●リプレイ本文
●ということで〜まずは手始めに〜
──パリ・ロイ考古学研究所
「あら‥‥随分と面白い助手さんを」
苦笑しつつそう告げるのはシャルロッテ・ブルームハルト(ea5180)。
久しぶりに悪魔研究家であるロイ教授の元を訪ねたシャルロッテは、まず入り口に姿を現わしたグレムリンの姿に驚かされた。
頭に布を間き、エプロンを締め、箒片手にやってきたグレムリンは、どう見ても家政婦のようである。
「お、乳のでっけーねーちゃんだな。その中には何が詰まっているんだ?」
──スパーーーーーーーーーーーン
そう呟くグレムリンの後頭部を、突然一人の女性が緑のスリッパでぶったたく。
「あら、いらっしゃい。教授でしたらこちらですわ」
「ありがとうございます」
そう丁寧に挨拶を返すと、今へと案内されるシャルロッテ。
そして今では、大量の羊皮紙を広げて悪戦苦闘中のロイ教授の姿があった。
「お、確か‥‥シャルロッテ君じゃったな。ご無沙汰しておるのう」
「教授もお変わりないようで」
「まあ、座りなさい‥‥と、マグネシア君、お茶を頼む」
「かしこまりました」
そのまま部屋を出て行くロイ教授の助手であるマグネシア。
容姿端麗、物腰の落ち着いた実に‥‥淑女 ?
「新しい助手さんですか?」
「うむ。考古学者の卵らしいのう。専攻は悪魔と神秘学。なかなか若いのにしっかりとしていてのう」
「で、あちらの方も助手ですか?」
入り口で羊皮紙を纏めているグレムリンを指差しつつ、そう問い掛ける。
「うーーーーむ。いつのまにか住み着いてしまってのう。名前はなんじゃったかな?」
「教授、あっしの名前はナンデダローですってば」
ニィッと笑いつつそう告げるグレムリンのナンデダロー。
「そうですか。まあ、何かありましたらいつでも相談にのりますのでね‥‥」
ニコリと微笑むシャルロッテ。
悪魔にも慈愛?
「で、今日は一体何かな? 冒険者がうちを訪れるということは、また何かおこっているのじゃろう?」
そう告げるロイ教授に、シャルロッテは静かに口を開いた。
「最近、あの悪魔が召還されたようですが、呼び出すことはどこでもできるのでしょうか」
悪魔。
すなわち破滅の魔法陣を起動させた上級悪魔アリオーシュ。
人の姿を取り、名前をヘルメスと名乗り、様々な事件の裏で糸を引いて居た存在。
「知識さえあれば、難しい事ではないのう。現に、このパリでもシャルトル地方にはいまだ起動している破滅の魔法陣が存在しておる。かの地のように、悪魔に見入られし土地ならば儀式は難しくは無いが‥‥あの地では生贄として捧げる魂を得ることは出来ないし‥‥うーむ」
頭を捻るロイ。
「上位悪魔の召喚というのでしたら‥‥古き遺跡などでも問題は無いのでは? 例えば‥‥ほら、アビスという生きている遺跡。アレ自体が悪魔のようなものでしょうから‥‥」
ハーブティーをテーブルに置きつつ、マグネシアがそう告げる。
「アビス‥‥ですか?」
怪訝そうな表情でそう問い返すシャルロッテ。
アビスには、良い思い出はない。
「ええ。管理者であるディープロード・サードにでも訪ねてみてはいかががでしょう? 今でも腕試しと称して、あの地に挑む方が大勢いらっしゃいますから」
それ以上の意見は無かった。
とりあえずシャルロッテは、ロイ教授達に礼を述べると、仲間たちと合流することにした。
──一方パンプキン亭
ワイワイガヤガヤ
懐かしのパンプキン亭。
そこに向かう道は、ひどく込んでいた。
「あとどれぐらいまつんだ?」
「さあな。でせも、あの店の料理は絶品らしいからなぁ‥‥」
道が込んでいた理由。
それは、この先にある店での料理を食べたいから。
「ふぅん。いまでも繁盛しているんだ‥‥」
満足そうに肯きつつ、エグゼ・クエーサー(ea7191)はパンプキン亭の前にたどり着く。
──ガラーーーーーーーーーーーーーーーーン
店内は静かなものである。
丁度道を挟んで向かいにある店は繁盛しているものの、この店は静かなもの。
「あ‥‥いらっしゃーーーー‥‥」
店の奥からは、この店の店長であるサンディが笑顔で姿をあらわした。
「一体どういうことなんだ? この様子は‥‥」
そう呟いた瞬間、サンディは大粒の涙を流しつつエグゼに抱きついた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「ま、待ったぁ。泣いていちゃなにも判らないじゃないかっ!!」
どうにか店長を宥めると、エグゼはサンディを椅子に座らせて、ようやく事の顛末を聞いた。
全ては半年前。
パンプキン亭の前に一件の食堂が出来た事から始まった。
それまではサンディの店は、エグゼ達冒険者によって解析された『グローリアスロード』によって繁盛していた。
だがある日、パンプキン亭の前に出来た華国の食堂『華仙一番亭』に客をごっそりと奪われてしまったのである。
試しにサンディもその食堂に向かって食事をしたのであるが、自分の所の味とほぼ互角のように感じたのだが‥‥。
ポツリ、ポツリと客足は跡絶え、ついに今月に入ってからは客が来ないという事態になってしまったようである。
「なるほどねぇ‥‥しかし、俺たちの解析したグローリアスロード、それを越える味を作り出しているというのなら‥‥どれ、様子を見てくるか」
「お願いします‥‥」
かくして、エグゼは華仙一番亭に味見の為に向かったのであるが‥‥。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
「‥‥」
沈黙のまま戻ってくるエグゼ。
「どうでした?」
そうサンディに問い掛けられたが、エグゼは一言『厨房を借りるぜ』といって奥に引き篭る。
(な、なんだあの味。グローリアスロードと引けをとらない味付けじゃないか‥‥)
その味付けに驚いたのはいうまでもないが、それよりも驚いたのは従業員の連携プレー。
少ないメニューながらも、それぞれが自分の担当料理を持ち、それに集中する。
熱いものは熱いままで、冷たいものはそのまま冷たく、料理の基本を忠実に再現していたのである。
そして最後にエグゼが店から出るとき、後からエグゼに声をかけたある人物。
「アイヤ‥‥久しぶりアルネ」
それは銀鷹至高厨師連の陳氏。
かつてはグローリアスロードを求め、戦った華仙教大国の厨士。
その腕前は、かのガイヴァー卿すら唸らせたほどである‥‥。
「そうか、この味、今回も銀鷹至高厨師連が関っているのか‥‥」
ガタッと立上がると、エグゼは代金を支払って外に出る。
「覚えておけ。貴様達が何かを着眩んでいるのか知らないけれど、その野望、かならずぶっ潰してやる」
そう叫ぶのも束の間。
「アイヤー、濡れ衣ネ。ワタシココデ美味しい食堂やっているだけアルヨ。それに、グローリアスロードは常に進化するアルヨ。勉強していないそっちのお嬢さんがワルイアル」
そう言われると、なにも言い返せないかった。
「‥‥この味でもない‥‥違う‥‥」
先程食べたスープ。
それを再現する為に引き篭ったものの、どうみてもその味はでない。
「グローリアスロードのスープでもない‥‥あれよりも深みのある。そしてあの具材‥‥俺の知らない料理が、まだあるのか‥‥」
そう告げたとき、サンディがエグゼの横にスープカップを置く。
「これは?」
「華仙一番亭のスープを飲んで、自分なりにグローリアスロードを改良したのです‥‥どうですか?」
そう告げられて、エグゼはスープを呑む。
(美味い‥‥が、この味じゃあ駄目だ。なかに入っている調味料が全て喧嘩している‥‥全てが一つになる‥‥そんなハーモニーがないと‥‥)
そのままエグゼは旅支度を始める。
「もう少しがんばってくれ‥‥俺は、このまま引き下がれない!!」
おお、エグゼが萌えている!!
いや、燃えている。
●背景・いや拝啓、教授様
──シャルトル・プロスト領城下街
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。どうしてここの研究室はいつもこうなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
ミハイル研究室からは、シルヴァリア・シュトラウス(ea5512)が絶叫を上げている。
兎に角、行き場のない書類の山。
石碑や発掘物は散乱し、まともに整理されている形跡はない。
リュリュ・アルビレオ(ea4167)とシルヴァリア、シャルロッテは紋章剣士であるマスター・オズの居場所を聞き出す為にシャーリィ・テンプルに会いに来ていたのである。
「シャーリィさん、一体この大量のものは? 今はなにを研究しているのですか?」
「はへ? 古代魔法王国ですよ‥‥教授の向かった魔法王国についてです。不思議な事に、こちらから旅立ったという過去の記録は存在するものの、戻ってきたという記録がないのです。それで、さらに色々と詳しい解析をと‥‥ね。それともう一つ、今は『竜信仰の民』についての調査ですね」
「竜信仰?」
「ええ。私や教授も何度か見たことのある、竜信仰。古代魔法王国でも盛んに信仰されていたらしいのですけれど、それがなにか繋がりがあるのではないかと思いまして‥‥」
そのまま大量の資料を片付け始めるシルヴァリア。
「それで、竜信仰の民は見つけられたの?」
リュリュがそう問い掛ける。
「このノルマンで竜信仰なんて、そうそう見つかりませんよ」
そのシャーリィの言葉に、シャルロッテは肯く。
「一つ質問です。この巨大な剣もその発掘物なのでしょうか?」
奥の倉庫から巨大な長剣を引きずり出してきたヘルヴォール・ルディア(ea0828)。
「ええ。それは確か‥‥古の『聖人・ジョージ』の古い竜殺しの剣とかで‥‥」
ブッ!!
「そ、そんなものが‥‥」
驚愕するのは騎士であるテッド・クラウス(ea8988)
とクレリックのシャルロッテ。
テッドにとっては、聖人ジョージは高貴なる騎士として伝えられているし、シャルロッテにとっては、古くはジーザス教の偉大なる7英雄の一人として伝えられているから。
「ふぅーーーん。そんなに凄い剣なんだぁ‥‥」
鞘から抜き、ブンブンと振回すヘルヴォール。
「偽者ですよ。本物は多分、イングランドに眠っている筈ですわ。ジョージはイギリスの人ですから‥‥」
あっさりとそう告げるシャローン。
「なんだぁ‥‥つまらない」
そのまま鞘に剣を納める。
──チン‥‥
「ああ、それで話は戻すんだけれど、マスター・オズ。今はどこに?」
「剣士の修行場ですわ。たまに私も護衛をお願いしに行きますし、今は若い剣士が修練しているとかで‥‥」
そう告げると、シャーリィはそのままシルヴァリアと今後の打ち合わせを開始した。
●剣士の修行場〜でたな新キャラ〜
──剣士の居留地
カツーーーーーーーーーーン
カツーーーーーーーーーン
足音が響く谷。
その奥にあるという『剣士の居留地』を求めて、一行はやってきていた。
──パタパタパタパタ
リュリュは時折、指にはめている『石の中の蝶』を眺める。
この谷にやってきてから、蝶はよく羽ばたいている。
「元気だねぇ‥‥って‥‥やばいよ?」
「ん? なにかあったか?」
先頭を歩くエグゼがそう問い掛ける。
「悪魔が近くにいるよ‥‥」
そう告げるリュリュ。
「ふーん。悪魔ねぇ‥‥」
「まあ、返り討ちね」
「騎士として、悪魔は倒すべき相手。いつでも掛かってこいというところです!!」
以上、エグゼ、ヘルヴォール、テッドでした。
まあ、その後もなにもなく、無事に居留地にたどり着いた一行は、まず修行をしている少年を発見した。
「おっ!! ギュンター君‥‥じゃないかー」
駆足で駆けていくリュリュが、その少年の前に立ってまじまじと見つめる。
「は、はあ‥‥ボクになにかついていますか?」
驚いた表情でそう呟く少年。
「おやおや、こんな谷に客人とは珍しいのう‥‥」
そう呟きつつ、マスター・オズが姿を表わす。
「これはマスター・オズ。お噂はかねがね」
丁寧にそう告げると、ヘルヴォールは頭を下げる。
「紋章剣士となるべく、この地を訪れさせて頂きました。これは先代『疾風』の所有者からの紹介状です」
そう告げて紹介状を差し出すが、マスター・オズはそれを受け取らない。
「紹介状ですか。それは受け取ることは出来ません。この地での剣士の修行は、望むものならば構いませんので。全て平等なのですじゃ」
フォフォフォと笑うオズ。
「しかし、シン殿はいずこに?」
「遥か古代魔法王国へ」
そのヘルヴォールの言葉に肯くオズ。
「さて、そちらの二人は?」
「テッドと申します。同じく、この地での修行をさせて頂きたくやってきました」
「同じく、エグゼだ。修行をつけてもらいたい」
これから始まるであろう銀鷹至高厨師連との戦い。
その前に気合を入れる為に、 エグゼはやってきたというところであろう。
「ふむ。それじゃあお前も自己紹介しなさい」
オズに言われて、少年が前に出る。
「はじめまして。ボクもんた。ここから離れた『ネラーの村』出身です。ここで修行しています」
あどけない表情の少年・『もんた』が、一同に挨拶。
「さて、それじゃあまず‥‥手始めに悪魔とでも戦って貰うことにしようかのう‥‥」
オズがそう告げると同時に、周囲に緊張が走る。
「悪魔‥‥って」
「ここ数日、ここを見張っている悪魔が居る。それを見付けて退治してきてもらおうかの?」
あっさりとそう告げると、オズは其の場に座り込んだ。
「どうやって? 相手は悪魔なんでしょう?」
そう問い掛けるヘルヴォールだが。
「悪魔じゃからこそ。かの有名な『ヘルシング卿』もまた。高位の剣士であったという言伝えを聞いておる。確かに悪魔には普通の武器は効果無い。じゃからこそ、その自身に眠るオーラを引き出すのぢゃよ‥‥よいか?」
The Aura Will be with you・・・・Always
それが全員の脳裏に響渡った。
──ブワサッ
純白の翼を広げ、天使が谷に降り立つ。
「マスター・オズ。それに若い冒険者‥‥貴方たちの命を‥‥」
そう告げた天使。
だが、その言葉は途中で止まった。
偶然、リュリュと視線があってしまったのである。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。ヘルメス!!!!」
「あ、あのこましゃくれたペタムネがきんちょ。なんで貴方がここにいるのよ!!」
「ペタムネいうなぁ。カタリナよりあるう」
「じゃあエグれ胸。もっとペタンコにしてあげるから覚悟しなさいっ」
そんな騒動が沸き起こる。
「ふぅ‥‥まだ修行していないから剣は使えないけれどね」
シャキーンと『霊刀ホムラ』を引き抜くヘルヴォール。
「オーラ‥‥高める‥‥」
テッドが手に下ノーマルソードにオーラを注いでいく。
やがて刀身が静かに輝きだし、剣がオーラに包まれた。
「ふぅーーーん。なるほどねぇ‥‥」
ルーンソードを引き抜くと、エグゼも素早く構える。
「いいわよ、上等じゃない。ペタ胸どころか、あんたを男にしてあげるわよっ!!」
そう叫ぶと同時に、ヘルメスは印を組む。
──シュパッ!!
その刹那、ヘルヴォールとテッドが切りかかるが、その攻撃は難無く躱わされた。
「あら、まだいたの?」
「ああ、こっちにもな‥‥」
それはヘルメスの背後。
前方から攻撃したヘルヴォールとテッドは囮、本物はエグゼであったらしい。
──ドシュッ!!
一撃がヘルメスを襲う。
が、ギリギリのところで躱わし、翼を傷めただけの模様。
「なんですって?」
「遅いっ!!」
そしてエグゼに気を取られた瞬間、リュリュが高速詠唱でトルネードを発動。
上空に巻き上げられるヘルメス。
「くっそー。いいこと、覚えていらっしゃーーーーーーーーーい」
──キラーン☆
そのままヘルメスは消えてしまった模様。
「逃げられた?」
「っていうか、遊ばれた?」
エグゼの言葉に、ヘルヴォールがそう告げる。
「ハアハアハアハア‥‥悪魔との戦い‥‥ハァハァ‥‥」
どっかりと腰を落とし、肩で息をするテッド。
「こんなに‥‥疲れて‥‥ハアハア」
緊張からか、かなり精神も消耗している。
「まあ、相手が相手だしなぁ‥‥」
百戦錬磨の冒険者であるエグゼはそんなこと気にする様子もない。
ジャパンで鍛えていたヘルヴォールにとっては、まだ悪魔との戦いは新鮮であったのであろうが、幾多の経験を積んでいるからそこそこに対処可能のようである。
「あーーーーーーーーーーーーーーっ。頭に来るぅぅぅぅぅぅぅぅ。あのオッパイだけの女、いつか締める!!」
そうリュリュが叫ぶと、奥からパチパチと手をたたく音が。
「ふぉふぉふぉ。勇気があるのう。さて、それでは着いてきなさい‥‥もんた、お前はそこで素振り1000回じゃ」
あら、もんた、腰を抜かしている模様。
「アヒャヒャヒャ‥‥ショボーーーン☆」
ということで、頑張れもんた。
君にはネラー村のみんなが憑いているぞ、きっと。
さて、そんなこんなで始まった訓練。
主を失った紋章剣は全て奥の湖に沈められ、新たなる主が来るまで眠りに着いている。
回収・再生した紋章剣を合わせても、眠っているのは『龍』『白虎』『疾風』『業火』『激震』『蛇』『蟹』『蝙蝠』の7振り。
これにマスター・オズの持つ『白鳥』、マスター・メイスの持つ『無命』、そしてパリ・マスカレードに保管されている『牡牛』を加えた10振りが、現在残されている紋章剣のようである。
それらの主として認められることができるのか!!
兎に角修行は始まった。
オーラを感じ取ること。
まずはそこからスタート。
陽と陰
+と−
理(オーラ)による力の制御『紋章』
逆に力や目に眩むことで起こる『暗黒面』
紋章の司る力を制御し、それを得る。
誤った力は暗黒面へと誘い、正しきオーラはを光へと導く。
言葉では理解するものの、その本質を今ひとつ体得できない。
「どうしても‥‥維持できないです‥‥」
テッドはオーラを刀身に込めるが、そこからの維持が難しいようである。
「うーん。反応なしか?」
「私もダメ‥‥ね‥‥」
エグゼとヘルヴォールの二人は白鳥の紋章剣を受け取ってじっと見つめる。
ときおり鈍く輝くのは、それでもわずかの資質を持つているからなのであろう。
「私はまったくダメーーーーっ。ということで‥‥」
リュリュはそのままマスター・メイスの元で対紋章剣士としての戦い方を伝授されている模様。
魔法の発動タイミング
紋章剣をもつ者はすなわちオーラを操る。
ゆえに、戦い方は魔法vs魔法に近い。
但し、至近距離に入られると、魔法使いは勝てなくなる。
「そこで高速詠唱の有効活用ですね‥‥」
メイスがそう告げる。
「うーん。そうはいっても‥‥」
そう呟いた瞬間、メイスがリュリュに向かって切りかかる。
距離は至近距離。
──パチッ
軽く指を鳴らした刹那、メイスの皮膚に冷気が集る。
だが、それは氷結せずにくだけ散る。
──ピタッ
寸前で剣を止めるメイス。
「高速アイスコフィンですか。確かに動きを止めるのはよいですが、相手がレジストした場合は効果がでませんね。物理的に発生させて、なおかつ確実な魔法を高速詠唱で発動させるのが一番でしょう」
そう告げるメイスに、リュリュは腕を組んで肯く。
「そんな便利で簡単な魔法?」
「はっはっはっ。色々とありますよ。兎に角考えてみる事です!!」
そんなこんなで、一行は残りの期間を修行にぶつけることにしたのである。
●さて〜パリ〜
──グレフェンベルク家
「はぁ‥‥貴族様なんですか‥‥」
そこはとある冒険者の家。
かつて、このパリの至る所に出没した究極のバカップル『ピエールとカトリーヌ』、そのカトリーヌの本家だそうで。
ロイ教授の家で、カトリーヌが最近おかしいという事を聞いたシャルロッテは、パリに戻ってから彼女の本家を訪ねてみた。
「当家になにか御用でしょうか?」
そう正面から話し掛けてきたのは一人の紳士。
「初めまして。セーラの使徒で敬謙なるクレリックのシャルロッテと申します。こちらのカトリーヌお嬢様とは多少ですが付き合いがありまして、ちょっとご挨拶に」
「カトリーヌはもはや当家とは関係有りません。お引取りください」
──ガシャーン
そう告げられて門を閉ざされたシャルロッテ。
「何かあったのですか? もし宜しければお話を‥‥」
「‥‥」
主は物言わずに屋敷に戻る。
そして残されたシャルロッテは、ここの出入り業者にとある事を聞かされた。
それは。
「カトリーヌお嬢様は悪魔に魂を売っっちまったらしいですよ‥‥」
という事であった。
様々な思いがぶつかるノルマン。
さて、これから何が起こるのか。
それでは次回をお愉しみに‥‥。
〜Fin