供も大きくなるようで。
「ああ。随分とたくましくなったな‥‥と、その武器もボロボロだな。そろそろ取り替えたほうがいいんじゃないか?」
エグゼの視界には、腰から下げているぼろぼろのロングードと、背中に担いでいる同じくくたびれた巨大ハンマーが写った。
「でも、どこも直してくれない。『びっくり鈍器』も留守!!」
ちなみに『びっくり鈍器』は昔のギュンター君ご愛用の冒険者の武器屋さん。
「そっか。とりあえずそれをなんとかしないとな‥‥」
「それよりもギュンター君、流れのオーガって言ったわよね? それって何処から?」
鬼十郎がやっと落ち着いて話を始めた。
「神聖ローマのほうから!! オーガ達の旅団だって!!」
「旅団とは。また物騒な‥‥またこのパリもきな臭くなるのでしょうか?」
そうミストルディンに問い掛けるウィルに、ミストルディンは静かに肯く。
「貴方たちのいない間に、色々な事が起こっているのよ‥‥それも、表には見えない水面下でね‥‥」
そう告げると、ミストルディンは静かに口を開いた。
ということで、ここしばらくの、ミストルディン情報によるきな臭い事件です。
・シャルトル南方のオーガ達の旅団の確認
・起動している破滅の魔法陣のエリアでの精霊魔法力の減退
・シルバーホークの活動再開
・謎の錬金術師の暗躍
それだけでもきな臭いのに、その次の一言が全員の背筋を凍り付かせた。
「どこのバカかは知らないけれど、あの悪魔の召喚に成功したらしいのよ‥‥」
その瞬間、全員が息を詰まらせる。
「まさか‥‥アリオーシュか?」
エグゼの問い。
「ええ。アリオーシュ。私達に判りやすく告げるなら『ヘルメス』というのが正しいわね‥‥」
「おお‥‥セーラ神よ‥‥これも私達に対する試練なのでしょうか」
十字を切り天に祈るウィル。
そしてしばらくの間、全員が沈黙していた。
──場所は変わってサン・ドニ修道院
ガラーーン、ガラーーーン
魂を癒す鐘が鳴り響く。
カタリナ・ブルームハルト(ea5817)と青龍華(ea3665)の二人は、久しぶりにこのサン・ドニ修道院を訪れて、静かに眠るアサシンガール達に黙祷を捧げていた。
「シスター・カタリナ、そしてシスター・龍華。こちらにどうぞ」
修道院長である『シスター・アンジェラス』に誘われて、二人は敷地内の花畑に。
「破滅の魔法陣の犠牲者の皆さん、アサシンガール達。きっと安らかに眠っていますよねっ」
そう問い掛けるカタリナに、シスター・アンジェラスは静かに肯く。
「ここで眠っている子たちも、そして残った子供達も、元気に‥‥ね」
そう告げたとき、一人のシスターがカタリナ達の前に歩いてくる。
そしてペコリと頭を下げると、そのまま修道院の中に戻っていった。
「い、今の子は‥‥」
龍華は見た事があったのだろう。
あの戦いの中でちらっとだけみた知らないアサシンガール。
確か今は保護されて‥‥。
「シスター、アサシンガール達の保護施設、あれはちゃんと機能しているんですね!!」
その龍華の言葉に、カタリナの瞳がウルウルと。
「ええ。管理は国から派遣された騎士が。もっとも、その騎士も護衛程度の任務しかなく、今は『バルタザール夫人』が皆さんのお世話をしているそうですわ。彼女はそこから定期的にここにやってきて、花の手入れをしていただいているのです」
そう告げたとき、シスター・アンジェラスは門の外を見る。
そこには、彼女の監視であろう騎士が2名、待機していた。
「まだ自由ではないのですか」
「それでもっ、元気に頑張っているのなら大丈夫っ!! いつかみんな幸せになれる筈だよッ!!」
元気一番カタリナが、ちょっと落ち込んでいた龍華にそう告げた。
──そして郊外・新シルバーホーク邱
「いい天気だな‥‥」
草原にどっかりと大の字に寝転がっている『悪鬼』。
その側では、クリス・ラインハルト(ea2004)とケイ・ロードライト(ea2499)が、ちっちゃいアンリエットの頭にお花の冠を乗せている。
「があがあ、アンリ、よく似合うよー」
久しぶりの再会。
クリスは喜びの余り、アンリを暫く抱しめていた。
やがて、今のアンリは『シルバーホーク』の意識の無い事が判り、とりあえず一安心。
「まだ昼だから、シルバーホークは表に出てこないのですね?」
そう問い掛けるクリスに、後でお茶会の準備をしていたシルバーホーク付執事の『ウォルター』がマグを手に賤からこう告げた。
「完全同調には、もっと多くの魂が必要です。破滅の魔法陣にもう少し頑張って貰わないといけませんねぇ‥‥」
「ああ。だが、今暫くは無理だろうさ。南方の旧ヴォルフ領は解体、今はあのいまいましい『ニライ・カナイ』っていう奴が自治区として統括しているんだからな‥‥」
その悪鬼の言葉に、クリスは驚きの表情を隠せなかった。
「ニ、ニライカナイ自治区? ニライ査察官はそこまで出世したのですか?」
「いや‥‥ニライの存在を王宮でも良く思っていないんじゃないか? ていのいい厄介払いだろうと。まだ南方は未探検地域が多い。それに、あのあたりは前の魔法陣とオーガの動乱でごたこだしているからなぁ‥‥」
そう告げると、悪鬼は伸びをしてからいびきをかき始めた。
「ここからだと‥‥遠いな‥‥ニライ査察官、今も元気なんだろうかな‥‥」
クリスの思いは、ニライ査察官に届いているのだろうか。
●厳粛に
──シャルトル・プロスト領・ノートルダム大聖堂
久しぶりに大聖堂を訪れた、合流したご一行。
まずは全員で大司教にご挨拶と‥‥。
「おやおや、みなさんお久しぶりです」
丁寧に挨拶をする聖ヨハン大司教。
「大司教様もお変わりなく‥‥」
丁寧に挨拶を返すウィルと、その後で頭を下げる一同。
「大司教さま、実はお願いがあります‥‥」
そう告げると、鬼十郎は小さな箱を取り出して、大司教に手渡した。
それは、あるものが納められている小さな箱。
とても大切なものが納められている聖遺物箱から、鬼十郎は小さな輝きのオーブを取り出した。
「成る程。魂のオーブですか。判りました。セーラの名において、それは私どもの聖堂で大切に保管しておきましょう」
「ありがとうございます‥‥」
そう告げると、鬼十郎は静かに後に下がっていった。
──場所は変わって、アサシンガール更正施設『セーヌ・ダンファン』
その名前にはどうやら思い入れがあるらしい。
クリスはカタリナと龍華と共にそこを訪れていた。
既に双子のアルジャーンの墓参りを済ませた一行。テクテクとたどり着く先では、厳重に騎士たちによってガードされているセーヌ・ダンファンが‥‥。
「ここから先は、許可がないと入る事はできませんので」
そう告げる騎士。
「そんな。私はここのアサシンガール達とも面識はあります!!」
「あ、私はここの責任者である『バルタザール夫人』やプロスト卿とは面識があります。それでも駄目なのでしょうか?」
そう告げる龍華とクリスだが。
「せめてニライ査察官かプロスト卿の紹介状がなくてはダメです‥‥残念でしょうけれど、お帰りください‥‥」
そう告げる騎士。
やむをえず、トボトボと歩きだした一行に、騎士は後からボソリと一言。
「今頃は、湖の辺りで夫人と一緒でしょうかねぇ‥‥遠くからでしたら見る事はできますよ」
その言葉に誘われるまま、一行は湖の畔、プロスト城の横に移動。
そこから遠くからではあるが、一行は楽しそうにはしゃいでいるアサシンガール達を確認できた。
残念なことに、プロスト卿は私用の為に外出、許可証を受け取ることはできなかった。
──そしてプロスト城厩舎
久しぶりの再会。
カタリナはかつて戦った競走馬たちと久しぶりの再開を果たした。
「久しぶりだねっ、シップ!!」
そして一通り馬でコースを駆け抜けていた時、カタリナは珍しいものを発見した。
それは野生の馬の群れ。
その中に一頭、カタリナは見た事のある馬を発見した。
「あれは‥‥『絹のジャスティス』‥‥なんでここに?」
『絹のジャスティス』が行方不明になったという事実は、厩舎の厩務員から聞かされていた。
でも、なぜここに?
●そして戦闘〜お待たせしました、お約束です!!〜
──のるまん江戸村・のるまん亭
「天知る地知る人ぞ知るっ!! 古ワイン呑む酔っぱらいを倒せとそう叫ぶっ!! 必殺カ・タ・リ・ナタイフーーーーン!!」
カタリナボンバーの進化形態・その変化2という所であろうカタリナタイフーーン。
力一杯担ぎ上げられた酔狂客は、そのまま店の外に放り出されてしまっていた。
さて、何があったかは御覧のとおり。
久しぶりの江戸村でカタリナと龍華はのるまん亭へ。
久しぶりの臨時ウェイトレスを堪能させられていたのだが、やはり酔狂客はっぱらって龍華の豊満なボディーにタッチ!!
「ダメですよお客さんっ!!」
いつのまにか手に付けていた神龍ナックルでアッパーカットを叩き込む龍華と‥‥。
「ちっ‥‥こっちは男‥‥いや、虚乳のねーちゃんか‥‥」
という漢の舌打ちに素早く反応するカタリナでしたとさ。
なお、ブランシュと名乗るウェイトレスは、旅の軍資金が出来たとかで、大切な彼氏を探しに放浪の旅に出ているそうで。
いまでも、どこかで『ほーちゃーーーーん』って呟いているのでしょうねぇ‥‥。
──一方・トールギス鍛冶工房
ガキィィィィィィィィィィィィィィィィィン
激しく撃ち鳴るハンマーの音。
「ふぅ‥‥これで全てですね‥‥」
二代目トールギス兼三代目ディンセルフを襲名したクリエムが、エグゼの包丁など一色の砥ぎなおしを行なっていたらしい。
「これは‥‥すごいな‥‥」
仕上がりを見てそう呟くエグゼに、クリエムはニコリと微笑む。
「私はまだまだですわ。マイスター・マシュウの御墨付きは戴きましたけれど、兄や師匠であるトールギスにはまだまだ‥‥」
いや、あんた凄いよ。
「ああ、一つ教えて欲しいのだが、この江戸村には、遥かジャパンの技術によって打ち出された包丁があるという噂を聞いたのだが」
そう問い掛けるエグゼに、クリエムは奥から布に包まれた一振りの包丁を持ってきた。
──スッ
それを差し出すと、エグゼはそれを手に取り、布を開く。
中からは銀の輝きを放つ包丁が一振り。
「刃渡りは1尺1寸柾目肌の紋様、今は泣き父の残した秘伝による業物です‥‥」
その包丁を手に取ると、エグゼは背筋に冷たいものが走る感覚に囚われた。
「‥‥料理人を惑わす包丁‥‥ですか」
「ええ。まだ銘はありません。先日も、この包丁を譲ってほしいと言う流れの料理集団がやってきまして‥‥」
──ピク
エグゼが何かを感じ取る。
「その一行、なにかこう‥‥銀色の鷹のレリーフのようなものを持っていなかったか」
そう問い掛けるエグゼに、クリエムはしばしの思考の後‥‥。
「確か‥‥もっていました」
と告げる。
「参った‥‥まだ奴等が動いているのか? 他には何か言っていなかったか?」
「ええと‥‥確か、私の父の造りし7振りの包丁、それを譲って欲しいと‥‥ト言われましてモ、私にはさっぱりでして」
それ以上の話は聞けなかったが、エグゼにとっては大収穫。
──そして江戸村入り口
ひゅるるるるるるるるるるるるるるるるるる
静かに風が吹き荒れる。
入り口の外には山賊の集団。
そしてその手前には、夫婦わんドシ君の姿が。
「ここから先は通さないワン!!」
「その通りッ!! 一歩も進むこと罷りませんわんっ☆」
ちなみに前者は中身が『オリジナル・わんドシ君』。後者は鬼十郎。
宮村武蔵は、ただ今腕を磨く為にノルマン江戸村より旅に出た模様。
入れ代わりに戻ってきたマスター・わんドシ君が江戸村の平和を守っているということで‥‥。
「宮村流剣客2号・ミスわんドシ参りますっ!!」
もう、鬼十郎もノリノリ。
ちなみにこのあと、ギュンター君はオーガキャンプに帰還、鬼十郎はしばしギュンター君とはお別れの模様とかで‥‥つまりはやけくそ?
そんなこんなで、皆に日常が帰ってきました。
このノルマンには、まだまだ冒険者の力が必要のようです‥‥。
さて、これから先、どのような事件が待っているのか?
それは神のみぞ知るということでまずは一件落着と‥‥。
──Fin