竜の住まう地〜滅んだ種〜
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:01月31日〜02月12日
リプレイ公開日:2008年02月06日
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●オープニング
──事件の冒頭
人気の無い静かな村。
かつて、そこには『竜の民』と呼ばれる古き民が存在した。
だが、今はそこには誰も居ない。
竜の民の血を受け継ぎしものは、もはや、この世界には二人しかいないのだろうか‥‥。
人気の無い静かな村。
かつて、そこには『精霊の民』と呼ばれる古き民が存在した。
だが、今はそこには誰も居ない。
『精霊の民』は、もうこの世界には存在しない。
「で、ここが異端の地ということか‥‥やれやれ」
静かにそう告げているのは、黒の異端審問官アザートゥス。
「ええ。どうやらそのようですね。で、目当てのものは?」
そう告げる、黒衣の魔導師。
「ああ、この墓だろうさ‥‥どれ!!」
──ガシィッ
と、村外れにある墓を蹴飛ばして倒すアザートゥス。
そこには『フィーン』という名前が記されていた。
「在ったか‥‥件の紋章は?」
「こいつでしょう。死体には、こんなものは必要ありませんから‥‥むしろ、我々にとって必要なものですからねぇ‥‥」
そう告げると、黒衣の魔導師は『カリバーンの紋章』の刻まれたペンダントを死体から奪い取り、そのままそこから立ち去った。
「で、あとは何をどうしたらいいんだ?」
そう魔導師に問い掛けるアザートゥス。
「古き血と古の契約‥‥『民の生き残り』を探して欲しい‥‥異端なる者だ‥‥君の管轄だろう?」
そう告げられて、アザートゥスは静かに頭を下げた。
●シィ
──シャルトル・旧プロスト領
領主のいない領地。
現在の管轄は、ヨハネス領のエルハンスト・ヨハネス。
そこから少し離れた『剣士の居留地』に、シィは避難していた。
プロスト城下街で、シィはなにものかに襲われた。
その窮地を救ってくれたのは、マスター・メイス。
そしてその『何者か』から逃れるように、シィはマスター・メイスと共に居留地にやってきていた。
そして其の日から、シィはなにかに脅える毎日を送っていた。
今はもういない、村の人たち。
守護していた竜も滅び、『竜の民』としての役目も失った。
今までの生き方が、生きていたという事実が総べて失われたシィには、周囲の全てが不安の塊であった。
せめて、仲間が一人でもいてくれれば‥‥。
●リプレイ本文
●たった一つの小さな命
──パリ・冒険者酒場マスカレード
「うーーーん。アルフレッドさん‥‥店長は今不在で、私が代理人なんだけとれ゛‥‥」
いつもの冒険者酒場。
あいかわらずのんびりと写本を呼んでいるクロムウェルや常連冒険者はおいといて。
カウンターでそういった話をしているのはミストルディンと薊鬼十郎(ea4004)、ガブリエル・プリメーラ(ea1671)、グレン・アドミラル(eb9112)の4名。
「なんとか城内に侵入する経路でもあれば。どこかないですか?」
「もしくは、内部に入りこむ為のつてとか‥‥」
ガブリエルと鬼十郎がそうミストルディンに問い掛けるが、残念な事にミストルディンの返事はノーの一言。
「地下迷宮を経由してでも構いません。秘密裏に潜入出来ませんか?」
再度そう別口で問い掛けるが、あの迷宮自体外部からの侵入を考慮して作られているので、100%不可。
「残念だけれど。お役に立てなくてごめんなさい」
あら、ミストルディンでも無理はあったのね。
ということで、一行はアンリ・フィルス(eb4667)の紹介で、冒険者街にあるもふもふの工房に急いで向かったとさ。
──冒険者街・鍛冶工房もふもふ
「そんなぁ‥‥」
泣きそうな声でそう告げているのは鬼十郎。
せっかくやってきたもふもふの家。
だが、入り口には一枚の貼り紙が。
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臨時休業
しばらく留守にするで。
急用の人は、近くの『びっくり鈍器』にたのむか、もしくは月末にでもきておくれや。
もふもふ
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「‥‥こ、これは困りましたねぇ‥‥」
さすがのガブリエルも困った表情。
「もふもふさんだけが頼みの綱でしたのに‥‥」
「その、もふもふというのは、一体なにものなんだ?」
と、問い掛けるのはグレン。
「まあ、鍛冶屋というかなんでもやというか‥‥へんなしふしふですね」
ああっ、鬼十郎、なんて的をえた解答を。
そして一行は困りはてて、とりあえずシャルトルに向かう事となった。
●しぃの心
──剣士の居住地
フライングブルームで一気に移動、時間を短縮しようと考えてやってきたのはフィーネ・オレアリス(eb3529)。
そのままマスター・メイスと会見を行うと、簡単に挨拶を行ない、ことの全てを説明してもらっていた。
「シィを襲ったのは正体が不明。騎士章も紋章もなにもない、漆黒のフードローブを身に纏った存在。かなりの手練れの剣士だったこと、そして魔法剣士っぽいやつもいたな」
マスター・メイスはそう告げると、静かにお茶を飲む。
「魔法剣士?」
「ああ。神聖魔法ではない、精霊魔法を使ってくる存在。オーラではない。すくなくとも、このノルマンの人間では、そんなものは存在はしていなかっただろう。となると、新しくやってきたものか、上位転職者か‥‥いずれかだな」
その言葉を聞くと、フィーネはしばし考える。
「まさか、ジャパンの志士が?」
「いや、ノルマンとジャパンは国交がある。冒険者以外の志士がなにかをしているとなると、それはかなり問題になる。ということから、志士という可能性は消してかまわないと思う」
「とすると‥‥」
「ああ、ノルマン内部の、それも『元上位魔術師』がファイターや騎士となった場合。こっちの可能性のほうが高いが‥‥そうなると、絞りきれない」
騎士の場合は国の専門機関にお伺いを立てればすぐに調べが付く。
だが、ファイターとなると話は別。
ぶっちゃけ、魔法使いだろうがなんだろうが、『戦闘に熟知している教官、師範』を見付け出して弟子入りすればいい。
見習いの期間はあるものの、それがもっとも早い道。
そうなると、もう特定は不可能。
「今後、色々と対処しなくてはならないな‥‥」
「了解しました。それで、シィさんはどちらに?」
「この先、剣士のみに入る事の許された『霧の湖畔』。そこで、マスター・オズと共にある」
そう告げられ、フィーネは一言。
「会えますか?」
「まだ心が折れ、傷ついている。今はしばらく、そっとしてあげてください‥‥」
と告げられ、フィーネはとりあえず会う事を断念した。
●強行スケジュール
──江戸村にとんで候
ぐねぐねと曲がっているシャルトル街道。
実際、プロスト辺境伯領中央までは馬車で3日。
江戸村まででも最短2日という行程、なんとアンリは空飛ぶ木臼で直線上にショートカット。
翌日の朝方には江戸村に到着という離れ業をやってのけた。
そのままさらにトールギス鍛冶工房を訪れると、まずはクリエムとお話。
「‥‥フィーンさんのお墓参りですか‥‥」
静かに視線を落としてそう告げるクリエム。
「うむ、できれば明日の早朝。準備をしておいて欲しいのでござるが、ご予定はござるか?」
そう問い掛けるアンリに、奥からやってきた『もふもふ』が静かに話を始める。
「仕事がつまっていてあかんなー」
「うぉあっ!! もふもふ殿、どうしてここに?」
あまりにも計算外の展開に、アンリも驚く。
「なんや? わて今月はこっちで仕事や。家のほうにも貼り紙はっておいたで」
と告げる。
「ああ、そうでござるか。ならもふもふ殿、拙者の頼みをきいてほしいでござる」
そう告げて、アンリが頼み込んだのは『プロスト城潜入作戦』。
「ああ、かまわへんけど、明日にしてや。このあとで、わて、セイルはんたちの注文の品の素体つくるんや」
と、アンリに告げる。
「では、クリエム殿も?」
「ええ。セイルさん達はいま、こっちに向かっているそうです。そっちの作業が終って、まだ残っている仕事もあります。それを全て終らせたら、改めて伺います‥‥」
そう告げられて、アンリはしばし仲間たちがこっちに合流するのを待っていた。
●しぃの心
──剣士の居留地
道中、江戸村でアンリと合流した一行は、そのまま1度剣士の居留地にやってきた。
そこで先行隊であるフィーネとも合流。
ここまでのいきさつや情報交換を行うとまずは今後のことについてどうするか相談を開始。
「しぃ殿はまだこの『霧の湖畔』の向こう。そして今だこころは晴れず‥‥いまはマスター・オズのみが唯一心を開いている。で、とらわれたもんたを解放し、しぃの元に連れてくる。ここまでは問題はないが、しぃが一緒に、安全な場所に居るということを『もんた』がはたして信じてくれるか‥‥」
ヴィルジール・ヴィノア(ec0235)がそう皆に話を始める。
「とにかく、しぃさんの安全はここで守れますわ。けれど、もんたさんとギュンター君を救出してこないと、ここから先には‥‥」
ガブリエルの言葉に、一同は静かに肯く。
「当初の予定通り、プロスト城に突入。方法は『もふもふさん』の繋ぎを信じて入るか、もしくは『もふもふさんの薬』を使って‥‥」
そうグレンが告げるが、同行していたもふもふは一言。
「もう薬、一滴もあらへんで」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
と驚く鬼十郎。
「まったくないのですか?」
フィーネもそう問い掛けるが、もふもふは静かに肯く。
「ほんまや。ついでにいうたら、今までのわての作った魔法剣もなにもかもつぶしてもた。最強の一振りをつくったんや‥‥」
と告げて、さらに一言。
「あ、それと、プロスト城に、最近は荷物いれてへんから、入れるかどうかわからんで? 注文もうけてへんし‥‥」
さらに事態は悪化。
それでも、今は信じて進むしかない。
「作戦決行は明日。少しでも危険と判断したら中止という方向で頼むでござるよ」
「シィさんの守りは、私とアンリで。それに紋章剣士の方も次々とやってきていますし、なんとかなるのでは‥‥」
アンリとフィーネがそう告げる。
ということで、いよいよ作戦開始となったのですが‥‥。
●危険は覚悟
──プロスト城
現在、プロスト領はエルハンスト・ヨハネス卿によって統治管理されている。
プロスト城もまた、警護の為に外部からの来城客を全て断わっている状況であった。
「あのー、すんません。鍛冶工房もふもふやけど、先日納入した武具に、一部別の所の奴が紛れこんでもーたんで、ちょっと調べたいんやけれど‥‥」
演技掛かった口調で、入り口の警備員に告げるもふもふ。
「ああ、本日はヨハネス卿が不在の為、なかに入ることは出来ない。また後日あらためてくるのだな‥‥」
「あかんわー、それはあかん。明日にはあっちの奴も納入せんとならへん。そこをなんとか‥‥」
そう食い下がるもふもふだが。
「駄目といったら駄目だ。とっとと帰れ!!」
と、あっさりとお払い箱状態。
そのまま仲間たちの所に戻って報告するが、どうもうまくいかない。
その警備の隙をうかがって侵入しようとも考えたが、どこもがっちりと警備がいて、隙がなかなか窺えない状態である。
「ここまで必要以上に警備が置かれていると、なかで何かが行なわれているようなかんじがしますね‥‥」
と告げるグレン。
「見つからないように、こっそりと侵入も難しいですか‥‥」
ずっと監視を調べていた鬼十郎でも無理と判断。
「先程からブレスセンサーで監視の場所を調べていたのですが‥‥どうも、外部の巡回、位置を確定しての監視と、あわせて10人前後。建物の中までは判りませんが、外でそれだけだと、中にはどれぐらいの人がいるのか‥‥」
ヴィルジールが皆に告げる。
「あとは、時間一杯まで隙を窺うという方向しかありませんか‥‥」
ということで、一行は最後まで隙を伺っていた。
だが、どうも最終日まで相手も大きなな動きを見せなかった為、侵入は断念‥‥。
●真実とは
──とある場所・剣士フィーンの墓
そこは、見るも無残な状態であった。
おそらくはフィーンが埋葬されていたのであろうその場所は、何者かの手によって暴かれ、そして死体は獣が食いらかしたようである。
残った部分が腐敗し、腐臭が漂う。
その場所に、アンリはやってきていた。
じっと荒れた墓を直し、静かに冥福を祈る。
遺体は残っていない為、別の場所に弔う事も出来ない。
「こんな状態では‥‥無念じゃったろうに‥‥」
人知れず死に、そして埋められる。
まるで、冒険者の末路を示しているかのように、アンリは感じていた。
もっと生きたかっただろう。
まだまだ、色々とやらなければならなかっただろう。
だが、それらを総て奪われ、そして死んだフィーン。
残された遺品は、アンリの持つ『カリバーンの柄』のみ。
剣士カリバーンの7武具は、どこにも見当たらない。
「何者かが奪ったか? それともここにはなかったのか‥‥」
そう考えると、アンリは1度パリに戻ることにした。
探し出すにも、まったく情報がないのである‥‥。
●そしてパリ
──冒険者酒場マスカレード
「シィさんから、皆さんにご心配を御掛けしてすみませんって‥‥」
フィーネが合流直後にそう皆に告げる。
あの後で、シィはようやく人前に姿を現わした。
フィーネとアンリ、二人にお礼を告げて、ゆっくりと今までに起こっていた事を説明しようとしていたらしい。
だが、何かを告げようとすると嘔吐に見舞われ、そのまま何も語れなくなった。
思い出す事も苦しいらしい。
兎に角、今回は新しい手掛りはなにもなく、一行は解散となった。
エルハンスト・ヨハネス‥‥。
その正体は、果たして白か、黒か‥‥
そしてプロスト辺境伯領の運命は‥‥。
──Fin