●リプレイ本文
●鋼鉄のスミスハンマーは鍛冶屋の浪漫だ
──シャルトル・ノルマン江戸村
天気晴朗。
雲一つ無いいい天気。
シャルトル地方・ノルマン江戸村には、いつもとは違い大勢の人たちで溢れていた。
それも其の筈。
なんとノルマン江戸村は、今が真っ盛りの『花祭り』が開催されていたのです!!
「本国江戸ならば桜をめでて‥‥と行きたいが、そんなものはない以上、我々は独自に盛り上がる事を提案する!!」
という村長の宣言により、江戸村は領主からそこそこの資金援助を受けて『花祭り』を開催していた。
この期間中には、あの『ミトンオブファイト』や『鍛冶屋トーナメント』『お愉しみ富くじ』などなど、様々な催し物が開催していた。
子供達はパリから来た大道芸人達の華麗なる芸を見て、滅多に食べられない甘い菓子に舌鼓を打つ。
「えーーー。ノルマン焼きはいかがですかー。のるまん焼きだよー」
それなに?
「お好み焼きの虎真屋だよー」
そんなことを叫びつつ、宮村武蔵も頑張っています。
さて、そんな事とは関係無しに。
中央広場には、大勢の観客が詰寄っていた!!
「それではっ。ノルマン江戸村鍛冶屋ファイトを始めますっ!!」
そう掛け声が上がると、その場に並んでいた鍛冶師達が一斉に後ろに作られた簡易鍛冶小屋に向かって走り出した!!
●まずは初日〜中間まで
──ロックフェラー工房
責任者はロックフェラー・シュターゼン(ea3120)。
「さて‥‥それじゃあ始めるとするか‥‥」
そう呟いて。羊皮紙に書込んだ設計図を開く。
ロックフェラーの作るものはシールドメイス。
今までに培った技術の集大成とも言える代物である。
「まずは、メイスか‥‥」
ふいごを力強く踏みつつ、いよいよスミスハンマーを握り締めた。
──リセルナート工房
責任者はレムリィ・リセルナート(ea6870)。
「さて、あたしの所の武具は‥‥うーん」
色々と思案してきたケッカ、幾つかのものに絞りこむ。
「方向性は‥‥来るべきデビルとの決戦を想定した思考の武具づくり‥‥となると‥‥」
幾つかの鉱石サンプルを弄りつつ、色々と考えた結果。
「よし。マルチな攻撃性と重量を兼ね備えたハルバード。斬ってよし突いてよしどついてよしのかわいいやつよ」
そう呟くと、いよいよレムリィも作業を開始する。
──バトルハンマーハンマー工房
なんか、こう書くとバトルハンマーハンマー専門店のように見えるが、責任者がラーバルト・バトルハンマー(eb0206)なので仕方なし。
「さて‥‥テーマもなく、何か作れという指示もない‥‥ならば」
躊躇せずに、ラーバルトは自分の鎧のフェイスガードを手に取る。
「これを作るのが一番だな‥‥図面は確か持っていた筈だから‥‥さて、材料でも取りに行くか?」
そう告げると、ラーバルトは台車を引きながら、外に置いてある材料置き場に向かった。
「ふむ‥‥これが‥‥ふむふむ」
手に取り、目で見て、触れて、かじって味を確かめる。
自分の目で、材料の善し悪しを確認するラーバルト。
これが、後程思わぬ結果に!!
──ミンツ工房
責任者はアレックス・ミンツ(eb3781)。
じっと眼の前に広げた図面を見る。
「ここに来るまでに幾つかの候補を出してみたが‥‥」
目の前の図面には、それぞれ槍、シールドソード、ロングソード、日本刀が書込まれていた。
但し、日本刀だけは、概略のみで細かいことは記されていない。
技術的にはこのノルマンでもそれほどいない、有能な鍛冶師であるアレックスだが。
日本刀を打つ技術はまだこのノルマンにはそれほど流れてきていない。
ちなみに、それが可能な鍛冶師は4人のみ。
「日本刀を打てる鍛冶師に師事出来なかったのがきついか‥‥まあいい、ならば、俺は自分の出来る最高のものを作るだけだ!!」
そう告げて、アレックスもいよいよ炉に火を入れた!!
──ラグトニ─工房
責任者はアリア・ラグトニー(ec1250)。
今回唯一のシフール鍛冶師として参戦。
「‥‥下準備だけはまずして置かないとな‥‥」
既に何を作るか考えてあったアリア。
炉には既に火が入り、鉄鉱石も良い感じに溶解している。
その近くで、先程持ってきた材料を改めて吟味。
「今回の切り札は、この銀鉱石‥‥ふっふっふっ‥‥」
さては、何かを企んでいる?
あっ!!
●そして、あっという間に最終審査
早っ!!
──中央広場
あっ‥‥というまに鍛冶製作時間は過ぎ去っていった。
既にその場には観客が集まり、その横に今回の皆の武具の出来具合を見届ける為の見届け任として『鍛冶師クリエム』と『剣豪宮村武蔵』が座っていた。
「お待たせしましたっ。それでは作品発表!! エントリーナンバー1番のロックフェラー。作品名は‥‥シールドメイスっ」
その掛け声で、ロックフェラーがシールドメイスを持ってくる。
見た所は只のシールド。
それを受け取ると、宮村が構える。
──ガイィィィィィィィン
そして係員がハンマーでシールドを殴りつける。
「ふう。いい感じの楯ね」
「あ、それ、裏のレバーを引き上げると‥‥」
そうロックフェラーが告げる。
──ガチャッ
宮村がレバーを引き上げると、先端にメイスが固定される。
「なるほどねぇ‥‥」
「だろう? メイスとシールドの組み合わせで自在に戦える‥‥」
その言葉に合わせて、宮村が演舞を行う。
──バギィィィィッ
そして一撃で巻藁(まきわら)を粉砕。
「いい武具だ」
それが宮村の評価であった。
「続いてエントリーナンバー2番のレムリィ。。作品名は‥‥ハルバード!!」
その言葉と同時に、レムリィがハルバードを宮村に手渡す。
「えーっと、このハルバードのこだわりの部分は焼き入れにあります」
そう告げるレムリィ。
「というと?」
「ずばり、最強の黄金分割。水、蜜、油、血を一定の比率で付く蔦液体で焼き入れをしてみました。それと石突の部分。よく見て頂けると判ると思います」
その言葉に促され、宮村が確認。
そこには『ひげがぷりちーなドワーフの親父が褌ひとつ、遠くを見つめる』というモチーフの彫刻が彫りこまれていた。
「ではさっそく‥‥」
──ヒュウンッ
一瞬で巻藁が真っ二つになる。
それも、日本刀のような粘りの強い刃によって。
「続いてエントリーナンバー3番のラーバルト。。作品名は‥‥フェイスガード!!」
その声が上がると、ラーバルト自らフェイスガードを装着してやってくる。
「戦闘時に視界の邪魔にならないよう、ひさしは上下に稼動。着けたものの顔面を丁寧に守る優しさ設計」
そう告げると同時に、宮村がハンマーでラーバルトの頭をぶっ叩く。
──ゴイーーーーン
傷はついているが変形もしていない。
「どうだ? 鍛冶屋の心意気、見てくれたか?」
「続いてエントリーナンバー4番のアレックス。作品名は‥‥ロングソード!!」
その掛け声と同時に、静かに宮村にそれを手渡す審査員。
「ありがとう‥‥と、これはまた、随分と丁寧な‥‥いい仕事していますねぇ‥‥」
そう告げつつ、宮村は手にした自家製武具で巻藁を次々と切断!!
──スパスパスパスパスパスパスパスハァァァァァァァァァァァァァァァッ
正に刃。
まさに素晴らしき切れ味である。
その光景を見て、アレックスも納得の模様。
「続いていよいよ最後となりました。エントリーナンバー4番のアリア作品名は‥‥ランス!!」
そう告げると同時に、まずは材料を溶かして作業台を作り出す。
あとは普通に鍛冶屋の魂『スミスハンマー』を己の本能のままに打ち込み続けた。
アリアの図面は細かい。
さらに綿密な作業も加わり、時間だけがドンドン進んでいった。
完成したものは、アリア改心の作品。
「銘はランスofブレイクだ。取っ手部は円錐部との間に刀剣類を通した際に折る・絡め取る為にあるものであり、下手な詮索は無用也」
●ということで最終選考
──まだ広場
「お待たせしましタッ。今回の鍛冶屋ファィと、優勝は‥‥」
──ダララララララララララララララララララララッ
「二番炉のレムリィ・リセルナートに決定しました!!」
観客から絶賛の声が聞こえてくる。
「基礎が大事ですからねぇ‥‥」
「おおーーーーーーーーたいしたものだな」
「ぐっ‥‥今度こそ負けない!!」
「おめでとう、優勝っ!!」
以上、ロックフェラー、ラーバルト、アリア・ラグトニーの4名は、とりあえずそう挨拶を終えると、そのまま壇上から降りていった。
まずは、『花祭り』の最初のイベントが終わる。
次はミトン・オン・ファイト!!
優勝したレムリィには、プロスト辺境伯の城下街に用意された鍛冶工房を好きに使ってよいという権利が与えられた。
「これで、愉しい鍛冶ライフが‥‥」
にっこりと微笑みつつ、そう告げるレムリィであったとさ!!
●最後の寸評宮村より〜
・シールドメイス
アイデアははよかったと思いますし、シールドとのギミックもいい感じですね。
ですが、そのギミック部分の耐久度と、シールドの強度不足がやや感じられます。
・ハルバード
今の所、飾りッ気がもう少しあると良い感じですね。
武器としては完成されていると思いますよ。
・フェイスガード
これ単体ではあまり見えてきませんね。最後まで選考に残っていました。この調子で頑張ってください。
・ロングソード
良くも悪くも『ロングソード』です。
基本に忠実であり、今後の成長が愉しみです。
・アリア
材料などの吟味、その他細かい部分の配慮など、シフールならではのいい感覚です。
問題が有るとすれば、鉄を打つときの力不足。
うちこみが足りない為、不純物が鉄に混ざったままのところがあります‥‥。
〜Fin