【ハルだ一番】新婚さんいらっ‥‥

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:4人

サポート参加人数:4人

冒険期間:05月27日〜06月06日

リプレイ公開日:2007年06月05日

●オープニング

──事件の冒頭
 のどかな昼下がり。
 破滅の魔法陣最前線ライン警備をしていたブラックウィング騎士団従者であるケインは、街道の向うをじっと眺めていた。
「早く終らないかなぁ‥‥」
 そのケインの言葉に、相棒であるステインが肯く。
「ああ、そうか。お前のとこ、そろそろ子供が生まれるんだったなぁ‥‥」
 ステインのその言葉に、ケインはニィッと微笑む。
「そうなんです。今月の25日、いよいよ僕はお父さんになるのです!!」
 その楽しそうな笑顔を見て、ステインはこう悪態を付く。
「はははっ。まあ、何事もないように祈ってくれ‥‥最近、この奥の破滅の魔法陣がかなり活性化しているらしいからな‥‥」
「判っていますって!! ああ、男の子かな? 女の子かな? 早く会いたいなぁ‥‥」
 そんな感じでまた見張りを続ける二人であった。
 なお、この会話の直後、周囲を濃い霧が包みはじめたのだが‥‥。
 吟遊詩人の物語などを参考にすると、この手の会話をしているこいつら‥‥。
 多分死ぬな。


●そして本題
 新婚。
 この甘い響き。
 愛しあう二人の愉しい生活。
 結婚式を終え、しばらくは俗世間から離れて旅行に出るものも少なくない。
 ということで、新婚の皆さんは、どんなところに旅行に出かけますか?

●今回の参加者

 ea6536 リスター・ストーム(40歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea9927 リリー・ストーム(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb8642 セイル・ファースト(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ec2152 アシャンティ・イントレピッド(30歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

リューク・ヴァスケス(eb2362)/ レア・クラウス(eb8226)/ リタ・ベル(eb8374)/ リスティア・レノン(eb9226

●リプレイ本文

●幸せな時間
──パリ・ストーム家
 結婚式以後、初めての帰宅。
「あらあら。二人とも突然」
 そう告げつつ、愉しそうにリリー・ストーム(ea9927)とセイル・ファースト(eb8642)を迎え入れたのはリリーの母親である『ユーディー・ストーム』である。
「久しぶりに夫と遊びに来ました」
「ご無沙汰しています。お、お養母様」
 照れつつもそう告げるセイルに、ユーディーも愉しそうである。
「今日はお父様も戻っていますから、さあ、ゆっくりとね」
 侍女達が二人の荷物を持って部屋へと案内した。

──ということで、夕食
 執務を終えたピーター・ストーム。
 出世して査察官の地位にまで昇っている。
「査察官?」
「ああ。今まではパリで色々と仕事をしていたのだが、今度からは査察官としてノルマン全域を動く事になった」
 リリーの問いに、ピーターがそう告げる。
「査察官ということは、ニライ・カナイ査察官の‥‥と、あの人はいまは市政官でしたか」
 セイルがそう告げたとき、ピーターが静かに頭を縦に振る。
「うむ。さっそく明日から、私はシャルトルに向かわなくてはならない。今暫くは家を留守にするが、大丈夫だな?」
 そう問い掛けるピーターに、ユーディーはコクリと肯いた。
「お父様!! シャルトルが今どうなっているのか判って居るのですか?」
 リリーが少し動揺して叫ぶ。
「破滅の魔法陣のことであろう。だが、今もなおあの地ではプロスト辺境伯や大勢の冒険者、はては有志の者たちがあの地を開放する為に走りまわっていると聞く。ならば、私が動かない道理はない‥‥」
 意外と熱い男のピーター。
「リリー。お父様はもう止められませんよ‥‥」
 優しそうな瞳で、そう告げるユーディー。
「判っています。けれど‥‥」
 心配‥‥いや、これは不安。
 あの地に関った者たちの悲劇、そして末路を冒険者であるリリー・ストーム(ea9927)は色々と聞いている。
 だからこそ‥‥。
「一つ約束してください。もし何か危険な事があると判断したら、決して単独では行動しないでください」
 セイルがそうピーターに告げる。
「うむ‥‥」
 そう告げ、再び晩餐は続いた。
 


──一方・冒険者酒場マースカレード
「えーーーい。どこの村も破滅の魔法陣かよっ!!」
 絶叫を上げているリスター・ストーム(ea6536)。
 新婚旅行で向かう街や村をチョイスしていたのだが、どこもかしこも事件が起こっていたり破滅の魔法陣に呑み込まれていたりと大変のようで。
「まあ、このご時勢ですからねぇ‥‥でも、行けるとこもあるのでしょう?」
 そう告げるミストルディンに向かって、リスターが候補地リストを指差した!!
「確かにある。が、だ!!」
 そうリスターが叫んだとき、通りの方から子供達の歌声が聞こえてくる。

〜♪〜
 英雄夢見て、旅に出た
 僕らを呼ぶ声あれば、何処でも行きます、参ります
 依頼があれば東へ西へ
 仕事迅速 即解決
『全てを丸く治めましょう‥‥』

 光溢るる世界に 潜み続ける数多の闇
 闇より民を護る為 今こそ起て ノーヴァンリッター!!
 六つの正義よ今 旋風となりて走れ
 六つの希望よ今 閃光となりて闇祓え
 不屈の闘志を胸に秘め 行け 我らのノーヴァンリッター!!

 海を割るんだ(船落ちるってば!)
 山を裂くんだ(近所迷惑だろそれは!)
 多少無茶でも気にするな 走れ走れ 発展途上な英雄たち♪
 多少無理でもやってみろ 行け行け 発展途上の英雄たち♪
(いや無理! 悪鬼とタイマンなんて無理ですからッ! いやー!(泣))

 謎が謎を呼び謎のまま。謎は永遠に謎で謎爆発!!
 謎が謎を呼び謎のまま。謎は永遠に謎で謎爆発!!
 魔法戦隊(チャチャチャッ)ノーヴァン〜リッタ〜ああーーーってか。
〜♪〜

「‥‥最近の流行か?」
 そう呟くリスターの横では、蛮・ストームちゃんがクスクスと笑っている。
「懐かしいわね‥‥リスターと出会ったのも、そう‥‥」
 なにか思い出したらフツフツと怒りが沸き上がっている蛮ちゃん。
「いつも貴方は、他の女性の後ろを‥‥」
「わーーーっ。ちょっと待て蛮!! これから愉しい新婚旅行なのに、一体何を思い出しているんだぁぁぁぁぁぁ」
 そんな絶叫の後、いつものように仲直りした二人はさっそく思い出めぐりに出発。


──一方・パリ郊外のサン・ドニ修道院では
「‥‥この聖堂は広いですね‥‥」
 そう告げつつ、必死に聖堂内の装飾品を拭いているのはアシャンティ・イントレピッド(ec2152)。
 実は海賊仲間とどう言う訳か修道院の話になって、賭けをする事になっちゃったというとんでもない事情によりここを訪れて、短期間ながら修行に参加させてもらっているようである。
「ええ。ですが、この後は食事の準備ですよ。シスター・アシャンティは料理の経験はおありで?」
 そう問いかけているのは、アシャンティの補佐を務めているシスター・アスペル。
「嗜み程度になら、ちょっとだけ少しだけ‥‥」
「では、あとは他のシスターに任せて、食事の準備に」
「ええ。そうだね‥‥では行きましょう」
 ということで、厨房に向かうと、さっそく料理の準備を始める二人。
「えーっと、では、アシャンティさんはニンジンの皮を向いてください」
「了解。えーーっと‥‥えーーっと‥‥あれ?」
 するすると向いているのはいいのだが。
 皮が8に対して身が2しか残っていない。
「うーん。こっちはあたしがやりますから、こっちのお肉の下準備を御願いします‥‥」
「了解。一口大に斬るんだね」
 そう告げて、アシャンティは包丁を受け取って肉を切る‥‥切る‥‥切れない。
「あーーーっ、この包丁駄目。全然駄目っ」
 そう叫んでから、素早くシスターローブの太股をはだけると、そこに付いているダガーホルスターからパリーイングダガーを引き抜く。
──スパパパパパパパパッ
 手慣れた速さで肉を斬る。
「あ、あの‥‥そのホルスターって、一体何処から?」
 そう問い掛けるシスター・アスペルに、アシャンティは一言。
「ここのシスター・サンチェリーっていう子から借りたのよ」
 随分と物騒なシスターがいるなおい。
「ああ、あの冒険者になりたがっているシスターですね‥‥まあ、それはおいといて。切った材料をこっちの鍋に‥‥」
 そう告げて、材料を入れてじっくりコトコトと煮込んだ‥‥いやいや、スープを完成させる。
「初めてにしては美味しくしあがりましたね」
 そう告げるシスター・アスペルだが。
(‥‥味付けが薄い‥‥物足りない‥‥)
 そう思ったら行動に出るのが海賊魂。
 シスター・アスペルがよそ見をしている最中に、調味料を追加していったとさ‥‥。

 なお、この日の晩餐は『阿鼻叫喚』だったらしい。
 合掌。


●ノルマン江戸村にて候
──シャルトル・ノルマン江戸村
 ガキーーーーンガキーーーーーン
 激しく打ちなる金属音。
 新婚旅行で江戸村を訪れていたリリーとセイルは、ちょうど『トールギス鍛冶工房』を訪れていた。
「どうだ?」
 そう問い掛けるセイルに、クリエムは静かに告げる。
「それほど刃の減りもありませんね。魔力もまだ維持されているようですし‥‥この『ストームレイン』っていう剣はいいものですよ」
 そう告げると、クリエムはセイルから預かっていた剣を戻す。
「ああ、そんなに使っていないしなぁ‥‥」
「そうそう、クリエムさん、ここはあの『トールギス』さんの鍛冶工房なんでしょ? 色々と武器屋防具を見せて欲しいのです」
 リリーがそう告げる。
 ちなみに、この江戸村に新婚旅行にやってきたのはいいのだが、1日で殆ど見て回ってしまった為に、刺激を求めていたのである。
「そうですね‥‥折角ですから‥‥」
 そう笑顔で告げて、クリエムはリリーを連れて奥の倉庫に移動。

──そして
「‥‥う、うっわーーーーー」
 恥ずかしそうにそう呟きつつ姿を現わしたリリー。
 ちなみに装備しているのはクリエム特製『デスティニーアーマー・インパルス』。
 シンプルなタイプのパーツアーマー+特製ショルダーガードとサイドアーマーがキラリと輝く。
「いい感じだな‥‥クリエムさん、これは買うと幾らぐらいなんだ?」
 そう問い掛けるセイルに、クリエムはボソッと耳元で告げる。
「なっ!! あ、そ、そう‥‥そんなに高いのではないのか‥‥あはは」
 引きつりつつもそう告げるセイル。
「そうなの? それじゃあ‥‥セイル君これかってぇ?」
 甘えるように告げるリリーだが。
「今の俺の所持金に‥‥あと0を5つつ。買えないなぁ‥‥」
 うむ。国家予算クラスだ。
「ね、他にはないの? 他には?」
「良いのがありますよ‥‥それではつぎは、このナイチンゲールという真紅の全身鎧を‥‥」
 女性の服を買うときの風景です。
 但し、布製の衣服ではなく金属製の鎧というのがミソ。



──その頃の‥‥
「綺麗‥‥」
 夕陽が静かに沈んでいく。
 それを見つめつつ、蛮が傍らに立っているリスターの手を握る。
「いや‥‥あれよりも‥‥」
 そう呟きつつ、リスターは横に立っている蛮の顎に手を当てる。
 そしてそっと上を向かせると、そのままゆっくりと口付けした。
「蛮が一番綺麗だ‥‥」
「うれしい‥‥リスター‥‥」
 そう告げて、そのままリスターに抱きつく蛮。
「あ、あの‥‥他のお客様のご迷惑になりますので‥‥」
 そう告げるのは、二人の泊まっている宿の支配人。
 大きなベランダと、そこに続くホールでの立食パーティー。
 それに参加していた二人だが、ベランダでいちゃつくわのろけるわキスするわ、人目をはばかったりはばからなかったりしながら★△×■三昧。
 それに触発されてあちこちでカップルが出来上がっているから、それでもこの『お見合いパーティー』は成功なのであろう。
 もっとも、このリスター&蛮カップルが、そんなことを知って参加しているとも思えないが。
 近くに見える建物が『プロスト城』。
 あちこちと歩き回り、二人で愉しい一時とエロエロしい二時を過ごした仕上げでここにやってきたらしい。
「明日はパリね‥‥」
「ああ」
「みんなにお土産買っていかないとね‥‥」
「そうだなぁ‥‥あ、うちの分はいらないからな‥‥」
 そう告げるリスター。
 と、ベランダの一寸先、下の路地を『ピーター・ストーム』が護衛騎士を伴って歩いている。
 向かっている方角から察するに『プロスト城』の模様。
「アヤがついたな‥‥まあいい」
「で、どうしてお養父様がここに?」
 そう告げる蛮に、リスターも肯く。
「何かあったのか‥‥」
 そう告げると、二人は静かに部屋に戻っていった‥‥。



●そして幸せののちにやってくるもの
──パリ・コンコルド城・応接間
 静かな昼下がり。
 いつものように執務を終えた『アーネスト・ファースト外交特使』。
 そこを、旅行から戻ってきたリリーとセイルは訪れていた。
「義父様、旅行のご報告とお土産です」
 そう告げて、リリーはアーネストにハンカチを渡した。
「ああ、ありがとう‥‥」
 と、少し戸惑いの色を見せているアーネスト。
「ふん、今更照れるガラかよ‥‥」
──スパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
 そう呟くセイルの顔面に、巨大なハリセンがめり込んでいく。
「ふん。相変わらずの口の聞き方だな」
「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ。なんだ親父、その巨大なハリセンは? まるでニライみてえじゃないかっ!!」
──ギィィィッ
 そう叫ぶリスターの後、扉が開いてニライが姿を現わした。
「ニライのみてぇではなく、私と同じ『ハリセン工房』で作ってもらった特注品だ‥‥」
 にこやかにそう告げるニライ。
「それはそうと、どうしてここにニラさんが?」
 そう問い掛けるリリーだが。
「市政官ゆえ、仕事の大半はここの事務所かパリ市内回りだけだ。で、退屈な時はアーネスト卿に話し相手になってもらっている」
 そう告げると、ニライはアーネストと共に外に出ていった。
「おいおい、久しぶりの再会なのに」
「急務だ」
 そうセイルの言葉を遮ると、アーネストはニライと共に外に出ていった。
「まあ、それでもハンカチを手渡せたから」
 リリーはその事実と、ハンカチを渡した瞬間の戸惑う養父の表情が見れて満足であった。

──そしてサン・ドニ
「ふうふう‥‥」
 最後の日の仕事も、やはり大聖堂の掃除。
「これで最後ですよ、頑張ってください‥‥」
 そう励ますシスター・アスペルの言葉も耳に届いていない。
「だ、大丈夫です。あたしもここで修行して、色々と勉強になりました‥‥」
 フラフラになりつつ、そう告げるアシャンティ。
 騎士位に位置する彼女ではあるが、礼節云々はかじっただけ。
 それゆえに判ってはいるのだが身体が反応していないのであろう。
 それでもどうにか最終日まで耐えぬいた。
 そして夕方、
 アシャンティは仲間と共に修道院を後にした。
 ここでの体験は、いつかきっと身を結ぶ‥‥のだろうなぁ


〜Fin