駆け抜けて〜秋G1選考レース〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:7人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月07日〜08月16日

リプレイ公開日:2006年08月14日

●オープニング

──冒頭
「忙しいのでしょうかねぇ‥‥」
 冒険者ギルドの受付嬢に向かって、カイゼル卿が静かにそう問い掛ける。
「さあ‥‥忙しかったのかもしれませんねぇ‥‥それよりもカイゼル卿、冒険者ではなく、自分達の厩舎の騎手を選んではどうですか?」
 受付嬢エムイ・ウィンズにそう告げられて、カイゼル卿は頭を捻る。
「全ての厩舎から馬を出して、そこから選抜するのです。最悪、一つの厩舎から3頭とかでますと、馴れていない騎手では公平さに欠けます。ならば、全てにおいて平等に、冒険者から騎手も選抜したいのですよ」
 そう告げると、カイゼル卿は依頼書を書き始めた。
「ふむふむ。コースは前回と同じということで?」
「ええ。但し、距離を延ばします。コースは楕円形コース、距離3000mの草原です。それでは、よろしくお願いします」
 そして依頼書を作りあげると、カイゼル卿は静かにギルドを後にした。


●出走予定馬一覧
1:『深きインパクト』
2:『伝説のマーベラス』
3:『怒りのブライアン』
4:『鬼神のキャップ』
5:『激情のトップガン』
6:『最強のキングズ』
7:『最高のウィーク』
8:『不思議なモーション』
9:『レディエルシエーロ』
10:『王者・アドマイアー』
11:『皇帝・ルドルフ』
12:『漢・ジービー』
13:『漢・ツルマール』
14:『斬新・ユニバース』
15:『天空のヴァルク』
16:『嘆きのハーツ』
17:『贖罪のタマモ』
18:『春麗(うららかなるはる)』

●今回の参加者

 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea2206 レオンスート・ヴィルジナ(34歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2938 ブルー・アンバー(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea5817 カタリナ・ブルームハルト(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6072 ライラ・メイト(25歳・♀・ナイト・シフール・イギリス王国)
 ea7983 ワルキュリア・ブルークリスタル(33歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●それではっ〜はじまりますよっ〜
──秋G1・選考戦
 ノルマン南方シャルトル地方・プロスト領特設コース。
 シャルトルの領主が、他の地方領主達と共同出資して作られた競馬の為の村。
 暫くは放牧や簡単な調教をしていたこの村にも、久しぶりに活気が戻ってきたようで‥‥。

 今回は秋G1選考レース。
 コースは楕円形コース、距離3000m。
 草原をベースとした標準的なコースとなっている。
 走るのは、選ばれし7頭。
 今回、レースを制することができるのは一体どの馬か!!
 そして秋G1に選ばれるのは一体誰か!!


●カイゼル厩舎
 久しぶりのカイゼル厩舎。
 ウリエル・セグンド(ea1662)はまずは厩務員達の待つ小屋にやってくると、深々と頭を下げた。
「迷惑をかけて‥‥本当にすみませんでした」
 前回のG1レース。
 ウリエル・セグンド(ea1662)はこのカイゼル厩舎の代表騎手として登録されていたのだが、最終レースに参加することができなかったのである。
「いえいえ。今は貴方が再びここに戻って来てくれた事のほうがうれしいのですよ‥‥」
 そうにこやかに告げるのはカイゼル卿。
「それに、今回はうちの馬を選んでくれた方がもう一人いるようですし」
 そう告げると、カイゼル卿はウリエルの横に立っているブルー・アンバー(ea2938)を見る。
「初めまして。ブルー・アンバーと申します。御聞きしたところによると、『深きインパクト』はあの『沈黙』の血筋だそうで。そんな馬に乗れるなんて光栄です。精一杯、やらせていただきます」
 丁寧に挨拶を返すと、ブルーはそのまま『深きインパクト』の待つ房へと移動。
「闇雲に探しても見つからないかもだけど‥‥俺のせいで飛び出して行ったあいつを‥‥探しに行きたいと思ってます。あんな別れ方は‥‥嫌だから」
 そしてうつむいたまま、ウリエルはそう呟く。
 いなくなってしまった『絹のジャスティス』の身を案じているのだろう。
「『絹のジャスティス』なら、ボク、プロスト卿の城の近くでみたような‥‥」
 そう告げるのは、通りすがりのカタリナ・ブルームハルト(ea5817)。
 ウリエルが『絹のジャスティス』を探しているというので、その情報を持ってきたのである。
「「ええっ、本当ですか!!」」
 カイゼル卿とウリエルの二人が同時に叫ぶ。
「うん。今度、ふらりと会いにいってあげるんだ‥‥じゃあね☆」
 そう告げると、にこやかに立ち去るカタリナ。
 さて、ウリエルは元気を取り戻し、早速『伝説のマーベラス』の調教を開始。
「よろしくな‥‥お前は‥‥どんな走りがしたいんだ? 聞かせてくれ‥‥な」
 栃栗毛の綺麗な牡、そのがっしりとした脚質に、ウリエルは何かを感じ取った。

──一方、同厩舎、『深きインパクト』の房
「さてと」
 まずは『深きインパクト』に挨拶をすると、ブルーは丁寧にブラッシングを開始。
「これからよろしく、インパクト」
 そう語りかけつつ、ブルーはじっくりと調教を開始した。


●マイリー厩舎
「へぇ‥‥いい身体をしているねぇ‥‥」
 レオンスート・ヴィルジナ(ea2206)は、目の前に姿を現わした『最高のウィーク』を見た瞬間、そう呟いた。
「ええ、この馬はいい馬ですよ」
 マイリー卿もご機嫌のようで、ニコニコとしながらそう言葉を続けた。
 端正の取れた体躯を持つ牡、毛色は黒鹿毛と、その父の血筋を色濃く受け継いでいるようだ。
「こいつの父はぁ?」
「さっしの通り、『沈黙のサンデー』です。名馬を作り出す奇跡の血統とでもいえましょう」
 ちなみに、今回のレースには、『沈黙』の血筋を持つ馬はこの他にも『伝説のマーベラス』『王者・アドマイアー』『嘆きのハーツ』『深きインパクト』『レディエルシエーロ』と、実に6頭。
 『天空のヴァルク』以外は全て兄弟馬という運命のレースでもある。
 さて、レオンスートは自分の持つ知識から、様々な視点で『最高のウィーク』を観察した。
 肩とお尻の筋肉の付き方、毛並みの艶、栄養斑の有無、歯と蹄の色や変色具合などなど。
 それ以外にも個体としての性格や癖をチェックし、厩務員と細かい打ち合わせを行なっていた。
 そして試合当日の、レオンスートの言葉はこれである。
「なんだ、負けるわけ無いってかんじ?」

──


●プロスト厩舎
「うはっ、いい馬!!」
 そう叫ぶのはカタリナ。
 まさに『や・ら・な・い・か?』というかんじ?
「『嘆きのハーツ』は所属がオロッパス厩舎からうちに移りましてねぇ。今年の春から放牧に出ていまして。ここまで馬体がしっかりとしてきましたよ」
「あ、今回乗らせていただくことになりました、カタリナ・ブルームハルトです。よろしく」
 改めて挨拶をするカタリナ。
 と、目の前のプロスト卿はにこやかに微笑むだけ。
「厩舎で皆さんがまっていますよ‥‥」
 その言葉に、カタリナは厩務員の待つ小屋へと向かった。
──ギィィィッ
 扉が開いた瞬間、厩務員達がカタリナを迎え入れた。
「おお、よく来たな。今年も頼むぞ」
「どうだ? 『嘆きのハーツ』は見たか? いい馬だろう?」
「あいかわらずちっちゃい胸だなぁ。彼氏に揉んでもらわないとおっきくならないぞ?」
「ああ、ほんとにちっちゃぃな?」
「まえよりもちっちゃくなっていないか?」
「うーーーーーん」
──ブチッ
「カ・タ・リ・ナ・ボンバーー──ーーーッ‥‥以下略っ!!」
 とまあ、いつもの洗礼を受けた厩務員達と打ち合わせを行い、カタリナは『嘆きのハーツ』との調教開始。


●オロッパス厩舎
「このたび、天空のヴァルクに騎乗させていただくライラ・メイトと申します。よろしくお願いいたします」
 元気よくそう挨拶するのはライラ・メイト(ea6072)。
「これはこれは。丁寧にありがとうございます」
 釣られて丁寧に挨拶を返すオロッパス卿に、ライラは静かに放し始める。
「大まかにはミストの弟から聞いておりますが‥‥あ、私は彼の元世話係でして」
「ほほう、ミスト卿の。それは頼もしい。では、期待してよろしいかな? ハーッハッハッハッ」
 相変わらず豪快に笑うオロッパス卿。
 そのまライラは厩務員の元を訪れて、細かい打ち合わせを開始。
「はじめまして『天空のヴァルク』。私では力不足かもしれませんが、よろしくお願いしますね」
 厩舎で丁寧に挨拶をすると、早速『天空のヴァルク』にまたがり、調教を開始した。


●オークサー厩舎
「ご無沙汰しています。この度、『レディエルシエーロ』に騎乗することになりましたワルキュリア・ブルークリスタルと申します」
「同じく、『王者・アドマイアー』に騎乗するデュランダル・アウローラだ。以後お見知りおきを」
 ワルキュリア・ブルークリスタル(ea7983)とデュランダル・アウローラ(ea8820)の二人は、まずは厩舎を訪れてオークサーに挨拶。
「我が厩舎からも2頭選ばれるとは光栄です。宜しくお願いしますよ」
 丁寧に挨拶を返すオークサー卿。
「それでは早速、『王者・アドマイアー』に紹介してほしいのだが」
 デュランダルがそう告げると、オークサーは二人を馬房へと案内する。
──タカタッタッタッ
 と、駆け足でコースの方から『レディエルシエーロ』が駆け寄ってくる。
 そしてワルキュリアの前で立ち止まると、そのままじっとワルキュリアを見つめる。
「あら。覚えていてくれたのね‥‥」
 その首筋を丁寧に撫で上げるワルキュリア。
 ちなみに彼女は『レディエルシエーロ』に乗るのは2度目。
「はっはっはっ。『レディエルシエーロ』も覚えていたようですな。と、こちらが『王者・アドマイアー』です」
 暗い馬房からヌッと姿を表わしたのは、まさに王者の貫禄を身につけた『王者・アドマイアー』。
「いい目をしているな」
「ええ。乗り手を選ぶ馬です。が、どうやら貴方を『正統なる乗り手』と認めたようですね」
 そうオークサー卿が告げると、デュランダルは荷物を其の場に置いて『王者・アドマイアー』に飛び乗る。
「見せて貰おうか。王者の名の意味を‥‥」
 そう告げると、コースに飛び出すデュランダル。
「うちに来る騎手は‥‥どうも一癖ある人ばかりで‥‥愉しみですねぇ‥‥」
 そう告げると、オークサー卿も愛馬にまたがりコースに出た。


●マンシューの、ボクに乗れっ!!
「パリ競馬ファンの皆さんご無沙汰しています。ドレスタットの『予想屋の郷原万太郎』こと『マンシュウ』の『ボクに聞けっ!!』です。今回はパリG1選考戦。厩舎の意地ではなく馬の意地。注目は『王者・アドマイアー』。その中に秘める力が今こそ爆発か?」
 ビシッと掲示板に張付けられているデータを指差すマンシュウ。
「そして今回もっとも勝利に近いのがこの2頭。女の維持を見せろ『レディエルシエーロ』と地方の星『天空のヴァルク』。それでは賭札は隣の売店で販売していますので急いで購入してくださいっ!!」

──パーラパーパラパパーー
 笛の音が響く。
 各馬一斉にスタートラインに向かう。
「お前の命を俺に預けろ。俺の命はお前に預ける。いくぞアドマイアー。『王者』の名の意味、観客達に教えてやろう」
 そう呟きつつ、デュランダルは最後にゲートイン。
 やがて笛の音が最高に達したとき、スタータと呼ばれる人がスタートライン横に着き旗を掲げる。
 そして音が静かになっていき、消えた瞬間に旗が一気に振り下ろされた。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

 各馬一斉にスタートしました。
 先頭を走るのは『深きインパクト』。続く二番手は『嘆きのハーツ』。さらに2馬身差で『レディエルシエーロ』『王者・アドマイアー』『天空のヴァルク』『最高のウィーク』『伝説のマーベラス』と続きます。

「いい感じね‥‥このまま、焦らないで」
 ワルキュリアが『レディエルシエーロ』を外へと導く。
 そのまま馬群は動きを見せない。

残り2500m
順位に変動なし

残り2000m
順位に変動なし

残り1500m
順位に変動あり

「ここで?」
 突然加速を始めた『伝説のマーベラス』。
 ウリエルは『伝説のマーベラス』の走りたいように走らせていた為、手綱を引き絞ることは無い。
 が、仕掛けるにはあきらかに早すぎる。
 一気に『最高のウィーク』、『天空のヴァルク』を抜きさって行く。
 それに引き寄せられるように『天空のヴァルク』も加速しそうになる‥‥が、それをライラが止める。
「大丈夫‥‥慌てないで‥‥確実に行きましょう」
 
 残り1000m
 順位に変動あり
「脚は残っている‥‥けれど、どうしてこんなに‥‥」
 目の前を駆けていく『深きインパクト』を見つめつつ、カタリナがそう呟く。
 すでに『深きインパクト』との差は7馬身。
 今から仕掛けないとまずいのだが、それよりも『深きインパクト』の脚が恐ろしかった。
「この距離を先行逃げきり。『深きインパクト』、君にしか出来ないことだよ」
 ブルーはそう告げると、さらに『深きインパクト』の加速を開始。
 それに引きずられるように、他の馬達も加速を開始した。
 まるで、『深きインパクト』に引き寄せられるかのように‥‥。

 残り500m
 順位に変動なし


 残り300m
 順位に変動あり
「ここからっ!!」
 突然大外から『草原のワンダー』が加速開始。
 溜めていた鬼脚を一気に爆発させた。
「このまま負ける訳には‥‥いかないっ!!」
 デュランダルも『王者・アドマイアー』に鞭を入れる。
 そしてさらに外からは『レディエルシエーロ』が馬なりの加速を開始。
 全ての馬が『深きインパクト』をターゲットに捕らえたが。


 残り50m
 順位に変動あり
「そ‥‥そんな‥‥さっきまで後だったはずなのに‥‥」
 ブルーは驚愕した。
 いつのまにか、自分の横に3頭の馬が並んでいる事に。
 『沈黙』の血筋には、先天的に『鬼脚』が潜んでいる。
 それをいまさらながら、目の当たりにしたのである。

──そして
「ゴォォォォォォォォォォォォォルッ。トップは『最高のウィーク』。秋G1に向けてまずは手堅い1勝だぁぁぁっ。続いて2着は『深きインパクト』。距離に負けたがトップとは鼻差だぁっ」

1着:『最高のウィーク』
2着:『深きインパクト』
3着:『王者・アドマイアー』
4着:『伝説のマーベラス』
5着:『天空のヴァルク』
6着:『嘆きのハーツ』
7着:『レディエルシエーロ』

 壮快なウィニングラン。
 レオンスートは高々と右手を上げる。
「当然‥‥当たり前っていうかんじぃ!!」
 その後方からは、ブルーが苦笑いをしつつ走っていた。
「距離が短かったら‥‥いや、勝負は勝負‥‥負けを認めましょう‥‥」


●神聖歴1001年秋G1・選考全成績(1着−2着−3着)
『最高のウィーク』    1−0−0
『深きインパクト』    0−1−0
『王者・アドマイアー』  0−0−1
『伝説のマーベラス』   0−0−0
『天空のヴァルク』    0−0−0
『嘆きのハーツ』     0−0−0
『レディエルシエーロ』  0−0−0