しっかり冒険〜作ってみよう〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:7人

冒険期間:09月15日〜09月22日

リプレイ公開日:2006年09月21日

●オープニング

──事件の冒頭
「おーら?」
「うむ、オーラぢゃ。人の体内に宿る命の源、力の根源。人は常にオーラと共にある‥‥」
 そこは剣士の居留地。
 マスター・オズは目の前に座っているギュンター君に、オーラの何たるかを教えていた。
「うあぁ!! マスター・オズ、ぎゅんたー判らない」
 じっと座っているのが辛くなったらしく、ギュンター君はそう告げると静かに立上がる。
「うむうむ。オーガはオーガらしく。マスター・メイスの元に行きなさい。新たな技を教わってきなさい」
「うぁ!!」
──ドドドドドドトドドドドドッ
 素早く走り出したギュンター君。
 ふう、やれやれ。


──場所は変わってノルマン江戸村
「‥‥最近、どうも忙しい‥‥」
 ノルマン江戸村の『冒険者訓練場』の紅潮は、外で剣術訓練をしている冒険者を見ながら静かにそう呟いた。
 久しぶりに江戸村に戻ってきた『宮村武蔵』が剣術指南を引き受けてくれたおかげで、最近は江戸村にも大勢の人たちが訪れるようになっていた。
「しかし‥‥最近の冒険者の皆さんは‥‥どうも‥‥冒険が終わったら何も出来ない人が多い‥‥冒険者シンドロームとでもいいますか‥‥」
 とある講師がそう呟く。
「冒険者シンドローム?」
「ええ。冒険に出かけているときは嬉々として居るのですが、戻ってきて何も仕事が無くなったら、ただ酒場でボーーッと過ごしていたり、怠惰な生活送っていたり‥‥何かこう、冒険以外に目を向けるものはないでしょうか?」
 そう呟く講師に向かって、校長はボソリと呟いた。
「なにか生産的な技術を身につけるとか‥‥そう、ペットを鍛えて交流を深めるとか‥‥」
──ポン!!
「それですよ校長。新しい何かを。破壊で掃く生み出す。命を育む。それでいきましょう!!」
 かくして、冒険者訓練場は新たなる課題に突入したらしい‥‥。

●今回の参加者

 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3120 ロックフェラー・シュターゼン(40歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea5283 カンター・フスク(25歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 ea7191 エグゼ・クエーサー(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea8063 パネブ・センネフェル(58歳・♂・レンジャー・人間・エジプト)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)

●サポート参加者

クリス・ラインハルト(ea2004)/ シェアト・レフロージュ(ea3869)/ ウォルター・バイエルライン(ea9344)/ ロート・クロニクル(ea9519)/ ライツ・リミテッド(eb0637)/ ファラ・アリステリア(eb2712)/ エレイン・ラ・ファイエット(eb5299

●リプレイ本文

●作れ、兎に角作れ!!
──パリ・とある道
「あーー。う・ご・く・なお前っ!!」
 道端で似顔絵を書いているのはロート・クロニクル。
 さらりと出かける前のカンターとエグゼ、楠木、そしてロックフェラーを捕まえては、兎に角似顔絵を書きまくっている。
 それにしても、この似顔絵、あとできっとなにかに使われるんだろうなぁ。

──パリ・吟遊詩人ギルド
「‥‥随分と大量の羊皮紙ですね‥‥」
 吟遊詩人ギルドの書庫。
 そこで『ザンク!!』が必死になにかを探している。
「カンターさんのいう、『きな臭い感じの話』とか、『包丁や料理にまつわる話」っていうのは、意外と多いのですよ。まあ、料理については『栄光への道』っていう歌がありますし。あとは‥‥これかな?」
 そう告げると、『ザンク!!』はカンター・フスク(ea5283)に二枚の羊皮紙を差し出す。
「『精霊の料理人』『気まぐれシェフの気まぐれ料理』。ふむふむ‥‥」
 二つの物語をじっと読みつづけるカンター。
 ちなみに精霊の料理人という物語は、とある料理人が森の中で精霊達に料理を振る舞い、6人の精霊からそれぞれの力の宿った包丁を授かるという物語。最後に料理人は自分の命と引き換えに『人の包丁』を形見として残し、全部で7振りの包丁が世界に伝えられたという物語。
 気まぐれシェフの物語は、怠け癖のある気まぐれなシェフが作った気紛れな料理『珍品奇品摩訶不思議スープ』というものを一口飲んだ旅の詩人が、やがて世界を其の手に総べるという壮大なエピソード。
 どの辺がきな臭いというかというと、その詩人の名前が『シルバー』であったり、お供の従者が『ヘルメス』という謎の女性であったり、命を奪う魔法陣というのが出てきたり、幸運を呼ぶ剣が云々のくだりである‥‥。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。不味い、これは不味い。って、この物語はどうしてここにあるのですか?」
 そう『ザンク!!』に問い掛けるカンター。
「このご時勢にこれは不味いでしょう? 2年前から公布禁止となっているだけですよ」 
 そう告げた『ザンク!!』。
「では、これを預かっていっては‥‥」
「駄目ですねぇ。まあ、参考までに『覚えていってください』ね」
 かくしてカンター、この物語を覚える事になったのである‥‥合掌。


──パリ・パンプキン亭
「‥‥ふぅ‥‥いらっしゃいませー。どうぞ寄っていってくださーーーい」
 御存知パンプキン亭。
 その軒下で、サンディが必死に売り子をしている。
 その奥では、エグゼ・クエーサー(ea7191)が『グローリアスロード』をベースとした新しい料理を作ってメニューに加えている所であった。
「よし‥‥これでどうだっ。グロリアスロード・スープの章その2より‥‥『思いやりのスープ』だっ!!」
 完成した料理を、とりあえず来店している3名の客に振る舞う。
──ガチャッ
 スープを一口、咽にいれていく男性。
「うむ!! 旨し!!」
 って、あんたガイヴァー卿かよ。
「エグゼ、腕をあげたな」
「ああ。このスープは、飲む人の為のスープ。その人が欲しがっている何かを隠し味としている。ガイヴァー卿。貴方はここに来るまで、多分膨大な執務を続けていたんだろう? だったら、執務の合間に取っていたワインの飲みすぎで、こくがあったり濃い味付けのものはあまり欲していない。ならば、このスープは少し味加減は控え目で‥‥」
 そう告げつつ、解説をするエグゼ。
 その横でスープを飲んでいるシフールの少女は、瞳がトローーンとしている。
「あ、ニライさん。貴方のは体力増進。怪我、まだ癒えていないでしょうから」
 その言葉に、ニライは静かに肯く。
「つまり、エグゼさんは、店に入って来たお客さんの様子をみて、その人にあった料理を作っているだけなんですよ」
 そう解説するサンディ。
 だけど、それは理想であり実践しているエグゼってプロそのものである。
──ギィィィッ
「御免。主はいるか?」
 と、一人の冒険者の様な風体の老人が入ってくる。
「あ‥‥あの‥‥亭主は昨年他界してまして‥‥」
 エグゼがそう告げると、老人は静かに何かを思い出している。
「なら。この包丁を彼の墓に添えておいて欲しい。では‥‥」
 それだけを告げると、老人は立ちさって行った。
「あ、ち、ちょっとまってください‥‥って、もういないし‥‥」
 外に出てみたが、人ごみのなかに紛れてしまったらしく見失ってしまった。
「ふう。まあいっか。サンディ。これを父さんの墓にって老人が‥‥」
 その言葉でサンディが包丁をうけとる。 
 そして鞘から包丁を引き抜いたとき、周囲に冷気が漂っていった。
「なんと、それは『精霊7包丁の一つ『アイスブランド』。伝説の代物であった筈だが‥‥」
 と、ガイヴァー卿が叫ぶ。
「ふぅん‥‥って、伝説の7包丁? マジか?」
「うむ。それは精霊の鍛えし包丁らしい‥‥しかし‥‥それがこの世にでるということは‥‥」
 ブツブツと言いつつ何処かに消えていくガイヴァー卿。
 それにしても、謎は謎を呼んで。
 そしてパンプキン邱は、エグゼのメニューで少しだけ客を取り戻したとさ。


●ノルマン江戸村にて
 ここはいつものノルマン江戸村。
 わんドシ君と流れの冒険者との戦いの最中、ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)はマイスター・トールギスの鍛冶工房を訪れていた。
「ご無沙汰していますクリエム殿」
 丁寧に挨拶をするロックフェラー。
「ロックフェラーさんも御変わりなくなによりですわ」
 御茶を出しつつそう告げるクリエム。
「ここ最近はどうですか? 怪しい人物とかは村に出入りしていませんか?」
「そうですねぇ。時折冒険者さんが武器の研ぎにくるのと、わんドシ君に戦いを挑むひとたちを除けば、静かなものですよ」
 その言葉にホッとしたのか、ロックフェラーは一枚の羊皮紙を差し出す。
「これは‥‥あ、ええ。成る程‥‥」
 それを受け取って一通り目を通すクリエム。
 
『銀鷹勢の悪鬼が神剣=カリバーンを狙っていたらしい。クリエムさん自身や師匠の書に気をつけて』

 そう記された羊皮紙を、ロックフェラーはクリエムから返してもらい手元に戻す。
「では、いつものように修行に入りましょう」
 クリエムも判っているようで、そのままうまく合わせてくれる。
 そしてロックフェラーは師の書庫に籠る。
 カリバーンの作り方の記された書に記された謎を解き明かす為に‥‥。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥

「‥‥希少な武具の作成についての覚え書き‥‥と」
 一纏めされた羊皮紙の束から、ロックフェラーはそう記された一枚を取り出す。
「‥‥神剣・宝剣はブランにより作られ、ブランを越える‥‥か‥‥」
 それを頭で反芻し、ロックフェラーは次の一枚を解読。
「必要なもの『力の炉』と『竜の籠手』『月雫のハンマー』と‥‥」
 さらに解読。
「炉に銀の粉を古い、材料を入れよ。四つの魔法が一つとなり、神世の炎を生み出す。それにより溶けたる金属を『太陽の箱』にて閉じこめ、一振りの剣とせよ‥‥」
 さらに‥‥
「鍛えしは神世の炎と月雫のハンマー。月の道充と気から次の道充まで、ただひたすらに心を研ぎ澄まし、金属に息吹を込めよ‥‥されば剣、神の剣とならん‥‥」
 解読完了。
「‥‥あ、俺って天才?」
 ちなみにここにたどり着くまでに、ロックフェラーはすでにかなりの夜を越えている。
 昼間はひたすらに金属を打ち、夜は師の書庫で解読を続ける。
「神剣カリバーンの打ち方が判ったが‥‥俺にどうしろと?」
 判ったのは良いが、同時に絶望が眼の前に現われる。
 止む無くロックフェラーはクリエムに筆談でこの事を告げ、助力を得ようとした。
「‥‥えっと、『力の炉』、すなわち魔法の炉はどこに在るか見当もつきませんね。『竜の籠手』は師が5振りの魔剣を鍛えし時に使用していたもので‥‥」
 そう告げて、クリエムは奥から桐箱を持ってくる。
 その中から、漆黒に輝く籠手を取り出してロックフェラーに手渡す。
「これが‥‥竜の籠手?」
「ええ。そしてもう一つ、『月雫のハンマー』ですが、心当りはあります‥‥けれど‥‥」
 そう告げて、しばらく沈黙。
「兄の工房にあると思います。兄が父、そして祖父より受け継いだ『ディンセルフ』の証しです‥‥」
 そう告げるクリエム。
「そうですか‥‥では」
「ええ。兄が殺されたとき、兄の鍛えた武具も道具もなにもかもが持ち出されてしまいました。このノルマンの何処かにはあるでしょうけれど、どこにあるかは‥‥」
 つまり、それらを見付けなくては話にならない。
「それにしても、『四つの魔法が一つとなり、神世の炎を生み出す‥‥』ですけれど、これこそ見当がつきませんね」
 その言葉には、クリエムも納得。
「ええ。何処かに、魔法の専門家がいるのでしたらなんとかなるでしょうけれど‥‥」
 なお、クリエムの呟く『魔法の専門家』は、このあと直に!!

──冒険者訓練場
「おや‥‥珍しい‥‥」
 冒険者訓練場の書庫で、せっせと羊皮紙を相手に書き物をしているオイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)を見たレナード・プロストがそう呟いている。
「おや、これは誰かと思ったら、御暇な好事家貴族のレナード・プロスト卿ではありませんか‥‥」
 にこやかにそう呟くオイフェミア。
「まあ、久しぶりだというのに、相変わらずですね。こんな所で何をしているのですか?」
 そう笑みを浮かべつつ問い掛けるレナードに、オイフェミアは静かに説明開始。
「精霊に関する書物を作っているのよ。ほら、エシュロンやイフリート、フェイデルとか。このプロスト領で、あたしは様々な精霊と遭遇し、交流も持てたからねぇ‥‥」
 そう告げると、羽根ペンを側において、ハーブティーで咽を潤す。
「で?」
「精霊の知識のない冒険者のきれいなピンク色の内臓が危険な精霊のごちそうになる前に、あたしは『精霊図鑑』を編集して、この冒険者訓練所のために役立てようと思っているのよ‥‥」
 その心意気や良し。
 実に、この場を訪れるであろう冒険者の卵たちに優しい。
「ほほう。それならば、私も協力しましょう‥‥」
 と告げられて、オイフェミアはとある所へ連行。
──場所は変わってプロスト城・地下迷宮
「ち、ちょっとまちなさぁぃぃぃぃぃぃ」
──ゴイーーーン
 目の前から立ち去ろうとしているイフリートに向かって、オイフェミアは手元の木製マグを叩きつける。
 ここに連れられてきた理由は一つ。
 オイフェミアの為に、プロストは彼女の知識で足りない部分を補う為に、直接精霊の住まうこの地に連れてきたのである。
 っていうか、アンタ達まだいたの?
 頭を押さえて悶絶しているイフリートに向かって、オイフェミアはここに来て座れと指示を出す。
 そのまま観察し、イフリートの詳細をスケッチ。細かい精霊の身長・体重・出身地・必殺技・好物・弱点など(?)を自身の精霊知識と目の前の実物を交えて編集。
 かくしてオイフェミア著『恐怖・精霊図鑑』は図解も交えたかなり良い出来となった。
 もっとも、作られた刷数は写本として3冊、1冊はプロストが、1冊はオイフェミアのバックの中に、残り1冊は冒険者訓練場に預けられた。
「このままプロスト卿がスポンサーになって、この本の写本を持つと大量に作ってくれれば‥‥」
 そこからは自分で交渉してくださいね。


●ロイ教授は何処に?
──ロイ考古学研究所
 すでに閉鎖されてしまったロイ教授の研究室。
 その前で、パネブ・センネフェル(ea8063)は途方に暮れてしまっていた。
「ギルドでロイ教授の事を知り、遺跡について教えて欲しかったのに‥‥」
 いきなり挫折しているパネブ。
「あの‥‥研究室に何か御用ですか?」
 そう話し掛けてきたのは一人の女性。
「あ、これは失礼。ここの研究室を訪ねてきたのですが」
「ドクターは異端審問で連れていかれましたよ‥‥あ、私はマグネシアと申します。宜しければ、私の家へ‥‥」
──という事で場所は変わってマグネシア宅
 そこでパネブは真実を知る。
 ロイ教授の元に悪魔が居るという噂を聞きつけてやつてきた神聖騎士『アザートゥス』が、部下の審問官と共にロイ教授を連れさっていったこと。
 其の場にいた悪魔が瞬殺されてしまったこと。
 研究室はそのほとんどが押収されてしまい、今は一部の写本を『マグネシア』が所持しているらしいこと。
「悪魔と共に過ごしてきたのなら、言い逃れはできないか‥‥」
「ええ。どうにか助かる方法を探していたのですけど、それも‥‥パネブさん、何かいい方法はありませんか?」
 そうマグネシアに問い掛けられたが、パネブにもすぐには思い付かない。
「もうすこし、考えさせてほしい‥‥」


──場所は変わって、郊外・岩場
 ドッゴォォォォン
 爆音が周囲に響きわたる。
 楠木 麻(ea8087)が剥き出しになった岩肌にグラビティキャノンを叩きつけていた。
「ふぅ‥‥これでよし‥‥」
 そう呟くと、『ウォールホール』の効果が切れないうちに、バックの中から月光の杖、クレメニのメイス、ダモクレスの剣、ヴェーディマのねじれた杖、そしてかんざしを取り出して小さい洞窟部分に入れる。
──シュルルルルッ
 やがて魔法の効果が切れたとき、洞窟部分は閉じられ、元の岩肌に戻る。
 楠木の作りし洞窟。
 その奥に眠る財宝。 
「あとは‥‥と‥‥」
 パリで描かれた自画像。
 それを額縁に納める。その裏には、この場所の地図を暗号の如くかくしておくと、楠木はそれをパリに戻り、冒険者ギルドに寄贈する。
 そのまましばらくはギルドに飾られることになるが、やがては倉庫へと追いやられてしまう。
 その光景を思いつつ、楠木はほくそえんでいた。
「いつか‥‥地震で山が崩れ洞窟が現れるか、額縁の地図に気付くか、それとも永遠に知られる事はなく終わるか‥‥楽しみだ♪」
 いや、洒落抜きで愉しみだ!!

 かくして、さまざまな思いを描いて、それは作られていく。
 作り手の心を感じつつ、そして様々な想いを刻み。
 あなたは、どんなものを作るのでしょうか?

〜Fin