●リプレイ本文
●奇跡を信じて
──冒険者酒場・マスカレード
そこには、大勢の冒険者が集っている。
全て、これから始まる最後の作戦を成功させるために。
「ということで、これはノリアさんに貸すわね」
そう告げて、セブンリークブーツをノリア・カサンドラ(ea1558)に手渡すのはヘルヴォール・ルディア(ea0828)。
「確かにお預かりします。と、私も先に出かけて準備したほうがいいかしら?」
そう集っているメンバーに問い掛けるノリア。
「ちょっとまってくれ。俺も一緒に‥‥」
●聖なるものたちに感謝を込めて
──サン・ドニ修道院
「‥‥」
礼拝堂で静かに祈りを捧げているのはクリス・ラインハルト(ea2004)とウィル・ウィム(ea1924)の二人。
ウィルの持つ『アイのロザリオ』。
そのもう一つと、シスター・アイの口ずさんでいた歌。
それらを求めて、アイちゃんの最後の家であるサン・ドニ修道院を訪れたクリスとウィルは、まず最初に礼拝堂でセーラに祈りを捧げていた。
「ご苦労様です。クリスさん、そしてウィル殿」
にこりと微笑みつつ、シスター・アンジェラスが二人の元に歩いてくる。
そしてそのまま3人は、院長室に移動。
「シスター・アンジェラス殿。この『アイのロザリオ』のもう一つを探しているのです。何処かに心当りはありませんか?」
ウィルがそう問い掛ける。
「それと、アイちゃんが口ずさんでいた歌。冒険者から習った『お父さんが奏で、お母さんが唄っていた歌』を探しているんです!! それがないと、アイちゃんの魂は解放されないのです‥‥」
少し涙ぐみつつ、クリスがそう力説。
と、少し考えてから、シスターは一言『ちょっと待っていてください』と告げて部屋を出る。
──そして10分後
「これがシスター・アイの形見です。求めているのは、こちらでしょうか?」
そう告げられて、シスター・アンジェラスが二人に見せた一つのロザリオ。
それはまさに、ウィルが持っているものと同じデザイン。
少し大きいソレは、どうやら大人が身につけていたものらしい。
「これです‥‥ね。間違いありません」
そっとそれを手に取ると、ウィルはなにかロザリオが語りかけてきたような感覚を感じていた。
「‥‥これです。なにかこう‥‥優しい気持ちが流れてきます‥‥」
そう告げると、シスター・アンジェラスは静かに肯いて、二人を礼拝堂に案内した。
──ギィィィィィッ
と、扉が開かれる。
そこには、聖歌隊が静かに立っていた。
そしてクリスとウィルが礼拝堂内に入ると、静かにとある歌を歌いはじめた。
それは、おそらくはシスター・アイの口ずさんでいた歌。
それはいつのまにか、このサン・ドニ修道院の中で流行し、殆どのシスターがそれを歌えるようになっていた。
暖かく、そして優しい。
相手の気持ちを思いやり、慈しむ。
そんな優しい歌が礼拝堂に広がっていった。
──ツツ‥‥
と、クリスの頬に涙が浮ぶ。
横でじっと聞いていたウィルの頬にも、一筋の涙が流れていった。
「す‥‥凄い‥‥アイちゃんの歌。ちゃんと、みんな覚えていてくれているんです。アイちゃん‥‥聞こえていますか。みんな、アイちゃんの事、ちゃんと覚えているんですよ‥‥」
そう呟くクリス。
そしてウィルもまた、胸許のロザリオをぎゅっと握り締めた。
「急ぎましょう。早くアイちゃんの魂を解放してあげないと‥‥」
そう告げて、二人はシスター達にお礼を告げると、歌を教えてもらい急いでシャルトルに向かった。
●タロンよいとこ1度はおいで
──某タロン寺院
静かな建物。
その中央にある礼拝堂。
そこで、ノリアは静かに神に祈りを捧げている。
その側には、ノリアの護衛として付いてきているパラディンのマグナス・ダイモス(ec0128)の姿もあった。
「実に感心です。シスター・ノリア。貴方に神の加護があらんことを‥‥」
と告げるのは、この教会の最高神父『ファザー・センイッチ』。
「ありがとうございます。さて、ファザー・センイッチ。実はお話が‥‥」
と告げると、ノリアは今回ここにきた理由を簡潔に告げる。
全てはあのヘルメスを倒す為。
悪魔と戦う為の『切り札』を借り受けに、ここにやってきていたのである。
「‥‥これを‥‥」
そう告げて、ファザー・センイッチがノリアに手渡したものは、一冊の『黒い聖書』。
又の名を『エナッツの書』。
「これは、この寺院に伝わっている対悪魔用聖典‥‥確かにお預かりします」
そう告げると、ノリアは静かに頭を下げる。
「では‥‥」
そう告げて頭を下げると、ノリアはマグナスと友に、目的地へと向かっていった。
●対悪魔戦における必勝パターンの解析
──シャルトル・ミハイル研究所
パリではもふもふに会えなかった。
そりゃそーだ、もふもふは現在江戸村に居て。
まあそんなことはさておいて。
ラシュディア・バルトン(ea4107)はミハイル研究所を訪れて、読み残しや解析途中の様々な文献を広げていた。
目的は色々とあるが、聖劍カリバーンの記述や石化してた時のシャーリィさんの石版等々。
現在から過去に至る研究所の文献の中で、悪魔・魔法陣対策になり得るものを拾っていくつもりである。
「カリバーンの最終形態と‥‥鎧と籠手、兜? えーーい、竜の民の紋章文字なんて解読できるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
と絶叫を上げつつ、それはまた別の機会につかえるということで『ラシュディア専用棚』に保存。
「シャーリィの石版の‥‥と、ふむふむ‥‥」
静かに石版を読みつつ、外に出て行くラシュディア。
「あ、あの‥‥ラシュディアさん、お茶が‥‥」
とシャーリィが告げるも、そのまま無視して外に出る。
そして広い敷地のど真ん中に立つと、外れにおいてある『廃棄処分用石碑』をじっと睨みつける。
──ゴトッ
石版を大地に置くと、そこに記されている文字を解析。
ゆっくりと複雑な印を一つ一つ解読し、さらに詠唱を開始。
「大地と大気、炎と水。4つの偉大なる精霊に告げる。我、全ての理を解き明かし、今、一つの力を求めん‥‥この手に宿れ、精霊の輝き!!」
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
やがて、その手に4精霊の輝きが収束する。
そして目標に向かって発動させようとして、そして止まった‥‥。
──プスン‥‥
「ふぅ‥‥これが4大精霊合成魔術か‥‥」
発動しそうになったのを止めたのではない。
ラシュの魔力が、『イクスティンクション』の発動に足りないのである。
加えるならば、この魔法は着弾点はまず消滅。
そしてその周囲直径100mに『精霊の嵐』が渦巻き、消滅降下によって生み出された魔法エネルギーによって、かなり致命的なダメージを受ける‥‥はず。
「ええっと‥‥これは危険だからと‥‥」
再びそれを専用棚に戻してくると、そこでラシュはふと実験。
「ああ、この前の『ロイ教授』の対悪魔用結界と、この魔法を組み合わせて‥‥と‥‥つまり‥‥」
そのまま、ラシュディアは時間の許す限り魔法解読を開始。
──そして
「‥‥ラシュディア‥‥俺を殺す気か?」
こめかみをヒクヒクとさせてそう呟くカンター・フスク(ea5283)。
薬師ラビィの元から『最後の魔法のスープ』を受け取って、カンターは一路ラシュディアの元にやってきていた。
そして中庭で魔法の修練をして、そして暴発した魔法がカンターの真横を過ぎ去っていったとき、そうカンターは呟いていた。
「あ、ああ、大丈夫。今のは『ただの暴発した魔力の塊』だと思う‥‥」
──スパァァァァァァァァァァァァン
激しく一撃を叩き込むンター。
「お前の暴発は、人を殺せるからやめんかぁぁぁぁぁぁぁ」
と叫んだのかは定かではないが。
そして、ラシュディアとカンターは目的地へと向かっていった。
●奇跡を起こす
──シャルトル・ノートルダム大聖堂
荘厳かつ厳粛な空気が流れている大聖堂。
その中央で、ジョセフ・ギールケ(ea2165)とセイル・ファースト(eb8642)の二人は、静かに周囲を見渡していた。
ここに来た理由。
それは、この大聖堂に預けられている『神珠』を受け取る為。
対ヘルメス戦での最後の切り札の一つを得る為に、二人はここにやってきていた。
「これが、お預かりしていた『神珠』です‥‥」
そう告げつつ、一つの箱をそっとセイルに手渡すシスター。
「ああ、確かに‥‥では‥‥」
「お気をつけて。貴方に、セーラの加護があらんことを‥‥」
そう告げると、シスターは二人を祝福した。
──さらに超高速でノルマン江戸村
恐らくは三笠と入れ違いで到着したジョセフとセイルの二人。
ちなみにここを訪れた理由とは。
「ということで、わいと、ここのクリエムさんと、このロックフェラーの資料を元に、3人で武器つくったるで」
と、先に報告を受けてやってきていた『もふもふ』が、セイルに告げる。
「‥‥っていうか、なんだおい、随分と豪華な組み合わせやな‥‥って、うつっちまうだろーが!!!」
もふもふの口調が写るセイル。
「刀身はこのわいが」
「柄ごしらえと魔法ギミックについては、ロックさんの手法でこの私が」
と告げと、早速もふもふは魔法炉に火をくべて、近くに置いてあった鉱石を次々と魔法炉に放り込む。
「出来上がりまで最速で1日。それまで時間でもつぶしてきいや」
と、そのまま工房に籠ってしまった二人を見送り、ジョセフとセイルの二人はしばしこの場で時間潰し。
──そして夕刻
トールギス鍛冶工房にたどり着いたセイルは、瞳をぱちくりさせて狼狽していた。
「‥‥どこのどいつだ? こんな武器作りやがったのは‥‥」
そう呟くセイル。
手渡された武器は、刃渡り1m、柄1m、刃幅20cmという不格好なバスターソード。
すでにバスターとよんでいいのかさえ難しい。
「何をいう。このわいの最高傑作。ジャパンの斬馬刀とバスタードソードの利点を組み込み、神代の力を封じ込めた最強剣。名付けて『ザンバスター1号』。どや?」
なにをふざけた名前を。
「まあ、せ、セイルにはにあっないそう‥‥ぷぷぷ‥‥アーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」
笑いを堪えていたのだが限界を突破したジョセフ。
──キラーン
「そうか‥‥なら、さっそく試し切りといくか。ジョセフ、、今生、言い残したいことはあるか?」
ああ、セイルの目が座っている。
ということで、なんだかんだで二人は、急ぎ目的地であるニライ城へと向かっていったとさ。
●古の剣
──シャルトル・ノートルダム大聖堂
静かに冥福を祈る。
そこにはエムロードの墓、そしてこの地に眠っているであろうアサシンガールズの墓が並んでいた。
(エムロード‥‥貴方が最後に届けたかったもの。それを私が、この拳で届けてあげる)
グッと拳を握り締めると、ノリアは静かに瞳を明ける。
その隣では、マグナスもまた祈りを捧げていた。
「阿修羅の人にも冥福を祈ってもらえるなんて‥‥」
「哀しい魂に祈りを告げるのは、どの神も一緒ですよ‥‥」
と告げ、二人はそのまま大聖堂へ。
中では、聖ヨハン大司教が静かに二人を待っていた。
「エムロードの残した剣。戦いに使われ、かなり傷んでいたものですが‥‥トールギス鍛冶工房に修復は御願いしてありました‥‥どうぞ」
それは、以前見た剣と形状が変わっていた。
けれど、ノリアは、それが『本物』であることを感じた。
「エムロードの魂の武具、確かにお預かりしました‥‥それではっ!!」
そう告げると、ノリアとマグナスは走った。
エムロード達の魂を解放する為に。
●剣士と聖戦士
──ノルマン江戸村
「‥‥これが、マイスター・トールギスの最高傑作ですか‥‥」
三笠明信(ea1628)は震える手で、その剣を手に取る。
ずっしりと重く、そして危険な感覚を持つ剣。
「はい。トールギスの5聖剣の一つ、ウィングバスター。必要なのでしょう?」
クリエムがそう告げつつ、三笠にニコリと微笑む。
「ええ。破滅の魔法陣、そしてヘルメス。最後の戦いには必要不可欠。では。確かにお預かりします‥‥」
そう頭を下げると、三笠はすぐさま次の場所へと向かった。
──ということで、剣士の居留地
「ふふん。まだまだだね!!」
トントンと大地を踏み鳴らしつつ、ブランシュがそうヘルヴォールに告げる。
「ま、まったく。いつのまに、紋章剣をそこまで使いこなせるようになったんだか‥‥」
そう告げつつも、ヘルヴォールは手にした『疾風の紋章剣』を軽く身構えなおす。
「‥‥オーラの乱れ。それは心と体の乱れからくる。常に己を保ちつつ、意識はしっかりと維持‥‥」
マスター・メイスが、そう後で訓練をしているヘルヴォールと、今自分に向かって『白虎の紋章剣』を振るっているテッド・クラウス(ea8988)に向かってそう告げる。
「まだ‥‥まだだ‥‥この程度で‥‥倒れない‥‥」
すでに体は満身創痍。
『試しの試練』を受けて、テッドはすでに1度瀕死に陥っていた。
テッドの試しは『己との戦い』。
剣士の修練場の奥に在る湖の畔で行なわれたそれに、テッドは打ち勝つことは出来なかった。
師いわく、『まだ優しさが心の中で優先している部分がある』らしい。
時として、非情となる選択をしなくてはならないとき。そこにテッドは、一瞬だけの戸惑いが見えたらしい。
そこが、致命傷となって、修練は終了となった。
「まあ、あまり無理をするな。今のままでも候補生としては上等。あとは時間をかけていくしかない。ハードな特訓では、なにも身にならない」
マスター・メイスの言葉に、テッドは静かに肯く。
「判っています‥‥少し、休みます‥‥」
そう告げて、テッドはヘルヴォールとブランシュの戦いを見つつ一休み。
──一方・湖の畔では
「ふぉふぉふぉふぉふぉ。パラディンを見たのは久しぶりじゃな」
そう告げつつ、マスター・オズは目の前の三笠に頭を下げる。
「稽古を付けて貰いたくて、はせ参じました。‥‥よろしくおねがいします」
そう告げると、マスター・オズは、三笠を連れて修練場の端へと移動。
「では、まず‥‥パラディンとしての腕を見せて欲しい。それがどうであるのか、1度みてみないとな‥‥」
と告げて、近くの岩をコンコンと叩く。
「では、一体何をすれば宜しいのでしょうか?」
「切断してほしい‥‥この岩を」
と告げるマスター・オズ。
「では‥‥」
静かにシャクティを身構える。
呼吸を整え、そしてじっと岩に向かって意識を集中。
──ガキィィィィィン
そして激しく一撃を叩き込む。
その刹那、マスター・オズの表情が険しくなる。
岩の一部が砕け、そして崩れたのだが、マスター・オズは静かに肯くと一言。
「基礎修練を続けなさい‥‥」
と告げられた。
「マスター・オズ。今の一撃、このわたくしになにか足りなかったのでしょうか?」
そう問い掛ける三笠に、マスター・オズはゆっくりと口を開く。
「意志力、集中力、剣速、そして破壊力。どれも問題はない。ぢゃが‥‥阿修羅の戦士として、何故『魔剣化』と『弱点看破』を使わなんだ‥‥」
その言葉に、三笠は言葉を失う。
それらの技は、まだ体得していない。
「まだ、わたくしはオーラまでしか‥‥」
「うむうむ。ならばこそ、基礎を続けなさい。そうしなくては、これから先の技は得られぬぞ‥‥元八部衆のじじいのたわごとと思って、そしてそれをつづけなさい‥‥」
と告げられた。
そして三笠もまた、マスター・メイスの元にむかい、ヘルヴォールやテッドと共に修練にはげんだ。
●グレフェンベルクの憂鬱
──パリ・グレフェンベルク家
「‥‥お引き取りください‥‥」
そこはとある冒険者の家。
かつて、このパリの至る所に出没した究極のバカップル『ピエールとカトリーヌ』、そのカトリーヌの実家。
木下茜(eb5817)は、カトリーヌの思い出の品を求めてここにやってきていた。
おそらくは、アビス地下階層の神珠なのだろうが、違う場合に備えて、ピエールさんの思い出の品を受け取る為にやってきていた。
「ですが、どうしても必要なものなのです‥‥このノルマンが危険で‥‥」
そう力説する茜。
だが、グレフェンベルク家執事は、冷ややかな瞳で一言。
「カトリーヌお嬢様の遺品などはすべて燃やし、なにも残っていません。悪魔に魂を売ってしまった女性なども、この家のものではないという旦那様のお考えですから‥‥では」
──バタン!!
と、扉は閉じられた。
そののち、茜は方々を走りまわってカトリーヌ縁のものを探してみたのだが、とうとうそれらは見つからず。
情報屋のミストルディンに大金を叩いて情報を求めたのだが、ピエールの遺体はすでに過去の戦いで失われて不明。その時の遺品もまた、戦乱のどさくさにどこかに消えてしまっていた。
当然ながら思い出の品なども消息不明。
のこされた手掛りは全て失われてしまっていた。
こうなると、カトリーヌの求めていたという『神珠』に全てを託すこととなった。
●協力者
──シャルトル地方・旧街道
一行が合流地点である『ニライ自治区』に向かうには、どうしてもこの『旧街道』は避けられない。
だが、ここは以前『冒険者を生業とする凶悪な盗賊団』が出没していた。
先月まではその姿を確認できなかったが、どうやらここ最近はまた活動を開始していた『らしい』。
というのも、出没地点には大量の血と戦いの跡が残っている。
そのまま一行は、注意深く各周囲を警戒しつつ、先に進んだ。
そして目的であるニライ自治区・ニライ城にたどり着いたとき、道中が安全であった理由を確認した。
その場所、破滅の魔法陣最前線エリアに駐留している『パラディン達』。
その彼等が、ここまでの道程に出没していた『存在・悪』を全て排除していたのである。
歴戦の戦士でもあるパラディン。
その彼等によって作られた『希望への道』。
言葉はいらない。
目的地へ辿りつき、この魔法陣を破壊する。
それこそが、作られた道に対する返答であろう。
そして一行は、最後の打ち合わせを行うと、すぐさま最終ラインに突撃した!!
●破滅の魔法陣破壊作戦
──破滅の魔法陣中枢
お膳立ては全て整った。
あとは、一定の儀式に則り、全てを解除する。
「さて、もう一度最後の手順について説明する‥‥」
魔法陣中枢に集っているメンバーをぐるりと見渡して、ラシュディアがそう告げる。
■ネオ・プリティらしゅ☆の魔法陣消滅作戦
1.魔法のスープで外周の結界を消滅させます
──クリア
2.その瞬間に吹き出す瘴気や魂を吸い込む力を、すべて『宝珠』で中和します
──クリア
3.中心に存在する魔法陣の、3つの贄の全てをまず消滅させます。
この場合の贄は取り込まれて、さらに強い意志を持つ魂。これらは消滅した時点で再生する事も出来ません。
その贄と用意したは以下の通り。
・カトリーヌ=神珠
・トールギス=クリア
・エムロード=銀の剣
消滅させる方法は、彼等に関係する思い出の品。それで消滅させられます
4.最後に中心核の破壊。
この核はもっとも強い力をもつ『シスター・アイ』の魂であり、それを静め、破壊しなくてはなりません。破壊し静めるには、『二つのロザリオと一つの歌』が必要。
──用意完了
5.最後に、ひょっとしたら魔法陣をうみだしたヘルメスとのバトルがあるかも知れません。
その場合は、ヘルメスの『消滅』を持って、魔法陣は完全に消え去るでしょう。
──覚悟完了
「‥‥さて、では早速‥‥」
と告げると、ラシュディアが魔法陣の中央に立つ。
そして静かに、床に刻まれている古代魔法後をなぞり、その文字を分解していく。
「偉大なる精霊と、神の名において。汝、この魔法陣の中枢たる魂を解放せよ‥‥」
そして、セイルが『ザンバスター』を構える。
「哀しき魂、カトリーヌ。貴方の求めていた『神珠』はここに‥‥これで、貴方の仇は取る‥‥」
そうセイルが告げて、『カトリーヌの台座』の上で燃えている『彼女の魂』に、『ザンバスター』で触れる。
──キィィィィィン
剣が鳴動し、炎がより大きく燃え上がる。
そしてそれは『カトリーヌの姿』を作り出すと、セイルに向かってにっこりと微笑んだ。
(ア・リ・ガ・ト・ウ‥‥)
そうセイルの耳元にカトリーヌの声が聞こえてきたとき、セイルの瞳から大量の涙が溢れた。
それは、カトリーヌの魂を通じて聞こえてきた、この『破滅の魔法陣』に囚われている人々の悲しみ。
「この剣にかけて誓う!! 必ず救い出してやる!!」
そして次に、ノリアが前に出る。
「エムロード。貴方が持ってきてくれた勇気、そして優しさ。貴方の仇は、この私が!!」
そうノリアが告げて、『エムロードの台座』の上で燃えている『彼女の魂』に、『銀の剣』で触れる。
──キィィィィィィィィィィィィイン
剣が鳴動し、炎が大きく燃え上がる。
そしてそれは『エムロードの姿』を作り出すと、ノリアに向かってやさしく語りかける。
(ア・ト・ハ・オ・ネ・ガ・イ・ネ‥‥)
そうノリアの耳元にエムロードの声が聞こえてきたとき、ノリアの瞳から大量の涙が溢れた。
それは、エムロードの魂を通じて聞こえてきた、この『破滅の魔法陣』に囚われている人々の苦しみ。
「エムロード。そして囚われている皆。せめて苦痛から王国へと続く道を、このあたしが!!」
すでに前回、トールギスの魂は解放された。
そして4つ目の台座、ニライの魂が燃えていた場所は、すでになにもない。
エムロードの魂が解放されたとき、魔法陣の壁全てが輝く!!
「さて‥‥いよいよ大詰めだなと‥‥」
そう告げているラシュディアの全身に、かなりの汗が滲んでいる。
「ラシュデイアさん!! どうしたのですか?」
そう茜が問い掛ける。
「ああ、後少しだ。頼むから持ってくれ‥‥おれの全身、おれの魔力‥‥」
最後の結界。
ロイ教授が残した写本、そこに記されている破滅の魔法陣の解除方法。
すべての鍵となる術者の肉体が、破壊には必要。
そしてそれができるのは、このノルマンではラシュディアただ一人。
それを告げると、みなが止める。
だから、これは最後の切り札。
「1度休んだほうが‥‥」
そうジョセフが告げるが、ラシュディアが一言呟いた瞬間、状況は一転した。
「お客様だ‥‥丁重にもてなしてやってくれ‥‥クリス、ウィル‥‥最後の‥‥アイの解除を‥‥」
そう告げると同時に、ウィルとクリスは魔法陣の核に飛び込む。
そして残った全員が、核を取り囲む形で、身構えた。
──カツーーンカツーーーン
回廊を通って来る無数の足音。
そして姿を現わしたのは、5名のチャイルドと、二人の人物。
──シュコーッシュコーッ
フルフェイスの仮面から漏れてくる声。
ダース・ファースト卿が静かに前に出ると、その背後から古の仮面を付けた『ジェラール・プロスト』が姿を現わす。
「ごきげんよう。そしてさようなら‥‥」
そのダース・ファーストの言葉と同時に、ジェラール・プロストは後方に下がり詠唱を開始。
それがなんであるかは、ラシュディアは瞬時に悟って、叫ぶ!!
「誰か‥‥プロスト辺境伯を止めろぉぉぉぉぉ。あれはイクスティンクションだ!!」
完全発動まで、プロスト辺境伯ならば僅か1分。それが、この戦いの限界タイム。
そして同時にダース・ファーストも『紋章剣』を発動。
チャイルドもまた、『漆黒のナイフ』を逆手に構え、そのまま『ジェラール・プロスト』の護りに入った‥‥。
「ふざけるなぁぁぁ」
守りに入られると待っているのは死。
ならばと、セイルは素早く『ザンバスター』を手にファースト卿に向かって斬りつける。
ガギィィィィィィン
だが、その一撃をチャイルドが飛込んで止める。
「させませんっ!!」
「そうかしら?」
さらに横合いから、ヘルヴォールが紋章剣でファースト卿に向かって斬りつける。
──ヴン!!
その一撃を紋章剣で受止めると、ファースト卿もまたヘルヴォールに向かって一撃。
「紋章剣士か‥‥いい腕だが、それでは駄目だ‥‥」
ヘルヴォールのうちこみを、いとも簡単に受止めるファースト卿。
さらに三笠、マグナスのパラディンチームがジェラールを止める為に突撃!!
「あの魔法さえ止められれば」
「勝機はこの手に!!」
──ガギガギィィィィン
すかさず飛込んできたチャイルドの攻撃を、二人はそのパワーと技術で押し戻していく。
いや、正確には戻しているのではなく、チャイルドの動きを封じていた!!
「ナイスです‥‥」
「それならっ!!」
さらにテッドと茜の二人もジェラールに向かって飛込む。
と、やはり残りの二人のチャイルドがそれを阻止。
これで全ての手駒が封じられた。
「これならっ!!」
素早くジョセフが高速詠唱!!
無防備なジェラールに対して、ウインドスラッシュを叩き込む。
──ズバァァァァァァァァァァァァァァッ
だが、それを除けることなく、ジェラールは詠唱を続行。
「馬鹿な‥‥そこまで集中力が持続するなんて‥‥」
そう叫ぶと同時に、最後の一人であるノリアが走りだす!!
「久しぶりのっ‥‥殴れリクリリッあぐあぐ。‥‥」
あ、ノリアさん久しぶりなので噛んだ。
「ノリアボンバーっ裏八十八式『戦乙女』!!」
素早くジェラールにドロップキックの形で飛込む。
そのまま両脚でジェラールの頭に跳びつき、太股で顔を圧迫。
さらに体を捻りつつ落下、その反動でジェラールを頭から大地に叩きつける。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォツ
その一撃は完全にジェラールの印を崩し、詠唱を止める形となった‥‥。
「ならば‥‥」
と呟くが、その時点でチャイルドは完全に劣勢。
唯一戦えているのはダース・ファーストのみ。
「ここで撤退というのも‥‥」
そう告げて、ジェラールとダース・ファーストが回廊を走って逃げていく。
「待て!!」
と追撃しようとするが、それよりも今はここを護るのが大事。
そしてそのさなかにも、最後の儀式は続けられていた。
ずっとラシュディアの傍らに立ち、護衛をしているカンター。
中央の水晶を挟んで、クリスとウィルが天に向かってロザリオを掲げる。
そして静かに歌う。
アイちゃんの思い出の歌を‥‥。
──ビシツ‥‥
水晶に亀裂か入り、やがて砕ける。
内部に眠っていたアイの魂も解放され、静かに立上がったその時!!
「そうはさせないわっ!!」
そう叫ぶと同時に、ヘルメスが空間から姿を表わす!
既に印を繋いだのであろう、頭上に漆黒の球体が浮かび上がっている。
「‥‥このプレッシャー‥‥間違いなく、オリジナル!!」
素早く紋章剣を構えたヘルヴォールが、シャクティを構えた三笠とマグナスが、そしてテッドと茜がヘルメスに向かって走りこみ、駆け抜けつつも渾身の一撃を叩き込んでいく‥‥。
──ズバズバズバズバズバズバァァァァァッ
ヘルメス相手に二撃目は通用しない。
それが判って居るからこその、決死の一撃。
それでもヘルメスの詠唱は止まらない。
結界内部の大気が急激に冷えこみ、全員の背に恐怖が舞い降りる。
ヘルメスの擬態も溶け、アリオーシュ本人の姿が作りあげられたとき、さらに追撃は開始された。
「渾身のウインドスラァァァァァァァァァァァァァァァァッシュ」
──ズバァァァァァァァァァァッ
ジョセフの改心の一撃。
そしてふらふらとしたヘルメスの前にノリアが静かに立つ。
「エナッツよ、力を‥‥」
手にした聖書が輝く。
そして銀の剣は『銀の拳』となり、ノリアの腕に輝く。
──ドゴォッ
「破滅の魔法陣に囚われた人の苦しみと」
──ドゴォッ
「大切な人を失った悲しみ」
──ドゴォッ
「そしてエムロードや、利用された人の思いと」
──ドゴォォォォッ
「その他諸々っ!! ノリアボンバー最終奥義、『審判の日』っ!!」
つまり、力任せにタロンの力で殴り倒す!!
すでにアリオーシュは満身創痍。
かつての力は、もうこの時点で感じ取れない。
「‥‥悪いな。ヘルメス。アンタと戦ってきて、ようやくピリオドが打てる‥‥」
──ズバァァァァァァァァァァァツ
とどめとばかりに、セイルがザンバスターをアリオーシュの腹部に叩き込み、貫く。
「ぐはぁ‥‥こん‥‥な‥‥」
「ザンバスターにメイズ。今こそ願いを解放せよ‥‥我が願いは‥‥」
そう告げると同時に、ザンバスターが輝く。
「ヘルメスの消滅!!」
──カッ!!
ザンバスターが輝き、砕ける。
「あ‥‥こんな馬鹿な‥‥ベルフェ‥‥さ‥‥ま‥‥」
──ジュッ!!
ヘルメスの消滅。
そして同時に、魔法陣が静かに溶けていく。
天外の部分からは青空が見え、そして溶けはじめた魔法陣から大量の魂が天に昇っていく。
「終った‥‥んですね」
その光景を見て、クリスが静かに呟く。
やがて全ての魂が天に昇っていくのを見届けると、一同は静かにその場に座り込んだ‥‥。
全てが終った。
破滅の魔法陣は消滅し、それを生み出していたヘルメスもまた、この世界から消滅した。
今はしばらく、ゆっくりと休もう。
再び起こる戦いの為に‥‥。
──Fin