●リプレイ本文
●逝ってこい大迷宮
──パリ・とある占師
そこは路地裏に在る小さな占いの舘。
ごく一部の人々からは、そこそこに当たると噂されているその店に、冒険者一行はやってきていた。
「ふぅん。つまり、これからトレジャーハンティングをするために、宝の地図を選ばないと行けないのですね?」
そう告げる占師に、ルースアン・テイルストン(ec4179)が肯く。
「ええ。その地図にはナンバーが振ってあるので、どのナンバーが当たりなのか占って欲しいのです」
そう告げるルーシーの言葉で、占師はじっと眼の前に置いてある水晶を見つめる。
「ふぅん。あたりはと‥‥」
そう呟いた時、ルーシーははっと思い出したかのように補足を付け加えた。
「謎に満ちた所がよいですね。この世の深淵と向き合えるような‥‥」
その言葉の瞬間、数字が確定した。
「逝っていらっしゃい。地図のナンバーは6。そのあとで11っていう風に出ているけれど?」
ちなみにお代は1Gとやや高。
けれど、それで夢が買えるのならばと全員が移動開始。
──その頃の中央公園
「では改めまして。俺は最近冒険者になったばかりのヤマト。こっちは相棒の魔法使いのカイトだ」
そう告げるフルアーマーの戦士と、横で深々とフードを被っていてる魔法使いが頭を下げる。
「よろしく。もうすぐ、仲間たちが戻ってくるから、その後で一緒に向かうとしよう」
そう告げて、ガラフ・グゥー(ec4061)もまた自己紹介。
そのさ中、占いの館から一行がもどってくると、さっそく地図屋と交渉。
「‥‥地図ナンバー6をください」
「6ね。ほれ、しっかりとがんばってきなよ」
そう告げると、ドワーフの地図屋がそのままワゴンを引いて移動開始。
それを見送ってから、一行はいよいよ冒険を開始する事になった。
「さて。それじゃあ早速地図を確認しましょう」
ロラン・オラージュ(ec3959)がそう告げて、開かれた地図を確認する。
そこには、見た事のない地形と記し、そして古代魔法語が書き綴られている。
「う‥‥読めない」
そりゃそーだ。
一同地図を回し読みしてみるが、どちら様にも判らない。
判ったのは、唯一地図の場所が何処をさしているかという事だけ。
その地図全面に記されている文字は、まったく見当が付かないという。
『さて、俺には全く読めない。が、印が付いている場所が判るのなら、そこに向かおう』
そうイギリス語で告げるアウィス・ラパクス(ea5674)の言葉を、ルーシーが通訳。
「まあ、地図の場所に向かおうって‥‥」
アバウト過ぎるから!!
●深淵(アビス)の迷宮
──シャルトル地方のとある名物迷宮入り口
そこには、様々な建物が集っている。
迷宮入り口付近の武器屋と防具屋、道具屋、何でも屋に鑑定屋と、おおよそ迷宮探索に必要な店屋がズラリと並んでいる。
「へぇぇぇぇ‥‥随分としっかりとした商売をなさっているのですねぇ‥‥」
ウッドゴーレムを二体引き連れているシシリー・カンターネル(eb8686)が、仲間たちにそう告げている。
「ほう。魔法剣がこんなに格安で‥‥」
と、月影焔(ea5538)が武器屋で軒先で売られている剣を手にとって見ている。
「ああ、どうして皆さん、そんなに‥‥早く向かいますよ」
ルーシーがそう告げると、いよいよ一行は迷宮の入り口に足を踏みいれる。
暗く湿った空間。
そこから伸びる大量の道。
回廊と回廊がぶつかりあい、上に下にと複雑な空間を縦横無尽に駆け巡っている。
「隊列は‥‥」
ということで、ご無沙汰していました隊列タイムの御時間です。
〜〜〜図解〜〜〜
・上が先頭になります
・遺跡内部での灯はヤマトとルーシーが担当
・二人はメンバーからランタンを借用
・マッパーはシシリーが担当
トラップ関係は月影が担当
・戦闘時はヤマトが荷物の護衛
・また、必要に応じて各員が松明の準備
・戦闘時、魔法使い中央に
ロラン アウィス
月影 ガラフ
カイト シシリー
ヤマト ルーシー
ゴーレム ゴーレム
〜ここまで
ということで、早速隊列を組んで、暗く湿ったダンジョンに向かって突入。
「‥‥こんな迷宮、初めてですね‥‥」
そう呟きつつ、奥に向かって進んでいく一行。
時折道にぶつかると、周囲を確認して直感で進んでいく。
印のようなものがなにもなく、地図を作りつつ進むのが精一杯である。
──そして2日後
疲労困憊。
もう、いまの場所が何処なのか、さっぱり見当が付かない。
シシリーの作った地図はすでに羊皮紙にして30枚を突破。
無限とも思えるこの回廊で、一行は様々なトラップと戦った。
無造作に置いてある宝箱のポイズンニードル(毒針)、壁から飛んでくる矢、傾斜の上から転がってくる巨大な鉄球‥‥
それらを次々と回避し、時折失敗して月影が死にそうになったりと、もうそれだけでもお腹一杯という感じである。
そんな中でも、もっとも一行が恐れていたトラップ、それが『ワンウェイ』である。
ただ進んでいくと普通の回廊だが、振り向くと今までに進んできた回廊が無く、行き止まりになっていた。
これが何ヶ所も在った為、後戻りできなかったのである。
そしてなによりも恐いのが、このダンジョン全体が『攻勢防壁』によって護られているということ。
つまり、壁に攻撃をしかけるとその攻撃が、魔法を発動するとその魔法が自身に戻ってくるというものである。
「ち、ちょっと一休み‥‥」
さすがのロランでも息が切れる。
その場で座り込むと、一行はまず広げた地図を次々と繋げて現在位置を確認。
「入ってきた場所がここ‥‥」
と、シシリーが指差す。
「で、現在位置がここで、高さはおよそ地上から大体120mの位置」
と、現在地点を指差す。
「いや、それ絶対に無理だ。ありえないから」
ガラフがそう断言する。
『この疲労感は間違いなく本物だ』
アウィスがそう告げると、ふと後方を見る。
そして静かに武器を引き抜いて、じっと後方を睨みつける。
その動きに、ロランと月影も呼応、シシリーはゴーレムを起動させる。
「敵襲だと?」
ガラフがブレスセンサーを発動するが、今現在いる自分達以外の呼吸は感じ取れない。
「気のせいか? それとも‥‥死者や木偶は判らぬがのぅ‥‥」
そうガラフが告げたとき、ようやくそれは視界に入ってきた。
迷宮名物『腐った死体』。
それが6体もゆっくりとこちらに向かってくるのである。
「走ればどうにかにげきれるが、どうする?」
つまり戦うかどうするか?
「ゴーレムの脚では逃げきれないわ」
「なら、殺るしかないか‥‥」
「出番だな」
シシリーのその言葉にそう呟いて、ロランがダッシュ。アウィスはにぃぃぃっと微笑って同じくダッシュ!!
素早く剣を振るうと、正面からやってきた2体に向かって剣を振るう。
「直線の廊下じゃ、魔法は危険‥‥」
ライトニングサンダーボルトが封じられ。ガラフは後方で応援。
「同じく。私達の魔法って、どうしてこういうところじゃつかえないのかしら?」
シシリーの必殺魔法はグラビティキャノン。
直線上に飛んでいく為、下手をすると前衛の二人を巻き込む。
そのまま途中まで戦いぬいた二人は1度後退、ヤマトと月影が入れ代わりに突撃。
「初めての戦いが、こんな腐った奴だなんて」
「全くだ‥‥」
そんなこんなで戦いぬいて、どうにか生き延びた一行は、ひとまず休息を取りつつ、再び先に進んだ。
●そしてタイムアウト
──アビス‥‥何処かの回廊
もう、疲れきっている。
薬も底を付いた。
得られた宝は確かに色々とあるが、それにしても消費のほうが激しい。
「‥‥もう駄目。魔力もなにもかも底を尽いた‥‥」
シシリーがそう告げると、ガラフも沈黙のまま肯く。
『‥‥人の気配がある‥‥』
アウィスのその言葉を訳して、一行は走り出した。
確かに、さきの回廊で『冒険者』が曲がっていった。
そこに何かが、人がいる。
その思いで、全員が走る。
そしてたどり着いたのは、広い空間。
かなり広い。
上に繋がる階段が一つと、それぞれの壁から伸びている24の回廊。
そしてそこの広場の至る所で、冒険者達がパーティを組んで打ち合わせをしている。
「あ‥‥あの‥‥ここはなんですか?」
意を決して月影が、一人の冒険者にそう告げる。
「ここ? ここはアビスの第六階層だけど‥‥君達は初めて?」
そう告げられて、一行はその場に崩れる。
ここは古き迷宮。
一部の冒険者からは『生きている迷宮』『悪魔の住まう回廊』と呼ばれている場所。
シャルトル・プロスト領辺境自治区『ラヴィーヌ』にあるこの迷宮は、様々な冒険者達の腕試しの地としても有名であり、また、その回廊のそこには悪魔達の集めた様々な財宝が隠されているという噂もあって、数多くの冒険者達がチャレンジしていた。
第一階層から第6階層まではすでに解析が終っており、問題はそこからの進む道。
ここ第6階層は、様々な冒険者達が静かな一時を過ごしていた。
あるものは仲間の治療の為、そしてまたあるものは謎の解析の為、安全地帯(セーフティゾーン)であるそこで休んでいた。
この第6階層からは、東西南北それぞれの方角に6つずつ回廊が伸びており、それぞれの回廊の入り口には小さな石碑が置かれている。
そこには、古代魔法語でこう記されていた。
ここを進むもの、全ての希望を捨てよ
そして、ルーシー一行は、いきなり最初の回廊から道を外れ、ようやくここにやってきたのである。
「つ、つまり、ここがスタートということか?」
震える声でガラフが呟く。
「ええ。貴方たちはどうやら、ここに来るまでに道に迷ったんですね‥‥」
──キヤァァァァァァァァァァァァァァァァァ
そう告げられたとき、奥くから悲鳴が上がる。
「ぜ、全滅した‥‥仲間たちは全て‥‥この荷物を‥‥」
全身が黒く焼けただれているその戦士も、そう呟いて絶命する。
そしてここのルールとして、死んでいった者たちはセーフティゾーンの者たちが手厚く弔う。
荷物は入り口にある小屋に持って行かれ、そこで遺族か仲間に送られる手筈になっている。
「あ、あれは‥‥どんな敵でしょうか?」
そう問い掛けるシシリーに、冒険者が一言
「あれはドラゴンだね。ブレスで瞬殺っていうところでしょう」
と冷静に告げる。
「で、どうするの? 君達はどの回廊に向かうんだい?」
と問い掛けられ、ルーシーが一言。
「え‥‥えっと、11番回廊っていうところですが‥‥」
そう告げられると、冒険者は11番回廊を指差した。
そこは、先程の『黒く焼けただれた戦士』が出てきた場所。
「もっとも危険で、そして謎に満ちている回廊。『神珠』と呼ばれている『願いを叶えるオーブ』があるっていう噂なんだけどね。最深部にたどり着いた人は皆無‥‥どうする?」
そう告げられて、一行は静かに外に向かった。
ここまでくるだけでも、十分な冒険であった。
まだまだ、自分達には荷が重い。
そのまま地上までの『安全なルート』を教えてもらうと、一行は得られた宝を換金してパリに戻るのであった。
今日もまた冒険者達が回廊を訪れる。
完全生還率5%の、アビスに。
次に来るのは、どのパーティーでしょうか。
──Fin