ノルマン漫遊記

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:普通

成功報酬:11 G 32 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:12月24日〜01月05日

リプレイ公開日:2007年01月03日

●オープニング

──事件の冒頭
 はてさて、ここはノルマン王国王城。
 謁見の間別室にて、なにやら不穏な空気が流れている様子。
 椅子に座っているのは綺麗なサーコートを付けた金髪の女性騎士。
 その顔には冷たい雰囲気を漂わせる仮面を付けている。
 その横で、執務官が何か話をしており、さらにその前でニライ査察官が困った顔をしている。
「‥‥つまり、この女性にノルマンを案内しろというのか?」
 不満たらたらでそう告げるニライ。
「ええ。この方は、はるばるインドゥーラという国からやってきたパラディンなる騎士。この度、ノルマンにも新たなるパラディン選ぶ為の門を開放してくれたのである。そこでしばしの間、このパラディン殿もノルマンを知りたいともうされてな。国王陛下直々に、『ニライが適切であろう』と告げられた。ということで、くれぐれも失礼のないよう」
 そう告げると、執務官は横に座っているパラディンに今の言葉を通訳した。
「私はこの地が初めてであり、色々と教えて頂きたい。よろしいですか?」
 拙いゲルマン語でそう告げるパラディン。
「‥‥このノルマンからパラディンが選ばれるとなると‥‥国益‥‥だな?」
 ああっ、そんなこと口に出していっているニライさんって迂闊すぎ。
「よろしい。では、私が貴方にこのノルマンを色々と教えてあげましょう。私には、このノルマンを詳しく知っている優秀な仲間たちがいます。彼等にも協力して頂きましょう‥‥」

──という事で、冒険者ギルド
「腕の立つ冒険者を若干名。依頼内容は『観光案内』。とにかく、外国からきた国賓にこのノルマンを教えてあげられる人物を頼む」
 直接ギルドマスターにそう告げるニライ。
「あら。随分と面白い話ね。一体どこのどなたがいらしたのかしら?」
 ギルドマスターがニコニコと笑みを浮かべつつ、そう告げる。
「インドゥーラのパラディンだと。なんでも八部衆とかいうすごいとこのさらに御偉いさんらしいが、よく判らん。ということで頼んだぞ」
 と告げて、ニライは急ぎ逃亡。

●今回の参加者

 ea2165 ジョセフ・ギールケ(31歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea2350 シクル・ザーン(23歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3693 カイザード・フォーリア(37歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea7191 エグゼ・クエーサー(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 eb3530 カルル・ゲラー(23歳・♂・神聖騎士・パラ・フランク王国)
 eb3933 シターレ・オレアリス(66歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)

●サポート参加者

シャルク・ネネルザード(ea5384)/ メイユ・ブリッド(eb5422)/ カーテローゼ・フォイエルバッハ(eb6675

●リプレイ本文

●ノルマン良いとこ1度はおいで
──パリ市内
 はあ〜♪ よいよいっと。
 早朝。
 今回の依頼主であるニライ・カナイ査察官と合流する為、冒険者一行はとりあえずギルド前に集っていた。
「一体どんな方がくのでしょうか?」
 シクル・ザーン(ea2350)がにこやかに仲間たちに問い掛ける。
「詳しくは判らぬ‥‥だが、異国の文化というのはかなり複雑であるらしい‥‥」
 カイザード・フォーリア(ea3693)はあらかじめ図書館などで異国の文化についての勉強をしてきたらしい。
 文化の違い、戒律とそれにかんしてのタブーなどを学び、礼節を重んじるように準備は万端の模様。
「私は昨日パラディンの方にお会いしたんだが、とっつきにくい方だったな。あんな感じじゃなければよいが‥‥」
 そう告げるジョセフ・ギールケ(ea2165)に、他の一同も納得。
「カイザードから言われたとおり、食べられないものなどは大体判った。それに対しての料理の準備は万端だ」
 戦う料理人・エグゼ・クエーサー(ea7191)ももてなしの準備OK。
「どんな人かなぁ。愉しみだなぁ‥‥」
 カルル・ゲラー(eb3530)もまた、これからやってくる国賓に想いを寄せる。
「まあ、包み隠さず、このノルマンを理解してもらう為には、良い所も悪い所も見てもらったほうがよういと思うのう‥‥」
 シターレ・オレアリス(eb3933)の言葉に、これまた納得する一同。
「ふぅ‥‥御待たせした。皆にも紹介しておこう‥‥」
 ようやくやってきたニライ査察官が、横に立っている女性を紹介する。
『初めまして。このたび、新たなるパラディンを選出する為に各国を渡っているフィーム・ラール・ロイシィと言う。このノルマンにはしばらく滞在する為、よろしく頼む』
 流暢なイギリス語でそう告げるフィーム。
「イギリス語の話せない奴は私が通訳する。それで構わないな?」
 と告げるニライに納得して、一行は堂々と挨拶を開始。
「えーーーーーーっと‥‥先程はお世話になりました。ジョセフ・ギールケです」
 つい数時間前に、ジョセフは冒険者酒場シャンゼリゼでフィームとあっていたのである。
(いや参った‥‥こうきますか?)
 ええ、こう来てみました。
「シクル・ザーンです。よろしく御願いします」
 これまた丁寧なシクル。
「ビザンツ帝國の貴族、カイザードと申します。
 暫くの間宜しくお願いいたします」
 両手を胸の前で合わせ、深々と一礼したのちにヒンズー語で挨拶を行うカイザード。
「ナマステー、こちらこそ、よろしく御願いしますね」
 同じく胸の前で両手を合わせ、そう告げるフィーム。
「エグゼ・クエーサーだ。今回は料理を全て担当することになっている。もし食べられないものや嫌いなものがあったら教えてくれ」
 丁寧に告げるエグゼ。
『判りました。ノルマンの料理、愉しみにしています‥‥もしよろしければ、料理を作る際に材料を見せて頂きたいのです』
 そのフィームの言葉に、エグゼも肯く。
「カルル・ゲラーです。こないだはお姉ちゃんがお世話になりました。とっても良かったっていってたよ☆」
 にこやかに握手を躱わしつつ、カルルがそう告げる。
『貴方のお姉さんも酒場にいたのか。よろしく頼む』
 にこやかに告げるフィーム。
「わしはシターレ・オレアリスと申す。この度のパラディン殿の来訪、私共も精一杯歓迎させて頂く」
 騎士らしく一礼をしてのち、そう告げるシターレ。
『ありがとうございます』
 そして一通りの挨拶が終ったのち、まずはどこにいこうか思案。


●まずはパリ市内からスタート
──パリ・中央から下町散策
「まずはこのパリを楽しんでもらいましょう!! 丁度今は聖夜祭、綺麗に飾り付けられた町をご案内しましょう!!」
 道化のように一礼して、ジョセフの案内で町の中の散策に出る一行。
 宗教‥‥文化の違いから聖夜祭というものが存在していないインドゥーラの民にとって、この華やかな飾りは興味の対象であろう。
 キョロキョロと周囲を見渡し、様々な飾りについての質問を繰り返すフィームに、ジョセフは自前の知識をフル動員。
『それにしても綺麗な町ですね‥‥』
 にこやかに告げるフィーム。
 と、カルルはにっこりと微笑んで、フィームに話し掛けた。
『幾つか質問をしていいですか?』
『ああ、別に構わない』
 そう告げるフィームに、カルルは一つ一つ質問をしていく。
『のるまんにきてびっくりしたことは?』
『ものが豊かな事と、様々な文化が混ざっているという所だな。異文化交流は良いことも悪いこともある。この国は、それらを全て包んでいる‥‥私の昔住んでいたアイルランドとも少し違うな』
 その言葉に、カルルとしては満足。
『あしゅら教ってどんな教えなの?』
『阿修羅は私達を平和に導いてくれる神だ。阿修羅神の教えによってのみ、この世界は静かな世が訪れる。私達パラディンは阿修羅神の地上代行者として、世界各地での争いを修める任務についている‥‥もっと詳しく説明すると長くなるので割愛するけど、また今度詳しく教えてあげるから‥‥』
 丁寧に、それでいて芯の通った声で告げるフィーム。
『インドゥーラってどんなところなのっ?』
『いくつもの部族が集ってできた国だ。国としてはまだそれ程時間は立っていないが歴史は古い。宗教の戒律が厳しいが、それさえ守っていれば、比較的良い国だ』
 その言葉にもカルルは満足。
『お姉さんの好みの異性は?』
『あはは。好みか‥‥そうだな‥‥』
 しばし思考するフィーム。
『私を守ってくれる人‥‥かな?』
 その言葉に、其の場の全員が心のなかで突っ込みを入れる。

(パラディンを護れる人って、いったいどん奴だよっ!!)

 そして最後に、カルルは一番難しい質問をしてみた。
『えとえと、無辜の民をぎゃくさつするのはとっても重い罪だとおもうけど、大きな罪を犯したひとはどうすれば救われるんですか?』
『その罪に等しい贖罪を行う事だ。例えば、君の告げた『無辜の民の虐殺』。それは在ってはいけない事であり、それに対しての罪の贖罪を決定するのは私の国では『議会』が決定する。私達はそれに従い、そのために行動する‥‥』
 その言葉に、カルルは頭を捻る。
『難しいかもしれない。私の昔いたアイルランドやこのノルマンでは、教会が裁判を行う権限を行使するだろう? インドゥーラではそれを議会が行ない、正しき道を示す。命を奪ったからといって殺すのではなく、その命と等しい贖罪を求められる。もしそれが受け入れないものであった場合は、コロシアムにおいての一騎打ちが認められているが‥‥』
『それに勝ったら、罪は消えるの?』
『罪は消えない。ただ、咎められなくなる。罪はそのものの魂に刻まれ、やがて阿修羅の元で最後の判決をうけることになるだろう‥‥』
 最後に判決を下すのは神である阿修羅ということであろう。
 一通りの質問が終った後、その複雑な文化を改めて知る事ととなった一行であったとさ。


●晩餐
──小料理屋・エグゼ亭 
 とんとんとんとんとんとんとんとんとんっ。
 軽快な音で肉を叩くエグゼ。
 その後ろでは、フィームがニライを通して様々な質問を行なっていた。
『この野菜は何だ?』
『それはスープにつかうもので‥‥詳しく説明すると‥‥』
 と、一つ一つを説明することになるエグゼ。
『ニライさん、異国の人はどうして食材まで‥‥あ、これも戒律か?』
 と、問い掛けるエグゼに、フィームがゆっくりと説明。
『戒律として食べられないものもあるが、何より異国で食事を取るときは、その食材が不浄である場合がある。不浄なものは悪魔が潜んでいることもあるので注意する必要があるから、使っているものを確認しないと食べることができない』
『えーーっと、一つ聞かせてくれ。うちの食材は不浄なのか?』
『私達の事を考え、丁寧に仕事をしてくれている。貴方なら安心して食事を御願いできる。ニライ殿、私はこの地に留まっているあいだ、こちらで食事を行なっても構わないか?』
『‥‥それは一向に構いません』
 そう告げると、フィームは頭を下げて厨房から出ていった。
「ニライさんよぉ。つまり簡単に説明してほしいんだが?」
「ああ、喜べエグゼ、フィームどのはノルマン滞在の間、ここでの食事をしたいと告げていた。これは栄誉な事だ‥‥では頼むぞ」
 そう告げて、ニライも厨房から出て行く。
 しばし思考。
「つまり‥‥俺はここで毎日食事をつくると‥‥まあ留守の時は王宮で食べるんだろうが‥‥ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ?」
 あ、事の重大さに気が付きましたか。
 エグゼ屋にはしばし『インドゥーラ国賓御用達』の看板がかけられる事になったとさ。
 翌日には、インドゥーラの珍しい調味料も運びこまれ、これまた頭を捻る事になったエグゼにはとりあえず両手を合わせて『ナム』。
 

●翌日
──シュバルツ城へ
 次の日からは各地の名所めぐり。
「ここは昨年、悪魔によって奪われ、破滅の魔法陣というのが設置された城です‥‥」
 シクルはフィームをシュバルツ城へと案内した。
 そこでフィームは、しばし遠くをながめるかのように城全体を見渡し、静かに呟く。
『このような惨劇が行われていたとは。私達パラディンも、もっと世界を知る事が必要です‥‥本国のアジーナ大聖堂にも、ここでの悪魔に関する報告は届いていません‥‥』
 そう悔しそうに告げるフィームに、シクルは一言捕捉。
『ですが、このノルマンには、私達冒険者が居ます。国を護る騎士もいます。私達は自分達の国を見ずから手で護る義務があるのです‥‥パラディン殿の御力を借りることなく、自らの運命は切り開いていきます』
 おぉっと。
 まあ、その言葉に首を右に傾けると、フィームは笑顔でこう告げた。
『がんばってください』


●ノストラダムスの災禍
──セーヌ川上流
 次に訪れたのは、先日ダゴンの襲来のあった被災地。
 そこでの光景もまた、フィームにとっては辛いものであった。
『ここ最近に、パリで起きている『ノストラダムス』についての書の写しもあるが、それは『手渡せない』ゆえご勘弁を』
 そう告げるシターレ。
 写しは『羊皮紙』に書込まれている故、シターレはそれを見せることすら留まった。
 流石、カイザーと達から色々と話を聞いていただけのことはある。
 インドゥーラの文化をある程度理解している証しともいえよう。
『御心遣い感謝する。出来れば、言葉で教えて頂きたい』
 そのフィームに、シターレは自分の知るノストラダムスの予言を伝える。
 そしてそれが、これからパリで起きる事件の前触れであろうことも。
『このノルマンにも、パラディンを派遣する必要があるか‥‥』
『だったら、フィームさんがここにきたら?』
 あっけらかーんと告げるカルルでした。


●そして買い物
──パリ市内
 最後の日はパリ市内を買い物行脚。
 護衛のカイザードはその都度、フィームを珍しがってからかいにくる酔っぱらいやちんぴら達をてきとうに撃破する。
「まったく、国賓ということが彼等には判らない故、どうしても力任せになってしまうか」
 そう告げるカイザード。
「それでも、この国は豊かですね」
 ヒンズー語で語るフィームに、カイザードのまた笑みを浮かべつつ返答。
「現状、暗い噂も流れてますが。聖夜や年明けを迎えてこの地の人々も明るく振舞おうとしています」
「ええ。人が人として。いい国です。冒険者の皆さんの結束も、色々と伺いましたしね」
 チラッとシクルを見ながら、フィームがそう告げる。
「フィームおねーちゃん。こっちこっち、エグゼさんがゴハン作ってくれたよーっ」
 カルルがフィームの手を引っ張ってエグゼ屋につれていく。
 そこには、彼女の故郷であるアイルランドの料理と、どこから調達したのかアイルランドの飲み物も置いてあった。
「フィームどのは戒律ゆえ、お酒は飲めませんね?」
 そのカイザードの言葉に頭を左右に振ると、近くに置いてあった別の飲み物を手に取る。
「本日は‥‥私‥‥の‥‥ために‥‥ありがとうございました‥‥」
 フィームは拙いゲルマン語で、皆に挨拶を行う。
 そして愉しい晩餐が始まった。
 その中で、カルルはフィームにあるものを手渡した。
「これ、御土産っ。『レインボーリボン』だよっ!!」
 楽しそうにそう告げるカルル。
 そしてフィームはそれを手に取ると、なにかヒンズー語で印を唱え、そっとリボンに祝福を掛ける。
「じゃあこれは私から‥‥」
 そう告げて、フィームはカルルにリボンを返した。
『ずっとお別れじゃないからね。私はまだしばらくここに滞在するし、また必ずこの国にもくるからね‥‥』
 そう告げてから、フィームは静かにカルルに微笑んで、一緒に皆の所に戻っていった。

──Fin