●リプレイ本文
●強行突破
──パリ→ノルマン江戸村
最低でも、馬車で移動した場合は2日はかかる距離。
但し、馬車が走っているのは昼間で、夜は危険を回避する理由から馬車は走らない。
日が暮れてから日没までは、馬車は全く走らない。
その時間帯をもし移動できたとするならば、ノルマン江戸村までは最速1日。
もっとも、途中での休息を入れる事も考慮して、約半日は時間のロスが出る。
つまり、どうがんばっても、江戸村に到着するのは31日の昼前。
そこから日が暮れるまでの3刻が、鐘楼建築の為の時間。
はたしてどうなることか‥‥。
──ということで江戸村・宮大工の源さんの家
「いたたたたた‥‥すまねぇなぁ‥‥」
布団に横になって唸っているのは、この江戸村で唯一の『宮大工』の源さん。
「やれやれ。この江戸村には貴方がいるというので、安心してやってきたのですよ‥‥それがまあ‥‥」
まずは先に『のるまん神社』の宮司達に挨拶を行なってきた一行は、そのままこの宮大工の源さんの家にやってきたのであるが。
レオパルド・ブリツィ(ea7890)は呆れたような口調でそう告げる。
「まあそういうな。腰さえやらなかったら、今頃鐘楼は完成していた‥‥イタタタタ」
そう呟いて、ぐったりしている源さん。
「参りましたねぇ‥‥貴方に総監督を御願いしようと思っていたのですけど‥‥」
困った顔でそう告げる薊鬼十郎(ea4004)。
「となるど、ここにいる皆でなんとかするしかないわね‥‥」
昏倒勇花(ea9275)がそう告げると、横に座っている護堂熊夫(eb1964)が腕を組んで肯いている。
「まあ、それもやむをえないでしょう。私に図面を見せて頂けますか?」
そう告げる熊夫に、源さんは図面を手渡す。
──パラッ‥‥
「ふむ。まあ難しいものでははないですが、人手が足りなすぎますね‥‥」
真面目な顔でそう告げる熊夫。
と、その横では勇花が突っ込みを入れたくてうずうずしている模様。
──ガラッ
「人手なら都合付けた。これでどうだ?」
そう入り口の扉を開きつつ告げたのはエグゼ・クエーサー(ea7191)。
彼の背後では、大勢の青年達が、屋台で食事を取っている。
エグゼ・クエーサー(ea7191)は江戸村にやってきて早々に、現地で手伝ってくれる人を募ってみようかと思い炊き出しを開始。
露店でシチューとパンなどを提供して、若い力を募ったらしい。
その匂いと味につられてきた勇士実に12名。
全てこの村と近くの村の人たちらしい。
「それで大体人手は大丈夫のようね。あとは実践あるのみ!!」
鳳美夕(ec0583)がそう叫ぶと、いよいよ作戦が開始された。
──トンテンカントンテンカン
次々と基礎が作られていく。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「うきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
熊夫と勇花が絶叫を上げつつ基礎の石を運んでいく。
巨大な柱は冒険者達の連れてきた馬を使って持ち上げ、そのまま穴の中に立てる。
そして身軽な鬼十郎とレオパルドが柱の上を駆け抜けて、仮組用のロープを締め上げていく。
──ヒュンッ!!
手の届かない所には、レオパルドのペリグリンがロープを咥えて飛来。
おおよその組み込みが終るまでざっと1刻。
のこりは仕上げ、いよいよ鐘楼を釣り上げる作業である。
「炎の精霊よ、彼の者たちに勇気を与えたまえ‥‥」
と、美夕が作業する人たちに次々と『フレイムエリベイション』を発動。
そのまま全員で縄を掴み、てこの原理を応用して鐘楼を鶴上げていく。
「そーーーれぃっ!! ソーーーレイッ!!」
ロープの先には、皆の馬達も繋げられ、いよいよ最後の作業も終了‥‥。
──カァーーーカァーーーー
夕焼け空を飛んでいく鳥。
最後の細かい仕上げが終る頃には、日はすっかり沈んでいった。
●ということで、大晦日だよ江戸村
──江戸村
ザワザワザワザワ
大勢の人たちが、村にやってきている。
大鐘楼の噂を聞きつけて、近くの村人達も『興味本意』で集っていたのである。
「おにーさん、こつちにシチュー2つね」
「こっちはシチュー3つとパン2つ!!」
小料亭エグゼ屋出張所では、今まさにエグゼが大忙し!!
「はいはい、こちらがシチュー2つで、こちらが‥‥」
とまあ、来客に食事を振る舞っている中、鐘突きが始まるまでの時間に、みなは思い思いの事をしていたようである。
──トールギス鍛冶工房
「ふぅーん。なるほどねぇ‥‥」
美夕はこの江戸村にいる鍛冶屋の見学。
噂では、インドゥーラの鍛冶屋の流れをもつ者がいると聞いてきたらしいが、すでにトールギス氏は他界。その技術は弟子達に受け継がれているらしい。
「ええ。トールギス師父には色々と教わりました。このシャクティほど強力ではありませんが、魔法剣を打つ事もできます」
そう告げるクリエム・ディンセルフ。
ディンセルフの名を襲名し、現在は冒険者の為の魔法剣を作成中。
「トールギス師父の作った名刀をまだ越える事は出来ませんけれど‥‥師父の言葉のとおり、必要あれば冒険者に貸与していますよ。それもそうですね‥‥」
と、美夕が手にしている長弓を指差して呟く。
「これは‥‥魔法の弓ですか?」
「ええ。師父の逸品『強弓ケンプファー』ですね。ほかにも色々と‥‥」
と、美夕はしばらくの間、様々な武器に魅了されていった模様。
──茶屋ノルマン亭厨房
「ほう‥‥この調味料はしらないねぇ‥‥」
一方ノルマン亭厨房では、一通りの仕出しを終えたエグゼが休憩がてらノルマン亭にやってきていた。
女将と色々と話をしているうちに、エグゼも興味を示して中にオジャマさせてもらっているらしい。
「ああ、それは付けタレだね。もうかなり長く使っているから‥‥ほら、ああやってね‥‥」
と、炭の上で焼いたウナギを、付けタレにくぐらせて、また炭で焼く。
蒲焼きと呼ばれるものが、大量に作られていた。
「味を見させてもらっていいか?」
「ああ、どうぞ‥‥」
と、出来たての蒲焼きをご飯の上に乗せ、それをエグゼに渡す女将。
──パクッ‥‥
一口目でウナギの豊潤な香りと、パリッとした皮の風味が口の中に広がる。
「こ、これは‥‥ノルマンにはない新たなる料理‥‥広がるぞ、俺の世界‥‥」
と、いっきに平らげたのち、エグゼは滞在中はここで修行をすることとなった。
●そして新年はまもなく‥‥
──鐘楼台
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
静かに響き渡る鐘の音。
ジャパン本国でしか聞く事の出来なかった鐘楼を、江戸村の人々は感極まったかのように感じていた。
「いい音色‥‥魂が洗われていくようです‥‥」
鬼十郎も静かに音をきく。
はて、ちょっとまて、今ここでその音を聞いて感極まっているのは鬼十郎と勇花、熊夫といったジャパン出身冒険者。
その他といえば‥‥エグゼはフランク、レオパルドはビザンチン。
美夕は元々ジャパンだが、今はインドゥーラに帰依している。
まあ、そんな多国籍の人々にも、鐘はよい響で安らぎを与えてくれているのでしょう。
●初詣、妄想伝
──ノルマン神社
そこは、大勢の人たちで混雑している。
新年早朝、一行は初詣にやってきた。
柏手を打ち、静かに頭を下げる鬼十郎。
「今年こそはギュンター君と‥‥む、結ばれますように‥‥!」
そう御願いしているのはいいのですが‥‥。
鬼十郎、声が周囲に届いていますって!!
くすくすと笑う声があちこちから聞こえて来るが、そんなものは関係無しに祈りつづける鬼十郎であったとさ。
●新年、さっそく大慌てで候
──ノルマン神社
ピィーヒャララララ♪〜
神楽が鳴り響き、巫女の葵が華麗に舞う。
ノルマン神社奉納舞は、だれでも参加できる自由な舞。
やがて葵が舞を踊りおえると、奥から鬼十郎が巫女姿で現われる。
「‥‥」
言葉は発せず、静かに、そして笑顔を絶やさない。煩悩を棄てた踊りを、華麗に舞う。
──舞台袖
その鬼十郎の踊りを、影でじっと見ていたのは勇花と熊夫の二人。
「あー、あたしも踊りたかったのよ‥‥」
そう呟く勇花だが、すでに巫女装束に着替えおわっている。
もっとも、その顔に装着されている鉄仮面が、より一層不気味な姿を浮かび上がらせていた。
「まあ‥‥こればかりは仕方がないです‥‥」
「真面目な顔して、そんなこというんじゃないわよっ!!」
──ドン!!
と、勇花が熊夫を突き飛ばす。
その拍子に、熊夫が舞台中央にまで踊り転がっていった。
『次は熊夫さんですか‥‥』
ニコリと微笑むと、鬼十郎はそのまま後ろに下がる。
『あ‥‥あああ‥‥』
動揺している熊夫。
『見られている‥‥大勢の視線が私に注がれている‥‥』
ゆっくりと立上がる熊夫。
そう、彼の心の中に、今、何かが目覚めた!!
「素敵よお客さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
絶叫の中、護堂熊夫ショーが始まった‥‥。
もうね‥‥なにがなんだか‥‥。
──その頃のおみくじ売り場
ガヤガヤとしている一方、こちらはおみくじを販売している。
といっても、ジャパンで売られているようなものではなく、この江戸村独特のものらしい。
「‥‥いい運勢が出ますように‥‥」
祈りつづけて籤を引く鬼十郎。
──────── 運命 ────────────
・案ずるよりも生むが安し
・一か八かは速やかに飛込め
・大切な者を失って大切なものを得る。
・己の信ずるままに行動すると後悔する。
・良き仲間たちと共に歩めばよし
────────────────────────
「‥‥ううう‥‥なんだかわかりずらいなぁ‥‥」
頭を捻る鬼十郎だが、それはまあよしということで。
「では、俺も‥‥」
と、続いてエグゼ。
──────── 運命 ────────────
・良縁が次々と舞い降りてもう大変。
・新しい世界が開けてくるでしょう。
・恐れずに困難に突き進めば、まあなんとか。
・信頼できる『物』のアドバイスは大切に
・良き仲間たちと共に歩めばそこそこによし
────────────────────────
「ふぅん‥‥オレ、結婚しているんだけれどねぇ‥‥」
ああ、そういえば。
「続いてボクも‥‥」
とレオパルド。
──────── 運命 ────────────
・オーラを信じなさい。
・己の実力を信じなさい、そして過信しないよう務めなさい。
・恐れずに困難に突き進むと良し。
・信頼できる『者』のアドバイスは大切に
・悪しき仲間たちと共に歩めば破滅の人生
────────────────────────
「何もかも信用しろという訳では‥‥」
頭を捻るレオパルド。
「では、私も‥‥」
と、続いて熊夫。
──────── 運命 ────────────
・神のみぞ知る運命の年。
・古き友との新しい世界が開けてくるでしょう。
・恐れつつ困難に突き進めば、そこそこなんとか。
・信頼できる友のアドバイスはそこそこに
・良き仲間たちと共に歩めばそこそこによし
────────────────────────
「ノォ〜。全てそこそこな人生に感じてきました」
まあそんなとこだ、悩める中年。
そして最後に美夕が籤を引く。
──────── 運命 ────────────
・愛の為に生きると破滅
・戦いが貴方を待っています。けど、すぐには飛込まないように
・万全な準備が、貴方を幸運に。
・上司の言葉は大切に
・仲間と共に恐れず突き進めばそこそこによし
────────────────────────
「‥‥愛が‥‥愛がない‥‥」
ま、パラディン候補生だしねぇ‥‥
ということで、その後、富くじを買った一行。
結果はまあ、みなさん損せず得せず、鬼十郎のみが150Gという大金をゲットしたのだが、それは復興資金に当てたそうで。
それも良し。
●そして
──オークション会場
「‥‥び、微妙なアイテムばかり‥‥」
「確かにねぇ‥‥」
「全く‥‥どうしてこんなアイテムばかり‥‥」
と、オークション会場の片隅で、エグゼの作った『新作・ノルマン丼』というシチュー丼を食べつつ、オークションに参加している一行。
パリでのオークションとはまた違った趣があり、『20年物の盆栽』とか、『程よく醸された日本酒』とか、じつに不思議なものが溢れています。
「あ、あれは伝説のオーガパワーリング?」
と、美夕が見つけたアイテムだが、それはよくにたアイテムだっただけ。
となみに今回のオークションの目玉は以下のアイテムでした。
・携帯型小型大仏(鈍器としても良し)
・不思議な梅干し(食後、貴方に何かが起こる)
・オレ様の冠(態度が上昇)
・農耕に使えそうな『初級スクロール詰め合わせ』
などなど。
まだまだ日程は残っています。
その間にも、武具の手入れや料理の修練、はては宮村道場での特訓など、皆さんいろいろとがんばっているようですが、記録係は一足おさきにパリに戻りたいと思います。
美味しいシチューも食べた事ですし。
──Fin