【仮面の冒険者ガイ】家督相続大作戦

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:5 G 58 C

参加人数:7人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月10日〜02月20日

リプレイ公開日:2008年02月17日

●オープニング

──事件の冒頭
 シャルトル地方プロスト領。
 その中に住まう貴族『ミッターマイヤー家』。
 祖父であるヨーゼフ・ミッターマイヤーが引退したさい、この地方のしきたりとして血族が家督を継ぐ事となっている。
 だが、ミッターマイヤー家の次期家長となるジャンポール・ミッターマイヤーとその妻メアリー・ミッターマイアーの二人はある日、行方不明となってしまった。
 その為、次期家長はジャンポールの娘、アリア・ミッターマイヤーが継ぐこととなった。
 家督を継ぐ為の条件として、アリア・ミッターマイヤーが18歳となることが条件であった。
 これはミッターマイヤー家の親族会議で決定となったのだが、その日から、アリアの付近では不穏な動きが起きていた。

 というのも、ミッターマイヤー家は、このプロスト領の領主『レナード・プロスト辺境伯』の従兄弟でもあり、領主不在のこのプロスト領の次期領主候補として、ミッターマイヤー家が推薦されているのである。
 となると、その家督を継ぐアリアは18歳にしてプロスト辺境伯領をも継ぐ可能性が出ているのである‥‥。

 そんなある日。
 アリア・ミッターマイヤーはそんな事実を知ることなく、家を出て『新米冒険者』として日夜冒険のたびに勤しんでいた。
 そんな状態であるから、いつ命が狙われてもおかしくはない。
 ということで、ヨーゼフ・ミッターマイヤーは、孫の命を護る為、極秘裏に『冒険者』を雇う事となったのだが‥‥。

「ふむ‥‥主よ。そんな重要なことならば、かけだし冒険者などではなく、腕の立つ者を雇ったほうがいいだろう。その上で、この俺が、冒険者としての実力を見てやろう」
「では、お舘様はいつものように手配を。あとは私達で‥‥」
 と告げたのは、ミッターマイヤー家専属の冒険者。通称『仮面の冒険者・ガイ』と。そのガイの上司である『冒険者テイマー・吹雪』。
 
 ということで、この情報は一般のギルドからは知られず、冒険者仲間の噂だけで広がっていったらしい‥‥。
 
 ミッターマイヤー家専属冒険者。
 果たして、貴方はどうするのか?

●今回の参加者

 ea1559 エル・カムラス(19歳・♂・バード・シフール・ビザンチン帝国)
 eb3361 レアル・トラヴァース(35歳・♂・レンジャー・人間・エジプト)
 eb3416 アルフレドゥス・シギスムンドゥス(36歳・♂・ファイター・人間・ビザンチン帝国)
 eb3668 テラー・アスモレス(37歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb7789 アクエリア・ルティス(25歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb9226 リスティア・レノン(23歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ec2472 ジュエル・ランド(16歳・♀・バード・シフール・フランク王国)

●サポート参加者

彩月 しずく(ec2048)/ ミルファ・エルネージュ(ec4467

●リプレイ本文

●捕獲
──パリ・とある場所
「ええ。あれは確か月の綺麗な夜でした‥‥」
 パリ商業区のパン屋の店主が告げる証言。
「いつものように仕事が終って、翌日の仕込みを終えた後でシャンゼリゼに向かおうとしていたのですよ。と、その時、ええ、いつもの角を曲がったときですね。物陰から得体の知れない『マッチョ』が巨大なアミを手に飛び出してきて、突然通りかかったシフールを捕獲していったのですよ」
 あ、プライバシー保護の為、仕事と名前は偽名とさせて頂いています。
「そのまま遠くに走っていくのを見まして、え? シフールは抵抗していなかったのですかって? 何か叫んでいましたけれど‥‥ええ『マッチョ恐いマッチョ恐い‥‥』と。なにか、心に深い傷を追っていたのでしょうねぇ‥‥」
 という事で、突然拉致されたのはエル・カムラス(ea1559)君。
 まあ、とりあえず合掌ということで‥‥。



●では、本題に入ろうか
──シャルトル・ミッターマイヤー家大ホール
 そこには大勢の冒険者が集っていた。
 その人数、なんと300。
 こんなに大勢の冒険者、ギルドに登録されているものから、はては自称冒険者、アリアに取り入って玉の輿を狙っている男まで様々である。
「静粛にしてください‥‥それでは只今より、『アリア様護衛冒険者資格認定試験』を開始します。司会進行は私、ミッターマイヤー家専属冒険者の吹雪が、アシスタントは‥‥あら? 今は見えませんけれど、『専属冒険者、仮面のガイ』が行ないます。では、まず皆さんの足元を見て下さい」
 
 と告げられて、一行は自分達の足元に巨大な紋章が 刻まれているのを確認した。
 それは『○』と『×』の二つ。
「なんか、いやな予感がするわな‥‥」
 と呟くのは、レアル・トラヴァース(eb3361)。
「ああ。まさかとは思うが‥‥」
 とレアルに答えるアルフレドゥス・シギスムンドゥス(eb3416)。
「なんでも掛かってこいでござるよ!! 義侠塾の心得、義を見てせざるは勇無きなり!」
 テラー・アスモレス(eb3668)が腕を組んでそう叫び、アクエリア・ルティス(eb7789)がにこやかにほくそえんでいる。
「うふふ。『アリア様の為に働いてください、お願いします』って言わせて見せるわよ‥‥」
 とまあ、実に多種多様な人たちが集っている。
「まあ、これも運が悪かったと思って、あきらめときや」
 と、ロープで縛られ、転がっていたエルを開放しつつ、ジュエル・ランド(ec2472)がそう呟く。

「では、第一問っ‥‥現在ノルマンで確認されているドラゴンは、全て空を飛ぶことができる!! ○か×で答え、印のある方向に向かってください!!」

 なんと、いきまり試験が開始。
 その突然の問題に右往左往する冒険者達。
 当然ながらエセ冒険者はどうすることもできず直感で行動。
(フィールドドラゴンは跳びませんから‥‥)
 と、心の中で呟きつつ、自信満々で移動するリスティア・レノン(eb9226)。
 そして、その動きをじっと見て、全員があちこちにと移動開始。
「それでは正解は‥‥×です!!」
 その瞬間、マッチョ達が会場に飛込むと、○に立っていた者たちを誘導していった‥‥。
「ふぅ‥‥助かった‥‥」
 とまあ、残った冒険者達はまだ85名。
 さらに予選は続いていく。

「第二問、ノルマン王国が建国される前にこの土地にあった国は『ノルマンディー王国』である。○か×か!!」

 さらに動揺が会場に走る。
 ノルマンの古い歴史を知るものならば、これはなんなくクリアーできるであろう。
 そして、ここに来て誤算が一つ発生した。
 この会場に来ている冒険者の大半は『外国からやってきた冒険者』であるという事実。
「ええっとええっと‥‥ノルマン叙事詩のくだりの部分は‥‥」
 吟遊詩人としての知識を総動員するエル。
 だか今ひとつ、駄目!!
「実に簡単で初歩的でござる‥‥」
 政治を多少齧っていたテラーは正解を導きだし、自信満々に×に。
「‥‥あの人か‥‥」
 レアルは対人鑑識で答えを知っていそうな人物(実はテラー)を探し出す。その仕種でそれを見ぬき、その人について×に移動。
「まあ、冒険者としての直感に賭けるか‥‥」
 と、アルフレドゥスもそのままレアルに付いて移動。
「ふふん。この程度‥‥」
 貴族の嗜みとして知っていたアクアも正解に向かう。
 さすがイギリス貴族。
「何とか‥‥思い出せたわ‥‥」
 リスティアも学問を多少齧っていた為、なんとか時間一杯でセーフ。
「‥‥こっちやな‥‥」
 ジュエルは直感で移動。
「それでは‥‥正解は×です!!」
 おおっと、ここでさらに人数が35名に減る。

「第三問です‥‥選民思想を忠実に遂行している『キンデルスベルク騎士団』の所在地はフランク王国である‥‥○か×か!! ではどうぞ!!」

 さすがにこの問題は、誰も脚が動いていない。
「‥‥どないしよ‥‥」
 とボソッと呟いたのはジュエル。
 フランク出身である彼女は、この問題の解答をあっさりと見破った。
(○か×かなら、答えは×やけど‥‥みんな動いてへんから‥‥)
 と、ギリギリまで動かないジュエル。
 そして政治や貴族の嗜み程度ではこの問題は突破できない。
 それが判って居るからこそ、皆が正解者を求めている。
(いくで‥‥)
 ジュエルが○の方に移動。
 それに引き続いて、他の者たちも全員移動するが、ジュエルのその動きが実はフェイクである事を、テラーは見切った。
「‥‥こっちか‥‥」
 と、×の方に歩いていく。
 それに合わせて、レアル、アルフレトゥス、アクエリア、リスティアも移動。
 他の冒険者達はその動きに失笑するが、最後の最後にジュエルが○から×に飛び移った時点で締め切り!!

「正解は×です!! 残った方はそのままで。引き続き、第二試験に入りますので‥‥」
 ということで、残ったのはエル、レアル、アルフレドゥス、テラー、アクア、リスティア、ジュエルといった面々。
「いや、その必要はあるまい‥‥」
 と呟きつつ、小太りの依頼人『ヨーゼフ・ミッターマイヤー』が姿を現わした。
「だが主よ。この者たちの知は判ったが、まだ武については試験を終えていない。この俺が直々に武の試験を行なってやろう‥‥」
 と告げつつ、物陰から姿を現わしたガイ。
「上等や。その試験とやらを行なって貰おうか!!」
 レアルがそう叫ぶと、レアルの前に一つの宝箱が置かれた。
「トラップの解除、鍵の解除を行ない、内部より『レンジャーの称号』を取り出せればよし‥‥」
 そのガイの言葉に、レアルは宝箱を目の前に、早速チャレンジ!!

「俺達の護衛するお嬢様っていうのは、一体どこにいるんだ?」
 アルフレトゥスがそう問い掛けると、ガイが静かに話を始めた。
「アリア嬢は現在『アビス第六階層』にいる。あそこで共にダンジョンに潜る仲間を探している筈だ。その特異な場所を利用して、アリア嬢の命を狙っている者がいるということ」
「つまり、そのお嬢様にそれとなく近づいて、アビスから遠ざければいいのか?」
 アルフレトゥスがそう問い返すと、ガイは頭を左右に振る。
「いや、それは不可能だ。あのお嬢は1度いいだしたら聞かない。それにあの伝説の『ミハイル・ジョーンズ』クラスの『迂闊さ』を装備している。と言うことで、喜べ貴様らの最初の任務だ。アビス第11回廊に向かった筈のお嬢と合流してこい‥‥」
 そのガイの言葉に、全員が重い腰を上げた。
「アビスって‥‥あのアビスですか?」
 アクアがそうガイに問い掛ける。
「うむ。ということで逝ってこい‥‥」
 ああ、逝ってこいの文字が違うし。
「こ、これで‥‥どうや?」
 レアル、ようやくトラップ満載宝箱解除成功。
 ちなみに全身がぼろぼろで、あちこちに『毒針』が刺さった跡があるのは、敢えて問わないでおこう。
「うむ。では全員でアビスに向かい、アリア嬢を探して合流してくるがよい!!」
 そのガイの掛け声で、一行はアビスに緊急で向かう事となった。



●ということでアビス
──アビス第11回廊・第28階層
 なんのことはないアビス。
 ミッターマイヤー家のある領地の実に隣、馬で半日でつくというから堪らない。
 そのまま第六階層まで向かい、アリア嬢の情報をゲットした一行は『単独で第11回廊』に飛込んだアリア嬢を追いかけてアビスに突入。
 そのまま内部で『石化』していたアリア嬢を保護したものの、ワンウェイトラップに引っ掛かり、後戻りできない状態となっていた模様。
「‥‥とりあえず、このお嬢の石化を解除するのが先か‥‥」
 アルフレドゥスがそう告げて、仲間に石化解除を頼む。
「うち、解除できんでー」
 そう呟くジュエル。
 そして他の仲間たちの誰もが、解除することはできなかった。
「あ、あの‥‥僅かな可能性ですが‥‥足手まといから脱出することはできるかも‥‥」 
 そう告げると、リスティアが一歩前に出て、石化したアリア嬢に向かって詠唱を開始。
「偉大なるものよ、真理の存在よ‥‥かのものに『かりそめの命』を与え、ゴーレムとなりて‥‥フガフガッ!!」
 と、仲間たちが一斉にリスティアを止める。
「ヤめんかぁぁぁぁ.アリア嬢をゴーレム化してどうするっ!!」
「そうでござる。それに、今はそんなことをしている場合ではないでござるよ!!」
 と呟いて、テラーが武器を構える。
──ズルッ‥‥ズルズルッ‥‥
 奥からやってくる、鳥のような奇妙な生物。
 それがかなりの危険を発している事を一同は瞬時に理解した。
「食らうがよい!! 木野子の国の英雄・麻利雄が国を荒らす巨大亀・狗津羽を飛び越え、空中から踏み潰す為に編み出したと言われる必殺跳躍技‥‥その名も『美意奪取蛇無賦(びいだっしゅじゃんぷ)』!!」
 テラーがまずその奥義で先制を叩き込む。
 さらにその後ろから、小太刀を構えたアルフレトゥスがダッシュ、さらに一撃を叩き込む。
「アリア様に手をださせはいないわっ!!」
 アクアもまたチャージで一撃を叩き込むと、素早く体勢を整える。
「みなさん下がってください!!」
 リスティアが詠唱を開始。
 それに合わせて、エルも素早く印を組み韻を紡ぐ。
 そしてその奇妙な生物は一行に対して攻撃を仕掛けてくる。
 だが、それらは命中することはない。
──ヒュンッ!!
 そしてエルのムーンアローが直撃し、さらに全員が離れた事を確認してリスティアのアイスブリザードが発動。いっきには状態は変わった。
 
 そこからは怒涛の連撃を叩き込み、一同はその生物のとどめをさす事に成功したらしい‥‥。



●後日談
──パリ・冒険者酒場シャンゼリゼ
「ああ、あの時はスクロールの発動に失敗してねぇ‥‥」
 そう笑いつつも豪快に酒を飲むアリア。
 あの後で一同はアビスから脱出、そのまま教会にて魔法の解除を依頼した。
 そしてアリアには、偶然通りかかった冒険者を装い、このままパリに戻ってきたらしい。
「スクロールって‥‥失敗したら自爆するもんか?」
 そうボソッと呟くレアルに、リスティアは頭を左右に振る。
(自分の失敗を認めないなんて‥‥見事です!!)
 グッと拳を握って納得しているアクア。
「で、これからアリアどのはどうするのでござるか?」
 そうテラーが問い掛けると、アリア嬢は一枚のスクロールを取り出す。
「これよっ。アビスに先祖代々伝えられる『奇跡の神珠』。これをゲットするのよっ!!」
 と、羊皮紙を皆に見せる。
(先祖代々って‥‥胡散くさいこと‥‥)
(アビスの先祖ってなんだよ‥‥)
(奇跡? ハァ? 奇跡は自身で起こすものだろう‥‥) 
 と、まあ、ドレが誰の心の中に呟きかはその者の為にあえて臥せておくとして。
 アリア嬢のアビス探索は、まだまだ続きそうである。
(クックックックックッ‥‥ドジッ子冒険者よ、引き続きアリアの身辺警護を頼むぞ‥‥)
 と、何処からともなく聞こえてくるガイの声。

 かくして、一行は当分アリア嬢の護衛として(仲間として)アビスに付き合う事になりそうである。
 
 合掌。


──Fin