【繊細な指?】魔法のウィザード

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:8 G 76 C

参加人数:6人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月25日〜05月30日

リプレイ公開日:2007年06月02日

●オープニング

──事件の冒頭
 スパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン
 のどかな昼下がり。
 破滅の魔法陣最前線ラインちょっと奥の古い屋敷の居間で、悪魔のヘルメスさんが配下の小悪魔達をハリセンでぶっ飛ばしていた。
「貴様達‥‥このまえ、私が説明した作戦が、どうして『奇跡を起こす不思議な水』になっていたんだ?」
 そう問い掛けるヘルメスに、小悪魔達がこう一言。
「いやいやヘルメス様。ありきたりの作戦ではいけません。今や、時代は『革新』です。作戦の中にもこう、ピリッと辛みのきいた奴を」
──スパパパパパパパパーーーーン
 更に力一杯ハリセンでふっとばされる。
「痛いッ。ヘルメス様、そのハリセンは一体‥‥」
「貴様達小悪魔をド付く為にちょっと知合いに作ってもらった『魔法のハリセン』だっ‥‥まあいい、次の作戦に取り掛かれ‥‥」
 ということで、ヘルメス様の野望はまだまだ続く。

●ということで、こっちが本題
──パリ・とある街角
「きゃはっ☆ このあたし、魔法のウィザード・プリティらしゅ☆が来た以上、悪が栄えることは無理、もう駄目っていうかあきらめて!!」
「なんだとぉ。そっちこそ悪じゃないか!! このオレサマ『ノーヴァンリッター』が来た以上、正義が勝つ!!」
 とまあ、子供達の愉しそうな声が聞こえてくる。
「ほほう。子供達よ。正義の味方ごっこかね?」
 そう告げてきたのは、背の低い一人の老人。
 みなりはそこそこに良く、どこか落ち着いたふうな感じを見せている。
「そーだよ。おぢさん誰?」
「私はフェイクという。この先、シャルトルの手前のとある領地を任されている者だ。さて、君達、本物の正義の味方になりたいかい?」
 そう告げると、老人は小さな壷を子供達に見せた。
「うん、なりたい!!」
「そのお薬を飲んだらなれるのー?」
 そう問い掛ける子供達に肯くと、老人は壷の中の薬を子供達に手渡した。
「これを飲んで。そしてどんなヒーローになりたいかイメージしてごらん‥‥」
 その言葉の赴くままに、子供達は薬を飲んで、そして意識を失っていった。
「ふっふっふっ。さて、新しい贄が捕まえられましたよ‥‥」
 

●ということで冒険者ギルド
「ここ最近、子供達が誘拐されるという事件が頻繁に起こっています。目撃者の話では、一人の老人と出会っていたという報告がある為、その老人を探して事情を聞き出して欲しい‥‥」
 それは、とある騎士団のお偉いさん。
「ふむふむ。騎士団からの依頼とは珍しい。では、これは正式な依頼という事でよろしいのですね?」
 そう問い掛けるペリエ・ウィンズ。
「ああ、兎に角頼む‥‥こっちも人が割けない位いそがしいので‥‥」

●今回の参加者

 ea0828 ヘルヴォール・ルディア(31歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea2165 ジョセフ・ギールケ(31歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea3692 ジラルティーデ・ガブリエ(33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea4107 ラシュディア・バルトン(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5283 カンター・フスク(25歳・♂・ファイター・エルフ・ロシア王国)
 eb9459 コルリス・フェネストラ(30歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・フランク王国)

●サポート参加者

ティエ・セルナシオ(ea1591

●リプレイ本文

●忌まわしき過去
──パリ市内・とある冒険者酒場マスカレード
 どたばたどたばた
 激しい抗争。
 っていうか悪あがき。
「‥‥いいかラシュディア!! 子供達は勇者が助けに来るのをまっているんだ!!」
「だからといって、俺が『プリティらしゅ☆』の恰好をする必要が何処にあるんだぁ!!」
 必死にラシュディア・バルトン(ea4107)を説得しているのはカンター・フスク(ea5283)。
 だが、ラシュディアも中々抵抗するようで。
「冗談じゃないっ!!」
 カンターを振り切って店の外に走っていくラシュディアだが。
──スパァァァァァァァァァァァァァァァン
 入り口外から飛びこんで来たコルリス・フェネストラ(eb9459)とティエ・セルナシオが、長さ1.8mもの巨大ハリセンでラシュディアの顔面と‥‥を殴りつけた!!
「ここから先はにがしません!!」
「抵抗はあきらめて下さいっ!!」
──ずばぁぁぁっ‥‥キン!!
 あ、ラシュディアその場に悶絶しつつ崩れ落ちる。
「ほらね。役立ったでしょう?」
 そうカウンターの中から皆に告げる酒場マスターのマスカレード。
「ありがとうございます。これはお返しします」
「これが伝説の名刀‥‥名ハリセン『ツービート』ですか」
 そう告げつつ、名ハリセン『ツー・ビート』と、もう一本の名ハリセン『チャン・バラトリーオ』をマスターに返す二人。
「ええ。父のコレクションです。まあ、あとは貴方たちで頑張ってください‥‥」
 そう告げると、二人はラシュディアをカンターの元に連れていった。

──そして少しして
「‥‥えーーっと。まあ、なにがあったのかは聞かないわ。それよりも犯人の足取りと特徴は聞き込みで集めてきたわよ」
 ヘルヴォール・ルディア(ea0828)が、テーブルに座っている皆にそう告げる。
「で、どうだった?」
 ジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)が、ヘルヴォールに問う。
「子供を攫ったのは4人組だったらしいわ。全員が純白のローブに身を包んでいたらしいわね。胸許に『茨と鷹』の刺繍がしてあったらしいけれど、それがどこの家の紋章なのかまではさっぱり‥‥」
 そう説明しつつ、ヘルヴォールは羊皮紙に刺繍の紋章を書きこむ。
「茨と鷹か‥‥古い貴族家だな」
 ああっ、ジラルティーデ、さすが騎士。
「ふぅん‥‥判るのか‥‥」
 そう告げるが、カンターは今現在、ラシュディアの登場台詞を思案している為興味なし。
 なお、その横で涙を流しているジョセフ・ギールケ(ea2165)は放置ということで。
「ああ。確かな。何処の家かまではちょっと思い出せないが、このノルマン復興に関係していた貴族家だつたような‥‥」
 いや、ナイスです。
 ということで、一通りの準備を終えていざ出陣。


●奇跡は起こった!!
──とある屋敷
「‥‥ブレスセンサーによるサーチでは、建物の中の呼吸は全部で5つ。はっきりとわからないが、大人らしい大きさが2、子供らしいのが3ってところだ」
 屋敷の裏で、ジョセフが仲間にそう告げる。
「よし、ヘキサグラムタリスマンも発動したわ」
 そう告げると、ヘルヴォールもスタンバイ完了。
「こっちも準備完了」
 ジラルティーデも『まるごとうさぎさん』の装備完了。
 そのまま正面に回りこむと、正々堂々と扉を開く!!
──バン!!
 そして開いた瞬間、ラシュディアを先頭に全員が突撃。
 まずは子供達が捉えられているであろう奥の部屋へと向かった!!

──そして奥の部屋
 なにかの研究室。
 子供達は椅子に括られ、意識を失っている。
「とりあえず子供達を!!」
 ヘルヴォールがそう叫び、子供達の解放に走る。
 どうやら意識を失っているらしく、こっちにとっては都合がいい。
「‥‥これは?」
 研究室に置かれている様々な薬品。
 それらのなかから、ジョセフは見覚えのあるものを発見。
「‥‥もう大丈夫」
「あとは今回の犯人だけか」
 そう告げつつ、ジラルティーデとカンターが子供達を助けるが。
「う‥‥んん‥‥うさぎさん‥‥だれ‥‥」
 意識を取り戻した子供達。
「僕はノルマンの子供達の笑顔を守る正義のウサギさ。名前はまだない。みんな良い子にしていたかな」
 ジラルティーデが兎のままそう告げる。
「大丈夫だよっ。プリティらしゅ☆が助けに来てくれるよっ!!」
「だから安心して、兎の剣士さん!!」
「zzzzzzzz」
 そう告げる子供達。
「ふう。出番か‥‥」
 もうあきらめ顔で溜め息を付くラシュディア。
 と、ジョセフが机の上の薬壷を一つ取ると、ラシュディアに手渡す。
「酒だ。これでも飲んで吹っ切ってくれ」
「ああ‥‥」
──ゴクッ‥‥
 そのまま焼けになってそれを飲み干す。
「って、ジョセフ!! これって酒じゃないぜ‥‥」
 そう呟くが、もう手遅れ。
──ピシーーーッ
 突然ラシュディアの全身が輝く。
 
 身長152cm。
 細身で、金髪ロングのツインテール。
 それをエチゴヤリボンで綺麗に纏める。
 頭には獣耳、顔はマリアヴェールで覆う。
 今回もカンター特製『綺麗なメイドスーツ型プリティらしゅ☆スーツ』に身を包んだ美少女。
 
「ろりっ。ろり♪〜」
 華麗なテーマソング(背後でジョセフが歌っている)に載って、やってきました僕等の美少女!!

「魔法のウィザード・マジカルらしゅ☆っ!!」
──キターーーーーーーーーーーーーーーーーー
 クルリと回り、口許に人差し指を当ててそう叫ぶ!!

「ほんものだー」
「僕達を助けに来てくれたんだねっ!!」
「きゃーきゃー」
 もう、子供達も大騒ぎ。
 そして騒ぎを聞きつけて、扉が開き男達が突入して来る!!
「なんだお前達は?」
「怪しい奴めっ!!」
 そう叫んで剣を抜く。
 と、コルリスは一歩前に出ると、ポーズを付けて叫んだ!!

「天が呼ぶ! 地が叫ぶ! 悩める貴方をキュートにお助け。
 正義の味方『ぷりてぃー・らしゅ☆』とその従者たち、ただいま参上!」

 あーもう、あいかわらず何処から突っ込んでよいものか‥‥。
「えーいっ、この研究施設を知られた以上、生きたまま返すわけにはいかない‥‥」
「やっちまぇーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
 その男達の叫びに、カンター達も臨戦体勢を取った!!
「ここはっ!!」
 カンター必殺技炸裂!!
「千本針クロスステッ‥‥!!」
 次々と繰り出されるカンターのポイントアタック!!
 敵もそれを受けるのが精一杯!!
──キンキンキンキン
 一方、ヘルヴォールはもう一人の攻撃を必死に受け流す。
「コルリスさんっ!!」
 あ、何か期待しているヘルヴォールだ。
(子供達にうける戦い‥‥)
 コルリスは後方で『鳴弦の弓』を一杯引く。だが、矢は番えていない!!
──キィィィィィィィィィィィィィィィン
 弓を引いた右手にオーラが集る。
「必殺、オーラアローー!!」
 そう叫んで、弦を離し、手に集ったオーラを飛ばす。
 ただのオーラショットでも、そうやって撃つと恰好いい。
 後方では兎さん‥‥もといジラルティーデが子供達の前で聖剣を引抜き、ガードに入る!!
 そしてジョセフの効果により、プリティらしゅ☆がいよいよ魔法詠唱開始!!
「プーーッ。悪い大人めっ。このプリティらしゅ☆の魔法をくらいなさいっ!!」
──スパパパパパーーーーーーン
「切り裂く風っ。必殺・ラヴリー・ウィンドスラッシュ☆」
 その魔法を受けて、男達は‥‥


●伝説は繰り返される
──冒険者酒場・マスカレード
 男達を倒し、攫われた子供達も救出。
 警備騎士たちに男を差し出し、とりあえずは一件落着。
「もう変な大人について行っちゃ駄目だよっ!!」
 ヘルヴォールの言葉に子供達も肯き、約束をしてから帰宅していく。
「それにしても、この薬って、そんな効果があるんですか‥‥」
 そう呟きつつ、ジョセフがどさくさに紛れてもってきた魔法の壷を手に取るコルリス。
「ああ、机の上に、この前見た水樽が置いてあったからな。まさかと思ったけれど‥‥」
 そう呟いているさなか、コルリスの心の中に好奇心が芽生える。
(女の人が飲んだらどうなるんだろう‥‥)
──ゴクッ
 残りをいっきに飲み干すコルリス。
「ああっ‥‥。最後の‥‥ガクッ‥‥」
 ジョセフ轟沈。
「なにも、別に変わった所は‥‥ないだろう?」
 スッと髪を託し揚げつつ、コルリスがそう告げる。
 視線は流し目、フッと口許に笑みを浮かべる。
「そ‥‥そう‥‥ね‥‥」
 そう告げつつも、ヘルヴォールは顔を真っ赤にして斜め下を素早く向く。
(やだ‥‥私、胸がドキドキしている‥‥)
 身体中が熱いヘルヴォール。
 さて。
 今のコルリスはというと。
 
 身長178cm。
 銀髪ロングの美形。
 細く綺麗な外見は、まるで女性を恋に落とす『ジゴロ』のように。
 
「‥‥コルリス‥‥あ、あんた‥‥」
 その外見を見て、カンターも吹き出す。
「ああ、僕かい? 今日から『ゴージャス・コルリー』と とでも呼んでくれたまえ‥‥」
 フッと、目を臥せると、コルリスがそう呟く。
 その仕種だけで、店内の女性は一瞬のうちに恋に落ちたそうな。

 なお、夕方になって効果が切れると、コルリスは自分の部屋に閉じこもったとか。


●そして
──ザッバーーーーーン
 停車場からすぐの港。
 川を下っていく船を眺めつつ、マントで顔を隠したラシュディアが、遠くを見つめている。
「旅に出よう‥‥誰も、僕を知らないところへ‥‥」
 そう告げると、ラシュディアは人ごみの中に解けこんでいく。
 なお、悪い大人達を軽微騎士にさし出したとき、ラシュディアはまだ『プリティらしゅ☆』だった。
 そしてその時の台詞がこうだったらしい‥‥。

「このノルマンの平和は、プリティらしゅ☆が護ってあげる!!」

 ああ‥‥合掌。

〜Fin