●リプレイ本文
虐殺と復讐。繋がる殺戮の連鎖。偽りの善意
主張する正義、それは力を奮う為の欺瞞―
嗚呼、卑しき冒険者
‥‥マジか。
●不可解な事件
──パリ・冒険者酒場『マスカレード』
あいも変わらず店長不在。
店長代理のミストルディンは、カウンターで冒険者達と色々と複雑な話をしていた。
「1年前の‥‥この依頼ねぇ‥‥」
静かにそう呟くと、ミストルディンはテーブルに置かれた依頼書の写しを手に取る。
「ああ。もし知っているのなら教えて欲しい」
そう告げて射るのはルミリア・ザナックス(ea5298)。
その他にもエグゼ・クエーサー(ea7191)やロッド・エルメロイ(eb9943)がその場で情報を欲していたようである。
「どんな事でもいいんだ。この依頼自体、人々からも忘れ去られていた。そんな無念を、せめて晴らしたい‥‥」
そう告げるエグゼ。
「それで、もし、この夫婦惨殺についてのなにか情報があったら、教えて欲しいと思ってやってきたのですが、どうでしょうか?」
ロッドがそう問い掛けると、ミストルディンはしばし思考開始。
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
「ああ、なにか重要な事件があったような‥‥どうだったか‥‥あ、そうそう。丁度その時期、シャルトル南方オーガの軍勢が大量発生していてた時期があってねぇ‥‥その時の流れてきたものという可能性もあるわねぇ‥‥」
そのミストルディンの言葉に、一同は色々と思い出す。
「ああ、あれからもう1年半か‥‥なるほどな」
カリバーンの剣士フィーン達がオーガの軍勢と戦っていたのは、そのちょっと後の話。
ギルドの報告書には、その当時の報告書がしっかりと存在している。
それらをいま1度思い出し、一行はその当時のオーガの軍勢がシャルトルからこちらに流れてきた者とある程度断定し、行動を開始するが。
●オーガの軍勢再び
──パリ郊外のとある森
地図に記されている場所は、シャルトルに向かう街道から分岐している場所。
途中までは街道で、そのあとは街道から外れて獣道をゆっくりと移動する。
「ふぅん‥‥成る程ねぇ」
カールス・フィッシャー(eb2419)が獣道と周囲の森をじっと眺め、ある結論に達した。
「判るか‥‥」
キサラ・ブレンファード(ea5796)がカールスにそう告げる。
「ああ、皆に伝えておく。この先は『オーガのテリトリー』に入る。この周囲の森の状態とこの道の状態で、それは確認できた」
そう告げるカールスに細くして、キサラもさらに説明。
「この先の、ああ、あの岩あたりからは、奴等のテリトリー。侵入者に対しての攻撃は避けられないだろう」
そう告げるキサラ。
「なら、これは必要ないな‥‥」
と、ルミリアは『天使の羽のひとひら』をバックバックにしまい込む。
(あれ‥‥これってヤバイか‥‥)
そう呟いたのは、荷物の中の『ウール入り防寒服一式』。
それって毛皮、すなわち皮製品ゆえ、戒律上は『汚れている存在』。ゆえに、持っているといけない。
「ああ、そうだよな。五戒も遵守しないとな‥‥」
そう横で呟くフィリックス・トゥルム(ec0139)。
「フィリックス、貴殿が自分を『ナイト』と告げていた事も、すでに戒律違反だな‥‥この2つの件、後日フィームどのに佗びを入れるとしよう」
そう告げると、フィリックスも静かに肯く。
まあ、簡単に説明すると、パラディンには遵守しなくてはならない5つの戒律が存在する。
・五戒
1.不殺生戒(ふせっしょうかい)
生き物(悪魔、アンデット等を除く)を殺してはいけない。
但しパラディンの場合、その存在が悪であり、心改めない限りは、その対象は『不殺生戒』にはあてはまらず。
2.不偸盗戒(ふちゅうとうかい)
他人のものを不当に盗んではいけない。
3.不邪淫戒(ふじゃいんかい)
自分の妻(または夫)以外と交わってはいけない。
女性パラディンの場合は、さらに女性であることを棄て、仮面を装着しなくてはならない。
4.不妄語戒(ふもうごかい)
嘘をついてはいけない。
5.不飲酒戒(ふおんじゅかい)
酒を飲んではいけない
とまあ、かなり厳しい。
ルミリアの場合は、これらではない宗教的戒律の『皮製品は不浄の存在ゆえ、身につけてはいけない』にあてはまるが、フィリックスの場合は『不妄語戒』に当てはまる。
ま、阿修羅神がどう判断を下すのか、それは神のみぞ知るということで‥‥。
「戦闘になるのなら致し方ない‥‥」
「それに、依頼人の住んでいる村も示された夫婦の家も、この先です。いずれにしても、向かわないと行けないことは変わりません」
デニム・シュタインバーグ(eb0346)がそう告げると、一行は静かに肯く。
「でも、この辺りには大型の生命体は存在しませんわ。そのような呼吸は感じられませんね」
と告げるのはフォルテュネ・オレアリス(ec0501)。
既にブレスセンサーで周囲を警戒していたのは、実に魔法使いらしい。
「では、目的の家に急ぎましょう‥‥」
フォルテュネの言葉で、一行は移動を開始した。
その道中だが、キサラとカールスの二人は、あるものに気が付いた。
それは、オーガ達の痕跡が、何者かによって綺麗に隠されていた事である。
最初に見つけた痕跡は明らかにオーガ達の集落の移動跡。だが、道中では、オーガ達のいる事を気付かれないよう、巧妙にそれらは隠蔽していた跡が在った。
その事を一行に告げ、さらに慎重に事を進める一同であった。
●襲撃
──依頼人の村
少し寂れた村落。
人が住んでいる雰囲気はあるが、人の気配はない。
あちこちの家からは炊煙が上り、人間が住んでいる事を示していた。
──コンコン
軽くドアをノックするエグゼ。
「すいません。この辺りで、一年半ほど前にオーガか何かに襲われた家があると聞いて伺ったのですが‥‥」
その言葉に、ドアの向うから声がする。
「そ‥‥そんなものはありませんよ‥‥このあたりは、何もない平和な村ですから‥‥」
弱々しく女性の声が聞こえてくる。
「ですが、ギルドの方に‥‥」
そうエグゼが告げると、キサラがエグゼの肩を叩き、頭を左右に振る。
「一体‥‥」
と告げたとき、カールスが道の前方を指差した。
そしてそのまま先に進み、村から出ていくと、一行は木陰の、村から見えない位置にあった古い廃屋まで移動し、そこで休憩を取る。
「場所的には、ここが例の夫婦のいた場所ですね‥‥」
デニムがそう告げて、廃屋の手前で冥福を祈る。
そしてキサラが白僧侶として御経を唱え、静かに全員が手をあわせる。
その後、廃屋を少し片付けて、ようやく人心地つく冒険者一行。
「一体何があったんだ?」
「オーガだ。あの村の彼方此方にオーガの気配と痕跡がある。一つ二つではない‥‥」
カールスの言葉に、キサラも肯く。
「ということは、あの村自体がオーガに囚われていると?」
フィリックスの問いに、カールスはまだ断定できない。
「考えたくない事だが‥‥オーガが、なんらかの理由で『人間を使役』している可能性がある。となると、使役されてる人間たちの数と安全を確認してからでないと‥‥」
カールスの言葉に、一行はしばし作戦を考える。
「恐らく、ここにいるでしょうオーガの群れを統治しているのは数体のオーグラ。彼等は人間の肉を好んで食べたり、まあ、色々と‥‥するので。彼等がここを支配し、オーガ達が人間を監視していると考えれば、この村の状況は納得がいきますね」
ロッドがそう皆に意見を告げる。
そして一行は、最後の打ち合わせを行うと、静かに夜を待った。
●偵察による報告
──村の外・廃屋
夜がふける。
ロッドとキサラ、そして護衛のエグゼがゆっくりと低い体勢で村に向かう。
物音は出さず、可能な限り静かに。
そして村外れに移動し、建物の影に向かうと、ロッドがスクロールを開く。
──フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
静かにブレスセンサーを発動させるロッド。
そして、この村の呼吸の数を調べる。
・人間サイズ、安定した呼吸が18
・大きな人間サイズ、安定した呼吸が11
・かなり大きいサイズ、荒々しい呼吸が4
・少し小さい人間サイズ、荒々しい呼吸が4
・人間サイズ、睡眠状態と思われる呼吸が19
「成る程。なら、そのかなり大きい人間サイズの呼吸がある建物を調べられるか?」
「ええ‥‥」
と告げて、次にロッドがエックスレイビジョンのスクロールを発動させる。
そのまま呼吸の在った建物の壁を透視すると。そこは酒池肉林の世界。
オーグラが人間の女性を背後から嬲り、酒を食らい、肉を喰らう。
そんな光景が、ロッドの目に入った‥‥。
「酷い‥‥こんなこと‥‥」
静かにその光景を報告すると、エグゼ達は1度廃屋に戻っていった。
●襲撃
──オーガに支配された村
偵察部隊の報告を受けて、一行はまず村の奪回を考えた。
一番早く方法は、指揮系統の断絶。
現在、女性を嬲っているオーグラ4体がおそらくそうであるとおもうが、その女性達自身が人質となってしまうので、うかつに手を出すことは出来ない。
そのため、オーグラ達が寝静まるまで時間を待ち、そこからの襲撃という事で話は付いた。
──ということで、オーグラの小屋
静かに小屋に忍び寄る。
フォルテュネのブレスセンサーで、内部の者たちの呼吸を確認。
どうやら睡眠に入っているらしい事を確認すると、静かに開きっぱなしの窓から内部をそっと確認。
手前の部屋には、全裸の女性が4名。
そしてその向こうで、いびきをかいて眠っているオーグラが4人。
どうやら、この小屋にはそれ以外は存在しない。
「じゃあ‥‥いくか‥‥」
エグゼはバックアップとして背後、つまり他の小屋からオーガ達が出てこないかを確認。
突入するのはカールス、ルミリア、フィリックスの三名。
背後ではエグゼとデニム、キサラが周囲を警戒し、ロッドとフォルテュネが魔法の援護スタンバイ。
そして突入と同時に、作戦は開始された。
素早く囚われた女性達の鎖を解き放ったのは、ルミリアの一撃。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォッ
壁に繋がっている鎖を、扇状に壁ごと破壊する。
そして女性達は外のデニムとエグゼが外に向かって誘導。
──ウ‥‥ガ‥‥ガガガガガッ
その爆音で目を醒ますオーグラ。
「悪いが。人間にたいして害をなす存在は、阿修羅が許しはしない‥‥だが、もし貴様達が改心するのなら、まだやり直すチャンスをやる‥‥」
フィリックスはそう叫ぶ。
だが、人間の言葉も判らないオーグラ達には、まさに雑音。
彼等は本能のままに貪り、食らい、犯す。
それはすなわち人間にとっての害ならば。
「ごちゃごちゃうるせぇ、掛かってきやがれ!!」
そのカールスの叫びと同時に、内部は乱戦状態に突入。
さらに外でも、近くの小屋から走ってきたオーガに向かって、デニムとエグゼが武器を構えた!
──ドゴォッ!!
敵オーガの攻撃をカウンターで躱わしつつ、その武器を一撃で破壊するエグゼ。
「悪いが、遊んでいる暇はないんだ。殺るのなら、死ぬ気で掛かってこい。命が惜しければ、とっとと逃げやがれ」
そのエグゼの気迫と、横で静かに武器を構えたデニムの殺気で、オーガ達は後ろに退きはじめる。
──ギィィィィィィィィィィィッ
と、静かに扉が開く。
返り血を浴びたカールスとフィリックス、ルミリアの3名が『無傷』で生還。
「さて、このオーガ達にも話をしておこう。我達は危害を加えるオーガどもは制裁する。しかし、貴様達が人間を襲わず、静かに暮らすというのならば‥‥」
──ドゴォッ
そのルミリアの言葉の最中、オーガはルミリアに向かって一撃を叩き込む。
だが、それは横で立っていたデニムが受け止めた。
まるで、そうなることを判っていたかの用に冷静にルミリア。
「交渉決裂。阿修羅の名において、貴様達を粛正対象と見なす!! 罪状は、人間を使役し、辱めた!!」
その言葉の直後、さらに乱戦状態に突入。
1刻後、その場にはオーガの死体が大量に転がっていた。
そのまま囚われていた人々も解放すると、一行は近くの村まで彼等を避難誘導。
そして、静かにパリに戻っていった‥‥。
あとには、オーガ達の死体が残された村が一つ。
それは後日、村の人たちが何とかしてくれるだろう。
ということで、一行は、静かにパリへと戻っていった。
──Fin