●リプレイ本文
●新しい季節
──シャルトル・プロスト領
「ほう。結婚式の介助役にあの子達を・・・・」
プロスト城執務室。
先にやってきていたリディエール・アンティロープ(eb5977)は、クリス・ラインハルト(ea2004)達の提案で『元アサシンガール達』が今回の結婚式のお手伝いを出来ないか相談していた。
「やはり無理でしょうか・・・・」
「いや、別に構わないと思うが。そうなると、あの子達にも衣裳を考えなくては・・・・バトラー、パーラーメイド達をセーヌ・ダンファンに派遣、少女達全員の衣裳の手配を・・・・」
おっと、話は無事に成立か。
「では、よろしく御願いします・・・・」
そう告げて退室するリディエール。
「そうそう、この前の・・・・貴族の方たちも愉しみにしているのです。確か、あの人も来ていますよ?」
──ザワッ
一瞬背筋に寒気が走るリディエール。
「そ、そうですか・・・・それは愉しみだ・・・・あは、あはは・・・・」
リディエール、引き攣っているぞ、顔。
──場所は変わって
「・・・・」
そこは新郎の待合室。
沈黙しているのは新郎であるリスター・ストーム(ea6536)の両親。
「・・・・一体、いつのまにどこの女か判らない奴を・・・・」
そう告げるのはリスターの父である『ピーター・ストーム』。
ちなみに職業、貴族!!
「貴方・・・・そんなことをいうものではありませんわ。リスター、しばらく見ないうちに随分と立派になったわね・・・・」
そう告げる母・ユーディーに、リスターは照れ臭そうに笑う。
「まあ、色々とあったからな・・・・」
そう呟くリスターに。
「駄目だ、やはり許さん。名家であるストーム家に、あんな農夫の娘など!!」
「黙れ。アンタが結婚するんじゃない・・・・俺が結婚するんだ。俺のことをどうなじってくれても構わないが、蛮とその家族を貶なすようなことを行ってみろ・・・・タダじゃすまないぞ」
そう凄むリスター。
「全く・・・・どっちも・・・・」
困った顔のユーディー。
「とりあえず、私達はリリーのほうに言ってきますわ。ほら、早く・・・・」
そう告げて、部屋から出て行く両親。
「ふう。呼んだわけでもないのに・・・・全く・・・・」
やれやれという表情でそう告げるリスター。
──場所は変わって
「・・・・なんで?」
キョトンとした顔でそう呟いているのはセイル・ファースト(eb8642)。
「何でと聞かれても。招待状を受け取ったからヤってきたのだが、不満かね?」
騎士の正装でそう告げるのは、セイルのとーちゃんであるアーネスト・ファースト外交特使。
「いや、それにしても、あんたは」
──スパーーーン
「実の父をあんたとは、随分とエラくなったな・・・・。」
──ゴゴゴゴゴゴゴゴコゴ
出た、伝説の奥義『とーちゃんの威厳』。
「す、すいません・・・・ですが、どうしてこの地に?」
「今は、このノルマンに外交特使の一人として駐留している。しばらくは此処に留まる事になってな・・・・」
ちなみにセイルとーちゃん、立派な騎士。
その腕はノルマンのブランシュ騎士団員にも匹敵するとかしないとか。
「まあまあ、それよりもお前の選んだ女性に会わせて欲しい・・・・」
そう告げられ、やむなくセイルはリリーの元へ。
──ということで、リリー控え室
「あううう・・・・」
目を丸くしながらそう呟いているのは 鳳双樹(eb8121) 。
リリー・ストーム(ea9927)・・・・の着付など身の回りの世話で忙しいようである。
「りっ、リリーさん、このドレス、胸が合わないわよ」
「もう、幸せで胸が一杯なの・・・・」
破顔とはこれいかに。
幸せ絶頂でニヤニヤしているリリー、どうやら衣裳が合わない模様ですね。
「なら、こっちを着せてみな」
バサッと別の衣裳を投げるネフィリム・フィルス(eb3503)。
リリーが受け取ったその衣裳は、綺麗なインドゥーラのものであった。
「こ、これは何処から?」
ちょっとつてがあってね。
──ガチャッ
「ネフィリム殿から招待状を戴いたのでな。何か手伝いをしたかったのだが、色々と規則がな・・・・これで勘弁してほしい」
そう告げつつ室内に入ってくる、パラディン天位フィーム・ラール・ロイシィ。
──ガチャッ
さらに扉が開かれる。
「ふむ。随分と見違えたな・・・・」
そう告げるのは、リリーの父ピーター。
「ええ。本当に・・・・貴方が嫁ぐ日が来るなんて・・・・」
なみだを浮かべつつ、そう告げるのは母のユーディー。
「お父さん、お母さん・・・・反対はしていないの?」
そう問い掛けるリリーに、ピーターは一言。
「相手の事は聞いた。アーネスト・ファースト外交特使の一人息子だそうだな。家柄としても、我がストーム家に相応しい。うんうん」
そう納得している父。
「そう言われると光栄です。はじめまして。息子がお世話になっています」
おっと、ここでアーネスト・ファーストも乱入。
さらにその場の一同の挨拶もあり、こっちはこっちで盛り上がったようで。
●その頃の会場
──特設会場
「あーーー。掃除が大変・・・・」
大聖堂の内部を大掃除しているのはアーシャ・ペンドラゴン(eb6702)と『プロストメイド隊』の方々。
「そうですね。でも、ここが正念場です」
「そうよね。折角聖ヨハン大司教もハーフエルフの私の立ち会いも認めてくださったのですから」
そう告げて、アーシャはニコニコと掃除を続ける。
「この花は・・・・こっちに・・・・これはブーケに・・・・」
その片隅では、大聖堂を花で飾る為に、リディエールが必死に花を弄っていた。
「お手伝いしましょうか?」
そう告げながら、一人の若い貴族が姿を表わす。
「あ、貴方は・・・・」
「探しましたよ。男装の貴方も美しい・・・・」
おっと、『お嬢様ナンバーワン決定戦』で、リディエールの唇を奪った貴族!!
「・・・・こ、これは・・・・」
ワクワクしつつ、物陰に見を潜めて、そっと二人の成り行きを見守りはじめるアーシャ。
「修羅場よね? そうよね?」
こらアーシャ、そこでワクワクしない。
「あ、あの・・・・すいません。私は、貴女と結婚できないのです・・・・私は・・・・男なのですから」
おっと、ここでリディエールがカミングアウト!!
その言葉に、ちょっと困った顔の金髪貴族。
そしてじっと、リディエールの顔を見て、そしてそのまま口付けする!!
──キターーーーーーーーーーーーーーーーー
「な、ど、どうして・・・・」
動揺するリディエールの手を取り、貴族は自分の胸に当てる。
──フワッ
「僕もですよ。家のしきたりでこんな恰好と口調ですが、女性です・・・・。これで、二人を阻む者はありませんね・・・・自己紹介が遅れました。私の本名は『ユーノ・ヨハネス』と申します、と、どうやら侍女達が私を探しているようで、これで・・・・。」
そう告げて、そっとリディエールの手の甲に口付けするユーノ。
「あ・・・・ど、どうして僕が、こんな所でときめかないといけないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
あ、ようやく正気に戻ったようで、よかったよかった。
●結婚式は厳かに・・・・無理
──セーヌ・ダンファン
「こーらー。ミストも早く着替えなさーーい!!」
ちっちゃいミストにそう叫ぶのはクリス・ラインハルト(ea2004)。
「あらあら、ミスト、ちゃんとお姉さんの言うことを聞かないといけませんよ」
バルタザール夫人が愉しそうにそう呟く。
「くりすおねーちゃん、今日は結婚式」
そう話し掛けるのはガールズの中でも一番末っ子の『アリア』。
「そーよ。愉しみだねー」
「おねーちゃんは、誰と結婚するの?」
む、無邪気って恐い・・・・。
「え、お、おねーちゃん? えーと・・・・」
ふと、脳裏を駆け抜けた『あの男』。
──ブンブン
「おねーちゃんはまだ結婚しないのです」
「そっかーーー。もう暫くは、あたしたちのおねーちゃんなんだね♪〜」
そんな話しでもりあがっているうちに、いよいよ式まであと僅か。
──カラーーーン、カラーーーーン
ノートルダム大聖堂の鐘が響く。
大勢の参列者が教会を訪れる。
「しくしくしくしく・・・・」
その後ろの席で、なみだを浮かべて泣いているのはマダム・ロランス。
「あら、マダム。貴方の知合いがこの結婚式に?」
「ええ。招待状を受け取りまして・・・・」
「それはよかったですね」
そんな会話の聞こえる式場。
「・・・・ぶち壊していいかしら・・・・」
こ、こらーーーーーーーーーーー。
──そして
静かな音楽が大聖堂に響く。
花籠を持ったアサシンガール達が、色とりどりの花を絨毯に播きつつ歩いてくる。
やがて扉が開き、父親に腕を組まれたリリーと蛮が真紅の絨毯の上を歩いていく。
そして正面で、正装したセイルとリスターが、『二日酔いでガンガンする頭』を振りつつ、引き攣った笑顔で二人を迎える。
(あ、頭いてぇ・・・・)
(飲みすぎたし・・・・昨日の女もいいお尻だった・・・・)
あんたら、結婚式の前夜になにやってた!!
あ、ナニですかそうですか。
「偉大なるセーラよ。本日ここに、二組の愛しあう男女が夫婦となります。このことをお慶びください」
まずは聖ヨハン大司教の言葉から。
そしてゆっくりと振り返ったとき、大聖堂の中に聖歌が響きわたる。
「恵み深い主よ。私たちの家庭にまことの安らぎを与え、祝福してください。私たちは家庭で互いに仕え合います・・・・」
その大司教の言葉の後、静かに聖書を開く。
「愛は寛容なもの、慈悲深いものは愛。愛はねたまず、高ぶらず、誇らない。
人とともに真理を喜ぶ。すべてをこらえ、すべてを信じ、すべてを望み、すべてを耐え忍ぶ。
信仰、希望、愛、この三つ。このうち最も優れているのは、愛・・・・」
聖書の朗読の後、大司教の前に、まずリスター達が歩みでる。
そして誓約の儀。
ゆっくりと告げられる大司教の言葉に、リスターは動揺。
「誓います・・・・」
そして蛮ちゃんも、頬を染めつつ『誓います・・・・』
そして、ゆっくりと入れ代わり、セイルが今度は誓約の儀。
二日酔いに打ち勝つために必死のセイル。
引きつりつつも、『誓います』の言葉に、横のリリーは笑顔でにっこり。
(後でお話がありますわ)
そしてリリーも静かに『怒りを押さえつつ』の誓い。
そして新郎二人が新婦のベールを上げて、誓いのキス。
「・・・・俺の手で守り抜いて行くだけだ・・・・この幸せを」
なみだを浮かべるリリーにそっと口付けするセイル。
──アン・・・・
激しいディーフな口付け。
蛮を抱しめ、その左手で彼女の背中を愛撫しつつ行ったリスターの口付けである。
見ていた参列者が赤面するほど長く、激しい。
「さいごに。『愛ゆえに苦難の道を歩む」恋人達にも、セーラの籠のあらんことを・・・・」
式場の中央、ちょこんと物陰に座っているブランシュとほーちゃんのちま人形に、そっと祝福を与える大司教。
そして結婚式最大のイベントが始まった。
──バッ!!
二人の新婦の手から投げられたブーケ。
「よしよし、いい場所だな・・・・」
素早く鞭を古い、一つのブーケをキャッチするネフィリム。
そのまましなやかな鞭さばきで、リディエールの方に投げるが!!
「キャッチ!!」
素早くジャンプしてそれを奪い取るアーシャ。
そしてもうひとつは・・・・。
──バッ!!
一つのブーケに二人がキャッチ。
クリスと双樹がほぼ同時。
「くすっ。幸せ半分ずつ」
「そうですね」
と、争いというほどではない、ほのぼのした二人であったとさ。
──控え室
「・・・・まだ、なにか用事か?」
控え室で今からラブラブハリケーンだったリスターの元に、親父がやってきた。
「ふん。すんでしまったのは仕方ない・・・・これをやる」
そう告げて、ピーターが蛮ちゃんに何かを投げてよこした。
「何だよ一体・・・・」
そう呟くリスターだが、蛮の手の中のそれを見て、言葉を失う。
それは、リスターの母が手に付けていた指輪。
リスター家が代々『尤も大切な女性に贈る』という『願いの指輪』であった・・・・。
──そして
ズシーーンズシーーーン
肩口にクリスを乗せて、のんびりとパリに向かう巨漢の男。
「全く。私の出番がないではないか!!」
その横で、ニライ査察官あらため『ニライ市政官』がそう呟いていた。
「えへへっ。特等席」
そう告げるクリスに男は一言。
「指定席だ・・・・」
おやおや。
〜Fin