【シルバーホーク決戦】アジト攻防戦

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:13 G 3 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:02月22日〜03月01日

リプレイ公開日:2007年03月04日

●オープニング

 ──事件の冒頭
 静かな教会大聖堂
 そこに、ニライ・カナイ率いる『ブラックホーク騎士団』が集っていた。
 彼等は間もなく始まる『対シルバーホーク殲滅作戦』の為に集まり、大司教より祝福を受けていたのである。
 今回の殲滅作戦は二ヶ所同時進行。
 パリ郊外のシルバーホーク邱と、竜の背骨と呼ばれる海域にある『海賊シーラット』のアジトである。
 どちらもかなりの手練れが配置されていることは間違いない。
 ならば、こちらも最強のシフトを組むこととなった。

●作戦本部より
 今回の作戦は二極同時作戦である。
 統括指揮官はニライ・カナイ査察官とし、これにブラックホークの陸戦騎士団と海戦騎士団それぞれの司令官がつく。

・陸戦騎士団はシルバーホーク邱を包囲、その後突入部隊が邸内に突入。
 突入後はサーチ&デストロイとする。邸内に居る者は全て廃除するよう。
 但し、シルバーホークの肉体である『アンリエット』は生きたまま捕らえる事。
 
・突入部隊
 重装騎士  24名
 軽装騎士  36名
 弓兵    12名
 魔法兵団  12名
 クレリック 10名
 冒険者    6名

以上、健闘を祈る。

●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 ea5283 カンター・フスク(25歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 ea7191 エグゼ・クエーサー(36歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea8820 デュランダル・アウローラ(29歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb3503 ネフィリム・フィルス(35歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 eb3529 フィーネ・オレアリス(25歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

ガブリエル・プリメーラ(ea1671)/ 薊 鬼十郎(ea4004)/ 朧 虚焔(eb2927)/ オルフェ・ラディアス(eb6340

●リプレイ本文

●パリで
──パリ市内・商人ギルド
「平日は執事さんと少女達、そして護衛の戦士さん達だけなのですか‥‥」
「ああ。食糧とか雑貨は週に1度買い出しにここまできているけれど、それを配達するのは俺達の仕事だからな。俺以外にも何人かはいったことあるしなぁ‥‥」
 薊鬼十郎は今回の作戦をより完璧にする為、とりあえずシルバーホーク邱に出入りしている商人などを片っ端から当たっていった。
 そしてその中の数名から、建物の状況や使用人などを聞き出す事に成功。
「誰か、中に詳しい人はいらっしゃいますか?」
「さぁ? だれもいないんじゃねーのか?」
 そんなこんなと話を聞き出すと、鬼十郎はベースキャンプまで移動開始。

──一方、ベースキャンプ
「‥‥まあ、これが詳しい地図、周辺の地形状況、そしてここ数週間の監視状況。先日、悪鬼とアサシンガール達も帰還し、内部でなにかしている模様ですね‥‥」
 ベースキャンプでは、オルフェ・ラディアスがニライに独自の情報網で調べ出した現在のシルバーホーク邱の情報を説明していた。
「まだ駆け出しの情報屋と思っていたが、なかなか細かい所まで‥‥」
 ニライが感心しながらそうオルフェに告げる。
「私の情報網はちょっと癖がありまして‥‥」
 とつげるオルフェ・ラディアスの情報網は、パリの情報屋の中でもかなりの実力者『シスター・ディアマンテ』という女性から。
 この女性、じつは『ミストルディン』のさらに上司でもあり、どこをどう繋がったのかオルフェもそっちの情報ラインをちょっとだけ使えた模様。
 なお、常にその情報網は使えるわけではなく、シスターに会う事が出来ないと使えないのが残念な所であるが。
「あと‥‥失礼ですが『ブラックウィング騎士団』についても調べさせて頂きました」
 その言葉に、二ライの瞳が細くなる。
「‥‥どういうことだ?」
「新しいメンバーの中に何人か、『シャルトル南方出身』の方がいらっしゃいます。敵のスパイかも知れませんので‥‥」
 そう告げると、オルフェは静かにその場をあとにした。


●作戦決行、そりゃ結構
──ベースキャンプ
 鬼十郎とオルフェのもたらした情報により、対アサシンガール戦の為の戦闘パターンと敵の現在の戦力についてはほぼ全員が確認した。
 ただしスパイと思われるものの存在については、『冒険者チーム』にのみニライから説明があった。
「敵は少数精鋭、すでに距離をおいてシルバーホーク邱は完全に包囲完了。あとは作戦開始を待つだけだ‥‥」
 そのニライの言葉ののち、全員が思い空気に包まれる。
「ニライさん、御願いがあるのです‥‥」
 そう話し掛けたのはクリス・ラインハルト(ea2004)。
「なんだ?」
「シルバーホーク幹部が投降してくれたら、邸内の残っている人たちは殲滅でなく捕縛では駄目でしょうか?」
 その言葉に、ニライは頭を捻る。
「アンリは悪鬼さんや執事さんにとても懐いてました。この先シルバーホーク卿から情報を引き出すつもりなら、肉体を共用しているアンリの魂の平静を保つために考慮して貰えませんか?」
 そう懇願するクリス。
「そうだな。アンリエットを捕縛し、投降を促してみたらいいだろう。その上で、アンリエットを取り戻す為にたたかうのならば殲滅。投降するならば捕縛‥‥これでどうだ?」
 殲滅作戦なら、こちら側の騎士たちの命も危険となる。
 それを考えて、ニライが『妥協』を見せた。
「ひゅーっ。ニライさんもなかなか話がわかりますね」
 カンター・フスク(ea5283)がそう口笛を吹いて呟く。
「ふん。貴様達冒険者には色々と手を貸してもらっているからな。まあ‥‥今後の事も考えて『貸し』をつくるのもいいだろう」
 その呟きに、エグゼ・クエーサー(ea7191)が一言。
「貸しと貸しならチャラじゃねーのか?」
「こっちの貸しは大きいぞ‥‥」
「ああ、判った判った。それよりもニライさん、カンターから話を聞いたんだが、『グローリアススープ』のレシピ、大体できたぜ。あと必要な食材がこれで‥‥」
 そう告げつつ、エグゼがスクロールをニライに手渡す。
「‥‥面白いな。魔法薬どころか、『魔法の草』と『魔法の水』か」
 カンターとエグゼ二人の解析。
 そしてあの物語から感じ取った結論。
 あのスープを作った人物は『錬金術師』である可能性が高い。
 それもかなり高位、『望んだ者を手に入れる力』を持つ存在であろう。
「判った。王宮と私の執務管たちにこれらが調達可能か調べさせてもらおう‥‥」
 それで話はついた。


●そして突撃
 冒険者達は裏の勝手口に間合を詰める。
 背後には、ネフィリム・フィルス(eb3503)の要請で計12名の騎士たちがバックアップについた。
 そしていよいよ突撃。

──ドカッ!!
 いっきに裏口を突破すると、前衛のエグゼとデュランダル・アウローラ(ea8820)が台所で茫然としている女性達をまずは保護。
「大きな声を出さないで」
「命までは取らない。我々はシルバーホークに用事があるだけだ」
 その二人の言葉に、女性達は脅えた表情でコクコクと肯く。
 そして後ろで待機している騎士たちに彼女達の保護を頼むと、そのまま台所から廊下に移動。
 すでに他の場所からも騎士たちが突入しているらしく、あちこちで戦いの音が聞こえてくる。
「‥‥敵はっけーーーん!!」
「貴方たちは冒険者ねーーーっ」
 と、二人のアサシンガールが廊下の向うから走ってくる。
「‥‥まずは一撃。それは囮の場合があり、こっちの姿勢を崩す為の細かい攻撃‥‥」
 エグゼは鬼十郎からのレクチャー通りに身体を回し、アサシンガールの攻撃を次々と交わしていく。
(‥‥頭で判っていても、身体がついて行かないと躱わす事は出来ないか‥‥)
 エグゼ、その通りっ!!
 その横ではデュランダルがアサシンガールの攻撃を次々と剣で受止め、流していく。
「基礎訓練は悪鬼からだったな。アビスであの動きは見たから‥‥」
 同じくデュランダルも攻撃を流す。
──ガキィィィン
 と、横の壁が突然開き、中から少女がナイフを逆手に飛び出してきた。
「この奇襲も説明をうけているわよっ!!」
 ナイフをリュートベイルで受止め、そう告げつつ蹴りを少女の身体に叩き込むネフィリム。
「くっ‥‥おばさんやるわねっ!!」
「おば‥‥」
──ブチッ
 あ、ネフィリムが切れた。
 いきなりスターホイップを構えると、素早くアサシンガールをそれで叩きつけ、さらに絡めとっていく。
「ちょ、ちょっと、このオバン!!」
「貴方はもう少し、口のきき方を気を付けないといけないわねぇ‥‥」
 そのまま後方の騎士に少女をパスし、ホイップを回収。
──ヒョンッ!!
 さらに前衛で楯となっている二人に向きを直すと、さらにエグゼの前のアサシンガールを絡めとる!!
「ふぅ‥‥いいタイミングだ」
 エグゼは一息つく暇も無く、そのままデュランダルの前の敵を攻撃。
 二人がかり+ネフィリムの攻撃で、デュランダルの前のアサシンガールもかなり疲労困憊。
──キィィィン
「はいそこまでよっ!!」
 素早く高速詠唱でアサシンガールを呪縛するフィーネ・オレアリス(eb3529)。
「‥‥」
 おぉっと、無事発動、そしてアサシンガールはレジスト失敗。
「あとはよろしく御願いしますね」
 後ろで待機している騎士たちににっこりと告げると、フィーネは二度周囲に気を配る。
「‥‥ふうクリスさん、大丈夫ですか」
 クリスの前で十手を構えているカンターが、顔に披露の色を出しているクリスに声を掛ける。
「あはっ。大丈夫。アンリちゃんの為なら、たとえ火の中水の中‥‥」
 そうクリスが告げたとき、前方の通路に一人のウィザードが飛び出し、ファイヤーボムを飛ばしてきた!!

──ゴォォォォォォッ

 燃え盛る火球が一同に向かって飛んでくる!!
「セーラよ私達に加護を!!」
 瞬時にフィーネが発動したホーリーフィールドがファイヤーボールを遮断。
 だが、そのファイヤーボールの魔力がホーリーフィールドの守りの力を上まったため相殺されてしまう。
 そしてそれを瞬時に見届けたエグゼとデュランダルがゆっくりとウィザードに向かって間合を詰める。
 仲間たちと離れすぎず、常に皆を護れる範囲で。
「掛かってくるのなら手加減はしない‥‥」
「どうしてもというのなら、命は捨てる覚悟でこい」
 その二人の言葉と怒気に、ウィザードはヘナヘナとその場に崩れおちた。

──そして
 しばしの突撃のあと。
 クリスのサウンドワードで邸内で尤も静かな場所を探す一行。
 そしてその場所、すなわち応接間まで到達した一行は、そこで待機していた悪鬼と遭遇。
 その背後にはアンリエットが椅子に座って『きょとん』とした表情で皆を見ている。
「あー、くりすおねーちゃんだー!!」
 そのアンリエットの無邪気な声に、クリスの緊張の糸がプツッと切れる。
「アンリちゃん。助けにきたよ。もう大丈夫だから安心してね‥‥」
 クリスの予想していた最悪の事態は『回避』された。
 今椅子に座っているのは『シルバーホーク卿』ではなく、純粋なアンリエット。
 今、シルバーホーク卿は休眠期に入っているようである。
「助けに?」
「うん。恐い人たちからアンリを護ってあげる。だからおいで?」
 そうクリスが告げたとき、アンリエットは悪鬼のほうをじっとみる。
「アンリ、クリスお姉ちゃんのところにいくんだ‥‥」
 その悪鬼の思いがけない言葉に、全員が言葉を失った。
 そしてアンリはトコトコとクリスの元に向かうと、そのままクリスに抱きついた。
「さて‥‥」
 そう告げると、悪鬼は見た事もない構えを取る。
「ここで終わりだ。こっちもけじめだけはつけないと」
 そう告げると、悪鬼は瞬時にデュランダルに向かって飛込む!!
──ダン!!
 そしてデュランダルの懐に向かって掌底を叩き込むと、デュランダルはそのまま後方に飛ばされた!!
「次はどいつだ!!」
 そう叫ぶと、悪鬼はエグゼに向かって向き直る!!
「ぐっ!!」
 瞬時に叩き込まれた掌底を、エグゼは『アバロンの楯』で受止めた!!
 衝撃が体内を駆け巡るが、それを全て受止める。
「‥‥いい楯つかっていやがるなぁ‥‥」
「ああ。おかげで生きているっていうかんじだな」
 そう告げるものの、エグゼの身体はもう限界。
 だが、楯として仲間を護るという意志が、エグゼをその場に止めている。
──ヒュンッ!!
 素早く鞭を振ると、ネフィリムが悪鬼の右腕を絡めとる!!
「あんたもとっとと降伏しなっ!!」
 そこから先は力勝負。
 お互い一歩も動けなくなる。
 その間に、フィーネのリカバーで回復したデュランダルが、手にした剣で悪鬼に向かって斬りこむ!!
──ガキィィィン
 その一撃を左腕で弾き飛ばす悪鬼。
「この組織はもう終わりだ。だが、お前には死ねない理由があるのだろう。セレナードはまだまともに戦える体ではあるまい。彼女たちを連れてこの場は落ちろ! この攻撃を退けてもその後にあるのはパラディン達による殲滅戦だ。彼らには一切の妥協はない。我々の目的はアンリエットの拘束。今ならまだ彼女の安全は保障されている。この戦、ここが落としどころだ」
 そう悪鬼に向かって叫ぶデュランダル。

──ドサッ

 と、突然悪鬼がその場に座る。
「判った、降参だよ‥‥だから泣くな」
 最後の言葉は、後ろで涙を流しつつ悪鬼をじっと見つめているクリスに向かってて告げた。
「悪鬼さん。もう‥‥終りにしましょう。こんなに哀しい事は‥‥」
 それ以上はクリスはなにも告げられなかった。
 やがて他の騎士たちがこの場に到着すると、悪鬼は自分で騎士たちに身柄をあずけた。


●殲滅作戦終了‥‥だが
──ベースキャンプ
 全てが終った。
 クリスとの約定により、アンリエットの捕獲と同時に殲滅作戦は捕縛に変更。
 多く後が流されたものの、死者は殆ど出ていない。
 そして悪鬼と執事のウォルター、アンリエットの3名はベースキャンプに連れてこられた。
 邸内で養生していた『ジェラール』も魔法を使えないようにマスクで視覚を奪い手と口を拘束、そのまま別の場所に連れられていく。
「ふぅ。随分とと手間取らせてもらったな‥‥」
 ニライがアンリエットにそう呟くが、アンリはぬいぐるみで遊んでいる。
「‥‥これで全て終りですね」
 クリスがそうライに告げる。
 と、テントが突然開き、数名の人物が飛込んでくる。
 万が一の為に待機していたエグゼ達がすばやくそのまえに飛び出すが、手にした武器を振るう事は出来ない。
 目の前には『異端審問官』が立っていた。
「情報が来ましてねぇ。さて、『デビノマニ』であるシルバーホーク卿の処分は我々『異端審問官』の任務です。速やかにこちらに渡して戴きましょうか?」
 ニィッと笑いつつ告げているのは、御存知『アザートゥス異端審問官』。
「冗談で。悪鬼及びシルバーホーク制圧はノルマンの仕事だ。なんでお前達に渡す必要が有る」
 そう告げるカンターだが、アザートゥスは異端審問官の証書を取り出し、説明を開始。

『いかなる事よりも、デビル及びデビノマニに関する処分は異端審問官が最終決定権を持つ』

 そう記されている証書と、見たくは無かったお偉いさんのサイン。
「‥‥ニライ査察官‥‥」
 デュランダルがそう話し掛けたとき、ニライは瞳を細くしてアザートゥスに一言。
「これは任務ご苦労様です異端審官どの。ですが、私は国王より勅名を承り、今回の任務についています。それでもなお、私の元から彼等を連れていくと?」
 その言葉と同時に、アザートゥスもにいっと笑う。
「では‥‥我々に逆らうと?」
──パチッ
 ニライの指が鳴ると同時に、デュランダル、エグゼ、ネフィリムが武器を瞬時に構え、異端審問管たちの間合に詰め寄る。
「‥‥ここは敵との交戦地域ですよ。何時何処で攻撃をうけるか判りません。それに、捕獲した捕虜が暴れて味方に被害が出るという事も十分に考えられますが?」
 その一言で、アザートゥスは顔色を青くする。
「この件、ただではすまさん!!」
 そう言い捨ててアザートゥスは退場。
「よろしいのですか?」
 恐る恐る告げるクリスに、ニライが一言。
「あいつに渡したら、明日にも処刑されますよ‥‥あとの政治的な仕事は私の仕事です。貴方たちが関与する必要はありません」
 そう告げると、外で待っていた収容馬車に悪鬼達を入れる。
「もう、あえないのか?」
 デュランダルが悪鬼にそう告げる。
「俺は自由だからな。その気になったら、何時でも壁ぶち抜いてでてくるさ‥‥」
 そしてアンリは、クリスたちと共に王城近くの建物に移動、騎士たちの監視の元で、これからの日々を送る事となった。
 なお、今回の作戦参加者のみ、ニライのはからいで『アンリエット』に対しての謁見を許可され、取り調べのない日ならばいつでも会える事が約束された。


〜Fin