真実への踏破〜竜の宝玉〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜17lv

難易度:難しい

成功報酬:12 G 48 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:09月10日〜09月25日

リプレイ公開日:2006年09月19日

●オープニング

──事件の冒頭
 静かな王宮。
 その一角にある、査察官用の執務室。
 そこの主は、静かに窓の外を見つめていた。
 ここ最近のパリ市内での慌ただしい動き、謎の預言書とノストラダムスという存在、そして再び動き出したファンタスティック・マスカレード。
 破滅の魔法陣はいよいよその力を増し、南方ではオーガやアンデットの軍勢が動きはじめている。
「‥‥このノルマンを救う術‥‥奇跡に賭けるか‥‥」
 そう呟くと、ニライは秘書官を呼び出した。


──場所は変わって冒険者ギルド
「あら、ニライ査察官どの。ご機嫌うっるわっしゅ♪〜」
 いつもの受付嬢エムイ・ウィンズが、にこにこと屈託のない笑みでそう話し掛ける。
「ああ、まったくご機嫌麗しゅうだ。これが今回の依頼書、かなり厳しい依頼になるから‥‥」
 そう告げて其の場をあとにする。
「ふぅーーーーん。ノルマン南方シャルトルの更に南、竜の洞窟に向かい、その奥に眠る『奇跡の宝玉』を回収するように‥‥ですか‥‥」
 腕を組んでしばし考えるエムイ。
「うーーーん。奇跡ですか。神頼みですか。うーーーん。まあいっか!!」
 思考を止めて依頼書を掲示板に張付けるエムイであった。
 

●ニライより事前情報
 執務多忙の為、ニライ査察官から提示された情報はこれが全てである。

・目的地は『未探検地域』の更に奥、実際に存在するか判らない。
・その宝珠の言伝えは、南方の古い民から聞き出したらしいが、その民も、昨年の動乱で村が滅ぼされてしまった為、詳しい場所その他は全て不明
・伝承では竜の他に様々な魔物が住まうらしい。
・最近、その洞窟に向かって旅立った冒険者がいたらしいが、生還したという記録は残っていない。
・竜の洞窟付近には、『竜の民』と呼ばれる者達が住まうという。彼等しか、その洞窟に入る術を知らないらしい


 以上、健闘を祈る!!

●今回の参加者

 ea0664 ゼファー・ハノーヴァー(35歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1671 ガブリエル・プリメーラ(27歳・♀・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea2037 エルリック・キスリング(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

ミカエル・テルセーロ(ea1674)/ 月影 焔(ea5538)/ サキ・ランカスター(ea7124)/ スラッシュ・ザ・スレイヤー(eb5486

●リプレイ本文

●真実と虚実の狭間
──パリ・王城・王宮図書館
「うーん‥‥だめだね。今の所、それらしい記述の載っているものは見当たらないよ‥‥」
 ゼファー・ハノーヴァー(ea0664)は、友達であるサキ・ランカスターと共に、王宮図書館にやってきていた。
 冒険者でも、その身分を保障できるのであれば、受け付けを通って入る事の許されている図書館で、ゼファーは『竜の民』についての手掛りを捜していた。
 二人で朝から大量の書物や巻き物、はては保存されている貴重な石版などを調べていたのだが、どうもそれらしいものは見当たらなかった。
「うーーん。困ったな‥‥」
 腕を組んでしばし考えるゼファー。
 そしてふと、何かを思い出したのか、ゆっくりと立上がると、入り口に向かって歩いていく。
「あっ、何か判ったの?」
「てや、別の方面から攻めてみるから、あとは頼む‥‥」
 それだけを告げて退室するゼファー。
「‥‥あとを頼むって‥‥これだけ引っ張り出したものを一人で戻せっていうのぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
 あー、とりあえず、南無。


──場所は変わって・冒険者 酒場マスカレード
「‥‥マスター、宿り木のハーブティーおねがいっ!!」
 元気よくそう叫んでいるのは薊鬼十郎(ea4004)。その横では、ガブリエル・プリメーラ(ea1671)が静かに一言、
「私も同じもので御願いします‥‥」
 ふむ、実にいい感じですね。
「すまないマスター、私も同じものだ」
 ああ、サラサ・フローライト(ea3026)も横に座って静かにそう告げる。
「ふむ。それでしたらカウンターではなく、二階席へどうぞ」
 そう告げるマスカレードと、そのままやってきたウェイトレスのミストルディンと共に二階席へと移動する一行。
 やがて他のウェイトレスがハーブティーをもってくると、さっそく話は始まった。
「お久しぶり。早速で悪いんだけれど聞きたいことがあるの。南方にあるらしい『竜の洞窟』に立った冒険者のことと、南方の民の生き残りの民はいませんか?」
 ガブリエルがまずはそう問い掛ける。
「南方の竜の洞窟ねぇ‥‥そんな古い物語、いまは誰も知らないわよ。それに南方の民っていうのは、古くからこの地に住む、『赤竜』を奉る民‥‥『竜の民』でしょう?」
 さっそく切り出してくるミストルディン。
「そんなに古い物語なのですか‥‥」
 そう呟く鬼十郎に、ミストルディンが静かに肯く。
「ええ。最近の若い冒険者は判らないでしょうし、歴代の冒険者 といわれている人でも、知っているのは一握りね‥‥」
 そう呟いてからズズズとハーブティーを咽に流し込む。
「誰か、心あたりは‥‥」
 サラサが問い掛けたとキ、ミストルディンは腕を組んで考えた。
「うーーーん。無いことはないけれど‥‥」
「誰ですか? 直に会いにいきますので教えてくださいっ!!」
 鬼十郎がそう叫ぶが。
「ミハイル・ジョーンズと愉快な仲間たちよ‥‥いまこの世界に居るのはプロフェッサーことレナード・プロストと、シルバーホークだけですよ‥‥会いに?」
 その言葉に、しばし考える一行。
「ここ半年の間の情報が欲しい。あの破滅の魔法陣がどうなっているのか、どんな些細なことでもいい」
 サラサが話題を一時転換。
「どうなっているといってもねぇ‥‥南方は今は激戦区、魔法陣の影響から逃れる為に、多くの人たちがプロスト領に避難しているし、未探検地域からはオーガの軍勢、最近はあのヘルメスが復活したっていうじゃなーい。もう南方はぐちゃぐちゃで‥‥」
 ミストルディンがそう告げると、しばし沈黙がはいる。
「‥‥最近、魔法陣に何か起こったか?」
 そのサラサの問いに、ミストルディンが声を低くする。
「『贄狩り』が始まっているらしいわよ‥‥」
「贄狩り? それはなんですか?」
 ガブリエルが頭を捻りつつそう問い掛ける。
「魂の‥‥練度だか純度だかが高い人々を集めて、破滅の魔法陣に贄として捧げる。新生シルバーホークがそんな活動を始めたらしいわ」
「そんな高い魂なんて、そうそう見つかるのですか?」
「さあねぇ。私の知る限りでは‥‥あ」
 何か中空を見つめつつ、そう呟くミストルディン。
「何? 何か言えない事?」
 サラサがその様子にすぐに気が付き突っ込みをいれる。
「贄っていうのは純粋なほど良いって云うのは、昨年の破滅の魔法陣に関っていたのなら解って居るわよね‥‥でも、今のノルマンでそんなに簡単に見つかる筈がない」
 ミストルディンが言葉を選んでそう呟く。
「ふんふん‥‥」
「で、手っ取り早い方法がね‥‥」
 と告げたとキ、ガブリエルがポムと手を叩いてこう呟いた。
「去年の贄の生き残り‥‥」
 その言葉にコクリと肯くミストルディン。
「成る程ねぇ‥‥確かに、より活性化させて時間を稼ぐのならば、生き残っている贄を‥‥って、鬼十郎、止まれ!!」
 素早く鬼十郎の腕を掴んでそう叫ぶサラサ。
「サ、サラサさん放してっ!! ギュンター君が、ギュンター君がぁ!!」
 取り乱したように叫ぶ鬼十郎。
「あ、そうですよね。ギュンター君は生き残っているのですし。あと生き残りといえば‥‥」
「シスター・オニワバンか‥‥」
 サラサが務めて冷静に呟く。
「そんなことよりぎ、ゅ、ん、た、ぁ、君よっ!!」
──ドタバタ
 そう叫んだとき、一階から声が聞こえてくる。
「うぁ!! ますかれーど、これ、たのまれもの、れなどからあずかってきた!!」
「おやおや、父上からですか。ギュンター君、いつもご苦労様です。何か飲んでいきますか?」
「うぁ!! はちみつ!!」
 と、まあ、ギュンター君の声が聞こえてくる。
「ギ、ギュンター君!!」
 さらに暴走に加速を付ける鬼十郎だが
「まて、今回の依頼とは関係無いだろう? あまり心配させるな!!」
 とサラサに窘められる。
「あうぅぅ。そうです」
 ショボーンとする鬼十郎。
「いつまでも子供扱いすると、そのうちギュンター君も愛想をつかしてしまうぞ。もっとこう、大人の女性としてだな‥‥」
「おや。随分と話が進んでいるようだな」
 そう呟きつつ、ゼファーが只今到着。
 サラサの語りを止めるように入ってくるゼファー。
 そしてガブリエルがゼファーにここまでの説明を行なってから、話を元に戻した。
「プロスト卿以外の冒険者などで、その南方に詳しい人は?」
「さて‥‥ノルマン全土を旅する冒険者とか、武者修行好きな剣士とか、そういった類ならあるいは。あと‥‥そうだな。吟遊詩人の中には、その伝承を物語として語っているものもいるかもしれないが‥‥」
 いずれにしても、このノルマンでそれを特定するのはかなり難しい。
「噂では、竜の洞窟に向かったという冒険者さん達がいると聞きましたが、、その後どうなったのでしょうか?」
 と、問い掛ける鬼十郎。
「さあね。多分、鬼十郎のいっている者たちは、第一次宝玉探索隊のことだろ?」
 その名前をはじめて聞いた一行は、すぐさま問い返す。
「その、第一次宝玉探索隊とは?」
「最近になって『奇跡の宝玉』を求め出したとある偏屈貴族のことですよ。名前は、えーーっと‥‥そう『エルハンスト・ヨハネス』だったかな? プロスト領の外れのちいさな領地の主で。えーっと、たった10人で構成されている『セフィロト騎士団』っていう自警団を組織している筈よ‥‥確か。そのヨハネス卿が奇跡を手に入れる為にって一部の冒険者を募って組織されたのが『第一次宝玉探索隊』ね。そこから先は私は‥‥まだ情報がないからねぇ‥‥」
 そう告げると、ミストルディンは静かにハーブティーを飲み干す。
「あとは、シャーリィ殿が頼みか‥‥」
[ですね‥‥]
 ゼファーに続いて鬼十郎がそう告げたが。
「あら? シャーリィさんは今どこかの洞窟に籠っているっていう噂ですよ‥‥」
「どこか判りますか?」
 そう問い掛ける鬼十郎に、ミストルディンは静かに一言。
「どこかの小さな島の‥‥ちいさな洞窟だった筈ね‥‥ほら、この前『グレイス商会』の船に載って河を下っていったから‥‥」
 あらーら。
 それ以上の話はないと判った一行は、他の仲間との合流の間、ここまでの情報を一つ一つ整理していくことにした。


──場所は変わって、冒険者ギルド
「どうだ?」
「今の所は‥‥一つも手掛りはないな」
 エルリック・キスリング(ea2037)とデュランダル・アウローラ(ea8820)の二人も、とりあえず情報収集を行なっていたこっていた。
 どこにいってどう情報を調べるか、考えた結果がこの冒険者ギルドの、膨大な依頼報告書の中を調べる事であった。
 もっとも、一般公開されていない依頼の報告書や閲覧禁止もの、そして冒険者達が勝手にふらりと冒険にいってしまったものについては報告書が存在しない為調べようがなかったのであるが。
「ふぅ。あとは、ここの『特別書庫』の資料のみだが」
「許可はでていない。勝手に調べたら、それこそ騎士団に突き出されるだろうしなぁ‥‥」
 静かにそう呟く二人。
「あとは、地道に外に聞き込みに出るとするか」
 そう呟くと、二人は資料を元に戻してさっそく外に聞き込みに出かけた。


●ヒントは灰のみぞ知る〜道が開けたそして閉じた〜
──シャルトル南方・とある砦
 そこはかつて、『鋼鉄の冒険者』と呼ばれた者たちが関っていたちいさな砦。
 今はそこには誰もおらず、ただ無人の砦が残っているだけである。
 昨年の『破滅の魔法陣』にもたらした災厄により、この地は無人となってしまった。
 今なおも、人はこの地には戻っておらず、ただ風の吹きすさぶ哀しい砦となってしまっていたのである。
 パリでの情報収集を終えた冒険者達は、無事に合流を果たした後、南方・未探検地域に突入する為のスタート地点であるここにやってきた。
 途中の村などでの情報は収穫もなく、殆ど情報0でやってきたのであるが。
──キィィィィン
「炎よ。我等に道を‥‥」
 スクロールを広げてそう呟くのはゼファー。
 目の前にはこの付近の地形が記された、簡単に作られた地図が一枚だけ。
 それを媒体としてゼファーはバーニングマップを発動したのであるが。
──メラメラメラッ‥‥
 其の場に残った灰は、この砦までの道しか示さない。
「ここから先の地形ははっきりとしていないし、正確な地図でも無い。ただし、この地、この砦から向かうことが即ち最短である事だけは示された‥‥」
 ゼファーのその言葉に、全員が静かに肯く。
 未探検地帯と一言でいうには簡単。
 だが、ノルマン南方・シャルトル地方の南方全てを示す為、やみくもに探していたら一生かかってもスタート地点は発見できない。
 その点でも、この砦がもっとも近いスタートである事だけははっきりと判ったのである。
──キィィィン
 ガブリエルはテレパシーを発動。
 ペットである鷹のラファガと心を繋げると、静かにこう呟く。
「私のもうひとつの目、お願いね」
──ファサッ!!
 静かに飛翔するラファガ。
 しばらくはガブリエルの上空を回っている。
「さて。そろそろ出発しますか」
 エルリックが皆にそう告げたとき、デュランダルは砦の片隅で何かを静かに探っている。
「この灰‥‥誰か、調べられるやつはいるか?」
 そう呟きつつ、砦の端にあった灰を指差している。
「その灰がなにか?」
 鬼十郎が静かに近寄ってそう問い掛ける。
「この場所に灰はありえない。風が吹いてもその影響を受けず、かつ、焚火などをするには不自由な場所。残った灰があたかも、何かの道を示しているような‥‥まるで、さっきのゼファーの使った魔法のようなかんじだ」
 そのデュランダルの言葉ののち、サラサが静かに印を組み韻を紡ぐ。
──キィィィィン
「月よ。その力もて、かの地の記憶、我が心に移したまえ‥‥」
 サラサがパーストを発動。
 指定時間は一週間前。
 だが、なにもそこには映らない。
 ただ、この砦とその灰が映っているだけであった。
「駄目だな。少なくとも、この灰は一週間以上昔からここにある‥‥少しだけ形が変わっているが、それは吹き溜りに風が迷いこんだ結果だろう‥‥」
 その言葉に、他の仲間は静かに肯くだけであった。
「やむを得ない。とりあえず出発するか」
 デュランダルの言葉で一行はようやく出発となった。


●困難から苦難へ〜死者の蠢く村〜
──数日後
 深い深い森の中。
 一行は道なき道をゆっくりと進む。
 交代で夜は見張りを立て、体力と魔力を温存しつつ、いまはただ、目に見えない何かを求めてあるいていた。
「‥‥嫌な匂いだ」
 ゼファーがその持ち前の良い嗅覚で、何かを嗅ぎとった。
「何々? なにかあったの?」
 鬼十郎がそう静かに問い掛ける。
 ゼファーはより鼻に意識を集中すると、周囲を静かに見渡すように頭を動かす。
「‥‥風向きからいうとこっちの方角。焼け落ちた木と肉の匂いだな‥‥」
 その言葉の方向に目を向ける一行。
「先が開けている‥‥」
「ええ。焼け堕ちた何かがありますわ‥‥」
 デュランダルの言葉にガブリエルが続ける。
 と、同時にラファガがいきなりガブリエルの元に舞い降りると、其の場にうずくまった。
「?」
──キィィィィン
 素早く印を組み韻を紡ぐと、ガブリエルはラファガと心を通わせる。。
(どうしたの? なにがあったの?)
 そう問い掛ける。
 が、ラファガから発せられたのは恐ろしいほどの脅えと恐怖。
「この先、なにかがあります‥‥みなさん、気を引き締めて‥‥」
 そう叫んだ刹那、鬼十郎がいきなり抜刀!!
──チン!!
 いきなり目の前から腕が伸びてきたが、それを素早く叩き斬ったのである。
「この腐臭。アンデッド‥‥」
 目の前の腐った腕を睨みつけつつ、鬼十郎がそう呟く。
「ただのアンデッドという訳ではないですね。きな臭いというか‥‥火傷のような部分が見えます」
 エルリックもそう告げつつ、静かに『ティールの剣』を引き抜く。
 一行はその動きに合わせて素早く武器を身構え、詠唱の準備を始めた。
──ズザザザザザッ
 やがて周囲から、何かを押し殺すようなうめき声と引きずるような足音、そして腐った死体が静かに歩み寄ってきた。
──ヒュンヒュンッ
 右手で静かに縄ひょうを回しつつ、周囲を警戒するゼファー。
「アンデッドの中に数体‥‥恐ろしくすばしっこいのが居る」
「ああ。何者かは知らないが、他の奴よりもやつかいそうだな‥‥」
 ゼファーの言葉にデュランダルがそう呟いた時、その素早い奴が次々と冒険者に向かって襲いかかっていった‥‥。


──そして数刻後
 目の前には腐った死体がまさに死屍累々。
 その数およそ40弱。
 老若男女と一通り揃っているその数は、まさに其の場での戦いがいかに過酷であったかを物語っている。
「皆動けるか?」
 デュランダルの問い掛けに、あるものは手を振り、またあるものは無言のまま肯く。
「もうこれ以上は無理。魔力が限界よ」
「同じく。このあとの魔法のフォローはできない‥‥」
 ガブリエル、そしてサラサ、共に魔力が枯渇。
 それでなくては全滅必死という戦いであった。
「私とエルリックはそれほどでも‥‥鬼十郎は無理か」
 横で周囲の警戒をしているエルリックと、大の字に伸びている鬼十郎を見ながらゼファーがそう呟く。
「休むにしても、場所は変えよう。この匂い、堪らない‥‥」
 そのデュランダルの言葉に、一行は静かに肯くと、どうにか身体を起して移動開始。

──そして一刻後
 一行は広場に出た。
 それほど古くはない『燃え落ちた村跡』。
 その中央、周囲の見晴らしの出来る場所で、一行は静かに休息を取ることにした。
「一休みしたら、この村の調査ですね」
 鬼十郎が保存食を咽に放り込みつつそう呟く。
「ええ。それでも魔力のサポートはできませんけれど‥‥」
 ガブリエルがそう呟きつつ、横で震えているラファガを撫でる。
「まだ恐いの?」
 そう問い掛けたとキ、ラファガの身体がピ゛クッと動く。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 巨大な影が、上空を通過。
 その突風で、一行は周囲に弾き飛ばされた!!
「なっ!!」
「今の影は?」
「この突風、まさか羽ばたきで?」
 ゼファー、エルリック、そしてデュランダルがほぼ同時に叫ぶ。
 ガブリエルとサラサはその突風で近くの燃えかすに身体を打ちつけて身もだえ、鬼十郎はさらに遠くに飛ばされた。
「そ‥‥そんな‥‥」
 身体を起こしつつ空を見上げた鬼十郎が、その深紅の巨大なものを見つめつつ呟いた。

 それは巨大な竜。
 全身を凶悪な姿の鱗に覆われた深紅の悪夢。
 その瞳は、捉えた者を残酷なまでに貪りつくすかのように‥‥。

「深紅の竜? まさかこいつが竜の洞窟の?」
 そうデュランダルが叫んだとキ、その背後からもう一体の巨大な竜が飛込んでくる。
 一行の上空には、二体の巨大な竜。
 それがゆっくりと、眼窩に蠢くエモノを睨みつけている。
「あ‥‥そ‥‥そん‥‥な‥‥」
 恐怖で身体が動かないガブリエル。
 その横では、サラサが必死に印を組み、意識を集中する。
「‥‥駄目だっ‥‥もう魔力が‥‥」
 そう叫ぶサラサ。
 だが、デュランダルはその二人の前に飛び出して楯を構えると、二人に向かってこう叫んだ。
「ここは無理だ。森の奥ににげろっ!!」
──その頃の鬼十郎
「偉大なる竜よ‥‥私達は貴方の敵ではないから‥‥」
 上空の竜に向かってそう語りかける鬼十郎。
 だが、一体の竜はその翼を力一杯羽ばたかせ、大地に向かって突風を叩きつける!!
──ゴゥゥゥゥゥゥッ
 その突風により、運良くサラサとガブリエルは森の奥に飛ばされる。
 ゼファーとエルリックは近くの木にその身を隠し、様子を伺う。
「どれでいくか‥‥」
「いきなり竜が飛んでくるなんて、計算もしていませんっ!!」
 スクロールを腰から引き抜いてそう呟くゼファーと、神に祈りを始めるエルリック。
──ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 やがて一体の竜が巨大な顎(あぎと)を開くと同時に、地上の鬼十郎に向かってブレスを吹き出した!!
「だ‥‥駄目‥‥私‥‥動けない‥‥」
 恐怖でその身が凍り付いている鬼十郎。
「ミストラルっ!!」
 ブレスが吐き出された時、デュランダルの掛け声で彼のグリフォン・ミストラルが鬼十郎を前足で捕まえて空に飛び上がった!!
 大地は瞬時に燃え上がり、辺りを激しい熱が襲いはじめる。
「やばい!! これ以上は無理だっ!!」
 ゼファーが後方で隠れているサラサ達のほうに逃げ込む。
 そしてエルリックもそのまま後退、デュランダルとミストラルに捕まれた鬼十郎も低空飛行で森の中に飛込むと、そのまま近くの岩などにその身を隠した。

──ファサッ!!
 やがて二体の真紅の竜は、静かに上空に舞い上がるとそのまま何処かへと飛んでいった。
「‥‥ふう‥‥とりあえずは無事か?」
 デュランダルがそう呟く。
 とりあえず無事であることを全員が意思表示。
「すみません‥‥私‥‥」
 デュランダルに頭を下げる鬼十郎。
 と、その頭に手をポンと置くと、デュランダルは一言。
「生きているならいい‥‥」
 その日の夜、鬼十郎は泣いた。
 巨大な敵相手に、恐怖の為なにも出来なかった自分の不甲斐なさに‥‥。


●翌日〜村の調査〜
──燃え尽きた村
 深紅の竜の襲撃の翌日。
 一行は、村の調査を行った。
 当然ながら生き残った者は誰も居なく、村もその姿を止めてはいない。
 それでも、燃えカスの中からなんらかのヒントを得ようと一行は必死に調べた。
「‥‥何か残っていれば‥‥」
 必死に探す鬼十郎と、村の中央でパーストを発動し、過去に起こった出来事をゆっくりと時間を調整しつつ調べるサラサ。
 ガブリエルはラファガの上空からの情報と、自身の目を頼りに調査、ゼファーは村に隠されているであろう何かを調べていた。
 デュランダルは周囲の警戒、そしてエルリックは村の人達の墓碑を作り上げたのち、神に祈りを捧げていた。
「ふぅ‥‥この村も、少なくとも一週間以上前にやられたみたいだ。それ以上は私の魔法でも無理だな」
 サラサが周囲を見渡しつつ、魔法により得られた結果を告げる。
「これは‥‥」
 鬼十郎が燃え落ちた家痕から、ちいさな小瓶を取り出す。
 それは卵大の壷。
 元々はヒーリングポーションを入れている壷、それも良く見る『エチゴヤブランド』のものである。
「封は開けられているけれど‥‥こんな所の人がパリまで買いにいくとは思えないし‥‥」
 鬼十郎がそれを手に一行の元にもどる。
 そして上空では、ラファガが一鳴きして少し離れた場所でクルクルと回りはじめた。
「何か見つけたの?」
 そのガブリエルからの報告を受けて、一行はラファガの回っている真下に移動。
 そこは森の外れ。
 岩があちこちに剥き出しとなり、所々には岩の隙間から地下へと続く道のような者が見えていた。
「ここから何処かに繋がるのか?」
 デュランダルがそう呟いた時、エルリックはその外れ、祠のようになっている窪地で死体を発見した。
 それは親子連れの死体。
 子供のほうは無残にくい散らかされた痕があり、そして親のほうは下半身がぐちゃぐちゃに潰されている。
 どちらも死後それほどたっていないらしく、まだ腐臭が漂っている。
──キィィン
「‥‥月よ‥‥」
 サラサがパーストを発動。
 少しずつ時間をずらしてこの親子に何がおこったのがを確認している。
「そっ‥‥うっ‥‥」
 と、突然サラサが何かを見た。
 其の場から離れ、木の影で思いっきり嘔吐する。
「い、一体何があったのですか?」
 鬼十郎がそう問い掛けたとキ、サラサは言葉を詰まらせた。
 
 サラサが見た光景。
 それは、無数のオーガによって陵辱されている女性と、それを泣きながら見ている子供。
 やがて子供もオーガによって嬲られ、 引きちぎられ、生きたまま喰われた。
 女性のほうはそのまま巨大なハンマーでぐちゃぐちゃに潰されていく。
 それも生きたまま、目の前で子供が殺されるのを目の当たりにしながら‥‥。
 
「この親子は、オーガによって殺された‥‥」
 そう告げるのが精一杯であった。


●折り返し地点〜これ以上の調査は困難〜
──リターンポイント
 未探索地域に突入して、そろそろ折り返しの日。
──クックックックッ
 ガブリエルの過多で、ラファガが警戒の声を発する。
「ラファガ‥‥まさか?」
 ガブリエルのその呟きと同時に、全員が一斉に木の影に身を潜ませる。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 と、上空を通過する二体の深紅の竜。
 そのまま一行に気付いた様子もなく、前方に向かって通り過ぎていく。
「‥‥どうにかなったか‥‥」
 ゼファーが遠くに飛んでいく竜を確認し、そう呟く。
「ああ。またあんな奴等がきたら‥‥と、御客だ」
 デュランダルのその言葉に、全員が警戒態勢を取る。
──ガササササッ
 と、茂みから姿を表わしたのは重装のオーガの群れ。
 その一匹は、首から女物のネックレスをぶら下げている。
「こ‥‥の‥‥」
 そのネックレスと、サラサは自分の見た『オーガに嬲られた女性』の付けていたネックレスが一致したとキ、瞬時にそのオーガに向かってムーンアローを叩き込んでいた!!
──シュシュッ!!
 その刃を受けても、まだ平然としているオーガ。
「駄目‥‥オーガは戦えない‥‥」
 鬼十郎がそう叫ぶが、すでにそう言える状況ではない。
 一方的に襲いかかってくるオーガ。
 デュランダルとエルリックはどうにかオーガ達を撃破、後方からはサラサとガブリエルの魔術が、そして小柄を逆手に構えたゼファーがカウンターでオーガ達を血の海に沈めていく。
 そんな中、鬼十郎は必死にオーガ達に向かってスタンアタックを叩き込んでいくだけであった‥‥。
 やがて数も減り、気絶している数体のオーガ以外は全滅という状況になったとき。
「さて‥‥このまま追っ手に付けられても不味いか‥‥」
 デュランダルがオーガに向かって刃を構える。
「‥‥殺すのですか‥‥」
 鬼十郎の悲痛な叫び。
 だが、デュランダルはその言葉に返答せず、オーガの喉笛に刃を突きたてた。
「あの親子のような犠牲者が、また出る‥‥。1度肉の味を覚えたオーガは、再び人間を襲う‥‥違うか?」
 その言葉に対して、違う‥‥と言いたい鬼十郎。
 だが、ギュンター君は別物であり、オーガという種でいうのならば、デュランダルの言葉はおそらく正しい。
「違わない‥‥けど‥‥共存できるオーガも居るって言う事だけは‥‥忘れないでください‥‥」
 それ以上の言葉は出ない。
 そしてどうにかそのエリアまでの地図を完成したサラサが、次の道順を探す。
「このままこっちではなく、このルートで最短で進むことで、また別のエリアへの道が開ける。今回はここまでの地図が完成しただけでも‥‥」
 そして一行はパリへと戻る。
 竜の民とは出会えないが、明らかに『竜』は存在する。
 まだ道は残っていた。

──Fin