●リプレイ本文
●スケイルメイルは『バーニングドラゴン』の鱗と相場は決まっているんだッ!!
──シャルトル・ノルマン江戸村
天気晴朗。
雲二つしか無いいい天気。
シャルトル地方・ノルマン江戸村には、いつもとは違い大勢の人たちで溢れていた。
それも其の筈。
なんとノルマン江戸村は、今がまさに収穫祭の為の準備で大忙し。
「今年の収穫祭は、この江戸村からも色々と参加させて貰うっ。我々は、この収穫祭で、江戸村の知名度を揚げる事を提案する!!」
という村長の宣言により、江戸村は領主からそこそこの資金援助を受けて『収穫祭』の準備をしていた。
そして収穫祭では、あの『ミトンオブファイト』や『鍛冶屋トーナメント』『お愉しみ富くじ』などなど、様々な催し物の準備が行なわれていた。
さて、そんな事とは関係無しに。
中央広場には、大勢の観客が詰寄っていた!!
「それではっ。ノルマン江戸村鍛冶屋ファイト2を始めますっ!!」
そう掛け声が上がると、その場に並んでいた鍛冶師達が一斉に後ろに作られた簡易鍛冶小屋に向かって走り出した!!
●ロックフェラー工房
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ
ふいごを踏みつつ、ロックフェラー・シュターゼン(ea3120)は炉のなかで溶けている銀をじっと眺める。
「‥‥魔法の武器しか聞かないような敵と戦う為には、銀自体は『純銀』でなくてはならないが‥‥」
そう呟きつつ、側に置かれている『銀合金』を手に取る。
確かに銀と鉄、その他の鉱物が『ロック秘伝の配合率』によって作られている為、かなり強度は高い。
が、これでは純銀の特性を全く生み出さない。
「となると、やっぱりこれか‥‥」
そう呟きつつ、ロックはいよいよ作成にはいる。
解けた銀を糸の用な型にいれて冷やすと、『漆黒』に染め上げた柄革に縫い込んでいく。
そして、革の面に沿ってナイフを滑らせると、余剰分を切り落とす。
「ふぅむ‥‥いい感じに仕上がってきたな」
柄革に銀色の点があちこちに点在するのを確認すると、ロックはニィッと笑いつつそう呟く。
別の型枠に流し込んでいた石突と刃の部分を銀で細工し、それを先程完成させた柄革の巻いてある木製の柄にはめ込む。
──コンコンコンコン
木のハンマーで細部の調整をすると、いよいよ仕上げである。
石突にはびっくり鈍器の紋章を彫金のように刻みこむと、細部の手入れを行なって完成。
黒革で夜空を。
銀糸で星。
刃は夜空を駆ける流れ星。
星空のイメージで作り上げた槍の完成である!!
「これで‥‥いくか!!」
●ラーバルト工房
──ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
ショートソードの枠型に、銀を流し込む。
「うーむ。やはり銀合金では駄目か‥‥」
ロックと同じ様に、やはり銀合金の所でつまずいているようだ。
が、すぐさま別の方法を思い付くと、ラーバルト・バトルハンマー(eb0206)は数多くの型枠に銀を流し込んで、それぞれの仕上がりを見る。
そしてもっともよい型『切っ先が幅広くなったブロードソード』のような形で決定すると、刀身の幅広の部分を十字にくりぬく。
──コンコンコンコン
「これでよしと」
十字架のネックレスを装飾として使用、一見すると『クルスソード』のような仕上がりになった。
そしてさらにここからがラーバルトの凄い所。
──コツコツコツコツコツコツコツコツ
刀身には刻みこむ若草のレリーフ。
鍔の部分で『伸びる若木』をイメージしつつ、ラーバルトもまた短時間で仕上げた。
●朧工房
──ガギィィィィィィィィィィィィィン、ガギィィィィィィィィィィィィィン
激しく打ち出されるハンマーの音。
朧虚焔(eb2927)の作り出しているのは『槍』である。
ただし、ロックとは違い、朧は『日本刀』の技術をフルに使った槍である。
「銀の特性‥‥大型武器を作るには強度が心許ない。ならば、槍の先に使えば‥‥」
そう考えた朧は、兎に角刃を打った。
日本刀のような、4っつの部材全てを変えるのではなく、『芯鉄』の部分だけ鋼を仕様、その他の部分は純銀で打ちはじめる。
──キィィィィィィンキィィィィィィィン
日本刀の技術を応用し、繰り返し銀を鍛えることで刃に美しい波紋を浮き立たせる朧。
だが、その波紋がうまく仕上がらない。
「鋼と銀の鍛接まではうまくいった‥‥が、この波紋が‥‥」
幾度となく打ち続ける朧。
「丁子乱れが‥‥うまくいかない‥‥なんでだ‥‥」
それでも打ち続ける。
「もっとこう‥‥波打つ焔の如く‥‥こう‥‥」
──ガギィィィィィン
果たして決勝までに、朧の槍は完成するのであろうか‥‥。
●フレイ工房
──ジーーーーッ
フレイ・フォーゲル(eb3227)は悩んでいた。
鍛冶屋としての腕は殆ど未熟。
なれど、『錬金術』ならば、フレイは誰にも負けないという自負がある。
まずは、フレイは銀がどういうものであるのかを考えた。
1.通常の武器の効かない魔物に効果がある。
2.貴金属である為、コストが嵩む。
3.重い
この3つの特性を調べ、2のコストを軽減する為の『銀の合金化』も考えた。が、そうなると、1の魔物に対しての効果が得られない。
「こ、これは‥‥思ったよりも難しいですね‥‥」
そう考え、フレイは新機軸の銀の武器を製作に入った。
コストと重さを抑えることを製作のコンセプトにし、新たなる様々な武器を。
『魔法炉』を借りて高温で溶かし、それを様々な武器の型に流し込み、そして『焼成』する。
手軽で簡単に、大量の銀の武器を作れるように。
それを考えつつ、フレイはいよいよ仕上げに入った!!
●ヴィルジール工房
──ガギィィィィィィィィィン
激しく打ち出されるハンマー。
ヴィルジール・オベール(ec2965)は、刀の芯たる心鉄、それを包む皮鉄、刃の部分の刃鉄を作成していた。
使用している素材は『玉鋼』。
「‥‥心鉄と皮鉄を玉鋼で‥‥刃鉄の部分に銀を使う。これならば、いける!!」
──ガギィィィィィィィィィィィィィィン
激しく響く鉄の音。
ヴィルジールは、自らが学んだ技術の全てを、ここで叩き込んでいた。
このノルマンにも、刀鍛冶の技術は伝来している。
それは、ノルマンとジャパンが月道で繋がっていて、それらの技術交流があったからであろう。
だが、このノルマンでも、玉鋼の精製や、刀鍛冶の技術を真面に使える者は殆どいない。
古くはマイスター・マシュウやマイスター・トールギスといったものたちがそれらの技術の研究をしており、その弟子達が日夜精魂込めて研究している。
ヴィルジール自身も又、それらの工房などで勉強し、さらに知人であるレミア・リフィーナが錬金術手で知識分野をサポート。
「よし‥‥飾りも完成と‥‥」
銀で出来た鞘を手に、ヴィルジールはそう呟く。
●そして、あっという間に最終審査
早っ!!
──中央広場
今回もあっ‥‥というまに鍛冶製作時間は過ぎ去っていった。
既にその場には観客が集まり、その横に今回の皆の武具の出来具合を見届ける為の見届け人として『鍛冶師クリエム』と『剣豪宮村武蔵』、そして特別審査員の『プロスト辺境伯』が座っていた。
前回のようなものものしさもなく、提出されたそれぞれの武具を順番に手に取り、制作者達から色々と話を聞いていく。
──ロックフェラー
「普通の銀の槍は柄が木製で、悪魔とかを相手取ると柄での打撃は使えずにいつも通り戦えないんだよね。とはいえ柄を全て銀製にしたら重すぎる。その点を銀糸を用いた柄革でカバーしつつ、装飾性を高めてみました」
手に取った槍を説明するロックフェラー。
「確かに。この軽さならば、十分に対応はできるな」
おっと、ロックの武器はミヤムゥに好印象。
──ラーバルト
「大丈夫。すでに十字架は『ノートルダム大聖堂』で聖ヨハン大司教の祝福を受けておる!!」
そう力説しているのはラーバルト。
「装飾という点では、どのような?」
「『上を目指す成長』。植物の成長は即ち、このノルマンの大地に置ける我々。常に上を目指す!!」
さらに力説。
「ふむふむ。いい感じですねぇ‥‥」
おっと、ラーバルトの作品はプロスト辺境伯に好印象。
──朧
「『闇の中にありて輝くもの』。それが、この槍の名前だ」
そう告げているのは朧。
なんとか仕上げに間に合い、柄などの細工も終っていた。
そしてなにより、彫金ではなく、焼き付けによる刀身への紋様、その技術は対したものである。
「に刃以外の部分でもデビルなどのモンスターにダメージを与えられるような工夫がいいですね。ロックさんの槍と、どっちが上かなぁ‥‥」
クリエムがロックの槍と見比べつつ、悩んでいる。
──フレイ
ずらりと並んだ大量の銀の武器。
その前で、特売のように説明しているのはフレイ。
「いいですかプロスト辺境伯。戦は数ですよ、結局。大量の魔物と戦う為には、数多くの銀の武器が必要なのです。これらは全て『量産型・銀の武器』。安価にして大量、物量作戦には必要なことです 」
そのフレイの力説に、肯くプロスト辺境伯。
「戦となると、民にも負担が強いられる事もあります。けれど、この武器なら、負担は幾分やわらぐしょう」
おっと、フレイの武器はプロスト辺境伯に好印象。
──ヴィルジール
「‥‥これは素晴らしい‥‥」
鞘から刀を抜くミヤムゥ。
「鱗の彫刻、銀を仕上げに使用しました。柄は青い柄巻、鍔はつやを消して白を強調した銀ごしらえ。紋様は四方蕨手透鐔をつやを消して白を強調した銀ごしらえ」
たんたんと説明していくヴィルジール。
とにかく、その美しさにミヤムゥは魅了された模様。
「最高だ‥‥」
おお、ミヤムゥ絶賛。
●ということで最終選考
──まだ広場
「お待たせしましタッ。今回の鍛冶屋ファィト2、優勝は‥‥」
──ダララララララララララララララララララララッ
「3番炉の朧虚焔に決定しました!!」
観客から絶賛の声が聞こえてくる。
「ふぅ。自己採点でも、俺の槍より『芸術点』で上というところだな‥‥」
「あと一息だったかぁぁぁぁ。まあいい、おめでとう」
「芸術点でのペナルティが最後に響いたか。いい武器だったぜ」
「おめでとう、優勝っ!!」
以上、ロックフェラー、ラーバルト、フレイ・ヴィルジールの4名は、とりあえずそう挨拶を終え折ると、そのまま壇上から降りていった。
まずは、『収穫祭』の最初のイベントが終る。
次はミトン・オン・ファイト3『栄光を君にっ!!』
優勝した朧には、プロスト辺境伯の城下街に用意された2番鍛冶工房を自由に使ってよいという権利が与えられた。
「人の心に残る、よりよい武器を作ります‥‥」
にっこりと微笑みつつ、そう告げる朧であったとさ!!
●最後の寸評〜宮村〜
・ロックの槍
申し分なし。芸術点という所でわずかの誤差でした。
・ラーバルトのショートソード
耐久性という所が、今後の課題です。何度と打ち合うと、鋼には負けてしまいますね。
武器としては完成されていると思いますよ。
・朧の槍
申し分なし。芸術点での誤差で、辛うじて勝利という所でしょう。
・ヴィルジール
芸術という点ではほぼ満点。今後の成長に期待する。
〜Fin