●リプレイ本文
●まずはお話を〜それはまた珍しい〜
──南ノルマン領主の古城にて
静かな一室。
依頼を受けてここ、南ノルマンの領主の古城へとやってきた冒険者一同。
とりあえず事の詳細を聞いてみようということで、件の領主に謁見を申し込んでみた。
領主というこは、日々雑多な仕事に追われている為、中々人と会うということはないと思っていた。
が、謁見は意外とあっさりと受理され、一同は小さい部屋へと通されていた。
「‥‥つまり、地下一階にある小部屋で、ペットの飼育をしていたのか」
それは風烈(ea1587)。
ここに来る前に、烈は冒険者ギルドでシリアンハムスターについての情報を集めていたらしい。
だが、そのハムスター自体が、ノルマン原産で無い為に知っているものが殆どおらず、そのうえノルマンに持ち込んだ商人が誰なのかすら判らないという、じつに困った情況であった。
「ええ。普段は、そこに様々なペットを飼育していたのです。ですが、地下回廊の封印を誤って剥がしてしまい、奥から化け物がでてきてしまったのですよ」
静かに、依頼主でもある領主が告げる。
「私はメイド達にペットを安全な場所に移動させるよう告げたのですが、その時にゲージを壊してしまい、シリアンハムスターが5匹とも迷宮へと行ってしまったのです‥‥」
──5匹!!
しばし沈黙。
「他には逃げた動物はいないんだな?」
烈のその問い掛けに、領主は静かに肯いた。
「そのハムスターって、どれぐらいの大きさなんだ? シフールが騎乗できるぐらいの大きさはあるのか?」
それはアルベルト・シェフィールド(ea1888)。
「そんな大きさのものなら、かなり厄介だろ?」
そのアルベルトの言葉に、ランディ・マクファーレン(ea1702)が鋭い突っ込みを入れる。
「ええ。貴方ぐらいの身長でしたらちょっと難しいでしょうけれど、シフールぐらいでしたら騎乗は可能かと‥‥」
その領主の言葉に、一同唖然とする。
「わたくしやアルベルト様が騎乗できるという大きさとなると‥‥体長で1m程でしょうか?」
それはシャクリローゼ・ライラ(ea2762)。
「そうですねぇ。大体それぐらいですね。珍しかったので、体毛の色がすべて違うものを揃えてみました‥‥金色、灰色、蒼灰色、茶色、そして純白。これだけのものを集めるのには一苦労しましたよ」
──大きい!!
その依頼人の言葉に、さらに一同唖然とする。
「シリアンハムスターと言いますと、確かシリア原産の愛玩用ネズミでしたっけ?」
おっと、ルイス・マリスカル(ea3063)が自前の知識をフル動員。
「ええ。ノルマンより南西の方らしいですね。仕入れて来てくれた商人が、確かそのようなことを告げていました。まだ絶対的に個体数が少ないとかで、まさに『珍獣』なのですよ。しかもあの大きさ、いやー、これがまた苦労しましてねぇ‥‥」
そして領主は、シリアンハムスターの自慢話を始めようとした。
「他に特徴はないのですか? 色と大きさは判りましたので、それ以外の‥‥生態とか、行動とかで参考になるものがあれば‥‥」
「あと、好む餌や好きな玩具、嫌いなものや癖などありましたら、教えて下さい」
そう告げるのはガブリエル・アシュロック(ea4677)と李更紗(ea4957)の二人。
「餌は‥‥これ、あれを持ってきなさい」
そうメイドにつげて、依頼人はある袋を持ってきた。
「これです。これが、シリアンハムスターの好物なのです」
そう告げて見せてくれたのは、皮を剥いたナッツ。クルミやマロンなど、様々なナッツがまとめて入っている。
「これはおびき寄せようとして持っていってください。これ以外にも野菜などは食べますね。生態としては‥‥暗いところを好み、群れではなく個体で活動する‥‥動くものからは逃げる事もありますね。あと、一つのところにはじっとしていない‥‥」
聞けば聞くほど厄介な代物である。
そして一通りの説明を受けた後、領主は仕事の為に席を立つ。
そして冒険者たちも、同じ様に席を立つと、この探索の期間、使用していいと与えられた部屋へと移動していった。
なお、この話の最中、ダージ・フレール(ea4791)はずっと何かを妄想していた模様。
(あはは‥‥存在はクールじゃないけど、騎乗はいいなぁ‥‥ぽわぽわーっとしてて‥‥)
はいはい。
●地下迷宮〜第一階層アターック〜
地下に入る前、更紗は領主から地下迷宮について、なにか知っていることがないか訪ねていた。
領主がこの地にやってきたときに、すでにこの古城は存在していたらしく、古い文献や村長達から聞いた話で、なんとか迷宮の由来などを知ることが出来たらしい。
今より遥か昔。
この城はとある地方領主のものであった。
その領主は、かなりの人間不信だったらしく、自分に対して良くない噂が流れたりすると、その者を捉えては城の地下に幽閉していたらしい。
また、それ以外にも、この土地には古い言伝えがあった。
城の最下層は魔物の巣窟である古代の迷宮に繋がっているらしいとか。
ある時の領主の時代、まだこの城が建てられる前に、その迷宮を封印するために、この城は迷宮の上に作られたとも伝えられている。
いずれにしても、この地下迷宮が危険であるということが、一同は身を持って知ることになった。
──チームA
地下迷宮は二手に分かれての探索となった。
チームAは烈、アルベルト、ガブリエル、ランディの4名。
「‥‥で、今の奴で何体目なんだ?」
肩で息をする烈。
「さて。4体までは覚えていた。あとは知らんな」
フレイルに付着した肉塊を振り払うと、ランディは静かにそう告げた。
目の前にはズゥンビの屍骸。
迷宮探索を開始して、かなりの戦いが繰り広げられたようである。
流石は地下迷宮。封印されていたというのも何となく理解。
古城の由来を裏付けるように、スカルウォリアーやズゥンビなど、ここはアンデットの宝庫であった。
──パタタタタタッ
と、前方のT字路を白い物体が駆け抜けていく。
「居た!!」
「あの奥は行き止まりです!! 急いで道を塞いでしまえば!!」
ガブリエルがハムスター確認。
そして行った方向をアルベルトがマッピングしていた地図でさらに確認。
一同は急いでその方角へと向かった。
──そして
「チチチチチチッッッ!!」
壁際で警戒しているハムスター。
確かに、ノルマンの人間にとってはその姿は珍獣そのものであろう。
ネズミのような細い体格ではなく、とにかく丸い。毛も長く、全体的にまん丸に近い。
しいてあげれば、毛玉のような体格。
「さあ、恐がることはないですよ」
アルベルトはバックパックからナッツを取り出す。
それをゆっくりとハムスターの近くに置く。
──スンスンスンスン
鼻をヒクヒクさせ、ヒゲがプルプル震える。
そしてゆっくとナッツの近くに歩み寄ると、その場に二本脚でしゃがみ、両手でナッツを取り上げるとポリポリとほおばりはじめた。
「‥‥不思議な生き物だな」
その光景に、烈が呟く。
「今だな」
「ええ」
そしてタイミングを合わせると、ランディとガブリエルが両手に毛布を構え、同時に飛び掛かる。
──チチチチチチッッッチッチッ!!
必死に暴れるハムスター。
だが、それもどうにかおさまり始めると、烈がロープで毛布の端を縛り上げる。
「‥‥ふう。仕事とはいえ、まさかネズミの
親戚を救う為に適地に飛込む破目になるとは‥‥」
ランディがやれやれといった感じでそう告げる。
と、一同の真後ろをもう一匹が通過。
「また居ました!!」
──一方、チームBは
「‥‥大丈夫でしょうか?」
眼の前にいるハムスターは既に弱りきっていた。
シャクリローゼはそのハムスターにそっと近づいていくと、その背中をゆっくりと触る。
──ピクッ
時折体をヒクヒクさせるが、どうやらまだ生きているようである。
チームBが最初にこのハムスターを発見したとき、ハムスターは巨大な蜘蛛と格闘していた。
体長80cmのハムスターが、体長1m程の巨大蜘蛛と戦闘。
ルイスと更紗が飛込んでいき蜘蛛を蹴散らしたらしい。
そしてルイスが持っていたリカバーポーションをハムスターに飲ませる。
やがてハムスターは回復したらしく、モゾモゾと動きだした。
「‥‥この近くには、まだ数匹残っていますね」
床には様々な色の体毛が落ちていた。
それをルイスが拾い上げ、周囲をゆっくりと見渡す。
「とりあえず、この子はどうしますか?」
シャクリローゼがそう告げる。
「暴れる様子もないから、このまま首にロープ繋いで引っ張っていきましょうか」
更紗のその言葉に同意。
とりあえず一匹は確保、繋いだロープは更紗が引っ張っていく。
「う‥‥乗りたい‥‥」
ダージがウズウズしている。
「怪我をしていなければ、大丈夫だったかもしれませんね‥‥」
シャクリローゼがそう告げる。そして更紗は、ゆっくりと迷宮の壁を調べる。
と、チームAの残した痕跡を発見。
「こっちはチームAが調べているようですね。どうやら合流となりますわ」
「そうですか。取り敢えずランタンの脂が切れかかっていますから、1度戻ってみましょう」
更紗の言葉に、シャクリローゼがそう告げて、一行は一時帰還とあいなった。
●そして〜まあ、いろいろありましたけれど〜
無事に、全日程を遣い切って全てのハムスータを回収した冒険者一行。
回収したハムスターは城内の別の場所に移動させられ、一つの部屋を使って放し飼いにされる模様。
最終日には、さらに地下へと続くような回廊と巨大な石の扉を発見。
その奥に進みたいという冒険者の心情もあったが、まずは依頼優先ということになったらしい。
そして一行は依頼を達成し、そのまま‥‥パリに戻る準備をしていた。
ただ、ダージが、最終日にハムスターに騎乗したいという旨を領主に頼み込み、念願のハムスターライダーを体験した。
で、感想はというと?
「野生の馬にいきなり乗ってみた感じ。それに、体毛がチクチクしてて、笑いが止まらない‥‥」
だそうで。
〜FIN〜