ダンジョン&トラップス〜求めるものは?〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜17lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月19日〜09月29日

リプレイ公開日:2006年09月27日

●オープニング

──事件の冒頭
 静かな迷宮。
 その第六階層に位置する大広間。
 様々な冒険者達が、そこで静かな一時を過ごしている。
 あるものは仲間の治療の為、そしてまたあるものは謎の解析の為、安全地帯(セーフティゾーン)であるそこで休んでいた。
 ここはアビス。
 悪魔の臓腑、生きている迷宮‥‥


●それは唐突にはじまりました
──シャルトル地方・プロスト領辺境自治区『ラヴィーヌ』
 一体そこには何があるのだろう。
 地位?
 名誉?
 莫大な財宝?
 それが何であるか、真実はだれも知らない。
 ただ、その再下層には、『偉大なる守護者』に守られた『それ』があるという。
 『それ』がなんであるのかは判らない。
 ただ、手にしたものは、望むもの全てが得られるらしい。
 今宵も『それ』を求めて、多くの者たちが迷宮アビスに突入していった。

 さて。
 君も来るかね?
 あるかどうか、その真実すら語られない『それ』を求めて‥‥。

●今回の参加者

 ea1558 ノリア・カサンドラ(34歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea3587 ファットマン・グレート(35歳・♂・ファイター・ドワーフ・モンゴル王国)
 ea5180 シャルロッテ・ブルームハルト(33歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea5640 リュリス・アルフェイン(29歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea5796 キサラ・ブレンファード(32歳・♀・ナイト・人間・エジプト)
 ea6536 リスター・ストーム(40歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●地下第6階層〜ただ一つのメッセージ〜
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 力一杯溜め息を吐きつつ、リスター・ストーム(ea6536)がカウンターで項垂れている。
「リスター。深刻そうな顔をしているのは構わないが、そこで何度も溜め息を付くのは止めてくれ。ほら、昔から言うだろう? 『溜め息を付くと一緒に幸せも逃げる』って」
 マスター、あんたどこの人だよ。
「だってよ。蛮ちゃん、あれからずーーーーっと家に戻って来ないんだぜ‥‥全く‥‥と、ミストルディン、『それ』について何か判ったか?」
 そう横に座って静かにハーブティーを飲んでいるミストルディンに問い掛けるリスター。
「アビスの『それ』でしょう? 『それ』を手にしたものに望む者を与えるって言う。一説では『覇王の剣』とか『幸運剣』とか、色々な噂はでているわよねぇ‥‥」
 そう告げると、ミストルディンは静かに遠くを見つめる。
「それ‥‥ねぇ。あの縛鎖も破壊できるのかしら‥‥」
「ん? 何かいったか?」
「いえいえ。まあ、私の知っている情報って、こんなものかしらねぇ‥‥それじゃあ、私はこれで‥‥」
 そうリスターに告げると、ミストルディンは静かに其の場を後にした。


●それでは体験してみよう〜アビス実践編〜
──アビス第6階層
 静かな回廊を次々と抜け、一行はとりあえず合流地点としての最下層・第6階層にたどり着いた。
 ちなみに、ここまでたどり着けない冒険者は、ここに挑戦する資格なしと。
「‥‥ずいぶんと広い空間ですねぇ」
 周囲を見渡しつつ、ノリア・カサンドラ(ea1558)がそう呟く。
「そうだな。広い空間に、いくつもの回廊。それぞれの回廊の入り口近くには幾つかの冒険者のチームというところか。それぞれの入り口によって、内部はさらに迷宮化しているのだろう?」
 キサラ・ブレンファード(ea5796)のその問いに、シャルロッテ・ブルームハルト(ea5180)が静かに肯く。
「ええ。ですけれど、昨年よりもこの階層自体が広く感じられますわ」
 ちなみにこの間、リスターはちょろちょろと他の冒険者達の所を訪ねては色々と情報を交換している模様。
「まあ、俺は、どんな状況だろうと突破する自信もある。準備が整ったらとっとと先に進もうぜ」
 リュリス・アルフェイン(ea5640)が皆にそう促す。
 と、それぞれ準備を行ない、いよいよ未知のエリア、第6階層の回廊に進みはじめた。
 24の回廊のなかから、18番目の誰も居ない回廊を選ぶと、一行は先に進んでいった。
 と、先頭を歩いているファットマン・グレート(ea3587)とキサラが先の行き止まりのエリアを確認。
 その壁には、かなり力の強そうな悪魔のレリーフが彫られている。
「この先は行き止まりか」
「どうする? 回廊自体が外れという可能性もあるのだろう?」
 ファットマンとキサラがシャルロッテに問い掛ける。
「ええ。ですが、その装飾に何か細工がしてある可能性もあります‥‥」
 そのシャルロッテの言葉に、リスターが指をマッサージしつつ前に出る。
「さて、という事は俺の出番か‥‥」
 そう呟きつつ、静かに壁を調べるリスター。
「簡単なトラップ‥‥っていうか、面白いトラップだなぁ」
 そう呟きつつ壁から離れると、リスターはバックバックの中からシーフツールを取り出す。
「面白いトラップ?」
「ああ。巧妙に隠されている『ようにみせかけた』壁の仕掛け。それに引っ掛かり起動させると、この壁のもう一つの仕掛け『シークレットドア』が作動するっていう事。奥に向かうには、誰かが仕掛けに反応しないといけないか‥‥」
 そう呟きつつ、リスターは久しぶりにトラップの解除を試みる。
──ガチャガチャッ
「‥‥と‥‥ここをこうして‥‥と‥‥」
 静かに仕掛けを探るリスター。
「あ、ここか。よし、全員後ろに下がって。シャルロッテちゃんは、リカバーの準備をよろしくねー」
「リカバー?」
 そうシャルロッテが呟くや否や、壁の両側が突然開き、無数の小さい針がリスターに向かって射出された。
──プスプスプスプスプスッ
 大量の針により串刺しになるリスター。
 といっても、血がうっすらと滲む程度のものである。
「ああ‥‥リカバー‥‥」
 そう呟くリスターに、シャルロッテが素早くリカバーを唱える。
──ヴゥゥゥゥン
 かすり傷程度の傷が瞬時に癒える。
「まあ、この程度か‥‥と、これがドアの仕掛けで‥‥」
 そう告げつつ、シークレットドアを開くリスター。
──業吽々々(ゴウンゴゥン‥‥)
 奇妙な音を響かせつつ、扉が開く。
「よし、これであとはOK。キサラちゃんご褒美カモーン」
 リスター、相変わらずのようで。

●そしてさらに下へ下へ
──第31階層
 どれほどの時間が経過したであろう。
 一行は、1度も外に出ないまま先を 進んでいた。
 いや、正確には、元に戻れなくなっていたのである。
 幾つもの回廊を越え、幾つものシークレットドアを越えたとき、一行はとあるトラップに引っ掛かってしまっていた。
 『ワンウェイ』
 すなわち一方通行の回廊。
 先に進むしか道はなく、後ろにはなにもない。
 それゆえ、一行は休むことなく戦いつづけ、寝るあいだにも襲いかかってくる魔物たちによって、かなり疲弊してていた。
──ドッゴォォォォォォッ
 力一杯の一撃を目の前のミノタウロスに叩きつけるファットマン。
「これで、何度目の戦いだ?」
 そう横で身構えているキサラに問い掛ける。
──シュシュンッ
 瞬時に目の前のバグベアーを切り刻みつつ、キサラはふと考えた。
「これで多分、24回目ぐらいだな」
「ふぅ。いい加減武器も血糊で切れ味が鈍ってくる。戻りたいが‥‥」
「それが無理ならば、前に進むしかないだろうっ!」
──シュンシュン‥‥
 リュリスは相変わらず二刀流で敵コボルトを切り裂く。
 1度だけ、コボルトの刃を受けたのだが、幸いにしてその武器には毒は塗られていなかったらしい。
「あと少し。そんな感じがヒシヒシと伝わってくるぜっ!!」
 さらにリュリスは絶好調という所であろう。
──ダン!!
 素早く震脚し、目の前のトロルの背後に回りこむノリア。
「エナッツの書・第5章21‥‥」
 そう呟きつつ、ノリアはトロルの背面から相手の股下に自分の頭を差し入れる。
「相手が再生する的であるならば‥‥」
 そのまま力任せにトロルを肩車の要領で持ち上げると、そのままノリアは開脚ジャンプ!!
──ドガグラグワガラガッシャーーーーン
 尻餅しつつ着地し、さらにそのままトロルを頭・顔・胸から叩きつけていった!!
「グゥオオオオオオォォォォォッ」
 悲鳴をあげつつ、トロル失神。
「子守りのさ中に学んだエナッツの書。それに記された48のエクソシスト技に48のノリアボンバーを合わせた新たなる私。ノリアボンバーの昇華した大系‥‥ノリアバスター零式っ『タロンのイカした鉄拳っ』」
 あ、なんか痛そう。
 それをポカ────ーンと口を開いて見ていたリスター。
「まあ‥‥ノリアたんにはこれ以上は仕掛けないと‥‥」
 さらに目の前の敵を次々と撃破。
 どうにかその窮地を脱すると、一休みの後一行はさらに先にすすんだ‥‥。


●迷宮は続くよどこまでも
──第14階層あたりだと思う
「さすがにずっとダンジョンにいると、外の光が恋しくなる‥‥」
 そう呟きつつ、ノリアは目の前の階段を恨めしそうに睨みつける。
 一行はどうにか地下47階層までたどり着いた。
 が、そこから更に地獄が待っていた。
 いきなり現われた上り階段。
 あとはただひたすら階段を上がりつづけていたのである。
 途中に踊り場がある訳でもない。
 ただ、ひたすらに昇っていた。
「あ‥‥あ‥‥あれ‥‥ハアハア‥‥」
 目の前の行き止まりを指差すキサラ。
「また行き止まりか‥‥ハァハァ」
 立ち止まり、ファットマンが肩で息をする。
「扉に紋章か‥‥ハァハァ‥‥リスター、判るか?」
 リュリスがついに階段に座り込むと、リスターに問い掛ける。
「ああ‥‥貴族系の紋章か‥‥誰が紋章について詳しい奴は?」
 そのリスターの問いに対して。
「エナッツの書には載っていないわね」
「自分は知らん!!」
「申し訳ありません。家事でしたら得意なのですけれど」
「手広く学んできたが、コレばかりはなぁ」
「狩りなら詳しいのだが‥‥」
 とまあ、つまり全滅ですな。
「そうか‥‥じゃあ紋章についてはパスと‥‥」
 そのままトラップを調べるリスター。
「あ、またコレか‥‥」
 壁にまたしてもシークレットドア。
 今度はポイズンシークレットニードルのおまけ付きだが、これは簡単に解除、さらにシークレットドアまで開くリスター。

──ガチャッ‥‥ギィィィィィィィィィィ
 ゆっくりとひらいた空間。
 そこは小さな部屋、中央の台座に、錆びた剣が一振り突き刺さっており、それに今だ錆びていない鎖が巻き付いていた。
「これだぁぁぁぁっ。これが覇王の剣‥‥か‥‥?」
 リュリスが勢いよく室内に飛込むが、その剣を見て立ち止まる。
 装飾の施された柄、だがその装飾とは対象的に無骨な空気を感じさせる刃。
 何か風格のようなものを感じさせるが、刀身は真っ赤に錆付いている。
「覇王の剣‥‥とは違うか‥‥だが‥‥」
 なにか強く引かれる自分が居る事に動揺するリュリス。
 そしてその横で、キサラも剣をじっと見つめていた。
「これが主の求めている力。悪魔に打ち勝つ剣なのか‥‥」
 手を伸ばしたい衝動に狩られるキサラ。
 だが、其の手をキサラは止める。
 腰に下げているてるてる坊主が、キサラに微笑んでいたから。


 その横で、リスターは目の前の光景に驚きを隠せない。
 何処までも広がる草原。
 その真ん中の湖。
 そしてそこで戯れている美女、美女、まさに美女。
 全裸の美女達が、楽しそうにリスターに向かって微笑んでいる。
 もう、自我を押さえる必要も感じない。
 というか、むしろ全てをさらけ出したい。
 いつのまにかリスターは、ズボンを脱ぎ捨てて下半身スッ裸になっていた。

 さらに横。
「力‥‥か」
 一振りの巨大な戦斧が、ファットマンの目の前の床に突き刺さっている。
 その柄には、ゲルマン語で『ギャリア』と刻まれている。
「伝説の爆斧『ギャリア』か。これがあれば、エリスに恩返しも‥‥」
 そう呟きつつ、斧に向かってフラフラと吸い込まれるように歩いていくファットマンであった。

 さらさらに横
「シスター・アイ‥‥これがあれば助かる。みんな、元に戻るんだね‥‥」
 ノリアは眼の前にある一振りの錫杖を見つめていた。
 エナッツの書に記された甦生の紅杖『アブサン』。
 どんなピンチであろうと、その杖を振りかざすと、奇跡の逆転が起こるとも伝えられている。
「死んでしまった哀しい魂はこの地に戻り‥‥これから戦う人たちには奇跡を授ける‥‥タロンの聖遺物‥‥」
 思わずその場にひざまつき、ノリアは胸の前で十字を切った。
「タロン、そしてエナッツ。私にこの力を授けてくれたことを感謝します‥‥」
 そう告げると、フラフラと杖に向かって歩き出した。


 さらさらさらに横
 シャルロッテは困り果てていた。
 突然シークレット扉が開いたかと思うと、シャルロッテを除く5名が室内にふらふらと入っていったのである。
「み、皆さんどうしたんですか!!」
 そう叫びつつファットマンやキサラ、リュリス、ノリアを揺さぶってもその歩みはとまらない。
 その前方、部屋の中央には巨大な空洞が開けている。
 風が吹きぬけ、時折ゴゥゥゥゥッと風の巻く音が聞こえる空洞。
 そこから墜ちたら、生きてかえることは不可能であろう。
「リスターさん、御願いです。正気に戻ってくださいっ!!」
 そう叫んでもリスターの歩みも止まらない。
 なにかに操られているのか、幻覚に呼び込まれているのかは判らない。
 ただ、リスター以外は朦朧とした瞳で、リスターは好色一杯のエロい瞳で歩いていた。
「み‥‥皆さんの幻覚は私には判りません‥‥けれど、リスターさんのははっきりと判ります‥‥それでしたら!!」
 シャルロッテ一世一代の決意。
 リスターの前に走りこむと、リスターの両手をぎゅっと握り締める。
「り、リスターさん!!」
 そのままリスターの手を自分の巨乳に当てるシャルロッテ!!

──ホワワワワーーーーン
 目の前の美女達。
 そこに向かって歩いているリスターの前に、突然シャルロッテが現われた。
 そして悩ましい姿でリスターの前で胸をはだけると、そのままリスターの手をとって胸にあてる。

──モミッ
 軽く揉みし抱くリスター(何処が軽いんだッ!!)
「あ‥‥ふーーー。いい感触‥‥まるで夢の‥‥」
「ゆ、夢じゃありませんっ!!」
 そう叫んだと同時に、リスターの呪縛が解かれた。
 目の前の現実。
 卒倒しそうな程顔を紅潮させたシャルロッテの胸を、リスターは揉みしだいている。
「つ、ついに俺のものに‥‥って、あぶないぃぃぃぃぃぃぃっ」
 そう呟くや否や、リスターは目の前で穴に向かって歩いているキサラとリュリス、ファットマンに向かってバックバックを投げ付ける。
 さらにその勢いでノリアに向かって飛び付くと、後ろから羽交い締めにしてそのまま両手をノリアの胸許に侵入!!
──サワワワッ‥‥モミミミミッ
「夢にまでみたノリアたんの生乳っ‥‥もう死んでもいいっ‥‥」
 そう呟いたと同時に、ノリアの口からぼそっと一言。
「エナッツの書最終章最終項‥‥『汝、姦淫することなかれ‥‥』」
 そう呟くと同時に、ノリアはリスターの両手を掴むと、そのまま後ろから前に向かって投げ落とす。
──うわわわをををっ
 そのまま床に叩きつけられる直前、ノリアは下になっているリスターの後頭部目掛けて必殺のローキック!!
「ノリアバスター零式っ、稲妻彗星キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!」
 そのまま横の壁に向かってふっとぶリスター。
 ッて、死ぬからその技。
「あ、こ、これは‥‥」
「覇王剣が消えただと!!」
「エ‥‥エーーーーーーールスーーーーーーーーーーーーっ」
 キサラが、リュリスが、そしてファットマンが正気に戻る。
「よ、良かったです‥‥」
 ほっと安心したシャルロッテ。
 そしてそのまましばし一行は部屋の片隅で疲れを癒していた。
 その後先に進み、ダンジョンを調べていたのだが、どうにもそれらしいものにたどり着けない。
「別のルートからもういちど調べたほうがいいかもしれないか」
「確かにそうですね。第6階層で伸びていた回廊は24。そのうちのどれかが、『それ』に繋がっているのでしょう」 
 そう呟きつつ、一行は残りの時間を『帰還』する為に費やすこととなった。


 アビス回廊No18。
 完全なる地図作成なるも、『それ』にたどり着くことかなわず。

〜Fin