暑いからねぇ‥‥

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 48 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月04日〜08月10日

リプレイ公開日:2004年08月06日

●オープニング

──事件の冒頭
 兎に角その日は暑かった。
 冒険者街の一角にある小さな料理屋の主人は、ある問題にぶつかっていた。
 彼はジャパンからやってきた流れの調理人。
 このノルマンで一旗上げようと、やってきたまではよかったものの、店の開店準備などでその財産の殆どを遣い切ってしまっていた。
「‥‥うはぁ‥‥食材の調達資金もそろそろ底が尽きはじめたというのに‥‥」
 そしてここからが問題。
 その店に、フラリとやってきたジャパンの侍が、主人にある難題を持ち掛けたのである。
「旨いウナギの蒲焼きが食いたい」
 このノルマンに食用に耐えるウナギがいるのか、主人は困り果てていた。
 
──冒険者ギルド
「で、ウナギを捜してきて欲しいと?」
 ギルドの受付けカウンターでは、ギルド員が目を丸くしてそう告げていた。
「あ、いや、そうじゃなくて。旨いウナギのいる場所まで連れていって欲しいのと、ウナギを捕まえて欲しいんだ。私も同行して、良いウナギのみを選り分けるから」
 確かに南ノルマンには沼地が彼方此方に存在する。
 だが、そこに食用に耐えうるウナギがいるだろうか、ギルド員も頭を捻っていた。
 そのまま依頼を書き取ると、ギルド員はそれを掲示板に張付けた。
「ウナギ捜しのエキスパート募集‥‥こんなところかな‥‥その道のエキスパートさんが集まってきそうですわね」
 ギルド員はそう呟きながら、掲示板に依頼書を張りつけた。

●今回の参加者

 ea1860 ミーファ・リリム(20歳・♀・ジプシー・シフール・イスパニア王国)
 ea2148 ミリア・リネス(21歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3000 ジェイラン・マルフィー(26歳・♂・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea3484 ジィ・ジ(71歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3794 フェリクス・カルリスタ(35歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5001 ルクス・シュラウヴェル(31歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea5624 ユリア・フィーベル(30歳・♀・クレリック・人間・フランク王国)

●サポート参加者

エレンディラ・エアレンディル(ea2860)/ ミリエラ・レイナス(ea4405

●リプレイ本文

●出発前〜酒場で聞いてみよう〜
──冒険者酒場
 ウナギを取る為には、まずはウナギがどんなものなのかを知る必要がある。
 そう考えたミーファ・リリム(ea1860)は、人が大勢集まりそうな冒険者ギルドで、ウナギについての聞き込みを開始していた。
「ミーちゃん、ウナギのことを知りたいのら〜」
 物知りそうな人を見つけては、ミーファは一人また一人と聞き込みを開始。
 その側では、依頼人である料理屋の主人と卓を共にし、ウナギに付いてのレクチャーを受けているミリア・リネス(ea2148)の姿があった。
「まあ、簡単に言うと、夜行性ということ、綺麗な河川や沼地に生息しているということぐらしいか、実は俺も判っていないんだよねぇ」
 料理人の話を静かに聞くミリア。
「あーっ、ミーちゃんもその話、聞きたいのら〜」
 パタパタと跳んでくるミーファ。
「大きさはこれぐらいかな? 体の表面はヌルヌルしてて、掴みにくくなっていて‥‥」
 そのままレクチャーを続ける料理人。
「私が聞いた話では‥‥」
 ミリアは知合いのミリエラ・レイナス(ea4405)から、ウナギについての知識と罠造りについて説明を受けていたらしい。
 ちょうどミリエラも酒場にいたらしく、そのままミリア達の席にやってくると詳しい話を始めた。

──一方、冒険者ギルドでは
「人の血を吸う‥‥吸血ウナギですか?」
 フェリクス・カルリスタ(ea3794)は、冒険者ギルドでウナギについて聞き込みを行なっていた。
 幸いなことに、多少の知識を持っているギルド員がいたので、『凶悪なウナギ』についての話を聞いた。
「ええ。血を吸われるっていう話ですよ。そんなに凶悪なウナギを、どうしてジャパンの人は食べるのでしょうねぇ」
 ノルマンにもウナギの料理は存在する。
 が、それは貴族などの間での話であり、庶民はそんなものは、殆ど口にしない。
 このパリでも、ウナギ料理を作れる料理人がどれだけいるか判らないといった感じであろう。
「うーむ。かなり下準備が必要という事か」
 そう呟くと、フェリクスはそのままギルドを後にし、皆の元へと向かっていった。


●湿地帯〜綺麗な河川も流れています〜
──南ノルマン
 依頼人である料理人を連れて、やってきました湿地帯。
 安全な場所を確認すると、まずはベースキャンプを設置。
 同行したミリエラがウナギの罠造りのレクチャーを開始したため、以心伝助(ea4744)も罠造りに参加。
 ユリア・フィーベル(ea5624)は何を手伝ってよいか判らないまま、罠造りに同席した模様。

──キーコキーコ
 近くの河の畔に住んでいる漁師から、小舟を一隻借りてきたルクス・シュラウヴェル(ea5001)は、ジィ・ジ(ea3484)と共に小舟を沼地に出す。
「ウナギは夜行性らしいから、あらかじめウナギの住んでいそうなポイントを調べておく必要がありますね」
「そうだな。ついでにこれを仕掛けておくとしよう」
 ジィの言葉に、ルクスは船に積んでおいた網をポン、と叩きながらそう告げる。
 夜行性ならば、ウナギはまだ眠っていると思われる。
 そのため、あらかじめ網を仕掛けておこうというルクスの考えであった。

──その頃の陸地
「うわぁ‥‥こいつはなんだ?」
 ジェイラン・マルフィー(ea3000)は一人、岸辺で釣り竿を垂らしてウナギを釣り上げようとしていた。
 運良く、何かが餌に食いついたらしい。
 それを引き上げようとしたとき、突然グッと竿がしなる。
「おっ!! 来たか!!」
 伝助がそれを見て走ってくる。
 そしてそのまま竿を掴むと、釣り糸を手繰り上げるために、手拭いをぐるぐると手に巻き付けた。
「ウナギって、こんなに引きが強いのか。最高じゃん」
 いつのまにか釣りを楽しんでいるジェイランだが、伝助が手繰り寄せた獲物を見たときは流石に一歩引いた。
「そ、そいつは何者じゃん!! 話に聞いていたウナギじゃないじゃん」
 体長は約3m。
 髭を生やした巨大なナマズである。
 このノルマンの湿地帯でも、この手の巨大な奴にはあまり御眼にかかれない。
「ウナギなのら〜」
「あら。もう釣り上げたのですか?」
 ミーファとミリアがそう告げながらナマズを見る。
「う、ウナギじゃ〜ないのら〜」
 ちなみに、ミーファのサイズなら一呑みされるであろう。
「よし、あとは任せて下さい!!」
 手にしたスピアを構え、フェリクスがナマズに向かって勢いよく突き刺す。
 そのままナマズ、大暴れ。
「致し方ないですか」
 そのままでは逃げられてしまうと考え、フェリクスが浅瀬に飛込んでナマズと格闘。
 ジャイアントのフェリクスよりもさらに巨大な大ナマズ。
 それをどうにか押さえこみ、ナマズを陸地に引き上げると、料理人を呼び寄せる。
「あー。鍋にしたらいいかな? 泥臭いんだよねぇ。取り敢えず捌いておきますか」
 スラリと包丁を取り出すと、ササッサッと捌いていく料理人。
 その技術たるや、正に匠の技であろう。
「さて、次は何が釣れるか愉しみじゃん」
 ウナギ釣りのはずが、いつしか釣りを楽しんでいるジェイランであった。


●そして夜〜ウナギ大量ですが〜
──夜
 昼間、ゆっくりと休息を取り、ウナギの活動時間である深夜に一同は活動開始。
「‥‥この辺りですか」
 深夜、フェリクスは船を出し、あらかじめ昼にルクスが仕掛けていた網にウナギを追込もうとしていた。
 岸辺では、ライトを使い周囲を照らし、フェリクスの手伝いをしているエレンディラ・エアレンディル(ea2860)の姿もあった。
 エックスレイビジョンで沼地を透視し、ウナギを捜してはその場所を的確に指示する。
「この辺りだな」
 ルクスも船の上でウナギを網に向かって誘導する。
 そして追い詰められて網に引っ掛かったウナギは、ミリアとジェイランがあらかじめ持ってきていた籠に放り込む。
「うわ!! こいつ吸い付くじゃん。痛てててっ」
 腕に巻き付き吸い付くウナギ。
 よく見ると、それは目が八つも付いている。
「大丈夫ですか!!」
 ミリアは慌ててそのウナギを引き離そうとするが、ヌルヌルとしてて掴みづらい。
「草を手に巻き付けると、ヌルヌルしにくいそうですよ」
 夜は使わないということで、もう一隻の小舟を借りてきたジィがそう告げる。
 そしてジィも船の上でランタンをかざし、棒でウナギを追い立てていく。
「おっとっとぉぉぉっ」
 素手でウナギを捕まえては、それを良い感じに籠に放り込んでいく伝助。
「この感じでやんす。ヤツメウナギは、人間にも吸い付くので、首からかっ捌いてはがすでやんすよ」
 その伝助の言葉に、ミリアがジェイランよりナイフを受け取り、ウナギの首を切り裂く。
「あ、血が吹き出したなら、それは水で洗い落とすでやんすよ。血には毒があるので危険でやんすから」
 ウナギの御当地ジャパンの人間ならではの知恵である。
「怪我をしたら、一度戻ってきてくださいね」
 岸辺でユリアがそう告げる。
 彼女は、怪我人の治療ということで待機していたのだが、それほど凄い怪我をするものはいない。
「網の方、危ないのがそっちにいった!!」
 と、突然ルクスが叫ぶ。
 彼女が持っていた棒のすこし先には、身体中から放電しているウナギが網に向かって逃げていた。
「放電しきっていないから、急いで離れろ!!」
 ルクスの叫び。
 だが、その叫びよりも、水の中のウナギの方が少し早い。
──バリバリバリバリッ
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 伝助、哀れ電気ショックの餌食。
 そして伝助は、怪我の治療のため岸辺に脱出。
「ど、どうすればいいんですか?」
「とにかく棒で突いて、放電し終るのを待つんだ!!」
 ルクスの言うとおりに、少し離れて棒で突くミリアとジェイラン。
 だが、その程度ではウナギの放電はおさまらない。
 止むを得ず、そのまま棒で他の所へと追い立てると、再び作業を開始する一行。
 そしてウナギ取りは、朝まで続いた。

──翌朝
「うわぁ、こんなに一杯、ミーちゃんは食べられないのら〜」
 大量のウナギを目の前に、冒険者一行は疲れていた体を起こしながら料理人の仕事をじっと見ている。
「これは駄目‥‥これはよし‥‥これ喰えない‥‥これ、ウナギじゃない‥‥」
 次々と仕分けを行ない、食べられない大きさのものやウナギでないものは沼に放流。
「出来れば俺達も食べたいじゃん。これだけウナギがいるのなら、使わないウナギがいるなら食べさせて欲しいじゃん!!」
 そのジェイランの言葉に、料理人は静かに口を開いた。
「そうですねぇ。まあ一日でこれだけ取れるのでしたら、今日の午後にでも街に戻りましょう。そのときに、ご馳走しますよ!!」
 その言葉に、全員が最後の気力を振り絞って仕分け作業を手伝いはじめた。


●では、鰻を食べてみよう!!
──パリ・冒険者街
 無事にパリに戻ってきた一行は、そのまま料理人の店へと向かっていった。
 約束通り、依頼にあった『良いウナギ』ではない、そこそこにいいウナギを冒険者達に振る舞ってくれるらしい。
「やったのら〜。ミーちゃん始めてなのら〜」
 ウナギの蒲焼きなど、今回の冒険者達の中では伝助以外は食べたことはないだろう。
 その伝助でさえ、このノルマンに渡ってきてからはお目にすらかかったことがない。
「さて、久しぶりのウナギですか。愉しみでやんすねぇ」
 ワクワクしながらそう告げる伝助。
 そして料理人は早速蒲焼きづくりを始めた。

 サッサッとウナギを裂くと、そのまま水で軽く洗い流す。
 そして次々と串打ちをしていくと、そのまま皮目からウナギを焼きはじめる。
「あ、ちょいとすいませんが、あっしのはそこでちょいと食べたいのでやんすが」
 伝助が求めているのは、俗に言う『ウナギの白焼き』である。
 そのまま皿に乗せられたホクホクのウナギを、伝助はひょいと口の中に放り込む。
「うーん。良い感じでやんすが、山葵が欲しい所でやんすねぇ」
「あっはっは。流石にノルマンじゃあ、山葵は手に入らないからねぇ」
 料理人はそう告げると、横の鍋の上に置いてある不思議な入れ物に焼いたウナギを次々と並べていく。

──シューーーーーーッ

 その入れ物から水蒸気が立上がる。
「これは蒸篭(せいろ)っていってね。これで一旦蒸すんだ。そうすることで、余計な脂分がとんで、味がしっかりしてくるんだ」
 そして小さな甕(かめ)を二つ持ってくると、皆にその中に入っているものについて説明する。
「これは焼き物に使うタレでね。こっちが秘伝のタレ。どんな調味料を使っているのかは教えられないけれど、こんな感じの味だよ」
 スプーンでそれをひとサジすくうと、それを皆に手渡す。
──ペロッ
 その強烈な味わいに、言葉を失いかけるミリア。
「あ、あ、甘、しょっぱ‥‥あ‥‥」
 ノルマンで生活していた者たちには、恐らくは理解できないかもしれない。
「で、こっちのタレが、ノルマンにきてから作った奴だな。醤も黒糖も、堅魚煎汁も手に入らないから、持ち合わせのタレとこっちのハーブやそれらしいものを合わせて作ってみた」
 そっちは伝助が味見。
「うーん。良い感じでやんすねぇ。山椒があればいいんでやんすが、それは無理というものでやんすか?」
「それはねぇ。山椒の変わりになるものは見つけたんだけれどな。これなんだけれどね」
 料理人はそう告げると、良い香りのする粉を取り出した。
 あるハーブを乾燥させて乳鉢で粉末状にしたものらしく、その香りはどことなく山椒の様な感じがした。

──ジューーーーーーーーッ

 タレに付けて焼き付ける。
 タレの焦げるよい香りが店内に広がっていく。
 最初の付け焼きで焼き色をつける。
 2度目の付け焼きで味を内部に染み込ませる。
 そして最後の付け焼きで、照りと香りを立上がらせる。
 そして最後に、焚きたてご飯の上に乗せて出来上がり。
「さあ、ノルマンで初めての蒲焼き、たんと御賞味あれ!!」
 眼の前にずらりと並んだ蒲焼き。
 それを手に取ると、皆ゆっくりと口の中に放り込む。
「う、うまいのら〜。最高なのらよ〜」
 パクパクと食べはじめるミーファ。
「そうですね。この味わいは、じつになんと申しますか」
 ミリアが言葉を捜しているらしい。
「そんなもの、旨いの一言でいいじゃん!!」
 ミリアに変わり、ジェイランがそう告げる。
「いや、これは実にいいですね。口の中に広がる味わいといい。この香りといい。ジャパンの料理もあなどりがたいですね」
 ジィが満足そうに呟く。
「それに、何といっても自分達で取ってきたという所に達成感があります。何かこう、気力も戻ってくる感じですね」
「そりゃあそうでやんすよ。あっしの国じゃあ、精力つけるのに最高でやんすから」
 フェリクスの言葉に、伝助が捕捉。
「精力ねぇ。この透き通ったスープも、そうなのか?」
 ルクスは、蒲焼きの横に置いてあるスープを静かに呑む。
 なんともいえない香りと味わいが口の中に広がる。
「うわ!! このスープもいいですね。具材は何がはいっているのですか?」
 ユリアが料理人に問い掛ける。
「こいつさ」
 そう呟きながら、料理人はウナギの胆を見せる。
「‥‥あの‥‥これ‥‥あぅ!!」
 あ、ユリア失神。
 眼の前にピクピク動いている胆をみせられたら、そりゃあ気絶もする。
 そんな愉しい一時を過ごし、一行は依頼終了の報告のために、満腹のお腹をゆすりながら冒険者ギルドへと向かっていった。

〜FIN〜