ふらりダンジョン〜アビスに潜ろう!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月02日〜02月17日

リプレイ公開日:2007年02月11日

●オープニング

──事件の冒頭
 ハァハァハァハァ
 息が切れる。
 全身のあちこちから大量の血を流しつつ、男はゆっくりとその場に座り込む。
 横には、同じく傷ついた少女がふたり。
 一人は意識が無く、もう一人も限界に近い。
「ラプソティ、セレナードの容体は?」
「今薬を飲ませたから大丈夫。とりあえず第6階層まで戻ったほうがいいですね」
 そう告げるラプソティに、悪鬼も苦い顔をしてみせる。
「そうだな。一旦戻って、態勢を整え直したほうがいいか‥‥」
 しばしの休息ののち、悪鬼達一行は、ゆっくりと地上に向かって歩き出した。


●アビス
 古き迷宮。
 一部の冒険者からは『生きている迷宮』『悪魔の住まう回廊』と呼ばれている。
 シャルトル・プロスト領辺境自治区『ラヴィーヌ』にあるその迷宮は、様々な冒険者達の腕試しの地としても有名であり、また、その回廊のそこには悪魔達の集めた様々な財宝が隠されているという噂もあって、数多くの冒険者達がチャレンジしていた。
 第一階層から第6階層まではすでに解析が終っており、問題はそこからの進む道。

──第6階層
 様々な冒険者達が、そこで静かな一時を過ごしているた。
 あるものは仲間の治療の為、そしてまたあるものは謎の解析の為、安全地帯(セーフティゾーン)であるそこで休んでいた。
 この第6階層からは、東西南北それぞれの方角に6っつ宛回廊が伸びており、それぞれの回廊の入り口には小さな石碑が置かれている。
 そこには、古代魔法語でこう記されていた。

 ここを進むもの、全ての希望を捨てよ

 きようもまた冒険者達が回廊を訪れる。
 完全生還率5%の、アビスに。

●今回の参加者

 ea2816 オイフェミア・シルバーブルーメ(42歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3120 ロックフェラー・シュターゼン(40歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea4004 薊 鬼十郎(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9519 ロート・クロニクル(29歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2277 レイムス・ドレイク(30歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

クリス・ラインハルト(ea2004)/ カンター・フスク(ea5283

●リプレイ本文

●運命は時として残酷である
──シャルトル地方・ラヴィーヌ・アビス地下6階層
 そこは多少込み合っている空間。
 数多くの挑戦者達がそこで待機し、体調を整えたり攻略方法を模索している。
「‥‥しかし、随分とやられているな」
 ルートNo4。その近くにベースキャンプを作っている悪鬼達の焚火の近くで、デュランダル・アウローラ(ea8820)がそう悪鬼に話し掛けている。
 ちなみにデュランダル、ここに来る前に『剣士の居留地』にてマスター・オズに色々と報告をしてきた。
 その際、多少の時間を作って修行してきた後にここにやってきたようである。
 腰にはマスター・オズから預かった紋章剣『蟹』が下がっている。
「ああ。それでも65階層のまでは攻略済みだ‥‥行くのか?」
 そう悪鬼に問い掛けられ、デュランダルは静かに肯く。
「なら、これを頭の中に叩き込んでおけ。65階層までの全てのトラップとそれらの解除詠唱、モンスターの出現エリアが記してある」
 と告げて、スクロールを4本、デュランダルに手渡す悪鬼。
「ガール達は大丈夫なのか?」
 側で毛布にくるまって眠っているアサシンガールを見ながら、デュランダルはそう呟く。
「ああ。疲労が激しい。今日は一日、ここで身体を休める。暇だったら、単独で突入してきても構わないぞ」
 そう告げられて、悪鬼はルートNo4を指差す。
 と、その回廊の奥から、ぼろぼろになったオイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)がやってくる。
「ちょっと悪鬼、あの回廊魔法が効かないわよ。おかげでまたこの様、どうしてくれるのよっ!!」
 そう叫びつつ焚火の横に座ると、そのまま傷の手当をしてゆっくりと身体を休めるオイフェミア。
「魔法が効かない?」
 デュランダルも不審に重い、そう問い掛ける。
「ああ、攻性防御壁。魔法か何かで細工してあるんだろうけれど、魔法、通常攻撃、全て打ち込んだ相手に跳ね返る‥‥おかげで正攻法で攻略するしかないっていうことだ‥‥もっとも、判っていても、つい手を出してしまうのが人間って奴だけれどな」
 まあ、そんな話を聞きつつ、デュランダルは手渡されたスクロールを頭の中に叩き込んでいった。


●破滅へのプロローグ
──回廊No7、21階層
 目の前に広がっているのは広い空間。
 3m×3mの広さを持つ回廊の先の床は、長さ10mほど穴が開いている。
 正確には床がなく、ぽっかりと竪穴が広がっているようである。
「どうですか?」
 恐る恐る穴をじっと見ている薊鬼十郎(ea4004)に、レイムス・ドレイク(eb2277)が問い掛ける。
「風が吹いているね‥‥」
 そう呟くと、ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)が背中に背負った籠からロープを取り出す。
 アビスにいくのなら持っていったほうがいいと、クリエムに渡された籠である。
 様々な雑貨が入っていて、何かと便利。
「これで深さを‥‥」
 そう告げて、ロープの先ランタンを括りつけ、それを鬼十郎はゆっくりと降ろしていった。

──ガチャン‥‥
 
 深さ3m程。
 その位置で、ランタンは突然横壁に『落ちて』いき、横に倒れた。
「?????」
 その光景に、鬼十郎は頭を捻る。
「えっと、ロートさん、これはどういう事でしょうか?」
 横でその光景をじっと見ていたロート・クロニクル(ea9519)に、その事を問い掛ける。
「えー、簡単に考えると、壁が床になっただけじゃん」
 そう告げつつ、ロートは銅貨を一枚取り出し、穴の中に投げる。

──ひゅるるるる‥‥
 
 途中で放物線を描くように、壁に向かって落ちていく銅貨。
「な。つまりこれは穴では無く『通路』ということじゃん」
 簡単に告げるロートだが、つまるところ、道が二つに別れただけ。
「どっちでしょう?」
 鬼十郎は前と下の通路を見ながら、仲間たちに問い掛ける。
「‥‥前だな。匂いがする‥‥」
 ロックフェラーはそう告げると、フック付きロープを籠から取り出し、通路の向こうに向かって投げ飛ばす。

──ひゅるるるる‥‥かきぃん

 フックの爪が床の隙間に食い込む。
 それをぎゅっと引っ張り、完全に床石にフックさせると、ロックフェラーは籠からハンマーとスパイクを取り出し、石畳の隙間に打ち込む。
「これでよし。ここにロープを括りつけて‥‥と。あとは、これをつたっていくだけだ」
 びしっと張り詰めたロープを指差して、ロックフェラーは仲間たちに告げる。
「レンジャーが一人ぐらいいたほうが助かったのですけれど」
 ロープを伝っていくレイムスがそう呟く。
「ああ。でも無理じゃん‥‥有能なレンジャーは皆、動けなさそうだったし。腕のいいレンジャーを雇うだけの予算もないし‥‥」
 ロートはそう告げつつロープを伝っていく。
 そして、全員がロープの向うにたどり着くと、再び先に進みはじめた。


●過去と今、そしてこれからの生きざま
──回廊No4・第69階層
「どうだ?」
 回廊は行き止まり。
 その奥にある巨大な石造りの扉の前で、セレナードが必死に開鍵を行なっていた。
「‥‥ううーーーん。ロックを外すとトラップが作動する仕掛け。で、トラップを外すと鍵が壊れて開かなくなるから‥‥お手上げ」
 そう告げてピッキング道具をしまい込むセレナード。
「アサシンガールっていっても、たいした事ないわね‥‥」
 そう呟きつつ、オイフェミアが詠唱を開始する。
「‥‥はいはい。がんばってねおばちゃん」
 そう呟きつつ、セレナードとラプソティの二人はオイフェミアから離れる。
 そしてデュランダルと悪鬼もまた、ゆっくりと壁際まで移動。
「発動したら、とっとと逃げてよね‥‥グ・ラ・ビ・ティ‥‥キャノーーーーン!!」

──ドッゴォォォン‥‥
 
 オイフェミアのグラビティキャノンが扉に直撃。
 だが、それは扉を傷つけることなく、ものの見事にオイフェミアに向かって反射した。
 もっとも、それは承知、素早く身をかわしそれを回避するオイフェミア。
「無理だな。ここの地下は破壊不可能。ここの回廊はここまでだ‥‥」
「どんなトラップなんだ? ものによっては、俺が受けるが」
 デュランダルの言葉に、セレナードが一言。
「俗に言う‥‥デストロイ系。トラップを作動させた人に直撃。この場合は、あたしが危ないからイヤ」
 きっぱりとそう告げるセレナードに、デュランダルも肩をすくめる。
「魔法系トラップか。それは勘弁だな」
 そう告げると、一行は静かに来た道を引き返すことにした。


●第6階層にて
──チーム・カリバーン
「なんていう名前だ‥‥」
 食事を取りつつボソリと突っ込んでくるロックフェラーはおいといてと。
「とりあえず。地図を見て判ったことは、回廊No7は内部でさらに14の回廊に分岐しているという事ですね‥‥」
 大量のスクロールを広げて、鬼十郎が呟く。
「あとは、敵ですか‥‥えーつと、私がズゥンビ28とグール5ですね」
「俺はグール6」
「私はレイスでした。確か12」
「バックアップ。殲滅数は0」
 以上、レイムス、ロート、鬼十郎、ロックフェラーでした。
 そして、戦利品を調べる一同。
 そのままこの第6階層に住み込んで『鑑定屋』をしている名物冒険者『キャサりん☆』のもとを訪れると、全てのアイテムの鑑定を御願いした。
「えーーーっと、これは屑、これも屑。売ってもどうしようもないものばかり。これは魔法の薬、これとこれは、ちょっと価値があるもの‥‥」
 その説明を受けつつ、一同は手始めに不足しそうな薬と食糧に換金すると、レアな『薬の入った壷』を手に取った。
「あの、キャサりん☆さん。この魔法の薬、どんな効果なのですか?」
 そう問い掛ける鬼十郎に、キャサりん☆は彼女に耳打ち一言。
「名前はビューティフルポーション。綺麗になれる薬ですよ」
 その言葉と同時に、いきなり薬の蓋を開いて一気に飲み干す鬼十郎。
 しっかりと腰に手を当てて。
「‥‥鬼十郎、一体どんな効果なんだ?」
 そう問い掛けるロックフェラーに、鬼十郎は一言。
「女性限定です!!」
 とだけ告げた。
「ふぅん。そのような薬があるのですか。どんな効果か知りたいですよ」
 そのレイムスの問いに、鬼十郎は『ひみつっっっ!!』とだけ告げた。
(‥‥成る程。女性限定とはたしかにそのとおりじゃん!!)
 おっとお。さすがはロート。鬼十郎の胸のふくらみがちょっとだけ(倍率1.15倍)に増えていたのに気が付いた!!
 まあ、そんなことはおいといてと。
「‥‥つまり、回廊No9番に、使われていない『工房』があったのですか!!」
 それはロックフェラー。
 鬼十郎たちが鑑定をしているあいだ、最近回廊から戻ってきた冒険者達に情報を聞いていた模様。
「ああ。まず最初の扉を越えて、そこから二股を右。ちょっとまってて、今地図書いてやるから!!」
 そう告げる冒険者が戻ってくるのを、ロックフェラーはじっとまっていた。


●第4回廊・その2
──第4回廊、第24階層・ルート2
 翌日のトライアル。
 デュランダルとオイフェミアは、第4回廊のなかの別分岐ルートにやってきていた。
「ここから先の扉は、俺達だけでは開かなかった」
 そう告げる悪鬼を先頭に、一行はその扉の前にたどり着く。
 と、扉には5つの手形が刻まれており、古代魔法語で何かが刻み込まれていた。
「読めるか?」
 そうオイフェミアに問い掛けるデュランダル。
「無理」
 きっぱりと、そして自信満々に告げるオイフェミア。
「参った。この程度の文字なら、アンリがいたほうが楽だったか‥‥」
 悪鬼がそう呟いて、ゆっくりとかまえを取る。
「ああ。そのようだな‥‥」
 デュランダルも物干竿を引き抜くと、今通ってきた回廊に向かって構えを取る。
 そしてオイフェミアはアサシンガール達の後方に回りこむと、そのまま詠唱準備に入る。
「迷宮といえば‥‥やはりこいつらか‥‥」
 暗闇の向うから、鼻息を荒げたミノタウロスがゆっくりと姿を表わす。そしてその背後からは、さらに別のオーガ族の魔物が蠢いていた。

 
●第9回廊
──古き工房
 情報を得てから3日後。
 そこにたどり着くまでに戦った回数はすでに60以上。
 引っ掛かったトラップは18。
 手に入れた財宝はゆうに60。
 そして換金したポーションの本数はすでに100。
 派手な戦いとトラップ、そして湯水のごとく飲みつづけたポーションにより、どうにかロックフェラー一行は古き工房にたどり着いた。

「‥‥もう無理。絶対に無理」
「ああ‥‥なんだ? 一年分戦ったかんじじゃん‥‥」
「こ、こんなにヘビーな冒険したことありません‥‥」
 鬼十郎とロート、レイムスの3人が扉の中でへたばっているさ中、ロックフェラーはひたすら工房を調べていた。
 目指すは『魔法炉』。
 4つある炉のうち、一つが魔法炉であることを確認したロックフェラーは、素早く籠の中から材料を取り出して炉にくべ、火を起しはじめた。
「‥‥頼むぞ‥‥」
 勢いよく燃え盛る炎。
 但し、その炎は青く、陽炎のように燃え盛っていた。
「‥‥これぐらいか‥‥」
 そう呟きつつ、鉄屑を炉に放り込むロックフェラー。
──シュンッ!!
 と、放り込んだ鉄が『蒸発』した。
「うおっ!! こ、これが‥‥『力の炉』なんだ!!」
 勢いよく叫ぶロックフェラーだが。
 問題は、固定されているこれをどうやって運び出すか。
 まずその大きさが、この回廊を通らない。
 横幅だけでも5m。煙突部分を含んだ高さは天上まで。じつに10mはあろう。
「それ、どうやって運び出すかおしえてほしいじゃん?」
 ロートの突っ込みに、ロックフェラーも頭を捻る。
「‥‥無理。だけど、力の炉があるのは判った。それだけでも十分な収穫だ」
 と、自分に言い聞かせると、ロックフェラーは残った時間を、そこでの研究についやした。
 尤も、火力の調整が全く出来ない為、ここで何かを作る事は断念。
 そしてこの力の炉は全部で4器存在し、ここの他の場所にもあることは判った。
 その場所ははっきりと判らなかったが、それでも希望は繋がった。
 かくして一行は、時間一杯までの探索を終えて、パリへと帰還する事になったそうな。
 めでたしめでたし。


●全滅一歩手前の帰還
──第6階層ベースキャンプ
「‥‥」
 デュランダルは沈黙していた。
 目の前に座っている悪鬼が、自分の話をしていたからである。
 どうしてそうなったのかは実に簡単。
 デュランダルが一言、『何故ここに居る』と問い掛けたから。
「‥‥奇跡の宝玉を探している」
 悪鬼の言葉はそれだけであったが、デュランダルはつい聞いてしまった。
 悪鬼、そしてアサシンガールの噂は聞いている。
 だからこそ、それを手にしたときどのように使うのか。
 それが悪用されるのであれば、デュランダルはこの先、悪鬼がそれを手に入れようとするのを阻止する事になるかも知れなかったから‥‥。
 だが、悪鬼の口から零れた言葉は意外であった。
「10年前、全てを失って攫われ、このノルマンに売り飛ばされた妹を探し出す為‥‥」
 そう告げると、悪鬼は傷ついたアサシンガール達に薬を手渡す。
「その言葉が真実ならば、俺は手を貸しても構わない‥‥それだけだ」
 そう告げて、デュランダルは地上へと向かう回廊を進んだ。
 実に、何日ぶりであろう。
 太陽の下に出るのは‥‥。

〜Fin